「何をするか」よりも「誰といるか」

カーク・カズンズ氏:ルー学長、ありがとうございます。ここに、スパルタンズ(注:ミシガン州立大学のアメフトチーム)の中にまたこうやって戻れたこと、光栄に思います。2019年卒業のみなさん、ご卒業おめでとうございます。

今日、ここにいるほとんどの方が、私にできなかったことを達成しようとしています。たった4年で卒業しようとしているんです。

在籍していた間、毎年サマースクールに通っていたのにもかかわらず、なぜか卒業に4年半かかってしまいました。フットボールしていたら通り過ぎちゃった、みたいなことですね。

卒業までの4年半に触れながら、ここででの学生生活の中で私が学んだ「明白な真実」を共有します。卒業から7年の月日を経て見つけた冗談抜きの「真実」です。

あまり時間がないので単刀直入にいきます。MSUにいたとき、「『何』ではなく『誰』」というのが大事だという、最初の真実を学びました。

この4年間はおそらく「何」にフォーカスしてきたと思います。「何」を専攻しようか、「何」が自分のキャリアに続いていくのか、「何」が仕事として、さらなる学問として、卒業後の自分にあるのだろうか。これらの「何」に関する問いは良き問いであるとともに、疑うまでもなく大切なものでしょう。

これは経験したから言えることですが、「『何』をするか」よりも「『誰』といるか」が人生をより楽しめるものにしてくれます。すばらしい仕事であっても、一緒にいても楽しめない人とだと、途端にそのすばらしさは薄れます。逆に、つらい仕事であっても、一緒にいて楽しい人とだとすばらしくなるものです。

私はもう何年もアメフトをやってきました。あなたたちが生まれたくらいにおそらく始めたんだと思います。ここにまた来てみて、「ちょっと歳取ったなあ」なんて思ってしまいましたね。

アメフトはいつも私の情熱としてあり、仕事にもしています。夢を叶える仕事ではありますが、本当のことを言えば楽しかったシーズンもあれば、苦しかったシーズンもあります。どちらにもあまり違いはないんですが、誰といたかで差がついたようです。

良いプレーをしたいと思わせてくれたコーチもいましたし、そうでないコーチもいました。すばらしいチームメイトがそろっていたときもあれば、そうでないときもありました。日々を共に過ごす相手を選ぶことは、人生を進めていくときに幸せをもたらしてくれる重要なファクターと言えます。

避けては通れない人生の問いに答えを出そうとするとき、「誰といるか」ということの大切さを見失わないでください。

大きな結果を出さなければならない

ミシガン州立大学に在籍しているときに知ったのは、「成功するにはただ結果を出せばいいのではなく、大きな結果を出さなければならない」ということです。

今日、すべての人から夢を投げ出す恐れがあります。きっと、いきなり社長の座につきたいとは思わないでしょう。なにかの弾みで会社を経営するなら、小さい規模から始めようとするでしょう。

こうしたことをフットボールの世界では「バックアップに回る」と言います。4年半のうち2年はMSUで、7年のうち3年はNFLで、私が試合の日に担った主要なポジションは「ベンチ」だったんですね。

ミシガン州立のベンチで日々を過ごしていたときのコーチ、ドン・トレッドウェルは「カーク、毎日やるんだ。練習でもいいプレーをするのに集中して、コーチたちが試合に出したくてうずうずさせるようになるんだ」と言っていました。バックアップに回っているときは、スターターになれるようにアピールしました。

明らかにそのシーズンは試合に出られなさそうで、自分のやることをやってタイムレコーダーを押す、というのが明確になりました。しかし、それでは目指しているところにはたどり着けませんし、自分の現在の役割としての意味にもなりませんでした。

その日から、どんなポジションにいるときでも踏ん張って、どうやったら期待以上のことができるか考えました。社長のように働いていれば、いつの日か本当に社長になることでしょう。

「窓」を通して人生を見るべき

ここで学んだ3つ目は、「鏡ではなく、窓を通して人生を見る」必要性でした。人には2種類いて、窓タイプの人と鏡タイプの人がいます。大半は鏡タイプが占めています。事実、人間はみな鏡タイプの性質を持っています。

自分に焦点を当てながら人生を歩き、自分のことをどうなるかを考えながら旅路を行きます。

かつてのチームメイトには鏡タイプの人たちがいました。「勝ちたい」と思ってはいましたが、それよりも気にしていたのは自分たちのことでした。勝っても落ち込んでいれば、負けても喜んでいました。つまり、自分の成功だけが気がかりだったんです。

一方、窓タイプの人は他者の人生にどれだけ貢献したかで成功を計量しているんですね。

2007年の8月、ミシガン州立大学の練習に初めて参加しました。うまくいきませんでした。力を発揮しきれず、スナップのタイミングを逃し、読みも外しました。一新されたプレイブック(戦略)を身につけようとがんばってました。練習を終えてフィールドから出るときには、故郷のディビジョン3の学校に行ったほうが自分には合っているんじゃないか、などと考えていました。

まさにその時、チームリーダーのジャスティン・カーシャーが後ろから歩いてきて、私の肩に腕を回して「カーク、今日の練習どうだったと思う?」と聞いたんです。「あんまり上手くいかなかった」と言うと、「なあカーク、まだ試合を知らないだろうけど、ディフェンスのヤツらは見込みがあるっていってたよ。チャンスは来るからそれまでがんばれよ。俺たちも初日はしんどかったから」。

そうして、自分のミシガン州立大学での未来に対する見方はすっかり変わりました。つまらない新入生のために、自分のことを考えるのを5秒止めて、肩に腕を回してくれた上級生のおかげなんです。

人生において1人ぐらいは、私たちがいるべきところに連れて行ってくれる窓タイプの人間がいるものです。ジャスティンは、私にとってはその1人です。

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