自衛隊員の自殺問題について

志位和夫氏(以下、志位):あとはご質問いただければと思います。

質問者:イタリアのスカイニュースでございます。2つの質問がありますが、そのお答えをいただきますとき、なるべく我々の記事にできるような答え方をしていただければ、大変ありがたく思います。

1つ目でございますが、先ほど戦後自衛隊はどなたの外国人も殺していないというお話があったわけでございます。しかし同時に、自衛隊の方々1,000人ぐらいだと思うのでございますが、自殺をしているわけでございます。130人ぐらいが、海外派遣されて、戻ってきてから自殺すると思うんですけれど、なぜ、こういう自殺率が高いと思いますでしょうか?

2つ目の質問でございますが、政治家として長年活躍されているわけでございますが、世界中のどの政治家であっても、やっぱりいずれトップに立ちたい。日本であれば首相になりたいというふうに思うこともあると思うんでございます。もし来月、来年、首相になられたといたしましたら、最初はどの国を訪問されますでしょうか。

そして2つ目でございますが、今出ております領土問題。尖閣、竹島、あるいは北方領土問題を、どのように合理的に解決されますでしょうか。簡潔にお答え願います。

志位:まず自衛隊の自殺者の問題については、私も国会の質疑で取り上げました。アフガニスタンとイラクに派兵された自衛官のうち、帰国後56人が自ら命を絶っているということが、政府から明らかにされました。

この因果関係は、政府の側からは明らかにされていません。ただNHKで放映した内部文書では、部隊の1割から3割の隊員が心の病を患っているというデータが報道されました。戦地での緊張、あるいは恐怖。それから睡眠障害などの、様々な形での心の病を患っている自衛官が多数いるわけです。非常にこれは深刻な問題だと私は考えております。

アメリカの場合はイラク、アフガン帰還兵の中での自殺が、一大社会問題になっていると承知しております。1日平均22人の帰還米兵が自殺し、年間8,000人もの自殺者がいると伝えられました。

戦場で殺されることへの恐怖と共に、向こうの市民を殺してしまったということからPTSDになり、自ら命を絶つケースも多いというふうに伝えられております。戦争で常に犠牲にされるのは未来ある若者であって、こういう負担と犠牲を、日本の若者に強いることは許されないと私は強く言いたいと思います。

共産党は反米主義ではない

志位:2つ目のご質問です。私たちが政権に就いた場合に、最初の訪問国はどこかというご質問でした。最初かどうかはわかりませんが、アメリカ合衆国には必ず訪問しなければなりません。と言いますのは、私たちは今の日米安保条約に代えて、日米友好条約を締結しようということを綱領で謳っております。

世界で見れば、軍事同盟というのは、もう圧倒的な少数派です。ですから、この軍事同盟はやめて、その代わりに本当の意味での対等平等の日米の友好条約を結びたいというのが私たちの大方針です。

共産党というと「反米主義か」と思っている方も多いと思いますが、私たちは決して反米じゃないんです。アメリカの独立宣言に発する、偉大な民主主義の伝統に深い敬意を持っています。

私たちは太平洋を挟んだ隣国であるアメリカと、本当の対等平等に友好の関係を結びたいと願っております。そうした日米関係の大転換を図ることが、私たちが政権になった場合の、最初の大仕事になるだろうと思っております。

政権をとっても当面は自衛隊は維持する

質問者:日本語で質問いたします。ビデオニュースの神保といいます。よろしくお願いします。

委員長の安倍政権批判というか、安保法制批判はまさに正鵠を射たもので、共産党の追求が国会でも一番鋭かったと私は思います。しかしながら次の選挙で、どこに投票するかというようなことまでもし考えたときに、やはり単に政権批判が鋭いというだけでは不十分で、共産党はこの安全保障、国防に対してどういうふうに考えているのかっていうことを、当然有権者は考えます。

今、日米安保を軍事同盟から友好同盟へというお話ありましたが、そもそも共産党はまだ非武装中立という旗は掲げたままなのでしょうか? 前回こちらに来られたときに、当面天皇制は容認するんだっていうことまでおっしゃった。

しかし安全保障に関しては、非武装中立でいかれるのか。それから同時に、前回の選挙では野党のほうがトータルで得票数が多かったわけです。自民党、公明党よりも。なのに、その共産党が他の野党と一緒にやっていく気があるのかどうか。

それから、このような安全保障政策というのを、場合によっては野党を共闘する上で問題になるかもしれない。共産党が、野党を一緒に、1つ勢力を束ねるような用意は本当にあるのかどうか。その点をお願いします。

志位:まず安全保障の問題ですが、私たちは日米安保条約を廃棄するという展望を持っておりますが、そのときに自衛隊も一緒に解消するという立場ではないんです。それは安保条約の廃棄に賛成の方でも自衛隊は必要だという、これ国民的な合意のレベルが違うと考えております。

ですから私たちは、自衛隊は違憲の軍隊だと考えておりますが、これは一気になくすことはできません。

私たちが政権を担ったとして、その政権が憲法9条を生かした平和外交によってアジアの国にいても、世界の国にいても平和的な友好関係を築き、そして日本を取り巻く国際環境が、平和的な成熟ができて、国民みんなが「自衛隊はもうなくても日本の安全は大丈夫だ」という、圧倒的多数の合意が熟したところで、9条の全面実施の手続きを取ると。

すなわち「自衛隊解消に向かう」というのが私たちのプランなんです。ですから私たちが政権を担ったとしても、自衛隊との共存の関係が一定程度、一定期間続くことになります。そのときに万が一日本に対する武力行為があった場合には、あらゆる手段を用いて抵抗する。そして自衛隊も活用するということを、私たちは党大会の方針で決めております。

違憲の軍隊と共存するというのは、1つの矛盾かもしれません。しかしこの矛盾を作り出したのは自民党政権です。私たちはその矛盾を引き受けて、そして国民合意で、憲法9条の全面実施に向かうという大きなプランを持っています。

「安倍政権の暴発を許さない」この1点で野党間で共闘する

志位:2つ目の野党共闘の問題についてのご質問です。私たちは野党の間で、条件があれば国政レベルでも共闘することをこれまでも追及してきました。例えば昨年の総選挙の際に、沖縄では小選挙区の1区、2区、3区、4区、全てで共闘が成立しました。そして新基地建設反対の1点での共闘で、全部で勝利をしました。

こういう共闘関係は、私たちは条件が生まれたときには大胆に追及します。ただ率直に言いますが、野党の間でも、国政の基本問題で政策性の違いがあまりに大きい問題がたくさんあるんです。ですから、そういう国政の基本問題を横に置いて選挙共闘ということになりますと、これは有権者のみなさんに責任を負えないということにもなります。

ただ私は、現局面での野党共闘については、1点だけ強調させていただきたい。戦争法案を巡って、安倍政権の暴発を許さないと。この1点での野党間の共闘を、最大限追求していきたいというのが私たちの立場です。

昨日は、野党5党の党首会談が開かれました。共産党、民主党、維新の党、社民党、生活の党。5党の党首が揃いまして、会期の大幅延長に反対するという1点での合意が確認されました。

戦争法案を巡っても、野党の立場にはそれぞれ違いもありますが、安倍政権の暴走を許さないという点で最大の協力を私たちは追求したいし、そういう協力を呼び掛けていきたいと思っております。

沖縄では保守と革新を超えた共同関係が生まれている

質問者:フランステレビの者でございます。2つの質問があります。1つは沖縄についてでございます。今日は6月23日。沖縄にとっては特別な日でありますよね?

でも日本本土とか、他の日本のところでは、これは別に休日も特別な日でも何でもないということでございます。まるで2つの別の国だという感じがするんでございますが、今はその沖縄の現状について、ちょっと教えていただけますでしょうか。

2つ目でございますが、今このいろんな議論がされてる中では、右寄りの方たちの声は非常に大きく聞こえるわけでございます。でも、いわゆるリベラルの人たちの声っていうのは、ほとんど聞こえないわけでございます。

これは、その憲法に関しましても、今の憲法解釈にしましても、今その安全保障の体制が変更されようとしていることに関しまして、ほとんどそのリベラルの人たちの声が聞こえないのは、なぜでしょうか。

志位:右寄りっていうのは、右派の。

通訳:右派でございます。はい。すいません。右翼、ライトウィングという言い方をしておりますが。そっちの声は非常に大きく聞こえるんですが。

志位:まず沖縄の現状についてのご質問です。沖縄は、私はもう歴史的に後戻りのできない、偉大な変化が進行中だと思っております。

名護市辺野古に米軍の新基地を建設するという動きに対して、文字通り島国の反対の声が高まりました。昨年、一連の勝利が記録されましたけれども、まず名護市の市長選挙で、新基地建設反対を掲げる市長候補が圧勝しました。

そして11月の県知事選挙で、翁長新知事が誕生しました。12月の総選挙では、先ほど言ったように、全ての小選挙区で、新基地建設反対派が勝利しました。今、基地のない沖縄を目指す勢力の特徴というのは、これまでの保守と革新の垣根を超えた共同の関係が生まれているということなんです。

今、新しく県知事になった翁長さんは、かつて自民党の沖縄県連の幹事長を務められた方です。その翁長さんが、今ではすっかり私たちとも本当に心が通い合う友人となり、そして基地のない沖縄を目指す窓口となっております。この本当の島国の、基地のない沖縄を目指す声、運動は、決してもう後戻りすることは絶対ありません。ですから新基地建設を作ることはできません。不可能です。

「強奪した土地はそのまま沖縄県民に返しなさい」

志位:普天間基地については、代替策を示せと日米政府は言うんですが、翁長さんが言うように普天間基地というのは、沖縄県民がどうぞと差し出したものじゃないんです。

米軍がブルドーザーによって強制的に収容した、その強奪した土地の上に基地を作ったんです。ですから翁長さんは言っています。「強奪した土地はそのまま沖縄県民に返しなさい」と。

私たちは沖縄県民に、日本の国全体がしっかり連帯して、本当に基地のない沖縄のための、大きな、国民的なムーブメントを作ることが大事だというふうに考え、そういう行動を起こしております。

それからリベラル派の声が聞こえないんじゃないかというご質問でした。私は、そうは考えておりません。むしろ、これまで憲法論で私たちと立場を異にしていた、憲法学者の方々からも、今度の安保法案は憲法違反だという声が一致して挙がっております。

また、昨日の国会の特別委員会での参考人質疑で、歴代の内閣法制局長官が発言しました。そのうち宮崎礼壹さんは、今回の安保法案は違憲だときっぱりおっしゃいました。

そして、もう1人の元内閣法制局長官だった阪田雅裕氏は、これも政府の今度の解釈は逸脱しているという、違憲の疑いが強いという発言をされました。

それから自民党の元幹部の方々、元自民党幹事長を務められていた方々、あるいは自民党の首脳を務められていた方々が、揃って今回の集団的自衛権は容認できないという声を挙げられております。

私は大変感慨深いのは、そういう方々の顔ぶれを見ますと、私が国会や、あるいは定理の討論会で、論敵として伴走し合った相手が、今、同じ側で、この法案に反対しているというのは、大変感慨深いものがあります。

安倍政権の言動は立憲主義の否定につながりかねない

質問者:最近でございますが、2人の憲法学者がここでお話をしました。1人は長谷部先生だったんでございますが、とても印象深いことを言っておりました。

今、現政府が憲法の解釈を変更させようとしているわけなんでございますが、その解釈を変更するっていうことが、憲法そのものを価値のないもの、憲法の威厳をなくすような行為だというようなことを言っていたわけなんでございます。

つまり、将来的には別な政権も、やっぱりまた憲法を解釈して、ますますその憲法を無効みたいなものにしてしまうっていうようなことを言っていました。

しかし、この点については、共産党にしましても、他の野党はあまり触れていないと思うんですが、つまり憲法そのものの価値とか有効性っていうのが、どんどん損なわれているということに関しまして、どうお考えでしょうか。

志位:この問題は、私たちも大事な論点として国会で追及している点です。

長谷部教授が述べているような、まさに立憲主義の否定という点で、今回の安倍政権の行動、言動、やっていることは許し難いということは、強く私たちも述べている点です。

今、政府の論理というのは1972年の政府見解というのを元にして、その政府見解の基本的な論理と結論を切り離しまして、基本的論理は変えていないんだと。情勢が変わったから、結論部分を変えるんだというのが、政府の言い分です。

しかし1972年の見解というのは、まさに集団的自衛権を行使できないという結論を導くための、全体の論理として一体の論理を定義したのは、このときの政府の見解でした。これが今になって、基本的論理と結論は別であって、情勢が変わったから結論が変わるんだと。

こういう憲法改革の乱暴極まる変更をやっていれば、これは長谷部教授がおっしゃっているように、憲法に対する信頼性。そして法に対する安定性。これ全部損なうことになりますので、これは立憲主義という国のあり方自体を、根底から否定していることになります。

安倍政権の狙いは安保法案の先にあるのではないか

志位:私はもう1つ注目して聞いたのは、昨日の参考人質疑での、宮崎礼壹元法制局長官の発言です。

宮崎さんは、そもそも1972年の政府見解というのが、どうして作られたのかという、当時の状況も全部説明されました。国会の中で、集団的自衛権はなぜ行使できないかという議論になりました。

その議論の中で、政府になぜ集団的自衛権は行使できないかの統一見解を出してくれということになって出たのが、72年の見解です。

ですから72年の見解を元に、集団的自衛権を行使できるというのは、いかに間違った、いかに途方もないごまかしの議論かということの批判については、私は長谷部教授の発言、あるいは宮崎元法制局長官の発言と全面的に同意見です。

質問者:シンガポール・ビジネスタイムズでございます。

先ほど、世界の反対で米国の軍隊と一緒に自衛隊が、もしかしたら武力攻撃の中で活動するようなことがあるかもしれないっていうお話だったんでございますが、もっと現実的な問題といたしまして、もっと近隣の問題が発生するっていうこともあり得るんではないかと思います。

率直に申し上げますと中国は他のアジアの国、例えば東南アジアの国々、例えばフィリピンといろんな衝突があるわけでございますし、それを守るために米軍も、実際に活動し始めているわけでございますので、例えば中国との衝突において、日本も巻き込まれるという可能性もあるんではないかと思いますけど、それについてどう思いますでしょうか。

そしてもう1つですが、根本的な質問なんでございますが、その集団的自衛権という概念なんですが、これはいろんな議論をされているんでございますが、もしかしたらこういうことは考えられませんでしょうか。

つまり、安倍政権は、本当はこの集団的自衛権の話をいろいろやっているんですけど、最終的に彼らが目的としていることは、結局その集団的自衛権というようなことを使いまして、最終的には自衛隊は他の軍隊と同じように、自由に何の制限もなく動かせられる、そういうような軍隊に仕上げたい。

それが本当の目的だというふうに思われますでしょうか?

中国と周辺諸国の紛争について

志位:中国の問題についてのご質問です。私たちは中国と日本との間、あるいは中国と東南アジアの国との間に、領土を巡る様々な紛争問題があり、それをどう解決するのかが、大変大きな問題であるという点では、この問題に大きな関心とそして対応策の検討をしてまいりました。

中国が例えば尖閣諸島の領海に公船を入れてくる。こうした物理的に攻めてくることに対して、私たちは批判をし、中国政府、ならびに中国共産党に、そういう我々の批判の検知を伝えてまいりました。

ただ、この問題は、相手が物理的な対応をやってくる。あるいは軍事的な対応をやってきたときに、こちらも物理的な対応をやる。あるいは軍事的な対応をやる。その軍事対軍事がエスカレートするのが一番危険だと、私は考えております。外交的な解決の枠組みが大切です。

例えば東南アジアの国々は、中国との関係で、領土に関する紛争問題をエスカレートさせないために、南シナ海行動宣言、DOCというのを結びました。そのDOCは今、法的拘束力を持ったCOCに発展させるという努力を東南アジアの国がやっています。

中国がそのような行動をする。それに対して東南アジアが、そういう外交的な枠組みの中で、それをエスカレーションさせない。物理的な対応や軍事的な対応にエスカレーションさせない。

そういう枠組みを作ることに、今、東南アジアは力を尽くしています。もっと大きくなりますと、東南アジアでは、TACという、東南アジア友好協力条約というのを締結し、それを域外に大きく広げています。

共産党が提唱する「北東アジア平和協力構想」

志位:私たちの大きな1つの提案として、東南アジアで起こっているような、地域の平和共同の枠組みに、TACのような枠組み。あるいは領土問題で言いましたら、DOCのような枠組み。これを北東アジアにも構築できないかと。北東アジア平和協力交渉というのを、提唱しております。

北東アジアの場合は、北朝鮮という存在がありますので、この北朝鮮問題の解決は、やはり六ヶ国協議の枠組みに戻していくと。これは唯一の解決策だということも、提唱しております。

そして最初のプレゼンテーションでもお話したように、日本が過去の侵略に対する、公的な反省を明らかにするということが、この地域の平和と安定にとって、やはり不可欠な土台だということも言っております。

すなわち私たちの北東アジア平和協力構想というのは4つの要素から成り立っております。

第1は東南アジアTACのような友好協力条約を、北東アジアでも提供すること。

第2に、北朝鮮問題については、六ヶ国協議の枠組みに立ち戻って、外交の中での解決を図ること。

第3に、領土に関する紛争問題については、DOCのような紛争をエスカレートさせない、外交での枠組みを作ること。

そして最後に、日本の過去の戦争については、真摯な反省の態度を取ること。

この4つの原則に至った、北東アジア平和協力構想を提唱し、実現のために野党でありますが、関連の政府とも対話を重ねてきているところでございます。

安倍政権の一番の問題は、もっぱら軍事の話ばかりで、外交のビジョンが全く見えてこないことです。軍事に対する軍事。これは悪循環になります。これは一番危険です。そういう悪循環から転換する、大きな外交ビジョンが必要だと思います。

制作協力:VoXT