「配偶者控除」の見直しについて

堀潤氏(以下、堀):経沢さん、テーマの発表お願いします。

経沢香保子氏(以下、経沢):はい。

(テーマ「配偶者控除見直し焦点に」について)

脊山麻理子(以下、脊山):政府税制調査会は2日、所得税改革の議論を再開。配偶者控除や扶養控除を見直し共働き世帯や子育て世代の支援を柱とする案を、この秋にもまとめる方針です。

:さぁ、いよいよここにも着手ということですかね。

経沢:憲法も税制も時代とともに変わっていくものと、そうでないものとがありますよね。

:ちょっと僕のほうで、補足で説明しますと。

現在の配偶者控除はどういう仕組みかというと、パートなどで働く妻など、配偶者の年収が103万円以下の場合、夫など世帯主の課税所得から38万円の控除を受けられます。ですから、パートなどして働く場合も、節税につながるように103万円以下に抑えると。そういう形で働こうと。いわゆる「103万円の壁」と言われています。

ただ、切実な話ですよね。働いて、税金でたくさん持っていかれるんだったら、その中でおさめていこうというのは、気持ちはすごくよくわかります。ただ、配偶者の年収を問わずに、一定額をこれから世帯主から差し引く案が有力視されてまして、共働きの若い夫婦の税負担を軽くする一方で、高所得の専業主婦世帯を増税する方向だということです。  

標準世帯のモデルを変えるべき

:さぁ、経沢さんはどういうスタンスでこれをご覧になっているんでしょか。

経沢:私は、すごくポジティブに捉えています。

理由は、これから、もっと子供が生まれる社会とか、女性も働きやすい環境を整えるべきと考えた場合には、今の「103万円の壁」は心理的な壁に形骸化しているのではないかと思うからです。

例えば、「103万円を超えて働かないようにしなくちゃ」とか。「103万円を超えると損した気がする」という心理ですよね。

その心理的な壁で、今まで週2回3回のパートだった人が、もう1日パートに出てみようかなっていうような形になっていくといいですよね。

:確かに、今、標準世帯は、専業主婦、そして、サラリーマンの旦那さん、子供2人みたいなのをベースに設計してますけど、実際には、非正規雇用で働いているご夫婦がどのようにしてきちんと生活を営めるのかっていうところに照準を合わせたほうがいいんじゃないか。批評家の宇野常寛さんなどもよく言っていますよね。

財源を子育て支援に回してほしい

経沢:あと、全体がそうというわけではないんですけれども、専業主婦を持つご家庭のほうが裕福であるみたいな、論調っていうのもあって。

:逆に。

経沢:そうなんですね。共働き世帯を支援しましょうっていうのは、流れとしては正しいかなと思っています。

そして、今「103万円の壁」をいろいろ考えながら働いている人は、今後どうすればいいのか? っていうところに触れたいと思います。

まず、この法案は、2017年の1月に通る予定です。ですので、まだ時間があるので、それまでにキャリアアップの計画を立てるのはいいと思います。

例えば、その間に資格を取ってみるだとか。いまのパート内でなにか実績を積んでみるなど、女性側にも心の準備を持って備えておくと有利に運べるのではないかと思います。

そして、同時に、政府への要望ですが、それによって、税収を踏襲したものを、子育て支援に回していただきたいと思います。

それは、女性がより働きたいなと思った時、育児だとか介護だとかそういった女性が今まで背負っていたものが社会とシェアできるようになるということとセットであることは重要です。

その財源は、ちゃんと子育て支援に持っていってほしいです。

働く女性にとって待機児童の問題は深刻

:「子育て支援の財源を確保しましょう」としたものを、どこに投下するのが一番それにつながるんですか。厚生労働省に渡して、じゃあどう変わるのか?

一方で、今度は経産省なの? とか。今の縦割り省庁の仕組みの中でですよ、「子育て庁」「若者庁」みたいなね、そういったところがきちんとあってなら別ですけど。どうなんでしょうね?

経沢:待機児童の問題とか、「保育園に入れる、入れない」っていうのは、働きたいとか働けるっていう部分では、すごく大きいですし。例えば、パートで働いていた人とかも、入りやすくどんどんなっていくっていうことが、「よりもうちょっと働こうかな」っていうところにはつながっていくと思うんですよね。

:「高校無償化とか、給食無償化にすればいい。幼稚園なくして保育園だけにするとか。」とかね。いろいろ案もきています。ありがとうございました。