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「就業規則なし」「給料は自分で設定」すべてをオープンにした民主的な経営者が学校教育の重要性を語る

「就業規則なし」「給料は自分で設定」すべてをオープンにした民主的な経営者が学校教育の重要性を語る

出社時間や服装規定、会議の規定の管理を止め、従業員が自分で給料を決められるSEMCO社を経営するRicardo Semler(リカルド・セムラー)氏。改革を進めていくにあたり、幼少期からの教育の重要性を感じ、ルミアルという学校を設立するに至ります。なぜ彼は様々な改革を推し進めてくることができたのか? 「なぜ」ではじまる疑問を3つ書く、そのメソッドについて語っています。(TEDGlobal 2014より)

スピーカー
SEMCO(セムコ) CEO Ricardo Semler(リカルド・セムラー) 氏
参照動画
Ricardo Semler: How to run a company with (almost) no rules

仕事の逆は、何もしないこと

私は月曜日と木曜日を「終焉の日」と呼び、死に方を研究しています。妻のフェルナンダはこの呼び方をいやがりますが、両親や祖父母をはじめ、私の家系はメラノーマ癌で多く死ぬので、思わずこんな想像をしてしまうのです。 座っている僕の前で、医師が検査結果を見ながら言います。 「リカルド、あまり結果が良くないね。君は余命半年から1年だよ」 そこで私は、残された日々で何をしようか考え始めます。 「子供と過ごす時間をもっと持とう。行きたかった場所に旅をしよう。登山をしよう。今まで時間があってもしてこなかったことを全部やろう」 でも実際には、とてもほろ苦い思い出になるでしょうし、実践は困難でしょう。さらにはほとんどの時間を泣いて過ごすに違いありません。 そこで私は、別の何かをすることにしました。月曜日と木曜日の「終焉の日」を利用して、宣告を受けた場合にやりたいことを、ことごとく実践するのです。 仕事の逆とは何かと問えば、皆さんは趣味をイメージしますね。たまには趣味に時間を割かなくては、などと言ったりします。実際、趣味とはとても忙しいものです。ゴルフやテニスをして、人に会い、食事をする約束をして、映画の上映時間に遅刻します。スケジュールは一杯です。 仕事の逆とは、何もしないことなのです。しかし、いざ何もしないと決めても、どうしたら良いのかわからなくなるのが関の山です。人生の時間配分の割り当てを考えてみると、お金が潤沢にある時期には、時間がありません。そしてようやく時間がふんだんにある時期には、お金も健康も失っています。

社員を縛り付ける規則を取り払った

このようなことを、企業として30年間考察してきました。わが社は、何千人もの従業員を抱える複合企業です。何千、何百万ドルもの案件を抱え、ロケット推進剤を製造し、4千台のATMを稼働し、何万人もの所得税申告をしています。単純なビジネスではありません。 そこで、従業員たちに様々な権限を委託し、寄宿学校のような規則を廃止してみました。つまり、出社時間や服装規定、会議の規定、こう言え、あれを言うな、皆で右を向きなさい、左を向きなさいなどという規制を取り払ったのです。この試みは30年前から始まり、以来この課題に取り組んで来ました。 定年退職時の、人生のグラフの時間配分について考察する機会も設けました。82歳になったら登山をするのではなく、来週実行してみるのはいかがですか、などと従業員に呼びかけてみるのです。 具体的には、従業員に給料の10%の価格で水曜日を買い上げてもらいます。例えば、バイオリニストになりたい人であれば、実際にはならないと思いますが、水曜日にバイオリンを弾いてもらいます。 さて、興味を示すのは年配者だろうと予測していましたが、そうではありませんでした。最初に興味を示した社員の平均年齢は、なんと29歳でした。そこでまた試行錯誤の上、軌道修正し、出社時間や退社時間の管理を止め、その代わりに従業員から何がしかの作業を買い上げる売買契約制にしてはどうか、などと検討しました。 また、本社ビルは必要だろうか、という話が出ました。単にお固い大きな有名企業に見せかけたい、見栄の問題なのではないだろうか。従業員が通勤に2時間も費やして市中を引きまわされるはめになるのは、本社ビルがあるせいではないか? こういった点を一つひとつ検討していきました。

求職者には、ありのままの会社を見せる

今度は採用です。人材を探して、「単に2、3回の面接だけで、生涯我が社と結婚してください、などとお願いするつもりはありません。我が社では、人生はそのように費やされるものはないのです。ですからあなたからも、質問をしてください」と言うのです。興味がある人は、来社してくれます。 そして我々は、相手が自主的な感覚でどのように動くかを見ます。単にシートの細々とした項目を塗りつぶして、適性を見るのではありません。 そして再び来社してもらい、午後ないし丸1日を社内で過ごしてもらうのです。誰にでも話しかけてもらって、求人広告に掲載された嘘八百ではなく、我が社がお眼鏡にかなう「花嫁」であることを、その目で確かめてもらうのです。 また、我々は少しずつ検討を進め、将来の部下の面接を受けて、承認を受けた人物でないと、社内のリーダーたる管理職に就けない仕組みを作りました。従業員全員が半年ごとに、リーダーにふさわしいか否か、匿名の査定を受けます。リーダーの地位を維持できるか否かがこうして決定されますが、状況によって結果が左右されることがあるのは、仕方のないことだと言えましょう。 評価が70~80パーセントに達しない場合は、罷免されます。おそらく、私のCEO任期が10年未満だったのも、この仕組みが原因です。 (会場笑)

人事部には社員が2人しかいない

我々が検討する内容も、さらなる広がりを見せました。給料を自分で設定することも検討しました。この場合、従業員にはどんなことを周知するべきでしょうか。知らせるべきことは、まず3つです。社内の給与額、同業他社の給与額、それだけの給与を出せるだけの儲けを社として得られているか否か、です。 そこで、従業員にこの3つの情報を提供することにしました。社員食堂にパソコンを設置し、他の人が使った経費・給与・収益への貢献度・社全体の利益・収益などを見ることができるようにしました。これが25年前の試みです。 これらの情報の提供を始めたところ、経費明細や、有給の消化状況、仕事をした場所などは、別に会社が把握する必要はないのではないか、ということになりました。 そこで、当時市内には14の拠点がありましたので、自宅もしくは当日訪問する予定の顧客から最寄りのオフィスを使えば良い、いちいちどこにいるかを報告する必要はない、ということにしました。 我が社には従業員が5千人いますが、人事部には2名しかいません。ありがたいことに、1人が定年退職しました。 (会場笑) 人材はわが社の唯一の資産です。従業員をケアするには何をするべきかが検討した結果、人を追いかけまわして世話を焼くような部署は設けないことにしました。この試みはうまくいきました。

役員会議における2つの空席の意義

終焉の日を利用して、私が主に探し求めていたこと、そして会社に求めていたこと、それは、「叡智」をどのように得るか、ということでした。 我々が生きているのは、革命の時代、産業革命の時代、情報化の時代、知識の時代ですが、「叡智の時代」には生きていないのです。 叡智を得るには、何を企画し、どのような組織を作るべきなのでしょうか。例えば、優れた知的な決断は滅多にブレることはありません。 そこで、1週間につき製品を57個売ること、と決めてしまいました。水曜日までに首尾よく売り切ることができたら、海に遊びに行ってもらいます。 ただし、製造上の問題やアプリケーションの問題など、会社にとっての問題を発生させないようにしてもらいます。もしそうなってしまったら、新しく別の会社や、競合他社を買収しなくてはなりません。製品を過度に売り過ぎるとそうなります。だから一旦海に遊びに行って、月曜日にリセットしてもらうのです。 (会場笑) これが叡智を見出すためのプロセスです。従業員には全ての情報を開示し、民主的な経営を行います。 わが社の役員会では、空席を2つ常設してあります。誰でもその場に最初に来た2人が座り、他と同等の審議権を得ます。スーツにネクタイの重役の並ぶ審議会で、清掃係の女性たちに審議の投票をしてもらった時には、場の空気が大変率直になりました。 こういったプロセスの推進にあたり、社員の様子を見直したところ、「ちょっと待てよ」と言いたくなる事態に気付きました。どの席に座ればよいか、どこで仕事をすればよいのか、5年後の自分はどんな仕事をしているのか、などの質問を、皆が逐一するのです。

教師に求められるのは、チューター、情熱、専門技能

そこで、もっと早期から教育を始めよう、ということになりました。では、どこから始めましょう。幼稚園あたりが妥当かもしれません。 財団を立ち上げ、今年で創立11年目になる3つの学校を創設し、叡智を教える学校とはどうあるべきか試行錯誤しました。 もちろん、講師陣をリサイクルし管理職にも頑張ってもらう必要がありますが、そもそも教育そのものや、教師の役割が時代遅れです。数学、生物学、14世紀フランスについて教えても意味がありません。 そこでパウロ・フレイレのような教育に興味を持つ人材や、ブラジル教育省の官僚を呼び寄せ、検討しました。学校を1から創るとしたら、どんな学校ができるでしょうか。 とうとう我々は、ルミアルという学校を設立しました。1校は公立校です。ルミアルでは教師の役割が2種類に分けられます。 1人はチューターと呼ばれ、古代ギリシアで言う所の「パイデイア」、子供の指導者です。自宅での生活や、人生における節目を指導します。 彼らは教えることはしません。なぜなら人間1人の知識は、グーグル検索より遥かに少なく、私たちは別段知識を教えたいわけではないからです。ですから知識は大人の手元に留めておいてもらいます。 次に情熱と専門技能といった、2つの資質の持ち主を採用します。特にプロ・アマは問いません。また、人口の25%を占める、その叡智がもはや社会から必要とされずに、埋もれてしまっている高齢者も採用対象です。 こういった人々に、彼らが大事に考えている事柄であれば何であれ、子どもたちに教えてもらいます。ですから中には、算数を教えるバイオリニストがいたりします。 教材にはこだわらず、2歳から17歳まで続く、すばらしい課程が10項目あります。例えば、人間としての測定基準とは何か、などを考えるものがあります。手段としては、算数でも物理学でも、何でもありなので、これらを学ぶ必要がありますね。自己表現の手段はどうでしょう。音楽や文学、文法を学ぶ余地がありますね。 また、人類に忘れ去られたことについても学びます。多くが人生で最も大切とされることですが、我々はそれを理解していません。つまり愛や死、自らの存在理由が何たるかを知りません。 こういった、我々が知らないこと全てについて、考えさせてくれる課程が、学校には必要です。これが我々の大事な使命です。 (会場拍手)

円周率を覚えさせるだけでなく、その使い方も教える

歳月を重ねるうちに、他にも様々なことを検討してきました。例えば、子供を叱りつけてここに座れとか、こっちへ来なさい、これをしなさい、などとあれこれ言う必要はあるのでしょうか。 そこで、週1回集まるサークルを作り、子供たちに、規則ややりたいことを決めさせました、「自分の頭を叩ける?」「もちろんできるよ!」「では1週間やってみよう」。すると子供たちは、大人顔負けのルールを、自分たちだけで作り上げるのです。 子供たちには権限も与えます。生徒の停学や放校処分も任せます。おままごとではなく、本物の権限を子供たちに与えるのです。 同じ流れで、カリキュラム制の教育は残しました。この学校は、構成主義でもモンテッソーリ方式(イタリア人医師マリア・モンテッソーリによって考案された教育法)でもないからです。17歳までには触れさせたい、ブラジルの学校カリキュラムを600項目、取り揃えています。 カリキュラムは常時フォローし、子供たちの進捗を把握して「君は、今はこれには興味がないんだね。では来年やってみよう」などと指導します。 子供たちがわけられるのは、年齢別ではありません。6歳で学ぶ準備が整っている子供であれば、11歳児と一緒に学びます。これは学校にありがちな、不良化や非行グループ化などの問題発生を防ぎます。 成績は0%から100%に段階付けられ、子供たちは2時間ごとにアプリを使って自分で採点します。1つの学科につき37%の成績の取得が目安で、その後、充分な知識を得たものとして世間に送り出されます。 カリキュラムのコースには、「ワールドカップサッカー」や、「自転車の組み立て」などがあります。「自転車の組み立て」コースには、45日間の課程への出席が必須です。 さて、自転車を組み立てるには、πが3.1415だと知らなくてはできませんね。さらに皆さん、この3.1415を、何かに応用してみてください。πの知識しかなくて、そこで終わってしまうでしょう。この学校では、叡智はこのように学ぶのです。

なぜ私は人に覚えておいてほしいと思うのか?

さて、ここで人生の時間のグラフ配分に戻ります。 私は人生の終焉に備えて、お金をたくさん貯めました。今度は貯めるのではなく、世間にお返しするのだ、と言いたくなるとしたら、お金を儲け過ぎたのです。 (会場拍手) 私はある小話を思い出しました。ある朝、ウォーレン・バフェットが目覚めてみると、資産が300億ドルありました。これは、彼が思っていた以上の額面です。彼曰く「このお金をどうしたらよいだろう。では、本当にこのお金を必要としている人にあげようではないか。そうだ、ビル・ゲイツにあげよう」。 (会場笑) さて、ニューヨークの私の資産アドバイザー曰く、「あなたは馬鹿だ。あなたのように行く先々でお金を配ってしまうようなことをしなければ、運用して今より4.1倍の資産を所持していただろうに」とのことでした。でも私は、行く先々で皆さんとお金を分かち合う方が好きなのです。 (会場拍手) MITでMBA所持者に講義をしていたある日、私はぶらりとマウント・オーバン墓地に立ち寄りました。これはケンブリッジにある美しい墓地で、私はそこを散歩していました。その日は私の誕生日で、考えごとをしていたのです。 墓地を1周した私は、偉業を成し遂げた人々の墓石に目を止め、自分はどんなことで人の記憶に残りたいだろう、と考えました。さらに歩みを進めた2周目で、別の疑問がわいてきました。なぜ私は、そもそも人に覚えておいてもらいたいのだろう? そこで新たな境地が開けたのです。 50歳になったある日、私は妻のフェルナンダと共に午後いっぱいかけて、大きな穴を掘って焚き火を燃やし、今までの私の業績全てを火にくべました。38ヶ国語に翻訳された著作、何百もの論文、DVDなどの、ありとあらゆる物です。そして、2つのことが達成できました。 まず第1に、5人の子供たちが、親の足跡、親の影から解放されました。子供たちは、親の私の仕事を知りません。これは良いことです。私は子供たちをどこかに連れて行って「いつの日か、これが全部お前たちの物になるんだよ」などと言うセリフを言うつもりはありません。子供たちが5人とも親の業績について無知であること、これは良いことです。

「なぜ」ではじまる疑問を3つ書いてみよう

第2に、私本人が、過去の業績とでも言うべき錘から解放されました。私は終焉の日を利用して、何でも新しく始めることができ、1から何かを決めることができます。 セムラーさん、今あなたは終焉の日々を過ごしていますから、これから何でもできますね、と言う人もいます。しかし、私はもうすでにいろいろなことをやり遂げてしまいました。 海に行き、サモア、モルディブ、モザンビークにも行きました。ヒマラヤの山々に登り、60メートルの深海に潜ってハンマーヘッドシャークを目撃しました。チャドからティンブクトゥまで、ラクダに乗って59日間の旅をしました。犬ぞりで北磁極に到達しました。相当忙しかったです。私の「死ぬまでにしたいことリスト」は、もはや空っぽです。 (会場笑) こうして見ると、理屈からすれば、私はまだまだ引退してはおらず、した気もありません。今、私は新しい本を執筆中で、この2年間に新しく会社を3社設立しました。 現在は、私の学校システムを、無償で世界に提供するために尽力しています。ところが興味深いことに、皆が授業料なしはいやだと言うのです。 この10年間で私は、我々の学校理論を引き継ぐ、公立学校システムを構築しようとしました。我々が作った公立学校の評価は、100点満点中43点から、91点まで上昇しました。 にもかかわらず、無料では必要ないと言われてしまうのです。ですから有料にすれば、どこかで導入されるでしょう。学校システムの構築は、やりたいことの1つです。 皆さんへのささやかなメッセージです。皆さんは日曜の晩、自宅でメールしたり仕事をしたりするでしょう。しかし、月曜の午後に映画を観に行く人はわずかです。叡智を求めるならば、こういったこともやってみなくてはなりません。 私がお話ししたことを、これらの歳月を費やして、どのようにやってきたかはとてもシンプルで、使う道具も筆記具のみです。単純に「なぜ」で始まる疑問を3つ、書き並べてみるのです。 まず第1の疑問に対しては、大抵の人がうまい答えを用意できます。2問目からが難しく、3問目に至っては、自分がなぜそんなことをやっているのかすら、よく理解できていません。 私がお話しして、まいた種により、3つの「なぜ」を書いてみた皆さんに、今度は「何のために」という疑問が湧いてきたら、しめたものです。 自分は、「何のために」こんなことをやっているのだろうか? その疑問の成果として、皆さんがいつの日か、より叡智に満ちた未来を手に入れてもらえれば幸いです。 ありがとうございました。

  
※ログミーでは、TED Talksおよび各TEDxの定めるCCライセンスを遵守し、自社で作成したオリジナルの書き起こし・翻訳テキストを非営利目的のページにて掲載しています。
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「就業規則なし」「給料は自分で設定」すべてをオープンにした民主的な経営者が学校教育の重要性を語る

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