戦場での駆けつけ警護の危険性

山本太郎氏(以下、山本):イラクだってそうですよ。もし本法案がイラクの時代に通っていたとしたなら、おそらくアメリカの戦争犯罪に巻き込まれていた可能性はあるかもしれない。

イラクの人々を助けていたNGOの方々は(アメリカを)戦争常習犯と言っています。2004年の4月、米軍はイラクのファルージャという都市を包囲したと。猛攻撃を行った。翌月、国連の健康の管理に関する特別報告官が、ファルージャの攻撃で死亡したのは90パーセントが一般市民だったって。

修羅場なんですよね。駆けつけ警護なんて修羅場じゃないですか。じゃあ、「誰が味方ですか?」「誰が敵ですか?」って、見分けられますか? やっちゃいけないことをやろうとしてるんですよ。

その結果、アメリカが民間人を大量に殺戮してしまったっていう過去がイラクにあるじゃないですか!

だからイラク戦争を、それに加担したものとして検証する必要があるんですよね。その当時、ファルージャに攻撃を行ったときに、国連は一刻もはやく人権侵害行為に対して独立した調査を行うべきであるという声明も出しています。救急車まで攻撃されたって。これ、国際法違反ですよね? 救急車ですもん。

学校も占拠して、学校の上に土嚢も積み上げて、住民を撃つためのスポットにしたんですって。無茶苦茶ですよね? でもしょうがない。どうしてか?

先ほど言った、ROE(Rules of Engagement)に関して、いろんな答弁があったと思います。でもその中でハッキリした答弁は出ましたか? アメリカ側に寄るのか、日本の側に寄るのか、新しいものをつくるのか。戦場でイニシアチブを握っている人たちのROEに引きづられるんじゃないですか?

駆けつけ警護で修羅場になってて、「とにかく撃ちまくれ」ってなってるときに、「じゃあ気をつけながら撃ちます」っていう状況になりますかね? 話を戻します。

自衛隊員はモノじゃない

2004年の11月から米軍の大規模攻撃を受けていたファルージャ、この作戦に参加していた兵士が『冬の兵士 良心の告発』というDVDでも語っています。

攻略戦の訓練を受けていた全員が、軍法の最終権限をもつ部隊の法務官に召集されたと。そして、こう言われたと。

「武器を持つ人間を見たら殺せ」「双眼鏡を持つ人も殺せ」「携帯電話を持つ人は殺せ」「何も持たず、敵対行為がなかったとしても、走っている人、逃げる人は何か画策しているとみなし殺せ」「白旗をかかげ、命令に従ったとしても罠とみなし殺せ」と指示されたそうです。

ファルージャで私たちはその交戦規定に従った。米兵たちはブルドーザーと戦車を使って、家屋を一つひとつ轢きつぶしていったって。人間は撃ち尽くした、犬や猫や鳥など動くものは何でも撃った。動物もいなくなったから死体も撃ったって。

これ一部のおかしな米兵がやったことじゃないと。米軍が組織的にやったことなんだと。軍法の最高権限をもつ、部隊の法務官が召集してそれを伝えてるんですから。

そのような状態に巻き込まれたとしたら、自衛隊が国際法違反、戦争犯罪に巻き込まれる可能性、高いに決まってるじゃないですか。自衛隊員を戦争犯罪者にしないでくださいよ! あまりに歯止めのない、穴だらけの法案をどうして無理やり通そうとするんですか?

自衛隊はモノじゃない、自衛隊員は人間ですよ! この国を専守防衛で守るということを、服務の宣誓をもって、正義感をもって災害でも専守防衛でも守ってくれるという心意気をもった若い人たち、その方々に対して、この国の憲法を無視したような内容を、今これだけ急いで通そうというのは、あまりにもありえない話じゃないですか? 若い自衛官で納得する人いますか?

議員:国会議員が戦場に送りつけられて、黙って行く人いるのか?

山本:ホントです。戦場に、お前ら行けよ!! 国会議員が行けよ!! 決めた総理が行けばいいじゃないか!! 防衛大臣行けよ!! 外務大臣行けよ!!

鴻池委員長の不信任動議について

若い人々はよくそういうことを言います。この戦争法案に関する話をしている中で「おかしいだろ」「どうしてこういう穴だらけの法律をつくるんだ」って。

もしも有事の際には、「真っ先に最前線に行きます」と政治家が言ってくれるんならまだ許せるかもしれない。そのように若い方々はおっしゃいます。

とにかく自衛隊員に対して、どのようなカバーがされているのか考えられてますか? もしものことがあった場合、その家族はいくら受け取ることができるんでしょうか? 

服務の宣誓とは違ったことをさせられる。これ仕事の内容大きく変わってますよね? あまりにもおかしいじゃないですか。これ服務の宣誓取り直してからにしろって話じゃないですか? 

何よりも憲法の改正を先にやった上でこれを出されたなら、まだ前向きに話し合いをできる可能性はある。憲法改正の良い悪いは置いておいて。段取りが違うことがあまりにも多すぎるじゃないかって。

鴻池委員長、このような形で不信任動議ということになったけれども、どうして不信任動議になったのかというと、「段取りが違うじゃないですか!!」っていうことからですよね?

それまでの委員会の運営は、私のようなものにもしっかりと時間をあたえてくださり、お話を聞いてくださった。そのことに対して感謝もしている。でも、明らかに地方公聴会からは様子が変わってきた。段取りが変わってきた。そのように思うんです。

なによりも隊員のみなさんの安全が担保されていない限りは、海外でその活動範囲を拡大させるわけにはいかない。当然です。

一般雇用契約でいうと、完全にこれアウトですよ。全然変わっているじゃないですか? 不利益変更だって。労働条件、労働内容、勤務地、大きく変わることに対してどうして「しょうがない」「入ってくれ」という形で行ってもらうことにしてしまうんですか。あまりにもありえない。

自衛隊員のメンタル面のサポート

この自衛隊員の方に対するフォローをもっと広げていかなきゃいけない。普段からされていますかって。相談体制の弱さというものがあげられると思うんです。これ非常に重要なことだと思うんです。

鴻池委員長もこの法案の審議に参加されていますけれども、自衛隊員の方がどのような状況に置かれていくってことが非常に重要であるとお考えになっているお一人だと思うんです。

例えば、どのような形で自分のメンタルというものを相談すればいいのかって。現在の自衛隊員の方々、電話相談はあるらしいです。でも「あなたのサポートダイヤル」っていうのがあるけれども、自分の勤める組織に相談できるかなって。難しいですよね。

考えてみたらイラク特措法、補給支援法にもとづいて海外に派遣された自衛隊員の内、在籍中に自殺された自衛隊員の合計は56人なんですよ。これ、退職者は含まれないんですよ。

一方アメリカはどうなのか。2010年の会計年度予算でメンタルヘルス対策関連経費、45億6000万ドルですって。

これは米国の退役軍人省の予算らしいんですけど、そのような戦場に大量に人を送ったりだとか、非日常的な場所に人々を送り込むようになって、メンタルが壊れてしまうようなことになれば、このようなメンタルヘルス対策関連経費も必要になるし、ただでさえ必要な社会保障費がどんどん削られていってしまうってことを理解されているのか。それに対する整備をする気はあるのかという話だと思うんです。

企業の利権にコントロールされる政治

先ほどの話に戻ります。鴻池委員長のお話にいく少し前に、先ほどこの国の政治はいったいどの方向を向いているのかと。みなさんも昨日外から(抗議の声が)聞こえてたでしょ? めったなことじゃ聞こえないですよ。あれだけの声をあげる人が、この国会周辺を取り囲んでいる。

暇だから? 違います。今、この法案を通されたら、そこに担保される未来なんてないってことを感じるんですよ。こんな勝手な法案を通すために、憲法の解釈を変えてしまう、アメリカに渡って約束をしてしまう。しかも、自衛隊のトップまで行ってそのような話をしてしまう。誰の国なんですか?

この安倍政権の2年間の動きを見ていれば、あまりにもハッキリしすぎている。この国は武器・輸出に関して歯止めがありましたよね? その歯止めをなくしてしまったのは、安倍政権でした。

それによってみなさんの税金、横流しされるような気がしません? 予算としてつければいいんだから、当然です。5兆911億円という防衛予算が組まれると。でもその一方で、ローンを組んで、武器・兵器を買えるという法律、5年ローンを10年ローンにまで伸ばしているんですよ。4兆8000億円超えているんですよね。

表向きの5兆円だけじゃわからない。でもしっかりと計上先を変えて、これ国民騙してませんか? 防衛費はふえないという発言をされていますが、すでにふえてるし、これからふえていかざるをえないという状況、海外からもこのような情報が入ってきてるじゃないですか。

Stars and Stripes『星条旗新聞』。これはアメリカの準機関紙です。2015年5月13日の文、何て書いてあったか?

「アメリカの防衛予算はすでに、日本の自衛策を当てにしている。2016年の最新のアメリカの防衛予算は、日本政府が後押しする新法案、同盟国防衛のための新法案を可決するという前提で仮定をしている」

見込まれているらしいですよ? もうこれ(安保法案)が通るからって。だから4万人アメリカは兵員を削減したって。防衛予算も日本のこの法案が通ることを見込んで、自分たちは減らしていっている方向だって。

『Foreign Policy』みなさんご存知ですよね? 米国の権威ある外交政策研究機関紙。7月16日にこういう見出しがあった。

「日本の軍事面での役割が拡大することは、ペンタゴンとアメリカの防衛産業にとってよいニュースとなった」

どういういうことか? 金もかからない上に、金も儲けられるって。日本政府は多くの最新の装備を買うことができる。それはアメリカの防衛産業にとってよいことであると書かれているんですよ。

テキサスに本社を置くロッキード・マーティン社製のF35、バージニア北部に本社を置くBAEシステムズ社製の海兵隊用の水陸両用車両、日本政府はまたアメリカに本社を置くノースロップ・グラマン社製のグローバルホークの購入計画をもっている。2隻のイージスレーダーを備えた駆逐艦と、ミサイル防衛システムの開発を行っている。これらはロッキード・マーティン社製だと書かれている。

いいんですか? こんなことで。第3次アーミテージ・ナイレポートにも書かれてある通り、今回の安保法制は戦争法制も原発再稼働もTPPも特定秘密保護法も防衛装備移転3原則もサイバーセキュリティ基本法もODA大綱も全部アメリカのリクエストでありニーズだって。米軍のニーズだから変えなきゃいけないって。ニーズってハッキリおっしゃってるんですよ。

これはアメリカのことだけじゃない。アメリカも日本と同じように、企業によってコントロールされている政治が幅を利かせているのかもしれない。ご存知ですよね、みなさん。先日経団連が発表いたしました、武器輸出の推進を提言「国家戦略として推進するべきだ」。これは前から言われていることです。ずっと政治に対して提言、命令を行ってきたのが経団連。

「強い国」「美しい国」の理想と現実

これだけじゃない、派遣法。これに対しての提言も行ってた。2013年7月。外国人労働者にいたっては2004年4月14日。これが広がっていったらどうなる? この国により安い労働力がたくさん入ってきたとしたら。企業が喜ぶでしょ。どうして政治がそのようなことを開いていくんですか。

ホワイトカラーエグゼンプション……残業代0って話ですよね? 労働の基本の法律が破壊される。これは2005年の経団連からの提言。消費税は2025年までに、最終的には19パーセントにまでしろって言っているんです。おかしくないですか? その一方で、自分たちの法人税を下げろって。法人税を下げた分、この国の収入がなくなるから庶民から取れ。そういう話になっているんです。今の政治はどうしてそれを片っぱしから叶えるんですか?

武器輸出もそうです。あまりにもありえませんよね。すべてが関係しています。鴻池先生がそのように関係があるという話ではありません。本法案に関して、いったい何が目的なのかということを私はハッキリさせたい。

「強い国」「美しい国」というスローガンをあげられた与党のみなさん、私も本当に「強い国」「美しい国」にしたい。その気持ちは同じです。鴻池委員長も同じ思いでしょう。その気持ちに嘘はない、でも実際を見てほしい。

この国の6人に1人は貧困。20〜64歳までの単身女性、一人暮らしの女性は3人に1人が貧困。貧困ってどんな状態? 月々10万円以下で暮らしているような人たち。大人が貧困だったら子供も貧困、当たり前ですよ。ここ(軍事防衛費)に予算つけてる場合じゃないんですよ。

どんどん軍事をふくらませていけば、この国の主な産業が軍事になってしまう。だとしたらアメリカのように、軍事を中心にこの国の経済を回さなきゃいけないようになる。

建国して239年、その93パーセントを戦争でつないできている。その使いっ走りとして自衛隊は出せない。自衛隊員はこの国の宝だ。災害があったときにたくさんの人を救ってくれ、専守防衛でも命を懸けると言ってくれている……。

鴻池委員長には自民党からの圧力がかかっている

佐藤正久氏(以下、佐藤):山本議員、山本議員。

山本:はい。

佐藤:討論は常識の範囲内となっております。かなり時間が経過しておりますので、討論の取りまとめをよろしくお願いします。

山本:すみません。まだまだ言いたいことがたくさんあったんです。まとめたほうがいいってことですね? 自分の中でスケジュールがあったので、なかなか急にまとめろと言われてもですね……もう少しお時間をいただけますかね? わかりました。じゃあ、最後に言わせてください。

私たちはもちろん今回のお話は、鴻池委員長に対する(不信任)動議、それに賛成するという話で私は話を始めております。けどやはり、自由な発言を認めてくださっていた鴻池委員長が、今このような不穏な動きをされたっていうのは(自民党の)圧力がかかっているんじゃないかなって思うんですよ。

汚い仕事をさせないでほしいんです。委員長として正々堂々と、公平公正な審議をされていた鴻池委員長に対して、私たちは日本の安全保障に対する、対案となる政策も主張していかなければならないと思います。

日本の領域に対する侵害に対しては、従来通り個別的自衛権、もちろん安保の内容や地位協定の改定の必要はあると思いますが、それで対処できます。

従来通り、尖閣、小笠原、東シナ海の中国漁船等については、海上保安庁の能力を一段と高め、自衛隊はそれをサポートすべきだと。南シナ海に対しては軍事力ではなく、外交力で対処すべきだと。安倍政権が一番弱い部分ですよね。

ASEAN諸国と連携し、APECの枠組みの中で、海上輸送路の安全を確保すべきだと。中国に国際法に違反するような行為があったならば、APECやG7とも協力して経済制裁することが一番の道じゃないかと。もう武力で緊張状態をつくる時代じゃないんですよ! それをやって傷つくのはこの国に生きる人々、そして相手国の人々。

中国を見ればわかるじゃないですか? アジアの輸出どれくらいですか? 56パーセント? 輸入は51パーセント? 経済連携によって一歩踏み外すことを止めることはできますよね? 外交力です。そろそろまとめに入りたいと思います。

このような私の自由な発言に対しましても、鴻池委員長はたくさんのチャンスもくださった。でもやはり、まだ会期が残っているにもかかわらずこの法案を途中で切り上げて、数の力で押し切ろうという姿は、たとえ鴻池委員長であってもこの(不信任)動議に賛成する以外ない。断腸の思いで不信任動議に対する私の賛成討論を終わらせていただきます。

ありがとうございました。