学校長:スティーブ・ウォズニアックは故スティーブ・ジョブズ氏と1976年にアップル社を立ち上げた共同設立者のひとりです。アップル社は世界を変えました。ウォズニアック氏はAppleI、AppleIIというアップルの最初の製品を開発、コンピュータ業界の確立に大いなる貢献をしました。

1985年にはロナルド・レーガン当時大統領からナショナルメダルオブテクノロジーを受賞。卒業生の皆さん、ご家族、そしてご友人の皆様、彼をここに迎えるのはすごく名誉なコトです。現在皆さんが自宅で、携帯電話で、世界と繋がることができるのは彼のおかげです。彼の英知と大いなる献身で現在のこの世界があるのです。盛大な拍手でお迎えしましょう、スティーブ・ウォズニアック氏です!

ただのフォロワーになるな

ウォズニアック氏:私たちの世代は世界にたくさんの問題を残してしまいました。失敗もたくさんしています。これらの問題解決には若い皆さんの力が必要です。若い皆さんが私たちには見えなかったもの、理解できなかったものを発見し、未来の発展に貢献してくれることを願っています。

このキャンパスを色々見て回りながらアップル社の理念について考えました。見た目が全て、ということです。キャンパス内を運転しながら感嘆しました。学生のときにこのキャンパスに来ていたら―まあもちろん当時のキャンパスは今とは違ったでしょうが―、ここに学びに来ていたことでしょう。

教育において、必ずしも学ぶ内容が重要とは限りません。皆さんはここで「学び方」を学んだのです。学びは生涯続きます。どのようにプロジェクトのゴールを達成するのか、これを学び、そして達成した経験こそが現実社会で生きるスキルです。キャリアを築き上げる中で重要なのは「学び続けること」、そして「学びたい」というモチベーションであり、学校で教えられたことはそれに比べればあまり重要なことではありません。何か新しいものを築くことを恐れずに。教科書通りに、誰かがやった通りにやる必要はありません。皆さんはこれから自分の頭で考え、自分のやり方を築くのです。

そして今この時点で、若い皆さんが抱く理想を忘れてはなりません。皆さんは人生の中で最も健康で、最も活気に溢れたステージにいます。今皆さんが考えていることは素晴らしいのです。大人になるということは、自分を変えることだと思う方もいるかもしれません。ビジネスで成功したら、このままの自分ではいられない、大人になったら今の自分の考え方を変えなくてはいけない……などと思うかもしれません。

でもそれは違います! 若い頃に抱いた野望、描いた理想を忘れないでください! 自分を信じてください。成功やステータスの変化に伴って自分を変える、なんてことは絶対にしないでください。過去に誰かが既に成し遂げた同じ方法で何かをやるというのは、あなたがただのフォロワーになるということ。100万人に1人があなたと全く同じことをできるということです。なぜなら、彼らはあなたと全く同じ教育を受けたからです。

世界の誰よりも優れた人物になる鍵とは

これを絶対に忘れないでください。リーダーになってください。そして、新しい方法で既に解決された問題を解決できるようになってください。新しいものを見たとき、私たちはよく「私ならもっとこうするのに!」などと言います。それはイノベーションです。

でも時に、私たちは「私なら、世界がもっと良くなるように全く違うことをする」と言います。これが真のイノベーションです。古い型のカラーテレビは作動するのに1000ドルもかかりました。そこで私は「この1ドルのデジタルチップを使ったらどうだろうか?」と考えました。答えは教科書にもどこにも載っていませんでしたが、試してみることで大きなビジネスに発展しました。

今より良くなるように色々試してみることは、ものすごく重要です。私は昔、常に自分と戦い、新しいコンピューターのデザインを何度も何度も繰り返して、更なる改良の余地を模索していました。もっと少ないパーツでもっと簡単につくれないだろうか……などといつも考えていたものです。私にはこの作業がとても向いていました。

ただ私は教科書には頼りませんでした、自分の頭ですべて考えたのです。自分の頭で考えること。これが世界の誰よりも優れた人になる鍵です。物事は常に変化します。このデジタル時代には、物事はものすごいスピードで変化してきます。皆さんもこの目まぐるしい変革の波に乗ってください。