「安保法制の違憲3点セット」について

堀潤氏(以下、堀):さぁ、倉持麟太郎さん、よろしくお願いします。

倉持麟太郎氏(以下、倉持):テーマはこちらです。

「安保法制は"違憲3点セット"」

(テーマ「安保法制は"違憲3点セット"」について)

脊山麻理子氏(以下、脊山):安全保障関連法案が参議院で審議入りしてから、初の日曜日となった2日(8月2日)、法案に反対する高校生らのグループが渋谷でデモ行進を行いました。一方、銀座では法案に賛成する人たちが行進を行い、法案成立の必要性を訴えました。

:さぁ、安保ですけども。

全国各地で抗議行動がありますね。安保関連法案に対する草の根の抗議は参院で審議が始まった後もいろいろ広がりを見せてまして、学生。今日、高校生の話ありましたね。あと、NGO、弁護士、学者。

僕も、今月は東京弁護士会の主催でシンポジウムがあるので、小林節さんとかと一緒に出席するんですけれども。様々な立場の市民が廃案に持ち込もうと声を強めているということですね。

安保法制に関する昭和47年政府見解について

倉持:違憲3点セットの1点目からいきたいんですが。これはわりと、世の中的にも出ていて。朝、これ書いてるだけで時間終わっちゃったんですが。

まずは、集団的自衛権の違憲性ですね。今回、政府は、限定的な集団的自衛権を行使できると。フルスペックと限定的なのを分けてますけど。国際法上はそんな区別はないですが。

今回、日本国憲法9条のもとで許される集団的自衛権っていうのは、限定的な集団的自衛権の行使だと。

:武力の行使の「新3要件」。

倉持:そうですね。

「憲法9条のもとで許される自衛の措置とは一体何なんだ?」というところなんですけれども。今まで、47年見解って、よくマスコミでも出てくると思います。これが、政府見解として通用していたもので。

:昭和47年に内閣法制局が示したものを、政府が踏襲している。「基本的に国際法上、集団的自衛権は認められているけど、現行の憲法下では、自衛権を逸脱するものなので、集団的自衛権は認められません」っていう。

倉持:そうなんです。個別的自衛権っていうのは、自分が攻撃されたから、その火の粉を振り払う限度で反撃をしますよと。

集団的自衛権というのは、他国が攻撃された場合で、我が国は攻撃されていないけれども、一緒に反撃しますという他国防衛の概念なんですが。

47年見解は、もちろん、「我が国に対する外国の武力攻撃」があった時に自衛の措置が取れるという文脈で書いたものなんです。

内閣法制局が持ち出した安保法案における「青バラ赤バラ理論」

倉持:昨年の7月1日に内閣が閣議決定で出した新3要件っていうのは、「我が国と密接に関係する他国への武力攻撃でも、我が国は自衛の措置が取れる」と。これの根拠としているのは、47年見解なんです。

これは、本当は、「我が国に対するもの」っていう解釈だったんですけれども。

:「言ってないし、そんなこと!」っていうことを言ってます、という。

倉持:書いてないんですよ。「我が国に対する外国の武力攻撃」って書いてなくて、「外国の武力攻撃」としか書いてないんで、「ここに読めました」と。

今の内閣は、「みつけました」と言っているんですね。「書いてないから、実は含まれているのを見つけました」と。

内閣法制局長官は「青バラ赤バラ理論」と言っていて、「みんなずっとバラは赤いもんだと思っていたでしょ。だけど、青いバラありますよね。それ、見つけたんです」と言ってるんですが。

これ、明らかに、この昭和47年の前の昭和29年にできている自衛隊法で、武力攻撃というのは、「我が国に対する武力攻撃」と定義しているんですね。

これ、武力攻撃っていう、普通一般名詞を「我が国に対する武力攻撃」とわざわざ定義し直すっていうのは、「我が国に対する武力攻撃を反撃するから9条のもとで許される」と。つまり、ぎりぎりのジャストサイズを定めたんですけれども。

これを、「我が国と密接に関係する他国への攻撃」でも反撃ができるというふうにしてしまったと。

これ、明らかに、47年見解のぎりぎりのガラス細工のような解釈で、9条のもとに認められていたのを、踏み越えているんですが。

政府は、「この基本的には変わっていない」と。強弁し続けています。これ、変わってますね。

:これがひとつ目。

倉持:これがひとつ目。

後方支援は非現実的な詭弁

倉持:ふたつ目が、大事です。

:「後方支援の違憲性」

倉持:集団的自衛権の違憲性は、わりと浸透しているかなと思うんですが。実は、このあとやる「後方支援」と、もうひとつあるんですけど。

「後方支援の違憲性」っていうのは、非常に重要です。

これ、よく言われるんですけど、「前線の戦場と一体化しているか」と。「一体化理論」なんてのを日本はとっていて。これも、国際法上あんまりない概念なんですけれども。

今回典型例として出すのが、「発艦直前の戦闘機への給油・弾薬の提供ができる」っていうふうになってるんですが。これ、一体化してないと言えるか?

例えば、逆にして考えてみると、フィフィさんが堀さんに向けて武力攻撃をしてると。

:フィフィさんやめて〜。

フィフィ氏(以下、フィフィ):(笑)。

:もうすぐ、フィフィさんの攻撃止むから、そのうちに逃げよう……。

倉持:僕が、ずっと給油とか弾薬を提供してるわけですよ。堀さんは、こちらに、自分の個別的自衛権を行使しようとした場合、フィフィさんだけじゃなくて、僕も攻撃しますよね?

:まずは、補給路を絶たなければならない!

倉持:まさに、その通りです。

おそらく堀さんが日本だった場合、攻撃しますよね。一体化してるとみなして。日本がやる時は、これ、一体化してないって言ってるんですよ。この詭弁もとんでもないと。

:後方支援ねぇ……。

フィフィ:今までやってません? イラク戦争とか湾岸戦争の時。

倉持:これは「非戦闘地域でやる」っていうふうに条文に書いてあって、これも実は、戦闘が行われていない現場っていうふうに変わっているだけで、非現実的な規定になってるんですけれども。

つまり、これは一体化しちゃってるよねと。一体化してるということは、武力行使なので、憲法9条一項にも反すると。これ、集団的自衛権ではなくて、直接憲法9条に反すると。

自衛のための武器使用について

倉持:次です。

フィフィ:今までの後方支援は、非戦闘地域っていうふうに定めてるんだ?

倉持:そうなんです。

フィフィ:湾岸戦争の時、やってません? そっちに行ってないんだ。行ってないでやってんだ。後方支援を。

:PKO(国連平和維持活動)ですから。日本が今まで中東地域などに行くのは。アフガンとか。

フィフィ:なるほど。

倉持:これいきます。

:「自衛官による武器使用の違憲性」

倉持:これが3つ目です。

自衛隊法95条の2は改正があって、今回「米国等の武器等防護を自衛官がする」という規定ができたんですね。

今まで、自衛官は、自分が攻撃された時は、自分を守るための自己保存的な権利として自分を守ると。その延長線上として、自分の武器を攻撃されたりした場合に、これは自衛官が自分を守るために反撃できるってことになってんですが。

今回、米軍の武器等もいけるというふうになったんですね。これ、「武器等」の中に、航空機とか艦船が入るんですよ。しかも、主語が自衛官です。自衛官が1人で。我々、弁護士同士で話し合っているのが、日清の昔のCMでマンモスがワーっと原始人が追ってる、あの図ですよ。航空機とかに他国が攻撃しているところに、自衛官がピストル持って行くと。

:それは、無理でしょう……。

倉持:これも非現実的。なんでかっていうと、これ9条変えずにやってるので、自衛隊とは書けないですね。組織的な武力行使になっちゃうから。自衛官自身のリスクも上げてるというところです。

憲法9条を変えずに安保法制を構築するゆがみ

倉持:もうすぐ終わります。

:最後、まとめいきましょう。

倉持:まとめいきましょう。

集団的自衛権の存立危機事態といっている法は、立法事実がないと。本当にやりたいのは、後方支援なんじゃないかと。

あとは、自衛官を様々なリスクにさらしちゃいますよねと。

:そうですよ。

倉持:この原因は、憲法9条を変えずに本法制を構築することのゆがみであろうと。ちゃんと9条を改正してやりましょうというのが、本筋じゃないかなと。

:真っ向からの改憲議論をするべきってことですよね。

倉持:はい。

:そこに、やっぱりきますよねぇ。

フィフィ:法の安定性ってありましたけど、さっき。でも、時代によって変えなきゃいけない時もあるんでしょうね。

:だから、ちゃんと議論しなきゃいけないんですよね。ありがとうございました。