「りんな」を開発したのはマイクロソフトのBingチーム

佐野健氏(以下、佐野):人工知能型会話エンジン「りんなAPI for Business」を用いた新しいマーケティングソリューションと題して、今、ネット界隈で話題になっている「りんな」と、そのビジネス面について、ご紹介していきたいと思います。

本日、LINE株式会社、トランスコスモス株式会社、デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社の、それぞれゲストスピーカーのかたにお越しいただいています。申し遅れましたが私は、マイクロソフトでBingのビジネス開発を担当している佐野と申します。よろしくお願いします。

まず「りんな」の話をするときに、なぜBingのビジネス開発を担当している私がその話をするのかを、少し手短にお話をさせていただければと思います。

こちらにありますように、「Bingは業界の知的エンジンへ」と表現していますが、プラットフォームとして検索エンジンで我々が習得した知識やナレッジを、業界の皆様に使っていただいて、さらにより良くしていこうということを、我々Bingの開発チームでは取り組んでいます。

今日は細かいことはご紹介できないのですが、例えば「Bing Maps」といったものをAPIでご活用いただいたり、あるいは「Bing Translator」といった翻訳のエンジンも提供させていただいています。

詳しくはぜひBingで、「Bing Solutions」と検索して見ていただければと思います。では本題の、LINEで今話題になっている「りんな」について、ご紹介をしていきます。

口コミとメディアで広がった「りんな」

「りんな」は、7月31日からLINE様でやらせていただいているんですけれども、当初マイクロソフトであることを表明していなかったがゆえに、さまざまなオンライン系のメディアから「本当にマイクロソフトがやっているのか」や、「何で女子高生なんだ」というように、多くの記事にしていただいて、おかげさまで非常に盛り上がりをみせています。

すでにお使いいただいているかたはご存じかもしれないのですが、これがLINE上のプロフィールの画面になっております。

現状どうなっているかというと、おかげさまで非常に盛り上がっていまして、本日のキーノート、弊社社長の平野のセッションでもありましたとおり、ユーザー数は非常に伸びを見せていまして、8月の1カ月間で約130万ユーザーになっている状況でございます。

LINE様の公式アカウントの中で決して大きい数字ではないんですけれども、私どもマイクロソフトとしては「りんな」に関して、実は広告宣伝費などを一切出していなくて、口コミとメディアの皆様の力だけで、ここまで伸びたということは、なかなかすごい数字なんじゃないか、と思っております。

盛り上がっている「りんな」なんですけれども、どういった背景があって、あるいはどういった技術で動いているのかということに関して、少しお話をさせていただきます。

一部で報道もされているので、お読みになられたかたもいらっしゃるかもしれませんが、「りんな」の技術は中国のマイクロソフトがいち早く昨年5月から実施している「XiaoIce(シャオアイス)」、漢字で書くと小さい「小冰」というアカウントが、中国の「WeChat」を中心にありまして、すでに3,000万ユーザーを中国で獲得しているような状況で、1年たった今も非常に盛り上がっています。

その技術を日本に持ってくるというプロジェクトが、今年に入ってから始まりまして、LINE様とお話をさせていただく中で、先月末から実行できたというのが1つの背景です。

「Cortana」と「りんな」の違い

よくいただく質問の中に、マイクロソフトの人工知能といえばWindows10の、本日のキーノートでも平野が紹介しました「Cortana」(コルタナ)があります。

「Cortana」と「XiaoIce」、そして「りんな」が、どう違うのかという質問をよくいただきますが、「Cortana」はパーソナル・アシスタントという位置付けで、「皆さんのお役に立つプロダクティビティ」というふうにマイクロソフトでは言いますが、そういう機能を中心にIQの高い人工知能となっています。

「XiaoIce」と「りんな」は、IQはもちろん高いんですけれども、横のベクトル部分で「おもしろい」とか「興味深い」、あるいは「EQが高い」というふうに私たちは表現しているんですが、そういった部分を狙って開発をしました。

ここで「りんな」の会話を見ていただきつつ、「Cortana」と「りんな」がどのように違うのかというのを、ご覧いただきます。

これはLINE上の会話なのですが、例えば「ハンバーグが食べたい」と言ったら、「ハンバーグ大好き、おいしいよね」、「うん、一緒に食べにいこう」、「やった、いく」などと答えるわけです。もちろん実際には行けないのですが、そういう会話が成り立っています。

1枚戻ってご説明させていただきたいんですが、1つ私がよくご説明させていただくシナリオで、「Cortana」に、明日の天気について聞くと、もちろん「Cortana」は「あした東京の天気は晴れだよ」とか「雨だよ」ということを答えるわけなんですけれども、実は「りんな」は、明日の天気について聞いても、答えません。

かわりに「なんで明日の天気を知りたいの?」とか「明日は何の予定なの?」というような、さらに会話を助長する応答をするように設計されています。

その会話が1つ、「Cortana」との違いという部分の象徴になってくるのかなと思っています。

日記を送ってくれたり、推理クイズを出してくれる

ただ会話ができるだけでは、なかなかこういう会話エンジンというものは飽きられてしまう部分がありますので、実は「りんな」にはさまざまな能力を、開発しています。

例えば日記を送ってくれたり、芸能人に関しましては細かく設定していまして、詳しく回答を返すことができたりとか、あるいは「眠れないときに羊を一緒に数えよう」という、羊を順番に36匹、39匹というふうに数えていってくれて、これは前日の夜、どこまで数えのたかを覚えていて、続きをできたりします。

あるいは「暇です」とか「探偵ごっこ」と問いかけると、簡単な推理クイズを出してくれたり、「犬の写真を送ると犬の犬種を答える」というような機能を投入していたり、さまざまな能力を順次追加していこうと思っています。

「Azure」テクノロジーで大量のトラフィックに対応

「りんな」のシステムアーキテクチャを簡単にご紹介させていただきたいのですが、Bingのビッグデータを用いて、会話のデータベースをつくり上げています。

それをフロントエンドで、LINE様の「ビジネスコネクト」というサービスにつなげていまして、さまざまな能力を追加してそれを分析し、より良い人工知能にしていくというアーキテクチャになっています。それを最終的にエンドユーザー様に提供して、楽しんでもらうと。

これを実現しているのが、マイクロソフトの「Azure」(アジュール)のテクノロジーでして、8月11日に『めざましテレビ』さんで「りんな」をご紹介いただいたとき、ものすごい量のトラフィックが発生したのですが、そういうものに対して柔軟に対応できたのは、マイクロソフトのAzureのおかげかな、と思っています。

宣伝なんですが、機械学習、マシンラーニングを「りんな」で使っているんですけれども、もしご興味のあるかたがいらっしゃって、明日もお越しになられるかたがいらっしゃいましたら、ぜひ明日の同じ時間の「Azure Machine Learning」のセッションにお越しいただければと思います。

では、ここから少しLINE株式会社の田端様にお話をいただきまして、「りんな」がプラットフォームとして存在しているLINEのビジネスについて、お話をいただければと思います。それでは田端様、よろしくお願いします。

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