ドローンを飛ばすための1週間コース

司会:それでは質疑応答のほうに、移らせていただきたいと思います。すみません、まず最初に私から野波先生に伺いたいんですが、こういった許認可制というか資格制になると、国交省なりそういったところが試験を行うと思うんですが、学校とか試験のスクールとかそういったものはでき始めているのでしょうか。

野波健蔵氏(以下、野波):先ほどちょっとご紹介しましたように、私どもはすでに自主的に1週間コースということで、もう缶詰になって、それこそ免許証の合宿じゃないですけれども、1週間やれば責任をもって全くの初心者が完璧に飛ばすようにしますよっていうことでやっています。

司会:そちらの学校に通えばもう国家試験的なものも通れそうなんですか。

野波:国家試験はまだないですけども、例えばその技能検定が実は一番時間かかるんですが、5日間だとしますと、4〜5日はほとんど技能ですね。その技能は、ラジコンの世界チャンピオンの方に指導してもらってます。

そういう方ですと、目をつむっててもわかるって言うんですね。音でわかるって言うんです。今危ないとか、そういう方に手ほどきしてもらうと、本当に的確な指導をされるのでやっぱり上達が早いです。我々がやるよりはるかに良いです。ここにはそういう方は多分おられないと思うのですが、ワールドチャンピオンということで。

司会:わかりました。ありがとうございます。

質問者1:仕事で千葉大の西千葉キャンパスにたまに行くんですが、千葉大の西千葉のキャンパスでドローンが飛んでいることを見たことないんないんですが、千葉大で学生とどのようなことをやられているのか。

野波:もちろんいろんな飛ばし方、いつもグラウンドでやってる、グラウンド来られました?

質問者1:グラウンドでしたら、亥鼻(いのはな)でしたら行ったことあるんですが。

野波:亥鼻(いのはな)じゃなくて西千葉です。陸上競技場でやってますので、今度是非おいでください。

質問者2:ちょっと発想の転換で、落ちた時に物を壊さないとか、人にぶつかっても大丈夫だというような、車のエアバック的な、パラシュートみたいものでもいいし、なんかボヨンとした跳ねるようなものでもいいし、そのようなものを考えられたらより優しいような。

野波:実は私たちそれやっておりまして、イギリスだったと思うんですけど、墜落時の衝撃力が69ジュールにしなさいというこれもちゃんとルールがありまして。69ジュールって本当にもう1m/s(秒)ぐらいでゆっくり落ちるくらいなんです。

ということは、パラシュートとか、今おっしゃってるエアバックとかをつけて、もうフワッとソフトランディングするようにすれば、大きいか小さいかは関係ありませんという、そういうルールもありまして、私どもパラシュートを自動で開傘して、異常があったら自分で開傘して、人が開くんじゃなくて自動で開いてゆっくり降りるっていう、まだ研究レベルですけれども、それを何とか標準装備したいと思ってます。

質問者2:ありがとうございます。

監視機能としてのドローンの活用

質問者3:私、法律事務所に勤めておりまして、ものすごく証拠というものが重要になってきておりまして、捜査という話も聞いたんですけれども、民事の場面でも、例えばどこかのお宅の所に行って人が住んでるか、住んでないかとか。何か悪いことしているところとか、証拠を捕えられたらなと思うんですけれども、そういうことに実際に使われたケースとかがあれば、教えていただきたいんですけど。

司会:具体例は、先生にお聞きしたいんですけども、今総務省ではプライバシー保護のガイドラインは作っていて、家の中は写しちゃいけませんよとか、こういう案でどうでしょうかって事で今国民の意見を聞いているという段階にあるので、さすがに家の中はあれなんでしょうけど、例えばそういう犯罪場面を撮ったものが証拠に使えるのかっていうのは、先生どうなんですかね。

野波:例えば犯罪とはちょっと違うんですけれども、こういう話があります。家を新築しますね。そのあと改築したりして、届けないというのはありますね。実は容積率満たしてないとかですね。

例えばそれは、定期的にドローンが飛んで、きちっと調査すればすぐわかることですよね。ですから、建築許可申請をしてその時は基準満たしてるんですけど、その後増築をして、容積率オーバーとかっていうことが結構あるというの聞いてます。

これをドローンできちっとやれば、そういうこともしなくなっている。ある種抑止力になるでしょうっていう話もあります。

質問者3:監視機能になるということですね。ありがとうございます。

ドローンの空の交通整理について

篠健一郎氏(以下、篠):「(スケッチブックで)空の交通整理は、誰がどう行うんですか?」というご質問いただきました。ありがとうございます。

野波:これは多分まだ先のことだと思いますけど、先ほどちょっと私がお見せした近未来型の都市では、恐らく空域っていうのが設定されると思うんですね。高さ30〜40mの間は時速50kmのドローンが西向きで飛んでいいです。それからさらに10m上は、時速100kmとかですね。

あるいは、西向き、南向きとか北向きとかっていう形で、やみくもに自由に勝手に飛んでいいということには絶対ならないと思いまして、レギュレーションがきちっとできて、必ず川の上を飛ぶとかですね。

あるいは、場合によっては道路のある所を車は通れないようにして、逆にドローンがその上を通っているとかですね。多分そういう形で、国土交通省がルール作りをするということになろうかと思います。周波数もそういうところで、きちっと決まると思います。

超小型ドローンの事例

:同じような質問を3つのグループからいただいたものがありまして、「どれだけ小さくすることができるんですか?」っていうことと、「手の上に乗るドローンの実用性は?」ということで、大きさに関心がある方が3つです。

あと「小型ドローンの事例があれば教えてください」といったものですかね。そういったものがあるんですけど。今、かなり小さいものは、ありますよね? 手の平に乗るものがでてきてますよね?

野波:1センチぐらいのものがあります。ほとんど蚊の大きさですね。海外の、アメリカですけどもね。

:それはカメラとかあるんですか?

野波:それはミリタリー、軍事目的なんですよね。ですから、何かに入れて、そっと入れて盗聴するっていうのが目的でありまして、民生用っていうよりも、CIAとかそういうところが使うということも。

:ハエとか蚊とかそんな類で、飛んでても気づかないという。それだとかなり恐いというか、そんなのが輸入されて使われた日には、規制しようにもわからないですよね。

戦争の話もありますね。ドローンによって戦争のスタイルはどのように変わりますか。今軍事の話出ましたけど、偵察機とかそういったものが対象でスタートしますけど、逆に小さくなって使われるということもあるのかもしれないですね。

野波:アメリカの大学で研究しています。これ随分お金が出てまして、スタンフォード大学でやってる研究ですね。

:目的は、さっきおっしゃったような使い方ですか。盗聴とか。

野波:お金を出しているところがDARPAという国防高等研究計画局っていう国防総省がお金を出してまして、何億円って出してますね。

:国が関与してるんですか。

野波:これほとんど蚊とかと同じ大きさですよね。

:蚊にしか見えないです(笑)。実用化されて……? さすがにそれは。

野波:いやいや。

ドローンの障害物回避機能

:あといただいた意見、質問で、「先生たちの会社で時速150kmで飛ぶドローンを作っていますが、それ飛行するとぶつからないんでしょうか?」という質問をいただきました。

野波:これはレーザースキャナーっていうのがついてまして、必ず50m先のものまで全部認識するようにして、障害物、あるいは向こうから別のものが飛んできた場合にはちゃんと回避するという、そういう機能がついてます。大丈夫です。

:回避の関連で言うと、どなたかご質問いただいて「障害物を避けるセンサーがあるということですけど、電線も避けられるんですか?」っていうような質問も会場からいただきました。

野波:ものすごいスピードで時速150kmだと絶対駄目ですけれども、時速20〜30km程度に落とせば判別できます。時速150kmとかですと一瞬ですので、ちょっと無理ですね。

ですからその辺は、そういう住宅地とか電線がたくさん張り巡らされている空域となってきたら、スピード落としてゆっくり慎重にいくという、そういうことになるのかと思います。

有人ドローンの実用化のタイミング

:これからの未来の話で、「有人ドローンの実用化のタイミング」と。ドローンのタクシーとか、人が乗るともはや無人航空機ではないんじゃないかなとも思ったりするんですけど(笑)。その実用化のタイミングは、いつなんでしょうか? そんなような質問ですよね。

野波:多分、7〜8年から10年ぐらいだと思いますね。今、車も自動運転になって、人が運転しなくてよくなるのはもうあと3〜4年後。実質的にはオリンピックの後ぐらいだと思うんですが、その次は、今度は空。

自動運転は地上を走るんですけれども、今度は空を飛ぶということで。ただ地上を走るか、空を飛ぶかの違いで、空を飛んだほうが私は安全だと思うんですね。と言いますのは、立体交差になりますし、人が歩いてないですし、少なくとも人は空飛びませんので。ぶつかっても無人の空を飛んでるビークル同士がぶつかるだけですから。もちろんそこに乗ってる人はパラシュートか何かでポンと脱出するという、そういうことになろうかなと思うんですね。

:落ちても、さっきお話があったようなエアバッグのようなものがあれば。

野波:多分、人が乗るドローンカーというのができると思うんですが、無人で家の前まで来ると。もし事故があったときは、何かこうライフジャケットみたいなものを持ってて、ポンと飛びだして。

よくパイロットがそういう装置もってますけど、ぶつかった衝撃でポンと開いて、自分はゆっくりパラシュートで降下する。そういう形で人間の安全性を守るということになると思うんですね。

:あと皆さん自由で結構なんですけど、先生がお話されてた分野以外で、こんな分野でも使えないでしょうか、みたいなご意見があれば是非いただきたいんです。

1ついただいたのが、医療や介護っていうのが今なかったかと思うんですけども、医療や介護での何かおもしろい使い方はありますでしょうか、というようなご質問いただきました。

他にも「この分野でビジネスのチャンスがあるんじゃないか」とか、何かそういうふうな先生に聞いてみたい業界、活用の何かあれば。挙手でも結構ですけど。

ドローンの一番の敵は強風

質問者4:お話をどうもありがとうございました。例えばゲリラ豪雨とか、劣悪な環境、暴風が強い場所での活用とかできますでしょうか。

野波:航空機とか空を飛ぶものにとって一番難しいのが風なんですね。台風が来てるときに、結局我々が乗る飛行機も全て欠航になりますし、新幹線も止まりますけれども。強風、風速30mとか40mというのはあり得ないんですが、風速20mぐらいまでは、先ほどちょっとお見せしました飛行機型のドローンがありましたけども、あれは一応20mぐらいまでは、無人ですので飛べるかなと思ってるんですね。

質問者4:雨ですとか、上からの圧は?

野波:雨は全く問題ないです、土砂降りでも平気ですし、雪も大丈夫です。風だけがどうしても。風の力を借りて、空気の力で浮力を受けておりますので、やっぱり一番苦しいところですね。

:他に何かございませんか? この分野でどうだろうかとか。奥の方お願いします。

質問者5:ドローンの最大積載量に関してなんですけども。例えば最大積載15kgとか、もっと重いところとなれば、金属探知機とかを載っけて、戦争が終わったところの地雷を見つけるとか、あと地質調査をするとか、そういった分野でできるんではないかなと。

あとレーザースキャナを載せれば、ものすごい精度の高い測量ができるとか。今安定飛行できる限界の最大積載量ってどれくらいなのかなと。

野波:私どもが今実現しているのは30kgです。先ほど人が乗っているのがあったと思うんですが、あれはドイツで作られてるんですけども、20分ぐらい飛行できるんですね。

日進月歩で、今できないのは来年の今頃は、もし来年のメディア塾オープンカフェがあったら、多分もうできましたって話になるかと思うんですけど、そのぐらいのスピードで今世界中がドローンでフィーバーしてますので。

誰かがやるんですね。そういうニーズがあると、必ずそれをやる人がいまして。だから楽しいと言いますかおもしろい。ですから、是非皆さん、こんなことができたらいいなと思うことどんどんおっしゃっていただければ、必ず誰かがやると思うんです。よろしくお願いします。

司会:そろそろ時間も迫ってまいりましたので、最後にこれだけは聞いておきたいという方、いらっしゃいましたら。

ドローンのソフトウェアに関する課題

質問者6:利用とかと違う角度からの質問で、イノベーションとかテクノロジーの観点でお伺いしたいんですが、これさっき出てきたんですけど、ソフトウェアがオープンのものを使ってるって言いましたよね? 制御ソフトとかGPSとか、画像の処理とか。

これだけドローンが急速に進んだっていうのは、やっぱりソフトウェアがオープンで、昔のようにシェアの強い会社のソフトを使わなければならない事情と違うところが、実はドローンが急速に発展したとこだと思うんですが、研究者としてこのドローンのソフトウェアのオープンさっていうのはどう評価されてますか?

野波:実は、必ずしもまだまだオープンにはなっていないものです。

例えば、パソコンがここまで普及したのは、オープンでWindowsとか、アップルとマイクロソフトは結構一時期激烈な競争しましたけれども、仲直りをして、ほとんどの皆さんはそのアプリケーションソフトを作れる、そういう環境ができたので、これだけ普及して便利な状況になってるわけですけど。

ドローンもいずれはOSができると思います。ドローンOSというのができて、いろんな多くの方、いろんなこと考えておられると思いますから、こういうことができたらいいな、ああいうことができたらいいなっていうところを、ソフトウェアを開発するベースとなるフライトコントローラーのOSができれば、もっともっと普及すると思っております。

我々も、今ご指摘のところはすごく考えているところです。いずれ、この5年ぐらいの間にそういうのができると思うんですね。

ただ、そのときにVHSとベータの競争のように、そこで日本がちゃんと世界標準を取らないと、結局日本も今電気自動車の充電方式もヨーロッパに負けてますし、結局世界標準に日本がどこまでいけるかっていうのはすごく重要でして、我々も歯を食いしばって頑張りたいと思ってるところです。

質問者6:よくわかりました。ありがとうございます。

司会:皆さん、どうもありがとうございました。最後に篠記者と野波先生に一言ずつお願いできればと思います。

ドローン産業の発展に必要なこと

:今日は本当にありがとうございました。大変いろいろ興味深い話ばかりで、皆さんから刺激をいただきました。先生に2回ほど取材をさせていただいたんですけど、一番印象的におっしゃってたのが、「2020年のオリンピックまでには落ちないドローンが作れる」っていうふうにおっしゃっていて。

ただ「今のままでは駄目だ」と。国際標準の話もありましたけども、今世界のほうがアメリカや中国技術が進んでいて、このままいくと日本がグローバルスタンダードをとられてしまうと。

「どうすればいいんですか?」って聞いた時に、「やっぱりオールジャパンでドローンを作るべきだ」というふうに先生おっしゃってました。ソニーとか、日本に技術を持った企業が多いんですけど、バラバラに作っていても、どんどん世界に負けてしまうと。

なので一緒になって作れば、そういった技術も可能になって、そういったドローンも作れるようになっていくんだというところで、今日いろいろ皆さんからアイデアもいただきましたけど、「こんなようなドローンの活用があったほうがいいんだ」っていうようなこと、いろいろ意見を出し合って未来を考えていくっていうことが、ドローンの産業の発展にもすごい大事なのかなっていうふうに、今日お話聞きながら思いました。今日は本当にありがとうございました。

ムーアの法則が描く未来社会

野波:これは「メディア未来塾」っていう名称ですよね。未来を語るっていうのは私も大好きでして、ドローンはまさに未来にある種秘めたる力を持ってる。すごい大きなうねりを感ずるような思いで今いるんですけども。

実は多くの方がご承知のとおり、ムーアの法則ってありますね。ムーアの法則というのは、インテル社の副社長をされたムーアって方が、コンピュータの発達というのは大体1年半で2倍、演算速度2倍、メモリ2倍という。これはほぼずっと一直線で来てるっていうことなんですね。

今2015年ですけども、これから12年後というと2027年なんですが、2027年に、なんとコンピュータのスピードは今の1000倍になるんですね。メモリも1000倍になります。そうすると、携帯電話、今皆さんお持ちの中に、スーパーコンピュータが入ってしまうんです。そのぐらいの速さになってしまうと、すごいことができるんですね。

先ほどちょっと夢を与える、SF的な写真がいっぱいあった思うんですけども、あれは決して夢物語ではなくて、10年後にはああいうことができるコンピュータの性能になるということです。

今、2015年。2005年の頃を考えていただくと、まだまだコンピュータも遅いし、12年前は2003年ですか、やっと携帯電話が普及し始めた時代だったんですけども、2027年っていう今から12年後というのは、恐らく人工知能で、もうほとんどやらなくても外国の会話ができてしまう、しゃべっちゃうというPepperロボットもありますけれども、ああいうロボットが賢くなってきて、ロボットが共存するという。

まさにドローンも、私達の身の回りにいつも飛ぶようになるのではないかというぐらいに考えております。そういう感じに考えると何か非常にワクワクしますし、それに向けて是非、今日いらっしゃってる方は、いろんな意味で準備をしていくっていうことは重要だと思います。

またそれを先取りして構える、いわゆる気持ちを準備すると同時に、テクノロジーとしての進化をやっぱり見つめていくっていうのも重要かなと思います。そんなこと思いながら今日議論させていただきました。どうもありがとうございました。

制作協力:VoXT