審査を通る倍率は?

西山:皆さん、週に1回メンタリングですとか、場所を提供していただいたりですとか、お金を入れていただいたりですとか、あるいは料理まで出していただけるとか、すごい手厚い支援メニューがそれぞれおありだなというふうに思っているのですが、それだと応募者が殺到するのではないかなと。

そこのところは実際、森下さん、どうなのでしょう。受かる、プログラム採択されるのって多分数社だと思うのですが、実際最初にエントリーされる方の倍率になると、これってどれぐらいあるのですか。

森下:多分複数(のプログラムに)出す方もいらっしゃるのだと思いますが、100社前後ぐらいになると思うんですね、大体。いつも事業者同士では言うのですけれども、締切ぎりぎりにしか(応募が)増えないです。

西山:そうなんですね。

森下:だから、結構いつもしびれるんですよ。何回やっても、今度はもっと少ないんではないかとか。もうすぐ今度また3回目、DemoDay以降募集しますけれども、またしびれるだろうなと思います。

最重要視するのは事業、そしてチーム

西山:その100社ぐらいあるところから数社を選ぶというと、ハードルはやっぱりすごく高いのではないかな、と思うのですが、そのハードルをクリアする上での採択を決める際のポイントは何か、というのが次のテーマです。そこはいかがでしょうか、どういう部分で(決定をされているのですか)?

森下:この辺になると、多分それぞれの出自でちょっと違うところもあると思うのですけれども、我々の場合、1期目は結構書類選考で100のうち20数社ぐらいに絞り込みました。実際にドコモの各事業部からの意見なんかも参考意見としてちゃんと聞いて、それでファイナルプレゼンテーションに20社ぐらい来てもらって、そこから喧々諤々議論してやっていたんですね。

ただ、やっぱりそれだと人の要素が弱いねということを改めて認識して、2期目では書類選考とあわせて面談を行いました。実際には1社1時間近くかけてまして、これどう見ても全然違う趣旨でいるよねとか、そういうところ以外は必ず会うようにしました。

そういうプロセスでやっていて、じゃあ最終的になんなのかというと、我々も必ずしも事業シナジーとか、そういう視点がメインで選んでいるわけではなくて。もちろん事業部がこういうものをすごい押したいとか、そういうものも参考にします。

しますけれども、やはりオーガニックな強さというのが一番ポイントかなと思っていて、そのオーガニックな強さというのは大きくは二つで、やっぱり事業、その事業というのは事業スペースの魅力だったり、その中でその人たちのポジショニングの魅力だったりということと、それから人ですね。

どっちが重要かとったらやっぱり人だと思うし、多分、よりシード寄りになればなるほど人の要素、人というのは単に人というよりはチームですよね。そこが重要になると思うのですが、我々の場合、そのバランスも重要だと思っているのは、やはりアクセラレーションのプログラムなので、そのプログラムで一つ次の上のステージに送り込みたい。

やっぱり理想的なベンチャーっていうのは、非連続でファイナンスを契機に次のステージに行くと思うのですよ。その非連続を超えるって、やっぱり大変なので、そこを超えるためには、例えば論理的にはピボットもありではないかと思っていても、その短期間で次のステージに行ってほしい。そこを起点に逆算していくと大体その二つがやっぱり大きいですね。

メンターに選ばせる

西山:今の森下さんのお話を受けて、江幡さん、いかがですか。何か違いとかあります?

江幡:私たちも応募はずっと書類という形でいただいて、その後やっぱりお会いしてという形だけれども、当然全部にお会いすることはできないので、その中で、書類である程度中身は見させてもらってというところですけれども、結局、うちもメンター制度というのを社員から出してやっているのですね。

うちは、ある意味メンターに選ばせているんです。私とかもそうですし、うちの役員とかでもある意味、拒否権ないんですね。あくまでもメンターが、自分がこの企業と一緒に3カ月間ともに過ごしてやりたいというところを最大限尊重して。ただ、メンターが本当にどういう形でその人たちに関わっていくのかということだけは、どちらかと言ったらメンターに問う感じなのですよね。

やりたいのはいいのだけれども、本当にこれ全部できるのかと。そこをちゃんと、どういう形で3カ月間関わるか、というイメージが持てるか持てないか。単におもしろいから関わりたいとかというだけじゃなくて、メンターがちゃんと先方が期待するゴールに対して、自分がそこにどういう形で関わっていけるかをイメージできるかというところをちゃんと見てあげている、そんな感じでやっていますね。

西山:なるほど。メンターのメンタリング、みたいなこともされているのですね。

江幡:そこをやらないと、来ていただいた方にやっぱり失礼になってしまうので、そこだけはちゃんとやっています。そこだけはじゃない、そこもです(笑)。

熱狂できる人は、何をやっても成功する

西山:ありがとうございます。伊藤さん、いかがですか。プログラムを採択する際の決め手となるポイント。

伊藤:僕らがよく言っているのは、まずアイデアで僕が評価できるのだったら、僕はとっくの昔に大金持ちになっているはずですね(笑)。僕がそれをやっているわ、という話になるので、アイデアはほとんど見ていません。人だという話なのですけれども、この間もその話になったときに紹介した例があるんです。

この間はバカなやつを選ぼうと思って。バカっていうのも、要するに熱狂しているやつなんですけれども。そのアイデアっていうのが、スタジアムとかに行ったときに近隣に駐車場がない、困ると言って、いや、なんかか軒先には結構駐車場あるじゃない、みたいな。例えば何とか医院日曜日休みだからそこの駐車場使えるよねみたいな。

なるほど、おもしろそうじゃんって。そしたら、僕は駐車スペースのAirbnb(使用していない不動産を他人に貸し出すサービス)みたいなのをやるんです、とか言って、おもしろそうだけど大変そうだね、どうやるの? って言ったら、見てください! と言って持ってきたのが、自分で横浜スタジアムとか、味スタの周りの駐車場、ここありますというのを2千何百カ所写真撮ってきて地図に入れたようなやつで(笑)。

それで、すごいなお前、これって、プログラミングでサービスつくれるのって聞いたら、いや僕できないんです、と。できないとだめだろうといって、1回とりあえずできるやつ連れてきたら採ってやるよと言って追い返したら、できるやつ見つけましたと。どうやって探したの? いや、中学の友達にできるやつ見つけたんです、と。

こういうやつはなんか多分何やらせても結局やるので、最初のアイデアだめでもまた次応援してやればいいじゃんというふうに思っていて。

シリコンバレーを目指すため、ムダな延命はやらない

伊藤:僕らよく、シリコンバレーを目指せ、こういうシステムをつくろうと言っていて、シリコンバレーの数字をよく出すんですけれども。シリコンバレーって毎年1万7000社生まれて、1万2000社つぶれていくので、5000社続く会社が生れているのですね。実際にはもっとあるのですけれども。

それぐらい数がないと、そもそも1000に3つぐらいの確率でうまくいく、と言われているやつが増えない。だからシリコンバレーは、少なく見積もっても5000社あって、その1000に3つだったら毎年10から20ぐらいイケてるやつが現れて、10年あれば100社、200社になっている。そうすればグーグルもフェイスブックも出てくる。そういう環境になるためには、起業の件数を増やすといい、と。

僕らが起業家の数を増やす、というのも頑張ってやるのですけれども、どっちかというとムダに延命させるみたいなことをやめて、ピボットもなしで、もう1回やれって。1回終わって、また新しくリフレッシュして、リセットするぐらいの方が本当はいいなと思っていて、今後はそういうふうにしていきたいなと思います。

西山:やっぱりどちらかというと、事業面というよりもパーソナリティの部分で、パーソナリティで言うとバカで行動力がある人、というような感じですね。

伊藤:そうですね。でもそれだけだと多分……(笑)。

アイディアよりも実現力

伊藤:そういうので、もうちょっとなんとかしたいなというのをすっと拾っていくのが、実は榊原さんで(笑)。

西山:そうなんですね。

伊藤:うちは昔2段階選抜みたいになっていて、その中で僕らのスクールに呼んでも結局投資はしない、という人たちを、何人か榊原さんが見事キャッチしてくださって。そのあとちょっといい感じになってきてるのを見て、「そこ出しちゃったなー」て僕らが思っちゃうみたいな人たちがいたりします。

西山:なるほど。その辺、話を含めて、玉木さん、お願いします。

玉木:そうですね。サムライで重視しているところって本当に二つしかなくて。一つはもちろん事業アイデアなんですが、といってもアイデアがいいかどうかという話よりかは、それに対してどれだけ熱量を持ってやっているかということですね。

なので、こういうアイデアだったらうち通しますみたいな、そのリストは100個ぐらい出しているんですよ。それは公表していることなので、そこに引っかかれば全然いいなというのと、あとなんでその事業をやるのか。そこのところですね、本当に。

あともう1点は、やっぱり皆さんおっしゃっているように人の部分。どんなにいいアイデアでどんなに賢そうな人でも、やっぱりその人が本当にやる気があるかどうか、というのがすごい大きなポイントで、そのために実は選考の過程で、全くビジネスの話をしないという面を入れているのですよ、1回だけ。

その人ってどういう人なのかなって、もちろんサムライのカルチャーに合う人なのかなみたいなのを計る機会を実は設けています。その2点は大きくて、さっき伊藤さんから、スクールに通っていてまだ投資されていないところをサムライはとっていった、というのですけれども(笑)。

伊藤:とっていったのではなくて、ちゃんと彼らをチャレンジさせているという意味で言うとありがたいわけですよね。

VCみんなで育てていくという考え方

玉木:冒頭にも伊藤さんからお話あったのですけれども、やっぱり我々も、起業家や応募者の数を増やすというのが必要なことだなと思っています。そのためにはもちろん誰でもいいというわけではないのですけれども、投資できるという何かポイントがあるのであればもちろんしたいなとは思っていますし、うちに来ていただく方って、結構ほかのシードアクセラレータさんにことごとく断られて最終的にうちに来た、それで決まったという人が実は結構多くて。

西山:結構多いんですね。

玉木:はい。

西山:それって、一つの考え方として、ほかで断られた方をサムライさんは投資したよというふうに言うと、サムライさんのレベルが低いのではないか、みたいなことを言われる方も中にはいらっしゃるのではないかなと思うのですけれども。

伊藤:全然そんなことないですよ。その事例でいくと、うちが1回目で迷って迷って、最後どっちにしようかなと思ってとらなかったのがルームクリップなのですけれども、その後、フェムトベンチャー、磯崎さんも投資されて、今ものすごい勢いで伸びています。

西山:そうなんですか。森下さんは?

森下:似たようなことがあって、どことは言いませんけれども、サムライさんと迷って、サムライさんには蹴られたのだけれども、うちがとったとかというのも実はありますし。

西山:裏では、色々ごちゃごちゃなんですね。

森下:もっと言うと、我々の採択コンセンサスの中でゴーサイン出したところなどがKDDIさんのプログラムの卒業生だとか、MOVIDAさんの卒業生だとかっていうのも許容範囲で、ある意味、そういうしきい値はできるだけ引かないようにしている。今のフェーズで我々がそれをアクセラレートできるのかというのをできるだけ考えています。

伊藤:そもそも競合関係でもないですし、みんなでやればいいというだけの話ですから。

玉木:そうですね、やっぱりどうしてもどこから投資を受けているという色がつきがちなのですけれども、我々全然そんなこと考えていなくて、その起業家にとって一番いいことはなんだろうということを常に考えてやっているので、どこで断られたからどうとか、どこが採用したからどうというところはないのかなと思っています。

伊藤:今、うちで一番調子よく進んでいるtrippieceはサムライさんと一緒にやっていますね。

玉木:そうですね。

気をつけているのは、「邪魔しない」こと

西山:次のテーマが、今お話されたことと結構重複してくるのですけれども、支援側として一番重視をされているポイントってなんでしょう。伊藤さんからお願いできますか。

伊藤:邪魔しない。基本的に投資家がああだこうだ言うの、邪魔なことが多いので。

西山:結構、放置プレーな感じですか。

伊藤:まあ、言葉悪く言うと放置プレー。

西山:すみません、言葉が悪くて。

伊藤:まとめて面倒みようとなるので、どうしても1社1社に個別に細かく、この事業、KPIがどうでこうでみたいなところをどこまで手厚くやれているかというと、基本的にそんなことはないかなという気はするのですけれども。とはいえ、僕らの中でもそういう細かいところを見ているメンバーもいますし、僕個人で言うとできるだけ邪魔しないということですね。

ただ、次の投資家を見つけてもらうまでのところが僕らの役割だと思っているので、その次の投資家と話すときに、「お前、こういうふうに話しなさい」とか(言ったりします)。要するに投資家は何遍も起業家と話をして、交渉上手なわけですよ。

一方で、起業家は大体初めてなわけですよね。そこは僕は中をいろいろ教えてあげるというか、こういうふうなことを言わないとだめだよとか、投資家はこういうことを言ってくるんだぞみたいなことを言って、あえて厳しく言ったりすることはよくあります。なかなか通じないですけれども。

西山:次のファイナンスのためのお手伝いというか、次のステージに上がるためのお手伝いのところを結構。

伊藤:そうですね。僕らが細かく全部教えちゃったらわからないと思うんですよ。気づかないと思うんです。だから、あえて厳しいこと言ったりとか、次の投資家に言われるだろう同じことを言ってあげて気づかせるというようなのも大事なのかなと思っていて。そうは思っていても、向こうにはなかなか伝わらないですね。

小さく終わらないよう、目線を上げさせる

西山:どうですか、江幡さん、すごい深いうなずきをいただきましたが。

江幡:その辺すごくわかりますし、やっぱり企業さんのステージによって全然かかわり方も違ってきますし、フォーカスするポイントが何かというところでも変わってきてしまうんです。

やっぱり課題設定というか、ゴールに向かうところの、本当に解決したいことなのかとか、それを解決すると何が変わるのかみたいなところは、僕自身は毎週話を聞いている中でいろいろ突っ込みたくなっちゃうんですよね。

それが、本質的にその企業さんとか社長さんにとっての答えであるのかどうかというところ、最後までそれがぶれていないかというところなんかは、すごく意識してメンタリングをさせてもらっているかなと思いますね。

そこが行ったり来たりしているうちは、逆にそこを少しずつ突いていってあげて、自分の中で答えをどんどん見つけていってもらえるような、そういうやり方はすごくいいかなと思っていますけれども。

西山:玉木さんは。

玉木:そうですね。我々も週1でメンタリングするんですけれども、はしの上げ下げまで全部言うかといったら、もちろんそうじゃなくて、時にはプライベートな質問を受けたりもします。やっぱりどこでアドバイスするかという、そのタイミングがすごく難しくて、全部教えてもらったら成長しないんですよ。

この人教えてくれるんだ、みたいな感じになってしまうので、そこのさじ加減、力の入れ具合というのはすごい難しいのかなと思っています。

あと最近よく言われるのですけれども、起業家自体は増えましたと。なんだけれども、つくろうとしているサービス自体がすごいこじんまりしていて、ちょっと便利なアプリをつくりたいとか言われることって結構あると思うのですよ、小粒になっているのではないかって。

最初、入口は全然それでいいと思うのですよね。起業ってすごいリスクあることなので、その一歩を踏み出すというのは勇気のいることだと思うので。

でもそういう、ちょっと小さくまとまりかねないようなビジネスの目線をどう上げるかというのもアクセラレータの一つの仕事なのかなと思っていまして。それで世界に出ていけとか、もっと大きいところを狙えみたいな話はするのですけれども、さらにスケールするにはどうしたらいいのかとか、もっと世の中にインパクトを与えるにはどうしたらいいのかとか、そういうところを引っ張り上げるというのも、支援していく中での重要なポイントなのかなと考えています。

次のステージで十分な投資額を得られるかが勝負

西山:森下さん、お願いします。

森下:そうですね、個人的な思いみたいなところもちょっとあるんですけれども、僕は、さっきの伊藤さんの「できるだけ邪魔しない」ということを自問しながらも、ある程度介在していって、そこのコミュニケーションをできるだけ大事にしたいです。

例えば、ディスカッションの末に我々がこうした方がいいんじゃないの、と言ったとしても、やっぱりスタートアップで意志を持っている人というのは、「いや、ここは譲るけれどもこれは変えない」とか、うちの2期のだんきちという会社なんかもその1つで、何回か初期にガンガンやって、「いやいや、やっぱり動画のこれで行くんです」みたいなのがあるわけですね。

だから、やっぱり同じ真剣のぶつかり合いというのは僕は必要かなと。それはなぜかというと、シードアクセラレーションというのは、僕は一つの壮大な仮説だと思うのですよ。要は、このリーンエコノミクスの時代に生産手段とマーケティング手段がみんなローコストで手に入るようになって、もっと市場売りが自由でどんどん多産になりましょうと。

なんだけれども、本当にこれが続くかどうかといったらわからないわけですよね。だから、やっぱり、僕がアイデアだなと思ったのは、アクセラレーションという概念でアクセラレートするということはすごく重要で、特にそれはベンチャーさんの視点からしたらファイナンスだと思うのですよね。

例えば、最初500万の投資を受けたら、次は10倍、5000万円以上の投資を受けるべきだし、その次はできれば10倍、5億円ぐらいの投資にいければ理想形なのです。それは何かと言ったら、ギアチェンジなんです。つまり次のステージでやることのために金が要って、そこに到達しているかどうかがすごい重要になるわけですよ。

往々にして、そこに到達していないと、今度は資金繰りとの兼ね合いで、生き延びるために今度これ(本業と関係ない受託業務など)をやらなきゃいけなくなったり、そういうサイクルに入っちゃうんですよね。シード期から次に行くというのは、それが一番起きやすい。非常に少額でやっていますから。

だから、僕がこだわりたいなと思うのは、我々が尻たたき役になって、4カ月間、このゲームをくぐり抜けてがっといったら、次のステージに行けるぞというプログラムにしたいなという思いがあるのですよ。

だから、切磋琢磨する中で、結果論、やっぱりできるだけ物を言わないのがいいんだな、と感じればそっちに行くし、まだまだ手さぐりしながらやっているというような感じですね。ただ、こだわりたいのはそこということですね。ぜひ次のステージに行ってほしいなと思います。

大型のファイナンスが増えているのは良いこと?

西山:次のテーマですが、次のステージに行くときにファイナンスをするためのお手伝いをすることもあると思うのですが、現在の資金調達環境をどのようにとらえていますか? 最近、10億越えの大型ファイナンスと言われているようなところも、多くとは言わないですけれどもちょこちょこ増えてきていますよね。どのようにこの資金調達環境をとらえられているか、伊藤さんからお願いできますか。

伊藤:いいんじゃないですか。僕はよく言っていますけれども、みんな騒ぎ過ぎですよ。2ケタ億集めたなんて、シリコンバレーなんか、シリーズBで2ケタぐらいざらに集まるし、フェイスブック、未上場時にいくら集めたか知っていますか? 2300億です。グリー買えますから。

上場時に幾ら調達したか、1.8兆円。1.8兆円でどれぐらいの規模かわかります? 楽天の市場価値ですよ。今18兆円、これトヨタとほぼ同じですね。ということなんですよ。であれば、この質問はなし(笑)。

西山:これ、じゃあ、どうしましょう、なしで行きましょうか。

伊藤:いいですけれども、あまり価値ないですよ、資金調達状況がどうこうというのは。考えてもしようがないし。そもそもやることを決めて、「これに俺金使うからこの仮説検証やらせてくれ」というときに、なんでこれがうまくいくと思っているかをちゃんと事業計画で書けば、お金は集まるはずですよね。

よくあるのが、大体シード期終わって、「そろそろお金なくなるのでちょっと資金調達したいんですよね」「幾ら集めるの?」「1億ぐらい」「何に使うの?」「いやまだ考えていないです、でも1億ぐらい集めたいのです」と。お前バカかという話で、何を支援するか、要はそれをちゃんと考えろということ以外の何ものでもないです。多分、誰に聞いても同じことを言うと思います。

玉木:一つ、まさに伊藤さんおっしゃっていたとおりなんですけれども、1億円以上のファイナンスがふえてきたとか、今ベンチャーの界隈では資金調達バブルだとかって、すごい言われているのですけれども、それってはっきり言ってどうでもいいことで。

起業家にとってはお金集まれば集まったほどいいじゃないですか、そういう環境にあった方が。なので、そういう話すること自体が実は無意味だと我々は考えているのですよ、というところをちょっと皆さんにはわかっていただきたいなと思って。

伊藤:目線が低くなっちゃいますよね。だって、gumiの國光なんか、集めきって使い切って大きくなったやつが勝ちだって言っていますから。

森下:そういう意味では、そういうところ(gumi)にお金も出してきたので、確かにおっしゃるとおりで、間違いなく、資金がこういう大変なミドルステージぐらいのところに集まるようになっているというのは、いいことだと思うのですよね。

ただ、エコシステム全体をしっかり回していこうと思うと、やっぱりエグジットが出てこないと意味がないので、どうも心配される方は、そのエグジットの魔物みたいなものを過去に幾つか経験してきていて、それがシュリンクするのを見ているから言うのだと思うのですけれども、これ正解はないんですよ。

シリコンバレーは大きなエンジンで回っているからバリエーション上がってももっと大きなエグジットが出るから全然行けるので。これむしろスタートアップの責任というよりは、それを支える事業会社やあるいはそのエグジットを実現する人たちが一緒になってがんがんやっていかなきゃいけないことで、そういう意識では見ますけれども、スタートアップにとっては非常にいいことなんじゃないですか。

シリコンバレーをつぶしにいこう

西山:最後に、起業家にとってどんな存在でありたいか。今日も起業を目指す方、あるいは起業家の方がいらっしゃると思うので、そういう方に向けてのメッセージということで、伊藤さんから、順番にお願いします。

伊藤:僕、今自分もすごい事業やっているなという感じがあって。僕は泰蔵(MOVIDA JAPANの孫泰蔵氏)と一緒に、シリコンバレーをつぶしに行こう、2030年までに同じようなエコシステムをこっちにつくろうぜ、東アジアにと言って始めたんです。そのためにどうすればいいかと色々考えた結果、数を増やさないとだめだよねということで、そこの仕組みとしてシードアクセラレータというのに注目してやり始めた、というのが実態なんですね。

これって、別にここだけやっていればいいという話でもないですし、さっき言ったみたいに資金調達の環境で言うと、集まるようにはなっていますけれども、10億単位のお金がぼんぼん集まるかといったら集まらないわけですよね。だから、みんなIPOしてお金集めたりするわけですけれども、それをプラベートでお金が集まるようになればいいわけじゃないですか。

そういうことをどんどんできるようにもっともっとしていきたいなと思っているし、海外の投資家が日本に投資するような環境もつくりたいなと思っています。シリコンバレーの一強みたいになっているのを、みんなでなんとかひっくり返してやろうぜ、っていうのを一緒にやりたいなと。僕はそのために皆さんの応援をするし、皆さん一緒にやっていい社会をつくりましょう、そういうことです。

日本のベンチャーを盛り上げたい

西山:江幡さん、お願いします。

江幡:そうですね、私自身もグリーへの投資や業務提携とか、ずっとやってきたところもあるんですが、投資って1回やったからその後ずっと投資の話が付きまとってくる、ってわけでもないんです。

やっぱり事業提携をやり出すと、付きっ切りになってくるんですよね。それって、ある意味、グリーさんが一番わかっているからグリーさんの好きに任せるというところは当然あります。僕よりわかっていると。ただ、やっぱりそこにくらいついていく僕らもいて、グリーさんが一番回しやすい、やりたいことができるような環境を一緒につくっていく、その中でうちの会社もすごく勉強できたりするんですよね。

だから、そういう意味では一緒に歩んでいくようなパートナーでありたいということを常に思っていて、これはファンドを使って投資と事業提携フェーズの中でも一緒ですよね。

それからフェイスブックにしろ、グーグルにしろ、海外からたくさんのものが出てきちゃって、グーグルのアンドロイドにしても、もしかしたらテレビのウィンドウ全部彼がとっちゃうのかなとか、カメラの中に全部アンドロイド入っていっちゃうのかなとか思ったりしてます。

それはそれでいい体験が生まれる可能性がある一方、そこって一番技術を持っている日本のエンジニアリングというか、ハード含めて、なんかその世界の中でも日本のベンチャーさんと一緒につくっていけるようなところが、大企業だからできる領域なんかもあるのかなと思ったりしながら活動したりもしていますので、そんな方向でも皆さんと関わっていけたら嬉しいなと思います。

投資家を踏み台にしてほしい

西山:玉木さん、お願いします。

玉木:そうですね、どのような存在でありたいかという話なんですけれども、起業家の方から見て、我々なんか踏み台みたいなものだなと思っていて、そういうふうに使っていただければいいのかなと思っています。

投資家というと、どうしても後方から支援するようなイメージを持たれていると思いますが、サムライの場合はどっちかというと前線に突っ込んでいって、そこで何とか道を切り開いて、その上を起業家の皆さんに乗り越えてもらうみたいなスタイルで支援していますので。起業家のために新しい分野を開拓するというところですね。

今だと、本当にさっき話を振っていただいたイスラエルの進出だとか、あとは地方回り、首都圏以外の起業家もふやしたいというので、トーマツさんと何度もイベントさせていただいています。アクセラレータを使い倒している人ほど、やっぱりすごい伸びるんですよね。投資だけ受けて、ネームバリューとか使って、それで終わりという人はどうしても伸びないので、もう使い切るまで使い倒してほしいなというのが正直な感想ですね。

そのためには我々もしっかりしないといけないのですけれども、起業家の方々に、投資家ってお金出すだけじゃなくて、本当の価値あるところは支援の部分であって、投資家が自分たちに何をしてくれるのかというところをもっと重視してもらいたいなと思います。

投資以上の関係性を

西山:森下さん、お願いします。

森下:今、玉木さんから使い倒すという言葉が出たんですけれども、その言葉我々も大好きで、よく副社長の秋元なんかも使っているんですけれども、これやっていて本当に実感なんですよね。言葉を変えると「巻き込み力」みたいなもんなんですかね。

礼儀は正しくても、がんがんディマンディングで要求してくるし、それがベンチャーとして非常に正しくて情熱があるので、みんな支援したくなるんですよ。それってすごい重要で、やっぱり人間って真剣なものに対してすごい応援したくなる。

その応援したくなることに僕らは忠実でありたいなと思っているので、僕だけでなくて、チューターも含めて、かかわっている人みんな含めて思うのは、やっぱりベンチャーって大変なので、次のステージに行くために我々もがりがり頑張りたいと思っている。同じ釜の飯を食っているというとちょっと言葉あれなんですけれども、その感覚を一緒に共有したいなと。

お互いにプログラム終わった後も、森下さんちょっと相談に乗ってよとか、僕の方からも、いや実はこういうふうに悩んでいてねとか、単に投資だけに留まらない関係が広がっていくというのはすごく大切にしたいことだし、全員でやることがベンチャー起業家全体にとってすごくいい財産になるので、そういう関係になっていきたいなと思っています。

そういう思いでやっていますので、3月26日、DemoDayで、ぜひ来てくださいというのと、3期のプログラム、MOVIDAさんよりお金少なかったので、もうちょっと増やそうかなみたいな(笑)。そういう思いで、金だけじゃないと言いながらそう言うんですけれども、ぜひよろしくお願いします。

西山:NTTドコモ・ベンチャーズ、森下さんでした。これにて第1部のパネルディスカッションを終了とさせていただきます。