文科省と財務省の間では既に話し合いが済んでいる

司会:ちょうど今ですね、スポーツの話が出ましたので、今日会場に鈴木知幸先生がおられます。スポーツのこと、とにかく競技者の立場になってオリンピックをやらせてくれということをずっと発言されていらっしゃった方なので、ちょっと感想でもよろしいですし、言っておきたいことでも。

鈴木知幸氏(元・2016年東京オリンピック招致準備担当課長。以下、鈴木):鈴木でございます。今、建築関係の話が出ましたが、建築関係のことは私にはよくわかりませんので自分の考えはありますけれども、賛否は抜けたいと思います。

それで、今まで出てきた話の中で重要なことがいくつか抜けているので、ちょっと行政的な立場からお話を申しあげますと、実は2011年の12月に新国立競技場のために多様な財産を確保することについては、一応の確保をすることについては閣議決定されています。

それから2013年、一昨年に文科省と財務省の間で多様な財源のあり方などをふまえるとして、「国費以外のものを確保せよ」と、すでに話し合いは済んでいます。

その後すぐの5月、4ヶ月後にtotoの改正と、それからJSCの法改正が行われています。この時に話題になったのが、総売上の100分の5をその建築費に使えるようになった。

これのすぐ使われたのが、平成25年の総売上1,080億円だった。5%にあたる27億円が特別財源として、すでにもう国立のほうに回ることになっています。

これを今年の2月に、スポーツ議員連盟が「10%に上げる」と。いわゆる100分の10にすると。そうすると50数億円になる。

それだけじゃなくて、もっと広げようとしているのが、今度は野球にまで手を出そうとしている。野球にしますと、もっと上がるでしょうと。そうすると、これで財源を当てようとする。それで東京から500億を引き出すと、間に合っちゃう。

これらの計算はすでに彼らの中に入っていると思います。それですでに官邸の中には、財務省と国交省と、それから総務省がチームをつくりました。施工者と話し合っているはずです。

東京都から金を受け取る算段はついている

さっきちょっと話が出ましたように、施工者がなんで設計に関係するんだということについては、今ECIという方式がありまして、ECI方式は釜石なんかでやられていますよね。

これは期間を短縮する分にはいいんですけども、ただ施工者がお金を高くすることができる。これがやはり今の提案が2,500億だとか3,000億という話が歩いている証拠だと思うのです。

ただ施工者は、それぐらい上げてもらわないとできないということで。これはやっぱり施工者との落としどころを今、官邸とやっているのだろうと思います。それで僕はほぼ見通しがついたと思います。

したがって、下村さんと河野さんが、結局話し合って「ザハ案でいきましょう」と。それの候補についても、ほぼ施工者と話が付いているだろうと思っています。

これからは経費の運営についての問題になってくると思います。いま僕が1つだけ僕は見落としたのは、例の下村さんと都知事が話し合ったときに、「法違反じゃないか」と。確かに地方財政法の第二条の第二項について、「国は地方に負担をされてはならない」という法律がある。それを言ったところ、下村さんが「いや、法改正しますよ」と言った。

僕は、「この法改正の法って何だろう?」と思っていたら、センター法に僕も見事に見落としていた案があった。実は一昨年の5月に作られた法改正の中で、100分の5ばっかり僕は見ていたのです。

そしたら、そうではなくて、JSCはスポーツ振興基金をtotoもできるっていうことにした。基金は国から支出を受けることができると、その時に法改正をして、「国及び地方公共団体から受けることができる」というようにした。これを見落としていたのです。

おそらくそれを使って、「東京都から金もらえるよ」と言ったと思います。で、これをもっと整備すればちゃんと地方財政法と、それから憲法まで持ち出しましたけれども、憲法はすり抜けることができる。

舛添知事の怒りはパフォーマンス?

僕はもう最初からこれは簡単にすりぬけられる、というのは、東京都が「500億出す代わりにちゃんと使用権を一部を渡せ」と。そうすると、これは負担を課すわけじゃなくて、取引になりますから、それを都民に示すことによって500億出すのだろうと僕は思っていますけれども。

それで、知事が一番怒っていたのは、やっぱり「自民党がいきなり都議に持っていって、俺をないがしろにしたじゃないか」という議論があったと。ですから、やはり知事は一応都民の側に立って、パフォーマンスをせざるを得ない。今はやっています。さかんに。しかし、それは議会と都民に言うための操作だと思います。

それから、さっき出なかったけれど、あの施設に一番近いものを求めているのは、シンガポールのナショナルスタジアムですよね。この前、森さんがポロッと言っちゃって、「3,000億かかろうが、4,000億かかろうが、あれのスタジアムを作ればいいじゃないか」と言った。

お帰りになりましたら、皆さんシンガポールのナショナルスタジアムを見ていただきたいと思います。全く似て非なるものであるという。非常に天井が軽くて、広さが全く違う。全く違うのに、河野一郎さんも、もともとシンガポールを1つのモデルにしてきたというケースがあるんですけども、あれは絶対にあの位置には建たないというふうに思っています。これは個人的にです。

建設計画は収束しつつあり、これからは維持経費の問題

それから、今はなにしろ僕がこの5月、6月に必ず大きな問題が起こると言ったのは、6月がですね、ちょうど来年度の概算要求の締め切りなんですね。だから文科省は今月中にまとめ上げなきゃいけないのです。それでこれが出てきた。

500億を東京都に確約とれば、これで間に合うというところまで来たものだから、慌てて下村さんが18日に言ったんですね。

なぜこういう東京都の話を、森さんみたいな今までのやった、やらないという言葉のやりとりだけを引き合いに出しているのかという。こんなことは両方の官僚同士が、去年に話を済ましとかなきゃいけない話です。そういうことを含めて、今バタバタしてきているのは、その500億を認めさせれば、すべてのつじつまが合うというところまで来ていると僕は見込でます。

僕は、もう建設計画はもう収束しつつあると思っています。これから問題なのはこれから維持経費、レガシーの問題なってくると思う。

おそらく今まで基本計画で出した、38億儲かって35億使うっていうバカな数字は、あの時だけの、財務省に見せるだけの数字だと思っています。

したがって、これからどのような運営の仕方をしていくかってことがひとつの大きなテーマになる。そうするとPFIの運営権を、コンセッション方式を使って、民間に任せるかどうか。いろんな他の方法もある。

それで、なんであの読売グループが、あのアンダーなんとか(アンダーアーマー)を出したかです。だって、森さんのバックじゃないですか。それが何であれを出したかを考えると、ちゃんとその先を、みんなで考えようっていう議論になっていたはずと思っております。

それ以外にも色々あるけど、時間の関係がありますので、いろいろ情報が今錯綜しています。それで、6月いっぱいで必ず全部全容が出ます。そこでまた皆さんで考えていただければ思います。

これからは悪い意味での見もの

司会:ありがとうございました。今日ですね。今鈴木先生からお話のでた都知事の話で、今日都議会が開催されています。私は今日、この準備があったのでそれをチェックできてないのですが、おそらくすぐにでも議事録ですとか、音声とか、それから知事の部屋というのが出ると思います。

だから、舛添さんが国民とかマスコミにサービスしているのと、実際都議会で何と言ったかを、ぜひ皆さんチェックしていただきたいと思います。

では時間もあと5分ぐらいしかないんですけども、発言してもらいたかったのは、前回の講師の東郷さん、何かひと言。

東郷和彦氏(京都産業大学教授・世界問題研究所長):本当に目からウロコのたくさん教えていただきありがとうございます。

1つ、ちょっとお伺いしたいのですが、今日は国立競技場を中心にお話をいただいたのですが、一部の報道で国立競技場を含むこの周辺を含む全体の総合的な開発っていうのがあります。

例えばJSCの建物とか、競技場自体じゃなくて、その周辺のいろんな開発ですね。その動きというのが背景にあって、その競技場の話は、東京のど真ん中にこれからどういうものを造っていくかという一環で出てきていると。

そのデベロッパーというか、その人たちが今持ち始めた権益のようなものがすごく根っこにあるという報道を見るのですが、全体をどういうふうに捉えたらよろしいでしょうか?

森山:すごく探偵みたいな話ですけど……。

(鈴木氏が挙手)

鈴木:今年の4月1日に東京都が「神宮外苑地区まちづくりに係る基本協定」、覚え書きを協定しました。それがあそこの地権者全部が入っているけど、宗教法人明治神宮、それからJSC、それから三井不動産、それから伊藤忠、それから東京都、あと2社入っています。

これらがそれぞれの思惑を持って覚え書きをとったのです。東京都は何かっていうと、「スポーツクラスターと魅力ある複合市街地を実現させていく」という言葉を出している。

「スポーツクラスターと魅力ある市街地」というのは、それぞれの企業が、それぞれの自分たちの思惑を持って覚え書きを書いたと思うのです。これからどういうふうに発展するかが見ものです。悪い意味での見ものです。

みんなが新国立競技場について知ることで変わる

司会:いろいろな方がいらしていて、本当はまだまだ話を聞きたい方が何人もいらっしゃるのですけど、9時までなので、あと5分で終わりなので、森山さん最後に何か言い残したことを。

森山:みなさん、あの大勢集まりいただきありがとうございました。たぶんネットの動画の配信のほうもいろいろな方が見ていただいていると思うのですが、一部で言われているような「狂犬」ではございませんので、この問題については、すべての人にもっと真剣に考えてもらって、なおかつこの問題を通じて、建築とかのことにみんなが本当に詳しくなって欲しいというのが本当に希望です。

それは美味しんぼという漫画がありまして、あの漫画が料理とか食材のことをいっぱいみんなに教えたのです。特に「日本酒がいかにこうなっているか」「一級酒二級酒はこうだ」という。

あの漫画によって、みんながお酒の本当の作り方と蔵元のことを知ったおかげで、今、地方の蔵元が復活して、酒屋さんで八海山を飲んだり、獺祭とか飲めたりしているようになった。

それは、酒造メーカーは戦時中の国家総動員法の頃から起きた、その場しのぎの法律をずっと維持して、酒造界がめちゃくちゃになって日本のお酒の文化が死にかけたところを、みんなが知ることによって変わったわけですから。

たぶん建築についても、みんなが知れば、この問題に限らず、徐々に徐々に変わっていくし、批判の仕方も今までみたいなステレオタイプの批判じゃなくて、本当に急所を突いた批判をみんなでしていけるようになればいいなぁと思っています。

以上です。有り難うございました。

司会:森山さん、ありがとうございました。じゃあ、拍手を。

(会場から拍手)

司会:では、今日の勉強会はこれで終わりにしたいと思います。今後もまだ決まってないですが、ゆるやかに勉強していきたいと思いますので、ホームページをチェックしていただくなり、メール配信もさせていただきたいと思いますのでとにかくずっと注目し続けていただきたいと思います。ありがとうございました。