3つのプレゼンテーション

野村尚義氏:こんにちは、プレゼンテーション・アドバイザーの野村尚義です。今日はですねプレゼンテーションの定義ということについてお話していきたいと思います。さて、プレゼンテーションってそもそも何でしょうか。世の中でよく言うのは、うちの会社はプレゼンテーションの機会が多いとか、うちの部署ってプレゼンテーションの機会ってないんですよ、なんていう風なことをよく言うわけですね。プレゼンをやる場面があるとかないとか。そこで言うプレゼンの機会、プレゼンの場面って何なんでしょうか。

私は、プレゼンテーションの定義を大きく3つに分けて考えています。「狭義」狭い意味のプレゼンテーション。そして、「広義」広い意味のプレゼンテーション。そして、その間「中くらいの定義」でのプレゼンテーション。あなたが考えるプレゼンテーションは、今から言う3つの中のどこにあてはまるでしょうか。

狭い意味のプレゼンテーションとは

まずは、狭義。狭い意味のプレゼンテーション。これは何かというと、いわゆるフォーマルプレゼンテーションです。1人で複数人数の前に立ち、時にはビジュアルツール(スライドであったりスクリーン)、ないしはこういうホワイトボードなどを使いながら自分の意見や情報を聞き手の方々に伝える。まさに、フォーマルプレゼンテーション。プレゼンという言葉を聞いたときに、真っ先にイメージするのはここではないでしょうか。

それで、もしもあなたがプレゼン=このフォーマルプレゼンテーション、大勢の前でスライドを使って話すことだと思っているのだとしたらあなたの人生でプレゼンってそんなに深く関わるものでしょうか。そんなにしょっちゅうやる機会ってあります? 

私、研修のときによく聞くのが、1週間に2回以上フォーマルプレゼンテーションやる機会がある方、手を挙げて下さいと言ってもほとんど手が挙がらないです。つまり、普通のビジネスパーソンにとってフォーマルプレゼンテーション(狭義のプレゼンテーション)っていうのはさほど使わないものだと。さほど関わりのないものだということです。

もし、そのさほど使わないところの力を高めるのに、ものすごい時間がかかるとしたら、そこにものすごく労力がかかるとしたら、面倒くさいと思いませんか? そうなんです。この定義でプレゼンテーションを捉えている限り、プレゼンのスキル高めるのってコストパフォーマンスが悪いわけですよ。

では、実際問題どうなんですか、と。プレゼンのスキルってここなんですか。私は、正直そうは思わないです。じゃあどこなのか。少し、次のステップで考えてみましょう。

広い意味のプレゼンテーションとは

広義、広い意味のプレゼンテーション。狭義(狭い意味)、中義(真ん中くらい)、広義(広い意味)。一番広い意味でのプレゼンテーションの定義はこれです。ビジネスコミュニケーションにおいて、話すことすべて。一旦、口を開けばそれは全てがプレゼンであると。「おはようございます」と挨拶したら、その一言は相手に対して何らかの影響を与えるメッセージである。それは、プレゼンテーションということですね。

もし、この一番広い定義で捉えたならば、ビジネスシーンの全てでずっと黙っている人なんていないじゃないですか。だとするならば、プレゼン関係ない人なんていないし、プレゼンの機会ないですよ、なんていうことはあり得ないわけですよね。

なぜ広い意味でプレゼンを捉えるのか

プレゼンの定義、それほど大きく捉えることには理由があります。大きく2つ話しますね。1つが、プレゼンの定義を広く捉えれば捉えるほど、自分にとって「これはここ一番のプレゼンだ、きちんとわかりやすく魅力的に話すシーンだ」というスイッチを入れながら話すことができるということです。「ダラダラとまあいつも通りしゃべりますわ」っていう気分で話すのと、「これもプレゼンテーションの1つだからできるだけ魅力的に、簡潔にわかりやすく」と思いながら話すので、話し方が一緒になるわけないじゃないですか。だからこそ、自分のスイッチを極力オンにしておくためにも広く捉えてくださいと。

もう1つの広く捉えることの意味が、そこから学べることが多くなるということです。プレゼンだと認識し、ここ一番だと思うからこそ、それに対してフィードバック、自己分析が働くわけですね。どこがうまくいったか、どこがうまくいかなかったか。

例えば、上司に対して日常的にやっている報告事項を「今日もやりましたよ」と言ったとき、「いつも通りやっているルーティンですよ」って思ったら反省の時間を取ろうとも思わないし、そんなアンテナが立たない。

一方、これも1つのプレゼンテーションだという風に考えたならば、次やるときにもっとよくいかせるために今回のところから反省ポイントどこがあるんだろうか、上手くいったところはどこがあるんだろうか。そういう風に考えることができます。ぜひそうやって下さいというのが一番広いところ、広義のプレゼンテーションです。

真ん中の意味のプレゼンテーションとは

そして、残った1つ中義のプレゼンテーション。赤いところですね。真ん中の意味。プレゼンテーションの意味を広く捉えれば捉えるほど、場面として場数が増えていく、そこから反省のポイントが出てくる。これ自体はいいんですが、挨拶もプレゼンですかって言ったら、じゃあどこまでスキル学んでいくんですかという話になります。だからこそ、学ぶにふさわしいコストパフォマンスが高い、ハウツーを自分の頭の中に入れるのにふさわしいポイントに集中特化してやっていきましょうと。そのために考えて欲しいのはこの赤いところです。

選ばれるためのオーディション

「選ばれるためのオーディション全般」こういう風に書きました。我々は、実は意識していようが意識してなかろうが、日々人からの評価を受け続けています。わかりやすいシーンで言うならば、営業マンがお客さんから評価される選ばれるっていうのは購入いただくということで、評価されなかった、選ばれなかったというのは、また次の機会にということじゃないですか。これが一番わかりやすい場面。

それだけではなく、例えば上司から選ばれるっていうのは目をかけて貰い、上に引っ張りあげてもらうことだと。選ばれなかったというのはそれが得られないということです。実は、部下からだって選ばれたり選ばれなかったりする。ポジションがあるから、あなたが上司だとしたら部下はきっと言うことを聞くでしょう。いきなり造反しないでしょう。でも、あなたのためにって誠心誠意、時間をかけて労力かけてエネルギーかけてあなたから頼まれた仕事をやるのと、「はいはい」って言ってなんとなく適当に流して仕事をするのでは、あなたの選ばれ方が違うということです。

考えてみてください。あなたは周りの人たちからあらゆるシーンで選ばれているでしょうか? 選ばれていないでしょうか? オーディションに合格しているのか、オーディションに不合格になっているのか。それぞれの場面で加点ポイントを貰っているのか、減点ポイントをくらっているのか。どちらでしょうか。

そして、そのオーディションにかけられている加点が入ったり、減点が入ったりしているそのあらゆるシーンで、きちんと積み重ねていく、積み上げていくこと。そのために使う言葉の使い方。これこそが中義、真ん中の意味のプレゼンテーションです、ということなんですね。

あなたが語る言葉が全ての場面で加点ポイントを積み重ねていき、結果としてオーディションに合格していく、結果として選ばれる。そういうための言葉の使い方をしているか。

私は、こういう言葉を使っています。「あなたの価値はあなたが語る言葉が決める」。あなたの価値がきちんと積み上がって伝わるのか、本来あるものよりも目減りして伝わるのか。その2つで今後の人生が大きく変わっていく。自分自身がプレゼンテーションとして、その価値を積み重ねる話し方や伝え方をしているか、ぜひこれを一度見直していただきたいと思います。