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「大企業のしがらみを取り払っていきたい」 リクルートから新規事業が生まれるわけ

「大企業のしがらみを取り払っていきたい」 リクルートから新規事業が生まれるわけ

リクルートではいつでも好きなときに上司に自分のアイデアをぶつけることができる環境にあるという。いま勢いのある「Airレジ」などもそうやって生まれたプロダクトだそうだ。大企業には決裁ルートが煩雑だとか、できる人材に限って既存事業に縛られるなど、さまざまなしがらみがあると思われがちだが、リクルートの場合、そういったものはトップ層が積極的に取り払ってきているという。自身もインテリアのポータルサイト「TABROOM」を立ち上げた経験を持つ、リクルートライフスタイル執行役員・塩見直輔さんにそうした社内風土について聞いた。

(提供:株式会社リクルートライフスタイル)

シリーズ
リクルートライフスタイル塩見直輔氏インタビュー
2015年8月18日のログ
スピーカー
株式会社リクルートライフスタイル 執行役員 塩見直輔 氏

インテリアのカタログを地道に入力してる「TABROOM」

——塩見さんが立ち上げた「TABROOM」はどんなサイトですか? 塩見 インテリアのポータルサイトといった位置づけを目指しています。「ポータル」って言葉がちょっと古臭いんであれなんですけども、例えば不動産だとSUUMO、ホームズとか。旅行だとじゃらん、楽天トラベルとかありますよね。 あらゆるカテゴリーの代表的なサイトっていうのが、日本のインターネットが普及してから10年、15年で、すでにできていますけど、インテリアって、そういうサイトが少なくとも日本にはないというところからの発想と、個人的にインテリアがもともと大好きなので「こういうサイトが欲しい!」というごく私的な思いで作りました。 インテリアに関する情報を消費者が求めようとした時に、それが全部あるサイトにしたいなと思っています。家具ももちろん見つけられますし、インテリアショップも探せるし、インテリアのニュースも見れるっていう感じです。 今まであまりネット化が進んでいなかった業界でして、家具でいうと世の中に存在する品番の中でインターネットに情報が載っていたのって、たぶん5%もないくらい。 いわゆる紙のカタログとか、オーダーを受けて作るとか。そういったところにしか情報がなかったので。まずは紙のカタログをいただいてきて、全部、手打ちでデジタル化して、ウェブ化するっていうところから始めました。 かなり泥臭い作業で、いまだに新製品が登場する度にカタログから入力してます。 ——こういった新規事業を社内でやってる人は他にもいらっしゃると思うんですけど、みなさんもともと起業マインドを持っていたんですか。 塩見 もちろん「起業したい」という人はいます。あとは「新サービスを作りたい」っていう人もいて、それは必ずしも起業とイコールではない。両方いると思います。

新規事業のアイデアは365日24時間、提案可能な状態に

——社内では、そういった新規事業を吸い上げる仕組みはすでにあるんですか? 塩見 オフィシャルには「New RING」っていう制度、これはリクルートにずっと昔からあったもので、昔は年1回のコンテストだったんですけど、今は月1回のコンテストになっています。 あとは各事業会社でそれぞれ制度があって、僕がいるリクルートライフスタイルはまた別のコンテストがある。あとは、別にコンテストを待たずとも365日24時間、好きな時に上司に持っていくと、筋が良ければそれで始められます。 コンテストを待っていれば賞金がもらえて。TABROOMも、実際に事業化までいってるので本当だったら100万円か200万円かもらえるんですけども。僕が辞めようと思ったタイミングで上司に出したのでそれはもらえてないんですけど。 ライフスタイルのコンテストでは審査員とかやっていますが、毎回、何百件って応募がやってきますよ。その中から事業化されたものも、もちろんあります。 ——例えば、どんなサービス、サイトですか。 塩見 コンテストから上がってきたものは「PETSALON BOARD」(ペットサロンボード)というペットサロンの予約システム。あとは「つりマジ!」とかも、そうですね。 釣りが大好きな男の子がいて、釣り船のネット予約をやりたいと。あそこをネット化したい。確かに便利だねっていう話になりました。紆余曲折あって、まずは、釣りをやったことがない、これからデビューする人に無料でやってもらいましょうということで「つりマジ!」が始まっています。 あとは「Airレジ」も生まれたところ立ち会っているんですけど。それはコンテストじゃなくて、さっきの365日バージョンの方ですね。 社長の淺野のところに、iPadにAirレジのプロトタイプみたいのを入れて見せに来た人がいて。これすごくないですか? 面白いからやってみようよみたいな。そういうところからAirレジが始まっていたりします。 ——突然プロトタイプを持ってきて、それで行こうみたいになるんですか? 塩見 そうですね。夜な夜な通常の業務が終わった後に、会議室で業務接点がなさそうな2、3人が集まって会議してるなって思ったら、新規サービスの企画会議をやっていたりとか。そういうことはいろいろなところで見られます。

「儲かる」だけでなく個人の想いも大事

——ペットサロンの予約とか、釣り船の予約とか。集客の予約が多いっていうのはそれがリクルートらしさなんでしょうか? 塩見 うーん。僕のTABROOMもそうですし、ペットも釣りもそうですけど、個人に寄っているんです。僕も、もともとインテリアが好きだから、そういうメディアがやりたかった。 釣り船の子も釣りが大好きだからだろうし。ペットの人も親御さんがペットサロンを経営されてるのかな。そこがあまりにも業務が大変だから、改善してあげたいという気持ちから始まってるらしいので、リクルートらしさというより個人次第ですね。 たぶんリクルートの中にいて、リクルートの持っているアセットを知っているから、近いサービスの発想が出やすいのかもしれないんですけど、基本的には個人の想いとか、いちユーザーとして発想することが多いんじゃないかなと思いますけどね。 あと、儲かるからやりましょうっていうのが、あまりない。いや、さっきは「儲かるのは通ります」って言ったんですけど。儲かるだけだと通りにくいんじゃないかな、と。これは僕の感覚値なんですけど、ありまして。 イケてるビジネスモデルなら誰がやっても儲かるんですけど、こいつがやるから他よりうまくいくんだろうなっていうのを見てる気がしています。僕も最近審査員とかやっている時には、その人がどれだけ好きかとかも大事にしています。 僕でいえば、TABROOMを始める前の段階でも、学生時代からずっとインテリアショップを回ったり家具の産地に出向いたりしていたので、メーカーとか、お店の人に知り合いが100〜200人いたんですね。 新規サービスを始めたから参加してほしいと言ったときに、通常は営業とか交渉とかっていう行為になるんですけど、Facebookで言えば「いいよ」って言ってくれる人が100人とかの単位でいることが、まずスタートアップする時には大きな価値だと思うんです。 そういった意味でそこの業界が好きとか、そこに詳しいっていうのは、それだけで優位性になりえるなと思えるんで。小さい頃からお父さんがやってるペットサロンを見ていて、そこで起きてる不便を全部知ってるとか。それはサービス対象者のインサイトを知り尽くしてることになる。 釣りが大好きで毎週末、釣りに行っていて、そこで起きてる実態を全部知ってるとか。そういうのが、刺さりやすいのかなと思うんですね。好きだったら当然いろいろな繋がりも持ってるわけですから。

大企業のしがらみを(自分のために)取っ払っていきたい

IMG_0579 ——塩見さんも副業をやっていたっていうのはインテリア関係なんですか? 塩見 複数ありましたが、はい、1つはそうです。だから、だいたいどれくらい集客できるかとか、ニーズがあるかとか、そういうことは元々やっていたので把握できていました。そういった実績から企画書もできているので説得力も高かったんじゃないかな、と。 ——社員さんが自分の好きな新規事業を提案するのってサイバーエージェントさんとかが、とても有名じゃないですか。そういうのはリクルートさんも活発なんですね。 塩見 そうですね。 大企業って、お金もあるし、人もいるしブランドの力もある。人、モノ、金を持ってるので、新規事業をやった時に普通に考えると成功しやすいはずじゃないですか。 でもそこに社内の決裁ルートが面倒くさいとか。イケてる社員は既存事業に縛られ過ぎて、なかなか新規事業にアサインされないとか。いわゆる大企業側のルールやしがらみで、新規事業が本来であれば成功しやすいのに潰されてると思うんですよ。 そういう意味でいうと、僕は経営にも近い立場に今はいるので、大企業の中で新規事業が生まれやすいようにルールを変えたりとか、しがらみを取っ払ったりとかはしていきたいなと思っています。それは自分がやりやすくなるため、というのもあるんですけど。 そもそも日本全体で新規事業がばんばん生まれた方が良いですし、好きなこと、情熱がある人がやりたいことをやれたら良いと思うので、わざわざ起業してリスクを取らなくても、やれるような環境だけを作ってあげれば、いいんじゃないかなと思っています。 そういう意味でも新規事業を楽しくてやっている一方で、会社側として組織とかルールを作るっていうのも、同じように楽しいなと思ってますね。 僕がTABROOMをやっていて感じる不便とか、やりにくさは、別の方の顔で取っ払ってしまえばいいやって思っていて、自分のためでもある(笑) あんまりやり過ぎると自分のためだけだろと思われるので少しやりづらいんですけど…。

大きなサイトは小さなサイトにどんどん分け与える

——実際にもうやってきた施策はあるんですか。新しいものが生まれるために社内の制度を変えた事例みたいなものは。 塩見 リクルートのサービスって全部あわせると、ものすごいユーザー数を抱えていますし、いろいろなサービスでノウハウが溜まってるんですけど、大きなサービスはどんどんそれを、これから生まれてくるサイト達に譲ってあげればいいじゃんと思っています。 「じゃらん」とか「ホットペッパー」が、何かしら0.1パーセント減ったとしても誤差の範囲で、でも小さいサイトから見るとものすごい影響だったりするんです。それだったら、もう大人なんだから子どもにどんどん分け与えたらいいんじゃないかって。 これはあくまで例ですけど、旅行系の新規サービスがあったら、「じゃらん」でこんなのできたよって告知してあげたりだとか。 ちょっと前ですけど、ポンパレがあっという間に立ち上がったのも、じゃらんやホットペッパー グルメですでにあったホテルやレストランとの接点を活かせたからだと思うんです。Airレジもしかり。 まだまだこれからですけど、TABROOMで言えば、SUUMOで家を買った時にインテリアを考えるとか、ゼクシィで結婚した時にインテリアを考えるとか、リクナビで就職した時に1人暮らしでインテリアを考えるとか。 いろいろな所で彼らが持っているデータとかユーザーを活用させていただくことも、まだやっていないですけど、できると思っています。自分のサービスだけじゃなくて、いろんな新規サービスが、そういうことができるといいんじゃないかなと思うんです。

もう起業だけしても、あまりかっこよくない

——リクルートって若い人が新卒とかで将来は起業したいとか、ビジネスを学びたいから入るみたいな方も多いと思うんですけど、中途でも同じように考える人って多いんでしょうか。 塩見 多いんじゃないですかね。中途面接もやっていますし、新卒面接もやっていますけど、あんまりそこに感覚の違いはないですね。新サービスやりたいから入ってくる。いずれは独立したいっていう人がどちらも一定数いますね。 8年前、僕もなんとなく起業しようっていうゴールが当時あった上で、それをやりやすそうな会社として選んで、今も結構な頻度でいずれ起業したいって人が入ってくる。それはあんまり変わってないのかなと思いますけどね。 少し変わってきたかなと思うのは、今は起業っていうのが簡単になった。8年前と比べればだいぶハードルが下がっているし、起業だけしても、あんまりかっこ良くないっていうか。サービスを提供し、世の中に価値を提供できて初めてかっこいいみたいな。そういうふうに変わってきてるんだと思うんです。 起業家もピンキリだよねって。あんまり「起業したい」っていうよりも、「こんなサービスを作りたいんです」とか、「立ち上げたいんです」っていう言葉遣いに変わってきたかなと思います。 ——そういう人にとってはリクルートは最適な環境なんですかね。 塩見 悪くはないと思います。もっとよくしたいなと思ってるんですけど。独立された方とか、会社の中でサービスを大きくした人とか、いろいろな人を見ていますけどタイプはバラバラなので、共通項は見つけづらいなとは思うんですけど。「本気の人に機会を」ということ自体はすごくシンプル。 あの、ここまで新規事業をやる立場での2足のわらじの話をしたんですけど、執行役員の立場としてもお得なことがあります。1つは、新規事業者として他のベンチャーの社長とか、スタートアップの人たちと同じ悩みを共有できるし、同じ会話ができるんですね。 あとは、ソーシャルメディアのファンの数ってTABROOMは結構多いんですけど、リクルートのビッグサイトからすると、ソーシャルからの売上ってそんなに大きくないので、どこまで投資するべきかとか、どこまで人員をかけるべきかというのは、悩ましい。 新規サイトは、ソーシャルからの流入って結構、影響がありますし、頑張って研究してみようって運用してたんですね。そうするとソーシャル運用の、ただそこから上がる売上だけでは見えなかった効果とか意味合いとかが、肌感覚でわかってくる。 それを、「じゃらん」とか「ホットペッパー グルメ」の方にフィードバックしてみたりとか。コンテンツマーケティングみたいな潮流が来るなと思ったら、誰への断りもなく開始できるTABROOMでやってみて勘所をつかんで、それをビックサイトの方に持っていってみるとか。

現場の感覚を失わないように毎日各論

マネジメントがメインになってくると現場の感覚を失っていったりすると思うんですけど、新規事業を自らやっていると、ばりばり毎日各論をやっているので、その辺と対等に会話できる。若い現場の人に舐められないというか(笑) マーケティングツールの仕様変更を「俺の方が先に知ってるぜ」って、2、3年目の子と一緒に盛り上がれるっていうのは、組織長としての組織運営上もすごく助かるっていうのはありますね(笑) ——現場の仕事もかなりされてるんですね。 塩見 はい、ばりばりやっています。Search Consoleは毎日触りますし、TABROOMのSNSの中の人は、全部私です(笑)。

  
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