読者の声は作品に影響する?

内村史子氏(以下、内村):こんばんは。内村史子です。

庄司智氏(以下、庄司):こんばんは。講談社ラノベ文庫編集部の庄司です。

高橋正敏氏(以下、高橋):こんばんは。アフタヌーン編集部の高橋です。

内村:この番組は『庄司智のラノベ編集者NIGHT! SIN』。講談社の編集者お二人が、ラノベコミックの話題を中心におしゃべりしていく番組となっております。この番組のナビゲーターを務めます、内村史子です。よろしくお願いします。

庄司&高橋:よろしくお願いします。

内村:では、リスナーの方からのメールを紹介していきたいと思います。ニートンの法則さんからいただきました。いつもありがとうございます。

庄司&高橋:ありがとうございます!

内村:「プロの作家ともなると、ネット上での作品に対する意見は、数多くあると思うのですが、作者がそういうマイナスな意見を読んで落ち込んでいる時や、ネガティブな気分になっている時に、編集者は励ましの言葉など送ったりして、精神面でも支えるようなことはあるのでしょうか?

また、編集者として、そういう意見に対しては、どのような印象をお持ちですか?

他にもWeb小説だと、読者の感想や意見が反映されることが稀にあります。商業本でも、読者の感想や人気投票によるキャラクター人気が反映されるようなことはあるのですか?」

というお便りをいただきました。3つの質問が、ギュっと入ってます。

高橋:ネット上の感想ね。

「君が人気者になるところは、ネット上じゃないぞ」

庄司:高橋さん、「そんなの見るな!」って怒るタイプでしょ。

高橋:僕が担当してる漫画家さんが、あまりにもそういうの気にする人で、それで1回喧嘩になったことはあるね。「だったらネットの意見全部吸収して、本書けばいいじゃん」って。

庄司:新しい(笑)。

内村:あれ? なんか、バ●マンみたいな(笑)。

高橋:そうそう、そうなって(笑)。「それは無理」みたいなこと言うから、「どっちやねん! 」って話になって。

気にするんだったら徹底的に気にすればいいし、気にしないんだったら無視するしかないじゃんって話なんで。「僕だって、愛されたいんですよ!」みたいなこと言うから、「知るか!」って思って(笑)。

内村:その気持ちはわかりますけどね。愛されたい、人気者になりたいって気持ちは。

高橋:でも、「君が人気者になるところは、ネット上じゃないぞ」って話をしたことがあって。そこから、僕も天邪鬼だから、「そんなふうに言うんだったら、俺から距離を置いてやる! 」って思って、俺はネットを見なくなりましたね。

内村:なるほど。

高橋:Twitterとか、それこそ作品が出た時はエゴサーチとかするんですけど、それを1、2回やって終わりですね。

庄司:Twitterでの作品検索とか、するにはする場合もあるけど、それだけだと見ている範囲がすごく小さくなっちゃうんだよね……。Twitterでたくさん褒める意見がありました。でも、部数は伸びてないです。というのも沢山あるし。

高橋:Twitterですごくいっぱいリツイートされるんですけど、実際の本は売れない、みたいなことはよくあって。これは、いかんともしがたい壁があるなと。

庄司:うんうん。

高橋:ということも、ネットへの深入りをやめるひとつの原因ではありますね。もちろん宣伝用アカウントは持ってるんですが、だからといって細かく見たりしなくなりました。

庄司:あとは作家さんのメンタルにもよるよね……。そういうの気にしない人もいれば、気にする人もいるし。気にしない人場合「いっぱい言及されてる(笑)」みたいな、逆にポジティブなとらえかたになるかたも(笑)。

高橋:いらっしゃるしね。

庄司:ある意味、話題にのぼってるってことだからね。

内村:そうですね。

ラノベ王子は批判を気にするタイプ

高橋:庄司さんと内村さんはネットの声を気にしますか?

内村:私は、あんまり気にしないですね。それを目にしても、悪い意味で書かれてても、別になんにも思わないですね。

高橋:思わないんだ。

内村:だって、「会ったことないじゃーん」って(笑)。

高橋:まぁ、そうだね。

庄司:わかんないよ。会ったことある人かも……。

内村:会ったことある人が書いてたりするなら「なんか、ごめんねぇ。」ってなる(笑)。

高橋:実はそれ書いてるの僕らだったりして(笑)。

(一同笑)

高橋:庄司さんは気にする?

庄司:気にする! だから……そういうのは見ないようにしてる。

内村:気にしそうですよね。ふだんの格好からして、自分を守る壁みたいな服装ですもんね、もはや。

庄司:気にするからこういう格好してるわけですよ! 高橋さんみたいに、プレーンな格好でも外界と接せられるようだったら、僕はこんな格好をしていない……。

内村:外界(笑)。

「息抜きにSNS」の是非

高橋:単純な話で、作家さんにはよく「SNSやってる暇があるなら、原稿書けば?」って言ってるんですよ。

内村:あー。でも、どうなんですかね。例えば、パソコン作業をしている時しかつぶやかない人もいるわけじゃないですか。イラストレーターさんとか作家さんとかもそうなんですけど。「作業してる時だけ、つぶやいてます」という……。

高橋:いやいや、「つぶやいてるんだったら原稿やれば?」みたいな。

内村:でも、息抜き大事じゃないですか。ずっとつぶやいてたら、それは駄目ですけど。

高橋:原稿やるのもそうなんですけど、SNSやる暇があるんだったら、友だちと飯食いに行ったり、女の子と遊んだり、デートしたりすればいいと思うんですよ、僕。SNSやってる時間って、本当、かなり時間取られてる……。

庄司:僕はデートする人も相手もいない……。

なぜ人はエゴサをしてしまうのか?

高橋:僕は、自分の悪口を見にいくM的な行動をするんだったら、自分に喜びがあるものをやったほうがいいと思うんです。

内村:悪口を見にいってるわけじゃないんですよ。褒められたくて、承認されたくて……そんな言葉がもしかしたらどこかに落ちているかもしれないっていう希望を持っていくから、その希望が折られて、より傷ついてるんですよ、たぶん。そういう方たちは。

庄司:高橋さんみたいにリアルで承認ばかりされてる人は、いつも満たされてるからいいんだ!

高橋:承認なんかされないですよ。この間、会社の上司に連れられてキャバクラに行ったら、キモいって言われましたからね、普通に。

庄司&内村:(笑)。

高橋:「髪型、ちょっとキモいっすね」って言われて。帰りたいと思って、上司に「早く帰りましょうよ」って言うんだけど、上司は「こんな楽しいとこ、なんで帰るの?」みたいな感じになって、最悪だなこれって。

内村:なるほど。じゃ、髪切ったらいいんじゃないすか?

高橋:いや、しばらく伸ばします。

内村:(笑)逆に、伸ばしちゃう。なるほどー。

編集者がアンケートを重視する理由

庄司:あと、他のご意見として、「Webだと読者さんの意見や感想が反映されることが稀にありますが。商業だとどうなんでしょうか?」っていうのがあるけど。 感想見ながらっていうのは、たとえば漫画だとあるのかな?

高橋:Twitterはないですね。アンケートだと思います。

内村:読者アンケート。

高橋:僕はけっこうアンケートを重要視します。なんでかというと、漫画だとネットでポロッと見られちゃうんですよ。それをパッとつぶやくじゃないですか。それよりも、お金を出して買わないと、発言できないというか意見を書けない、アンケートに書いてくれる労力だったりとか、そういうものを愛しているので。自分がお金を出して買ったものって、否定しづらいんですよ、人間って。それでも言う人って、真剣なんですよね。真剣な批判は……。

庄司:真摯に受け止めて。

高橋:受け止めて、作家さんと検討したりしています。

庄司:今、例であげてくださったWeb小説なんかだと、更新していく中でコメントをもらって「このキャラ好きです」って言われたら出番を増やすみたいなことはしてる作家さんもいらっしゃると、聞いたことはあるけど。

高橋:それはいいと思います。

庄司:スピード感とかタイムラグが漫画連載とも違うのかね。

高橋:最近、増えてきましたけどね。某日本で一番売れてる雑誌が、Webで投稿するのをオッケーにして、そこは読者が自由に書き込めるんです。そのあと、作家さんが、どうやって吸収するのかも自由みたいな感じになっていて、割とWeb小説に近いかたちになってきたのかな? という気はしてます。僕、こんなこと言ってますけど、5年後には「Webの意見全部聞きますよ」みたいになってるかもしれないわけ。

内村:言ってるかもしれない。

高橋:うん。でも、今は、アンケートのほうが信頼性が高いとは思ってます。

庄司:なるほど……じゃあ、まとめとしては、高橋さんは「承認されている。でも、認知はしない」っていうことだね。

内村:!?

庄司:相手の女性によってい認知はしない、的な……。

高橋&内村:(笑)。

内村:さてさて。そんな感じですかね。ニートンの法則さん、いつもありがとうございます!

高橋:ありがとうございました!

内村:では、ここから、今晩もたっぷりおしゃべりしていきましょう。『庄司智のラノベ編集者NIGHT! SIN』スタートです!