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人の心を動かす記事に必要なのは「メリハリ」 TECH.ASCII.jp編集長がストーリー作りの基本のキを解説

人の心を動かす記事に必要なのは「メリハリ」 TECH.ASCII.jp編集長がストーリー作りの基本のキを解説

広報やPR担当者が、社内の情報を記事にすることで読者の心を動かし、ファンを増やしていくには、どのような工夫をしていけばいいのでしょうか? PRコンサルタントやライター、ブロガーなどの“伝えるプロ”が集まる招待制のオンラインコミュニティ「PR Table」主催のイベントに「TECH.ASCII.jp」編集長の大谷イビサ氏が登壇し、心を動かす物語の作り方を解説しました。このパートでは、「そもそもストーリーとは何か?」に始まり、具体例を挙げながら、文章で重要な「メリハリ」の作り方を紹介。取材・執筆前に必要な基本的な道具や心構えも教えます。

シリーズ
PR Table > 広報・PR向け ささるストーリーの作り方
2015年7月18日のログ
スピーカー
ASCII.jp 編集長 大谷イビサ 氏

広報・PRの人に贈る、刺さるストーリーの作り方

大谷イビサ氏(以下、大谷) 自分はライターの立場なのであまりわからなかったのですが、前回の下北沢のセミナーの後、実際にストーリーを作ることに対して、社内的に壁があるような話を結構聞きました。 そこで、もうちょっと具体的な話をした方がいいのかなと思って、「この企画をワークショップみたいにやりたいな」と言ったらすぐ大堀さんが反応してくれて、「やるならすぐやりましょう」ということで開催しました。よろしくお願いします。 今回のひとつのキーワードはエンターテインメントです。KADOKAWAは出版社としてはエンターテインメントをメインにしているので、ITの記事であろうが読者を楽しませるのがすごく重要だと思っていて、1つの難しい技術とか製品の話も、とにかくわかりやすく、楽しく書いていこうという感じで、日々製品や技術の魅力を追っております。

ストーリーとは何か?

ここからが本題です。「そもそもストーリーってなんでしょう?」というところからお話が必要かなと思っています。簡単な定義付けですけれど、登場人物があり、事実があり、テーマ付があり、構成が成り立つ、テキストや写真や動画、こういったものがあります。 客観的な事実を連ねたレポートとは異なる「物語」はいわゆるプレスリリースとは対極にあります。プレスリリースは事実を淡々と書いていくもので、それに価値があるのでそこを逆に曲げてはいけないのです。そこに製品に対する思い入れとか、技術者の声とかをいろいろ入れたい気持ちはわかりますが、それは必ずしもプレスにとっては必要じゃない。 どちらかというと、どれぐらい速いか、どれぐらいの料金であるとか、市場がこうであるとか、そういった話を淡々と連ねられているほうが面白いプレスリリース、レポートになるという概念です。物語って言うと、もうちょっと方向性が違うものだと考えていただければと思います。 物語ってなんだろうという話だと、起承転結があるのがデカいと思うんです。結局、物語は人の心を動かすのが目的なので、英語だとMovedみたいな言い方をしますが、起承転結があるからこそ人の心は動いて、例えば「この会社は好きだな」とか、「この製品を使ってみたいな」とかに導くのが、物語やストーリーだと思っています。 これは意識しないとできないので、これを意識するにはどうすればいいのかという話を、これからしようと思っています。

退職を「卒業」という視点で描く

ご存知だと思うんですけれど、物語であることはどういう効果を生むのか。やっぱりファンを増やすのに有効であると。ロイヤリティーを向上したり、仲間づくり、あるいは共感を呼ぶという話になるのかなと。 グローバルな人は、割とスペックで物を選ぶんですけど、日本人は割と情緒的な価値で物を選ぶ傾向が強いので、巨人ファンだから好きとか、あるいはAWS(アマゾンウェブサービス)はエンジニアがいっぱい使っていて、かっこいいとか、そういう情緒的な価値を日本人は重要視します。だから物語って、特定のところに刺さると日本人にとっては非常に有効なのだろうな、と思います。 実際ストーリーと言えるかどうかわからないですけど、例として私がやっているウェブメディアの「TECH.ASCII.jp」のこの記事にはFacebookの「いいね!」が2,600ついているので、いい記事かなと自分では思うのですが、AWSでエヴァンジェリストをずっとやっている玉川さんが3月に辞めますという辞める事実と、彼が歩んできた職種を書いて、スタートアップを彼は立ち上げるんですけど、そこに至るまでの経緯を話してもらう記事です。(玉川、AWSやめるってよ!走り続けた5年と卒業後を聞く 登場人物としてはAWSを卒業する玉川さん。彼は元々IBMで働いていて、今でいうアプローチみたいな製品の開発を実はしていたんです。そのプロジェクト自体は頓挫して、技術を売っているだけではだめだと。だからビジネスをしっかり勉強しようといって、いろんな経験を経てIBMからAWSに移って、AWSからスタートアップを立ち上げます。 要するに、もともと目指していた技術者としての夢をスタートアップでまた叶えるんだという感じで、前向きに捉えていこうって話を作ろうと思って、テーマを「卒業」としました。「卒業」ってなると、この写真を見てもらえればわかると思いますが、卒業写真なので筒がありますよね、卒業証書を入れるやつ。あれを東急ハンズで買ってきて渡して、記事を見てもらえればわかるんですけど、卒業式みたいなことをやって、そういうお膳立てをしたっていう感じの話になります。

クラウドソーシングの実態を浮かび上がらせる

もうひとつがこの間の5月にあげた、クラウドワークスというクラウドソーシングの会社がありまして、クラウドワークスに、クラウドソーシングで働いている人たちを集めてもらって座談会をしました。これは素朴な疑問として、クラウドソーシングって基本的には結構価格面で叩かれているだろうという認識があるので、「そもそもクラウドソーシングで食べていけるんですか?」という話をやったら面白いかなと。(人はクラウドソーシングで食べていけるのか?4人の先人に聞く 登場人物としてはデザイナーさんだったり、ウェブデザイナーさんだったり、イラストを描いている人だったり、ロゴを作っている人だったり、登場人物がいっぱいいるパターンです。そういった人たちが話して、働き方だったり、ギャラってどうなのとか、待遇のほうはどうなのか、みたいな話をする。 アウトソーシングという意味では、市場動向であったり、マーケットだったり、どちらかというと上からの話が多いんですけど、これはもうファクトとして「今の実態はどうなんですか?」というのを積み上げていって、物語にしていく方法です。いろいろな人から生の情報を得て、クラウドソーシングの実態を浮かび上がらせるような感じで事実を作りました、という感じです。

海外での武者修行のストーリー

スライド06 スタートアップの人が多いので、スタートアップの記事をちょっと載せました。この方たちはCapy(キャピー)さんというセキュリティ系のメーカーなんですが、日本で起業して最初からアメリカに会社の法人登記があるグローバル企業です(イスラエル経由で世界に向かうセキュリティベンチャーのCapy)。 この2人が起業して、イスラエルでマイクロソフトのアクセラレータープログラムがあって、そこのプログラムを受けて武者修行に行ったんです。それで開発だったり、メンターによる教育だったりを受けてきましたという感じで、次は金融業界でスタートアップのものをどんどん使ってもらうようなストーリーです。 ここは逆に言うと、ストーリー自体は起業の経緯とか、彼らのキャラ自体が非常に立っているので、シンプルに取材しました。テーマは武者修行に行ってきましたよ、という感じで話を構成しています。

TORETAの「毎日ひとし」の素晴らしいところ

ここからが私がいいなと思ったストーリーをいくつかあげたいんですが、この間もちょっと話が出てきました「毎日ひとし」というTORETA(トレタ)さんのブログがあるんですが、これを私は結構見ています。(TORETA(トレタ) ブログ これがいいなと思ったのは、まずタイトルが秀逸です。「毎日ひとし」って言っている段階で、タイトルが立っているわけです。「毎日ひとし」を追わなければいけないんだから、それはすごい覚悟だなと。 この間の下北沢のイベントでも言ったんですけど、ペイドメディアとしてメディアの選定条件って何だと思いますか? とにかく毎日あげることがメディアなんだという話をしたと思うんです。そう考えると、「毎日ひとし」はタイトルからしてそれを全部実行している。だから素晴らしい。 あと、見てもらえればわかるんですけど、始めた時からからめちゃくちゃ成長しているんですよ。文章の書き方とか、ネタ取りの仕方とか、どんどん慣れてきていて、書き手がロールプレイングゲームのキャラクターみたいにどんどんスキルが上がってくるのが見えるんです。 これは私みたいな読者が見ると、レベルが上がっているなって。見ると、ますます親近感が湧く。さっき言ったファン作りに有効なんです。裏を返せば下手でいいんですよ。下手からスタートしていけば、どんどん上るしかないので、そこを見せつけることでも良いのかなと思っています。 ただ惜しいのは、見せ方だけなんです。見せ方については後で話しますけど、画面を見てもらうとわかるんですが、「TORETA blog」って書いてあるロゴの大きさ、ロゴというか緑のスペース、これめちゃくちゃでかいですよね、もったいないです。 Webのメディアとしては、この面積がファーストビューでどれだけ占めているかって、ヤフーさんの話とかでよく出てきますけど、これはやっぱりもったいないですね。どうせここまでやるんだったら、もうちょっと見せ方を考えてもいいんじゃないかなと、これがメディアとしての私の意見です。

家政婦を雇ったスタートアップの話

私が好きなこれは2013年のやつ。ネタっていう話ではないんですけど、スタートアップが家政婦を雇った話で、結構シェアされたので読んでいる人も多いかもしれないです。(会社で家政婦さんを雇って1年がたちます 要は男ばっかり5人ぐらいのスタートアップで、普通に考えて、マンションでみんなでコーディングとかしていると、部屋が汚くなると。トイレは誰が掃除するんだよって話になって、非常に人間関係が険悪になった。だけどこれをちゃんとした家政婦の会社にお願いして、ご飯とかを作ってもらったり、部屋の掃除をしてもらったら、めちゃくちゃ食い物がうまいと。 毎回食い物を食べる度に、にやけるネタを書いてるんです。「うますぎて自然と笑う」とか、すぐわかる表現なんですけど、そういう感じなんです。あと、これの素晴らしいのは、明細まで出しているんです。いくらぐらいで家政婦さんを雇えたのかという話が全部載っていて。 しかも1年経っているから、実績もちゃんと出ているので、満を持してきちんと書いていて、会社自体もIT系の会社でドウゲンザッカーバーグ、会社自体も名前が突っ込みどころ満載なので、いろんな意味でネタ性があるというか、ヒダがあるんです。そこがすごい面白いなと思っています。

文章で大切なのは「メリハリ」

今まで見た中で重要なものはなんでしょう? やっぱり、メリハリなんですね。さっきのプレスリリースと全然違うところ、それは人の心は結局メリハリで動くもの。つまりプラスとマイナスをこちらが主観的に見ていて、認識することがすごく重要だと思うんです。 よく言われる話ですが、プラスとマイナスの組み合わせこそが構成であって、かつ人は失敗談に弱い。「プロジェクトX」を見ていると一番わかりやすいですが、結局失敗するわけですよ、絶対に。失敗してそこから上がるところに対して人間は心が動くわけで、そこをいかに意図的に作っていくかが、物語作りの基本です。 本当はこの話って、「現代国語」で習う話なんです。さっき言ったプラスとマイナスの考え方も、後で話しますけど、私は実際に代々木ゼミナールで浪人をしていた時に現国の先生に習ったんです。それで「テストを解くにはどうしたらいいか?」「現国のテストでいかに点数をとればいいか?」という授業でこの話を習って、今の私のライティング業にものすごく生かされているノウハウなんです。 とはいえ現代人にはこれを習うのはちょっと難しいので、それでこの間、富田さんが言っていた「本を読むってどういうメリットがあるのか」という話になるんですけど、本を読むのはそこから直接学ぶことよりは、プラスマイナスがどういうふうに構成されているのかを学ぶのに、非常に良い教材だと思います。これは後ほどお話しします。まずはプラスとマイナスを意識しようというのが根本中の根本。

ストーリー作りの準備に必要なもの

まず人の話を聞くスキルを養おうと。人の話を聞いて、ストーリーを構成します。たぶん皆さんが社内報とかを作るとか、あるいは何かストーリーを作るときって、だいたいこの方法だと思うんですけど。 人の話を聞いて、ストーリーを作ろうとしたら、取材のスキルを上げていくのは割と重要かなと。 取材という話だと、もう1つあって、スタートアップの方って正直お金があんまりないじゃないですか。だからある程度、自分でやらないといけないと思うんです。そうするとライティングは外に振るにしても、例えば写真は撮らないといけないとか、取材に立ち合わないといけないとかがあったりする。どういう取材をしているかを学ぶのは、悪いことじゃないと思うので、こういうスキルを養おうってところから話そうと思います。 まず道具がいります。まずレコーダー、これは理由があって、私も昔はiPodで録っていたんです。iPodで取材の録音をしていたんですけれど、音が悪いんです。遠くに行っちゃうと話が聞こえなくなるんです。だけど今、オリンパスの5,000円とか4,000円くらいのデジタルレコーダーが出ていて、めちゃくちゃ音がいいんですよ。音がいいとどうなるかっていうと、取材の追体験ができるんですよ。 取材が追体験できるとどうなるかっていうと、人の話を聞いているじゃないですか、その時にこの場所で同じことを感じていたなってことを追体験できるんですよ。「ちょっとないよな」とか、「これすごいな」と思った話とかが、ちゃんとしたレコーダーで聞いて取材をすると、同じ感情で出てくるんです。 不思議なことですけれど、ちゃんとしたレコーダーを買うと、いつでもその取材時に戻れるのは嘘じゃないと思います。これ1個買っておくといいかなと思います。

基本の道具を揃えるのも重要

あとはカメラを買え。さっきの話なんですけれど、結局は記事ってテキストだけじゃないんですよ。総合芸術的なところがあって、いろんな試作の積み上げで実は読まれるんです。女性だったらわかると思うんですけど、カメラマンによく撮ってほしいじゃないですか。きれいな写真のほうが当然いいじゃないですか。 そういったこともあるので、iPhoneでパチっと撮るのも最近は画質がいいので素晴らしいんですけど、それだったら、もうちょっとちゃんとしたカメラを持って取材っぽくしたほうがいいんじゃないかな、というのがひとつですね。 あとは当たり前の話ですけど、ネタのためにメモは持ち歩くということです。この感じいいなとか、このキーワードを使いたいとか、そういうのって地下鉄に乗っているときにふと思い出したり、ご飯を食べているときにふと思い出したりするものなんです。 私の記事は、本当に風呂の中でタイトルを考えたことが何回あるのかわからないぐらいなので、さすがにそこでメモは使わないですけど、そういう感じで普段の機会をなるべく活かしましょう。あとで思い出すだろうと思わないほうがいい。 その時しか来ないんですよ、インスピレーションは。だから常に持ち歩いて書く習慣を作ったほうがいいかなと思います。あとでわかる程度の走り書きでいいので、持っていたほうがいいと思います。

  
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