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新興国進出のウラ側で何が起きている? グローバル時代のマインドセットを考える

新興国進出のウラ側で何が起きている? グローバル時代のマインドセットを考える

「日本企業はグローバル化すべき」という声が年々強まっています。新興国に進出する企業も増えてきていますが、現地の「地上げ」トラブルや環境問題など、さまざまな問題が後を絶ちません。これからのグローバル化において必要なこととは何か。菅谷亮介氏は「お金」をベースに意思決定するのではなく、現地に行って、現地の人たちのことを考えながら対話を重ねていくことが重要なのだと、これからのグローバル時代において必要な考え方について語りました。(TEDxNayabashi2014 より)

スピーカー
特定非営利活動法人very50 代表理事 菅谷亮介 氏
参照動画
グローバル時代のマインドセット Our decision in Globalization : 菅谷亮介 Ryosuke Sugaya at TEDxNayabashi 2014

新興国が抱える数々の社会問題

菅谷亮介氏 こんにちは菅谷です。「グローバル時代の僕らの決断」という題名なんですけども、実は今回ですねTEDさんからお話をいただいたときに「どういうことを話そうかな?」と迷ったんですよね。 なぜかといいますと、私の日頃やっている活動というのは、年に9ヵ月くらいは日本ではなくアジア新興国のどこかの国にいて、放浪者のような生活をしているものですから。 どういうことをしているかといいますと、アジア各国で社会問題を取り扱っている企業、いわゆる社会企業と呼ばれているところで経営改善のプロジェクトを立ち上げるようなことをやっています。 そうすると、本当にたくさんの問題意識があるわけですね。その中から一つ選べと言われるとなかなか難しいと思ったわけです。 そこで「この中から共通するものは何かな?」と考えるに至りまして、それを今日ここに座っているみなさんに伝えることができればなと思います。 「どんな問題があるのか?」ということを事例で見てみたいと思います。 たとえば、社会主義の国によくあるのはですね「地上げ」の問題です。世界全体では、どんどん新興国に目が向かっていくわけですね。そうするとやっぱり、工場とか会社を建てたり、農地をガーンと新興国で買って、作ったものを自国に持ってくる。 たとえば、日本が他国に行って、そこの土地を買って、そこでできた農作物を日本に逆輸入してくる。というようなことになるわけです。 gazou1 そこでよくあるものとしては、もともとある農地を現地の役人やブローカーが強引に買って転売する。かなり高めで売ってくるということをよくやるわけです。でも「俺は売りたくないよ」という人も当然いるわけですね。 「売りたくない」と言うとどうなるかというと、これはかつて日本でもありましたけども、酷いと殺人、酷いとですよ。ただ、嫌がらせというのはしょっちゅうあって、実際に私の友人であったのは、飼い犬を撲殺されるとか。そんなことをしながら「どけ!」と言ってくるわけですね。 これは本当によくある問題の一つです。もしも皆さんの会社が「新興国に行くぞ」というとき、この問題はあまり知り得ないことですよね? そのときは気を付けたほうがいいかもしれません。 gazou2 この綺麗な村はネパールにあるんですけど、ここにも問題があります。ネパールの村のほとんどは水道がしっかりしていていなくて、シャワーも外で共同で浴びているんです。服を着ながら、男女共同で使っているんですね。 川の近くで浴びているんですが、そのとき小分けで売っているシャンプーや石けんを使います。特別な日やパーティーなどがあるときはシャンプーなどを使って綺麗にするわけです。 gazou3 見えますかね? この小分けにされた物で頭を洗ったりするわけですが、これらのゴミがどんどん川に流れ込んでいくんですね。 このときに、もしもですよ、もしも川にゴミを流すとしたら、大きいゴミのほうがまだ良いんですよ。拾いやすいから。小さいゴミをいっぱい出すほうが実は環境的には大迷惑なんです。そういうことを現場で私は実感しました。 gazou4 ここはインドネシアなんですけども、インドネシアはBRICsを超える経済成長を遂げている国だと言われています。どんどん首都のジャカルタ周辺でも建設が進んでいるんですね。そのときにレンガが必要になるんです。 gazou5 私も知らなかったんですけど、レンガって土壌の表面にある軟らかい土を集めてきて、こんな感じに固めて焼くんです。焼いてレンガにしていくんですね。これを、もともといる農民の人たちに「レンガ作りやらないか?」と誘うわけです。 たとえば、ニンジンを作っていた人が100の収益を得ていたら「レンガを作ったら150儲かるぞ」と言うんです。そうすると、農家だった人たちがみんなレンガを作るようになってしまうんですね。 レンガを作るために土の表層を吸い取るんですが、そうすると土は弱っていきます。大体3年間くらいで次の土地に移るんですが、レンガ業者はその土地の農民に3年間レンガを作らせて転々としていきます。まるで、イナゴの大移動のようになるんですね。 でもこれって、経済成長が生んでいることなのかもしれません。そこで「なんでこんなことが起きてしまうのか?」ということですが、ちょっと見てみましょう。

「アジアで勝て!」「世界で勝つ!」という言葉に感じる違和感

gazou6 この言葉、これは本当によくあるものなんですけれども、この5、6年でアジアに対する注目はとても高いですよね。実際にさまざまなアジア系のセミナーだったりとか、書籍だったりとか、いろんな物を見ると大体こう。 「アジアで勝て!」「世界で勝つ!」「大成長時代に漕ぎ出す!」「海外へ出よ!」「新興国で戦える戦闘力を持つ」「世界を取る!」 もうなんか戦争中のようですよね? こういう言葉がいっぱい並んであるわけです。私はこれに違和感を感じるとともに、むしろ下品だとすら思っているわけです。「世界を取る」とはどういうことかというとですね。 gazou7 大体、多くの会社では「1人あたりの各国のGDP」並びに「人口の規模」から、次はどこの国が儲かりそうか一生懸命考えるんです。もちろんこれだけではありません。 ただ、大枠で見てみると「どのくらい人口がいて、どのくらい稼いでいて、どのくらい購買力があるのか?」こういう考えをするわけですね。 たとえば、イオンのような大きなスーパーマーケットも国民1人あたりのGDPが1000ドルを超えると入れるんです。カンボジアが1000ドルを超えたとしたら「じゃあカンボジアにスーパーを置こう」というように市場調査は進んでいきます。 でもこれは、本当に正しいことなんでしょうか?

人件費ベースでの新興国進出をいつまで続けるのか

gazou8 イメージで言うと、こういうことです。菅谷産業という会社があると仮定します。2002年頃は、けっこう儲かってますね。2002年頃は売上高が4815万円あったのが、どんどん下がってきて2011年には2819万円。マイナス41%です。 そうすると、どう思うかというと「売上が下がってきているから急成長の新興国にマーケットを見つけよう!」という発想になるんです。次にいきましょう。 gazou9 それで、菅谷産業はどこかの新興国に行きました。売上がどんどん上がっていますね。ところが営業利益で見てみると、どんどん下がってきちゃっている。 なんでこういうことが起きるのか? これは、人件費や材料費がどんどん高くなっていくからなんです。したがって、売上は上がっているのに利益率が下がっているから、もっと人件費が安い新興国に行こうとする。 次はアジアのどこか、もしくはアフリカかもしれない。アフリカの次は火星にでも行くんですかね? どこに行くんでしょうか? これをずっとやり続けているんです。つまり「お金」なんです。 全てとは言いませんけど、ほとんどは「お金」をベースに意思決定が行われていることが多いなと。そういうのが私が現場にいて感じることなんですね。それで、これをどうしましょう? たとえば、さっきの菅谷産業が地上げをして土地を取ってくる。そうすると世間で「菅谷産業って良くないよね」と言われるかもしれません。

意思決定をしているのは、必ず「個人名付きの誰か」

ただ、ここで重要なことというのは、この菅谷産業は組織が意思決定をしているのではないんですね。ここが重要なことです。 意思決定をしているのは、必ず「個人名付きの誰か」なんです。菅谷産業が意思決定をしたのではないんです。意思決定をしたのは、こいつなんです。 gazou10 (会場笑) ちょっと年商が高くなっちゃいましたけど。おそらく意思決定をしたのはこの男で、住所もちゃんとあって、家族もいるわけですよ。この人がやっているんです。 そうすると、この男のマインドセット、意思決定の仕方に問題があるんじゃないか? というのが今日のポイントだと思うんですね。 この男に欠けていたのは何か? やっぱり、お金以外のことに対する「無知」かもしれない。そして「無関心」「無関与」かもしれない。たぶん、こんな素敵な顔をした男はそんなに悪い人じゃないわけです。 (会場笑) 良さそうな男ですよね? ところが、無知だ。「現地で何が起きるか?」というところに考えが及ばなかったことが問題なんです。彼が悪かったんじゃなくて、彼が無知だったところが問題だということなんです。

大事なのは現地の人と共に平等に働くこと

もう1個問題があると思うんです。この言葉はとても好きな言葉で、ある尊敬している歴史の先生から拝借したものなんですけども。 gazou11 他人の死は自分の死ではない。 「死」というとですね、とても大げさに聞こえるかもしれませんけども「他人の痛み」と表現してもいいかもしれません。結局「自分の痛みじゃないんだよね」というのが根底にあり続けると、どうしても無関心になってしまいがちだと思うんですね。では、この問題をどうやって解決しましょうか? やっぱり、これしか答えはないなと思うんですよね。 gazou12 現地に実際に行って、現地を感じて、人の話をよく聞いて、こっちの思っていることをちゃんと話す。当たり前のことなんです。本当に当たり前のことなんです。 よく「現地に行く」というとですね、ただ現地に行っただけで、そこに住んでいる人たちと話をしていない。話をしても、その国の権力者だったりとか、どこかの役人だったり。それでは本当のことはわからないんですよね。 gazou13 そして、現地の人と共に平等に働くこと。これもとても重要なことです。 gazou14 そして、現地の人と友情を育むこと。これをしていくと何が起きるかというとですね、彼らは仲間になっていきます。みなさんとつながってしまうんです。その瞬間ですね「彼らに問題が降りかかったら嫌だな」と思うんです。 すでに友達になってしまっているので、彼らをもっとケアするようになっていくと思うんです。これ、当たり前のことを言ってるように思うかもしれませんけども、私が数年間活動をして行き着いたところは、ここなんですね。 個人と個人が結びつき、彼らと友達になること。「友達を苦しめたくない」こういう思いしかないんじゃないか? というのが、ほぼ僕の答えです。 当事者意識というのは「もし自分だったら、どう思うかな?」というものですが、こんなことは小学校で習いますよね? でも、こんな当たり前のことが考えられていない。今はそんな時代だと思うんです。 gazou15 僕らが壊しているものを正確に把握して、僕らが新たに創るものが未来にどう幸せなのかを十分に理解をすること。これは今回のテーマの副題になります。「僕らが壊しているもの」そして「僕らが創っているもの」これを十分に認識することは、とても重要なことです。 これができたならば、後はリーダーがどう決断をするかです。「壊しているもの」と「創っているもの」これを認識するのは僕であるし、会場に来ている皆さんかもしれません。 未来を創るリーダーは僕たちです。僕らがしっかりと現地に行って、現地の人たちのことを考えて、自分たちのやっていることを認識できればですね、僕らの持ってるパワーはすごいものがあると思います。きっと未来につながっていくんじゃないかと思います。 どうもありがとうございました。 (会場拍手)

  
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