「信頼性」と「信望性」の対比

石橋尚也氏(以下、石橋):ここから、先ほどお話ししました調査について、天野さんからお話しいただければと思います。お願いします。

天野彬氏(以下、天野):自己紹介のスライドでもお見せしましたが、私はニュースリリースのほうでも発信をしていまして、今日はこのエッセンスを10分ほどお伝えできればと思っています。

調査のねらい・目的としては、今お話があったようにYouTuberやインスタグラマーなど、すごい個の発信者であったり、インフルエンサーの社会的な注目度や私たち自身、生活者の中での重要度、あとは事業的な規模の大きさ、そういうものがどんどん高まり続けているという認識がまず1点あって。

そんな中で、それに比例してユーザーは本当はどう思っているんだろうかと。なぜ今そこが大事なのか、盛り上がっているのか、その価値の源泉は何か。

事業をもっと大きくしていくためにも、ここで一度立ち止まって調査をして考えてみるのはどうだろうか。自分はそういうのを言語化したり、整理して発信したりすることに意味があるのかもしれないと感じています。

その中で、調査の主軸として、「信頼性」という言葉と、聞き慣れないかもしれませんが「信望性」、その対比を重視してみようというのが今回の調査の方向性です。

「信頼性」というのは、例えばメディアなどの社会的な信頼性を指すのに対して、信望性はもう少しパーソナルな親しみとか、安心感とか、そういう社会科学でも対比として今まで研究されてきたものです。そういうものがSNSで、発信者においてはどういうふうに機能しているのかを見よう、というのがこの調査の切り口になっています。

インフルエンサーに影響を受ける人ほど購入には慎重

調査対象については軽く触れるにとどめますが、男性では13歳から、スクリーニングでは70歳ぐらいまでを取っています。本調査でも、今SNSを使っているのは若い人だけじゃないので、40代の人も含めて取ろうと。

その中で、SNSをアクティブに使っている人、(スライドを指して)とくに上の表を見ていただくと、アパレルを最近買ったとか、旅行で支出をしたとか、いろんなジャンルでお金を使っていて、なおかつSNSをアクティブに使っている人。

さらに絞って、その中でもインフルエンサーに影響を受けている人、それがどれぐらいいるのかを比較することで、比較対照できるようなサンプルを取ってマスキングの調査をしたというのが概要になります。

結果として、まず1つ目としましては「一般層」「SNSに影響を受ける層」「インフルエンサー影響層」、この3つの層がここでの調査のテーマになります。認知から購入に至るまでにどれくらい経過時間というか、どれだけ悩んでものを買っているのか、そこに差があるかを見たのが1枚目のチャートになっています。

なんとなく、インターネットでものを買うことが多い人たちは即断しそうというか、すぐに決めてポチりそうなイメージがあるのですが、出てきた実感としてはわりと逆でした。インフルエンサーに影響を受ける人ほど購入に慎重な、賢い消費者であるということが見えてきました。

このグラフの見方としては、左ほど即断をする率が高く、右に行くほどよく悩む。1ヶ月悩むとか、3ヶ月悩むとか。そういう経緯で見ていくと、一般の人のほうが10分未満とか、30分未満とか、そういうところでより多く決断していくことがわかると思います。 

それに対して、インフルエンサー影響層は一番下のピンクの線ですね。どこと比較しても、やっぱり低いと。これはつまり、即断をするよりも、ちゃんとものを考えていろんな情報を収集して、その中でインフルエンサーに影響を受けることで最終的にものを買ったりしているんだなというところがまず分かれています。

インフルエンサーの情報発信で重要なのは「本音」

2つ目は今日とくにお見せしたいチャートの1つですが、先ほどご説明した「信頼性」と「信望性」という2つのスコアで、いろんな情報を発信するメディアがどう位置付けられるのかを見たのがこのチャートになっています。

縦軸が信頼性のスコア。やっぱりテレビが一番上にありますね。あと、名前は伏せていますが、いわゆるネットのポータルサイトですね。ポータルサイトAとか。あとはテレビ・新聞の公式サイト、新聞、雑誌など。そういう高いところは情報社会的に信頼性があると。

毎日ちゃんと新聞が届くとか、情報の質だけじゃなくてそれを支える社会的な装置を含めて信頼性が支えられているというのが私としての考えです。

その一方で、信望性というのはパーソナルな親しみとか、安心感とか、そういうものを指していて。例えば友達との会話みたいなところも信望性……信頼性というよりは信望性が高いなとか、そういうふうに見ていきたいと思います。

赤丸で括ったように、今日のテーマになっているInstagramクリエイター、YouTubeクリエイターと言われている人々は、ほかにあまりない第1象限にいる。信頼性もまぁまぁ高いですし、なおかつ信望性のスコアが特筆して高い。そこが非常におもしろいところかなと思いました。

この信望性の高さが、テレビ・新聞・口コミの情報まとめサイトなどが発している情報との差を生んでいる。メディア以外の情報の発信源として、独自のポジションがあるということが1つの切り口なんじゃないかなと、そんなふうに考えました。

じゃあそのインフルエンサーに対しての信望性ですね。信頼性も高いですし、とくにメガが本当に高かった信望性、それはどういうところで支えられているのか。

一般層とインフルエンサー影響層を比較すると、インフルエンサーの発信を大事に受け止める人ほど、例えばInstagramクリエイターは本音で発信していること。それがその人にとって信望性を高めるといった回答をしている。そういう結果が1つ出てきました。

あとはYouTubeクリエイターも同様ですね。信頼性についてですけれども、やっぱり純粋に楽しんでやっているというか。

やっぱりインフルエンサーに影響を受ける人ほど「やらされている感」ではなく、その人自身の楽しさや内発性によって「その人が発信している情報を信頼できるな」「参考にしてみようかな」と思うところが高いという結果が出ました。

そういう意味で、タイトルにも書いたように本音の発信とか、純粋に楽しんでいることとか、そういうものがインフルエンサーの情報の発信における大事な要素なんだなと思います。

調査からわかった3つの発見

石橋:MOYAさんはInstagramで発信されていますけど、やっぱり本音で発信することは多いですか? 

MOYA氏(以下、MOYA):そうですね。キャプションに関しても、例えばPRについても、依頼があった時に自分の中で「使わないな」「これはちょっと、フォロワーの方におすすめできないな」というものに関してはお断りしています。キャプションも全部自分の等身大のメッセージで書いているので、まぁ本音で書くようにはしています。

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