仲間集めは「Tinder」で

木村和貴氏(以下、木村):それでは続いてのキーワードに移ります。「仲間の集め方」ということですが、これもお二人ともすごくユニークで。おもしろい集め方があるんじゃないかなと思うんです。

まず川井さんのほうから。ビジネスをしていく中で、どうやって仲間を集めていったか教えていただけたら。

川井優恵乃氏(以下、川井):自分でWordPressをやっているうちに限界を感じて、専門のエンジニアやデザイナーがほしいなと思って、最初は大学の理系の方に紹介してもらったんです。

でも「プロジェクトがもういっぱいだわ」みたいなことを言われて断られて。エンジニアの伝手ってあんまりないなと思って、いろんな人に紹介してくれと言っていたんですけど、なかなかいなくて。

当時、マッチングアプリの「Tinder」を普通に使っていたんですが、トップページに職業を入力できることに気づいたんです。そこで「エンジニア」と書いてある人と、「UX、UIデザイナー」と書いてある人にスーパーライクを送ったら、「スーパーライク、ありがとうございます!」って返事が来たので、「私、アプリ作りたいんです」って言ってみたら「あ、そうなんですか」みたいな感じになって。

(スーパーライク:相手への好意を示す通常のライク(いいね)より効果の大きい、回数限定の機能)

木村:そういうの、びっくりしますよね。「すごくかわいい子からスーパーライクがきた!」と思ったら、「起業家だからサービス作りたくて」と言われて「え!?」みたいな。

課題感を力説し、チームをまるごと引き抜く

川井:でも、たまたま会った人はすでにチームを持っていて、週末にプロジェクトを運営していたんです。

木村:エンジニアのチーム?

川井:エンジニアとデザイナー、ディレクターがすでに揃っていて。それで「私が抱えている課題はこんなに深くて、ニーズは絶対ある」と伝えました。

そのときは美容整形のアプリは世の中になかったので、たぶん誰も課題に気付いていないので、誰かが作らなかったらこのまま課題が埋もれてしまうというのを力説しました。

彼らから「市場を理解するために、もっと整形を経験した人を連れてきて」って言われたので、引き合わせて、インタビューしてもらいました。それで「チーム全員でやるぞ」となって、本格的に動き出しました。

木村:なるほど。

古木数馬氏(以下、古木):チーム丸々?

川井:チーム丸々、引っこ抜きました。

古木:そんな裏技あるんですね。

川井:恨まれているかもしれません。

木村:すごいですよね。やはりサービスを作るとなると、エンジニアやデザイナーなど、実際のスキルを持った方々が絶対に必要だと思うんですけど。スタートアップ界隈で取材していると難しいとよく聞きます。

人の取り合いが起きていたりする中で、Tinderでチーム丸々引っ張ってくるというのは、今風だなというか、さすが女子大生起業家。そういうアプローチはすごくおもしろいですね。

お客さんからの紹介でエンジニアをゲット

木村:古木さんからも、美容師という立場から、どうやってビジネス側の仲間を集めていったかという話をお願いします。

古木:僕もチームを丸々手に入れたかったんですけれども、チームは手に入れられなかったですね。

エンジニアさんを雇うにはお金が必要じゃないですか。だから、投資を受けるために活動をしたら、投資家からは投資するには物がないと投資できないといわれたので、じゃあ、物をつくんなきゃいけないなと思って、エンジニアを探そうとしたんです。

だけど、よく考えたらお金がないなという感じだったので、どうしたらいいかわからなくなって、両方同時に活動しました。

エンジニアさんは、最初に話をするとけっこう乗ってくれる方はいるので、1〜2回会ったりして、ちょっと作ってくれたりする方はいらっしゃるんですけど、でもすぐ連絡取れなくなったり。一緒に共同創業しようという方が、直前の株を分けようといったときに、やっぱりちょっと無理という感じになったりして。そういう経験を何回かしたんですけど、どうしても諦められなくて。

よく熱中して、お客さんにそういう話をしていたんですよね。お客さんが「私の友だちにITの社長の方がいるから紹介するよ」と言って紹介してくれて、その社長さんに全部話したら「うちでもらう案件じゃないから、エンジニアを紹介するよ」と言って紹介してくれたのが、一緒に作り始めてくれた方です。

ビジョンに共感してもらえる仲間の見つけ方

古木:50代のエンジニアで、めちゃくちゃベテランの方で。エンジニアとかプログラマーとか、いろんな種類があるって知らなくて、一人がなんでもできると思っていたんですよね。その人はたまたまなんでもできる人で。

木村:すごいですね。

古木:フロントからサーバーから、1つのAPIを作ったら、同時にAndroidとiOSに同時にコードを生成する仕組みまで作っちゃうという、めちゃくちゃすごい方で。一緒にやってくれることになったけど、当時はお金がなかったので、「もし僕が断ったら違約金を払います」といって契約書を交わして、一緒にスタートしました。

それから僕のお客様で会計士の方がいらっしゃって、「ちょっと会社を作るの手伝うよ」と言ってくれて。「どんなことやりたいの?」とか話して。補助金を受けるときにいろんなビジョンのことを話していたら、「俺も一緒にやりたい」という感じになったんです。

その方も事務所を持っている方で、お金ちゃんと稼げているので、「うちなんかに来てもなんにもお金払えないですよ」と伝えたんですけど、「でも一緒にやりたい」と言ってくださって。

それで今、税理士と会計士の免許を持っている方がCFOで入っています。CTOとCFOと僕みたいな感じで。当時は会計がどういう仕事なのか、わからなかったんですよね。

そのCTOの方が「自分の弟子がほしい。小僧がほしい」と言っていたので、「よし探そう」となったときに、これまたお客さんの花見大会に誘ってもらって。そこで「この人めっちゃいいよ。おもしろいよ」と紹介された子が、NTTデータのエンジニアの子だったんです。その子は「インフラは充分勉強できたので、自分でコード書けるようになりたい」と言っていて。

僕がやっているサービスについていろいろ話をしたら、プロダクトがめちゃくちゃすごかったらしくて、予約表のところの作り込みを「これ、1人でやってる」「ええ!?」ってなって。「その人に会いたいです」となったので紹介して、最終的にその子もジョインしてくれて。

古木氏と川井氏の、対極にある仲間づくり

古木:デザイナーさんはお客さんです。髪を切っていたお客さんが「パソコンがいらなくなったんだけど、誰かほしい人いますか」とFacebookで投稿していて。僕が「ほしいです」と言ったら、「何に使うか教えてください」ということになって。

「詳しく聞かせてください」となったので説明したら、「僕も手伝いたいです」と言ってくれて。さらにテストエンジニアも同じくお客様で、ほかもみんなそんな感じです。

木村:古木さんの場合は、ほとんどお客さんの伝手、もしくはお客さん自身ということなんですね。美容師ならではの特権というか。美容師さんって髪切るだけじゃなくて、そこで生まれるコミュニケーションが必ず存在していると思うので、そこをフル活用しているなと。

古木:そうです。もうずっと通われている方たちなので、お互いによく知ってるじゃないですか。何年も付き合いがあるので。一緒にやっていく上で、そんな違和感とか問題もなく、事業の話もずっと話していたので。

木村:おもしろいですね。このお二人って、仲間集めに関しては逆のアプローチかなと思います。古木さんは、お客さんと長い付き合いで信頼関係ができていて、そこで信頼してついてきてくれるというところ。

川井さんは、マッチングアプリという最新のテクノロジーやサービスを使って、初めて会った人を口説き落としていくということで、別々なアプローチなんですけど、それぞれ強みを活かしたというか。自分のフィールドをうまく使ってやっていた手法なのかなと。

仲間を集めるのって一番大変な部分かなと思っていて。1人でなにかやろうと思っていても、どうやって人を連れてくるかっていう。一緒にやってくれる仲間を見つけるのは大変な中で、この二人はすごく独特なやり方で、それを成し遂げたというところですね。