アルノルト・シェーンベルクについて

現代音楽について書かれていますね。音楽の教科書、すごい。現代の音楽、19世紀末以降なんですよ。これもまたすごいんだけど、「オクターブ内の音を均等に使う十二音音楽=Twelve-tone」って言うのね。これちゃんと日本語に直訳しているわけ。

「原初的な生命感を音楽に求め原始主義、あらためて明確な調性や形式に基づく作曲を進めた新古典主義などがある」

これだけだとわからないですよね、この流派にはゲイの人が圧倒的に多かったとか。そういうことをさ。あとヨーロッパから亡命したユダヤ人の作曲家が多かったとか。

あと、十二音音楽は、シェーンベルクが大成させたわけだけど。彼がどうしてハーモニーを否定して、まったくハーモニーがない十二音を作ったのかというと、当初アナーキズムだと思われたんですよ。皆が水平に誰も権力を持たず、均等に分配する。なんか理想的な学級会、反省会みたいな平等主義だという風に当初解釈されていた。

だからこれは「ユートピアのアナーキズムなのかな?」という感じ。ところが、僕が最近見つけた文献だと、この十二音音楽の巨匠だったシェーンベルクはかなり強い妄想癖があり、ヨーロッパでいろいろ頑張っていた時代に、根深いユダヤ人差別を受けて本当に嫌になっていたと。

例えば、フランスではドレフュス事件というのがあって、これもユダヤ人だっていう理由でスパイの嫌疑をかけられた人が、マスコミが差別的な報道していた為に、白なのに黒になっちゃった濡れ衣事件があって、それをエミール・ゾラっていう人が、もうやめろっていう糾弾文を出したっていう事件があったんだよ。

要は、もうそろそろユダヤ人の差別やめようと、ドイツとかヨーロッパのユダヤ人と文化人たちが言い出した運動があったんですね、反差別運動が。その中で、シェーンベルクはちょっと振りきれちゃったの。シオニズム運動の、1つの熱狂的な狂信的な一派に加わったらしいんだけど。

シオニズムとは?

シオニズムっていうのは、パレスチナの地に祖国イスラエルを復興させましょうっていうイスラエル建国運動だったわけ。その中にはいろんな人もいたわけ。テロまがいの考え方をする人もいたし、もっと穏健に全ヨーロッパ、世界中の差別されてるけど有能なユダヤ人たちが集まって、もう一回古代の国を復興させようみたいな。今のイスラエルに至る運動なんですけど。

その中でシェーンベルクは、ことさら過激なシオニズムに感化されてしまった結果ですね、彼は、ユダヤ教の中に選民思想っていうのがあってね。哲学的宗教的にそれを解釈する向きもあるんだけど、もっと文字通り「ユダヤ人が世界で一番の民族」って考えてる人たちも一部いるんですよ。

でも、それはどんな民族にもいるから、だからユダヤ人が全員選民思想を持っているっていうのは間違いだと思うんだよね。ただそういう部分、日々差別されてきた文化人、音楽家が振り切れたわけですよ。俺たちユダヤ人こそが世界で一番だっていうふうにね。

ところが彼はもっと次の段階に行ってしまって、ユダヤ人だけが支配する世界というユートピアというものを考えたらしいの。そしてそれをオペラにしたんですよ。そのオペラの中で、未来のイスラエルみたいなものがあって、ラピュタみたいに敵の民族をまるごと滅ぼすジェノサイド武器みたいなのを作っちゃって、空から何か降ってくるんだよね。

そうやって、すごい武器を使っていいのかどうかオペラの中で話し合った結果、やっぱり使いましょうってなって、最終兵器を使ってユダヤ人の敵を全員抹殺するみたいなシナリオがあって、ホロコーストを逆に自分のオペラでやっていて。上演拒否されたの。これ過激すぎるって。なんでやらないんだみたいな。

彼はたしかアメリカ、ニューヨークに亡命したんだけど、亡命した後もとっても強い排他的な過激な思想を捨てなかったので、周りからドン引きされていたという文献を前に読んだことがあって。

スタッフ:何年くらい前の話ですか?

モーリー:1930〜40年にかけてくらいだと思います。シェーンベルクが1番バリバリだったのは。彼は、もしかしたらコミュニストでもあったかもしれない。矛盾してるんだけども多くの人が熱狂していた時代だったので、コミュニスト、共産主義者になって、次に民族ファシズム、ユダヤ人優位説みたいなのにいった人もいれば、バリバリそのままマルキシストになった人もいるし。

だけど多くの人たちは、ドイツ語圏に住んでいる人は、ナチスにホロコーストで殺されちゃったんですよ。だからいなくなっちゃったんだけど、亡命した中にはシェーンベルクがいて、亡命してニューヨークに居たんだけど、そこでも彼は過激な思想を口走って周りから止められていたらしいんのね。

ジョン・ケージに人生を狂わされた

そう考えると、ここにジョン・ケージが出てくるわけ。偶然性の音楽、ジョン・ケージっていうのがこの年表に。

このジョン・ケージに出会って、私は人生が狂いました。その前はYMOとヒカシューでした。スターリン。ジョン・ケージに出会うとラモーンズでさえ可愛いと思えてしまった。スロッビング・グリッスルでさえ生ぬるいと思った。

ケージは10何年前に亡くなりましたけど、そのケージが80歳にならんとしている時に出会ったんだよね。それでケージがシェーンベルクの所にしばらく弟子入りしたんですよ。田舎から出てきて最初ニューヨークでシェーンベルクの所に行ったんだけど、なんでシェーンベルクを離れたかっていうことを公開してないのね。

それは非常に興味深いんですけど、シェーンベルクが亡くなって半世紀以上、ケージも亡くなってかなりの年月が経っている。92年に亡くなっているから、もう13年前に亡くなっているわけですよ。

1回か2回、3回会ったのかな、今までケージに。そのうち1回は、庭で摘んできたタンポポをソテーしてくれた。すごいよね。マクロビだったの。アルコール依存から立ち直る為とか、マクロビを勧めたのはオノ・ヨーコだったとかいろいろごっちゃにね。

だから僕の中で、オノ・ヨーコさんというのは完全に安田財閥なんですよ。あの人を「Love & Give Peace A Chance」だとか思ってないのね。ちょっと一言いい? ジョン・レノンで。もしジョン・レノンがまだ生きてたら、早く日本は再軍備して9条なんかやめちまえっていう歌を作っていたと思うのね。

というのは、中国が南シナ海で無茶苦茶やって、チベットとかウイグルをあれだけ弾圧してるでしょ。ジョン・レノンの考え方っていうのは、旧帝国支配、白人による帝国主義の歴史に反対して、末端で独立する人を誰でも応援してたんですよ。

それでね、IRAにお金を送金してた疑惑もあるの。それはちょっとガセネタの疑惑が強いんで、あんまり強めに言いたくないんですけども、イギリスのMI5かなんかが、ジョン・レノンをいわゆる公安の監視対象にしてたっていう情報が時々出てくるのね。IRAにも共鳴していたらしいんですよ。

ジョン・レノンがIRAにシンパシー?

スタッフ:IRAとは?

モーリー:アイルランド共和国軍といって、北アイルランドの独立を、ブリテンの一部なんですけど飛び地でアイルランド島というがあって、その北側の北アイルランドっていう領土は、海の向こうのイギリスのものなんです。

日本で言えば任那日本府みたいな感じ、あの百済です。朝鮮半島の釜山をいまだに日本が持っているみたいな感じ。対馬だけじゃなくて釜山も持っている。そしてそこににいる韓国の人たちが、テロ起こして釜山を韓国に併合しようという祖国奪還運動起こしている。そんな感じがIRA。

そのIRAにシンパシーを持っていたらしいのね。

つまり、イギリスのアングロ人とアイルランド人って民族もほとんど同じなんだけども、言葉はちょっと違うんですよ。向こうはゲイリックというゲイル語を喋っていて、下に見られてれてるわけ。

つまり全ての下に見られている民族は、自分で民族自決できるように独立しようという植民地独立なのね。ということはベトナム戦争でも、北ベトナムホーチミンを応援していたわけ。

なんでかっていうと、南ベトナムにアメリカが傀儡政権を作って、そこを支配しているのが気にいらないから共産主義と組もうが何をしようが、バックにソ連がいようが、ホーチミンを応援するのがジョン・レノンだったわけよ。

もし生きていたら、チェ・ゲバラ、サンディニスタも応援していたと思うし、当然日本はアメリカから独立しろっていうのが、彼の思想の延長だと思う。それで、オノ・ヨーコさんがそれを止めたかどうかは僕はわからないけれども。

もしジョン・レノンがファンに殺害されずに、暗殺されずに、ずっと生きていて内田裕也さんになっていたら……ってすごい言い方だな(笑)。多分、日本は早く再軍備をしてアメリカと戦って落とし前つけろとか言ってたと思うよ。

それどころか日本はアメリカから独立しろ、そして琉球、沖縄は日本から独立しろって、どんどんちっちゃくして、じゃあ何? 石垣島や八重山は沖縄の本土から独立して、今度は奄美も独立しなさいって言って……ちっちゃく、ちっちゃくって。

今度はコソボ! って。ボスニア・ヘルツェゴビナみたいな。ジョンレノンさんちょっと待ってください。どこで止めるのこれはっていう感じですよね。彼は何も考えてなかったと、僕は思います。すいません。

とあるクリスマスの夜に

で、ケージに話を戻しちゃうけど、僕1回ケージと会話している時に聞いたの。超ミーハーだったから恥ずかしいんだけど、クリスマスの夜に0時になったら「クリスマスおめでとうございます」ってケージの家に電話しちゃったの。そしたらケージ寝てたの。

ケージが眠そうに「もしもし」って言って、「モーリー・ロバートソンですが、電話番号を貰っていて……」、「はい」とか言って、そしたら「クリスマスになったので電話してみました」って言ったら、「おめでとう」って言って、それで「ごめんなさい!」って言ったら、「うん、じゃあね」って言ってガチャ。

一生に一度の恥ですよ。あれ以上恥ずかしいことって、その後あんまりやってないね僕は。それでそんな中、ケージに聞いたわけ「シェーンベルクの元をなぜ離れたんですか?」って。

それってファンの人が俺に向かって「モーリーさん、なんでJ-WAVEを辞めたんですか?」「なんでAcross The Viewをやめられたんですか?」「どうして千葉麗子さんやいとうせいこうさんと一緒にやっていたRevolution No.8は続かなかったんですか?」って聞かれてるみたいで、「この野郎……」みたいに思いつつ「そうだねー、番組が終わっちゃったからねー」とかね。

あまりしつこく聞かれると「バブルが崩壊して新日鉄がスポンサー引いたんですよ」って言って、それでもつっこまれたら「うるせーな! J-WAVEが魂を売ったからだろうが!」ハイ、すいません。

そこでケージについて最後に一言いうと、要は後々になって自分でジャーナリズムをやって文献を重ねていくと、なんとなく分かったのが、多分ケージはシェーンベルクのもとにいたんだけど、シェーンベルクがユダヤ優先主義みたいな妄想を朝から晩まで語るから、だめだこりゃって思って抜け出したんじゃないかと思うんですよね。

それでケージがシェーンベルクのもとを離れて、偶発性の音楽とかランダムとかですごく有名になったわけだよね。ところが彼はその前の時代、ミニマリズムとかスティーブ・ライヒみたいな音楽を作ってるんですよ、実は。

すごく優しいタッチのハーモニーが延々と繋がるドローン音楽みたいな、ブライアン・イーノみたいな瞑想音楽を実はケージも作ってて、今になってケージのレガシーが問題にならなくなったんで、これも再発されているわけ。ほとんど出版されていなかったものが。

そうすると「何? ケージって、普通の有線で流れてるような環境音楽作ってたんじゃん」ってなるわけですよ。そうすると頭の中でパズルを組み合わせると、ケージは最初シェーンベルクの元にいた。でも、シェーンベルクは狂ってる。離れた。そして反対側に行きたくなって、和音の音楽をバリバリ作った。でもこれも違うなと思った。

そしたらある日、急に偶然性の音楽で、和音でもシェーンベルクでもない真ん中をとった結果こうなっちゃったという感じで、ケージが偶然性の音楽に至る論理的な手順というかステップが、推理できるんですよね。

そうするとジョン・ケージっていうのが、音楽の壁に向かってただ爆弾を投げたテロリストで、顔に布を巻いて火炎瓶を投げている、そういう人じゃなくて、むしろ非常に論理的に、1つの流派からこっちに行ったんだけども、いろいろあってこっちにいった結果だっていうのがわかって、そこはすごくおもしろいと思います。

次回の番組告知と、3時限目以降について

と言ったところで、もう1時間が経ってしまいました。休憩も兼ねて、ここで告知をさせてください。まず1個目の告知です。次回の番組は、佐々木俊尚さんが出演されます。非常におもしろいです。「戦後70年とこれからの優しいリアリズム」を語る会になるでしょう。

きっと怒涛に喋るねっていう風に言ってくれます。綺麗な目をしておられます。この綺麗な目が人間愛にあふれたダライ・ラマの目なのか、それとも強い意志のポル・ポトの目なのかは歴史のみが証明するということでいいんじゃないでしょうか。綺麗な目にご用心です。

何を言わせてんだお前ら、みたいな。僕の頭の中に変な考えを植え付けるんじゃない。さっきから電波が、僕の頭の中に不適切な発言をしろと言い続けているんだ! それは大麻のせいか?そうじゃない。それは保健体育の間違えだ!

ということで、人は見かけで判断したらまずいですね。佐々木俊尚さんが出演されます。

今は2限目音楽で終わっちゃいましたが、この後ぶっちぎりで、英語、古典、物理、数学までいこうと思います。「高校生からやり直せ」という講座をやろうと思いますので、是非このタイミングで購読してください。入会していただければ、この先も超おもしろい、そして外には出せない話が、いろいろと出てくることでしょう。

スタッフ:社会の(安保)っていうのはどういうことでしょう?

モーリー:社会(安保)っていうのは、今回大騒ぎになっている安保法制に関してですね、前半の無料枠ではどっちつかずの態度を示していて、なんて言うんでしょうか、風見鶏じゃなくて何て言うの? オポチュニストじゃなくて中立なんですけど、シャッターが降りたらもっと主観を暴走させていろんな本音を語りたいと思います。

そしてここにですね、実は四択あるんですね。安保に関して、非武装中立、重武装中立、日米安保進化、あるいは現状維持。これについても見解をしっかりと述べようと思います。

それを聞きたかったら、僕に月々のお金をください。そのお金はあるタイミングで月餅に化けます。

ということで、無料枠は以上となりました。無料でご覧いただいた皆さんどうもありがとうございます。この番組はおもしろいよ。同じ時間帯で流れていたテレビよりもおもしろかったよって。そういうハッシュタグをつけて友達に教えてあげてね。

ソーシャルメディアでモーリーチャンネルを広げていこう。オー! いいね! 今日もみんなで、がんばっチャージ! さよなら〜。