ひとつの仕事に絞ることはリスクが高い

木暮太一氏(以下、木暮):G1の全体の方針に合っているのか、合っていないのかよくわからないセッションではありますが、各パネリストのみなさんの意見を引き出していきたいなと思います。じゃあ早速なんですが、一応モデレーターは喋るな、というのと、パネリストに自己紹介をさせるな、っていうのが本部からのお達しで来ておりますので、いきなり本題から入りたいと思います。

今回のセッションのテーマは、「新たな価値観が生み出すワークライフスタイル」ということで、各パネリストが今どういう仕事のスタイルをしていて、何を目指したそういう働き方にしているのかっていうことを、最初に整理を含めて聞いていきたいなと思います。では、古市さんから。

古市憲寿氏(以下、古市):僕は一応、社会学者っていう肩書で研究者をしているんですけど、研究者だけを仕事にしようと思ったことはあんまりないんですね。今、だから一応研究者として本を書いたりとかしながら、メディアとかにも出たりもしながら、友人と会社をやったりもしながら、いくつかのことを同時にやっているんです。これはべつに、何かを目指してこうなったというよりは、単純に一個だけのことに絞るって、すごく怖いなぁって思ったんですね。

特に例えば、大学の研究者って昔なら博士号を取って、もしくは取らなくても、大学に就職して定年まで勤めるっていう、ある種サラリーマン的に大学の教員ができた時代もあったんですけれども、今はだんだん子供も減っていて、大学も潰れていて、大学もいつまであるかもわからない。

大学の環境っていうのもどんどん厳しくなっているなかで、普通にサラリーマン研究者になるっていう選択肢が、あんまりぱっとはしっくりこなかったんですね。それで、だったら別に研究者だけをやるっていうよりは、元々仲が良かった友達と会社をやろうとか、他の業種とかも含めながらやろうという感じで、ここまでやってきて、なんとかダラダラきたらこうなったっていう感じです。

木暮:じゃあ最初から今の形態を目指していたわけではない? 

古市:わけではないです。

木暮:成り行きで、こう落ち着いて、今はこうなっているけど、っていう感じなんですかね? 

古市:そうですね。でも基本的に研究者って成り行きじゃないですかね。なろうと思って成功した人ってあんまりいなくて、年配の人を見てても。基本的には、なんかこんな立派な人になりたいって思ったよりは、成り行きで。

木暮:なるほど。じゃあ、最初の質問に戻りますけど、何を目指してこの働き方をしてますっていうことを一言でいうと何になります? 

古市:リスクヘッジですかね。一個のことに絞っちゃうと、それがだめになったときに怖いから、できるだけ人脈も資源も時間も能力も分散させようとはしてますね。

木暮:なるほど。ありがとうございます。じゃあ、続いて、慎さん。

自主企画で八戸から下関までマラソンで走った

慎泰俊氏(以下、慎):私は本業では、カンボジアで金融機関を子会社化して、あとスリランカでは自分たちで金融機関をつくって、現地の貧しい人向けに金融サービスをしてます。それをしながら、ずっとNPOをやっていてですね、もう7~8年間、こっちのほうが長いんですけど、これもそういった途上国の貧しい人向けに金融サービスを届けるとか。あと日本の、親と育てない子供向けに施設をつくるとか、そういったことをずっとやってきました……。何でしたっけ?

木暮:何を目指して、このワークライフスタイルを選んでいるか。

:やりたいと思ったときにやっちゃうんですよね。それと一緒に、やると決めたからにはちゃんとやろうっていう、変な真面目さがあってですね、ちゃんと形になるまで続けていると、いつのまにか2つのものをやることになって。あとは、本を書くとか、走るのも趣味なんですけど、そういうのをずっとやっています。

木暮:なんだっけ……。ウルトラなんとかマラソン? 

:勝手に、本州を上から下まで走ったんですよ。八戸から下関まで。

(会場笑)

木暮:自主企画? 

:自主企画で、走るためのお金はクラウドファンディングで集めるっていう、あまりお金のかからない企画でした。

木暮:最初の質問に戻りますけど、何を目指してこのワークライフスタイルを選んでいるのかって、一言でいうと何だと思います? 

:やりたいことをちゃんとやろうとしたら、こうなった。

木暮:なるほど、ありがとうございます。じゃあ、続いて、安藤さん。

集英社を辞めて、ノマド的な働き方を選んだ理由

安藤美冬氏(以下、安藤):お二人の話に、すごく共感というかわりと似た感じになるのかなって思ったんですけども。私もプロフィールは詳しく見ていただくとして、元々は集英社という出版社に20代を7年間勤めまして、『SPUR』というファッション誌とか『Seventeen』というティーン誌の広告の仕事をしたり、その後は、『週刊少年ジャンプ』のノベライズ版の宣伝とか、北方謙三先生とか、そういう大御所の方の本の宣伝を担当して、ちょうど今から5年前に辞めました。

私は今「スプリー」という私とですね、もう1人の、実質超マイクロ企業で、基本的にはフリーランサーとして働いているんですが、取引先が結構増えてきたので、それを法人化して、仕事をしています。30〜35%ぐらいは大学の仕事をやっています。多摩大学というところで、キャリア論とかメディア論を教えているんですけど、もちろん専門ももっています。

もう35%ぐらいは書く仕事をやっていまして、『DRESS』とか、そういったWebとか雑誌とかにいくつか連載をもったり、書籍を何冊か、今も執筆中だったりします。それ以外にも、企業さんからお仕事をいただいて、海外に取材に出かけたりとか、古市さんもかつて乗られたピースボートに水先案内人として、今年も1ヵ月近く乗ることが決まってたりとか、他にも企業さんのアドバイザー的な仕事や商品企画。本当にいろんなことやっているんですけども、元々は、わりと古市さんと気持ちは同じで、一つの肩書きとか一つの仕事に納まるのがすごくリスクだとも思ったし、ワクワクしないなって思ったんですね、単純に。

30代近くなると、昔からの友人が「本当は私、音楽の仕事がやりたかったんだよね」とか「本当は物書きをやりたかったんだよね」という会話がだんだん夜の時間に増えてきて、でも、それを一度に一つの人生でやれたら、一人の人間として、この生を充実できるんじゃないかなって、ずっと20代のときに考えて、悶々としてました。

ずっと自分を見つめていたような気がします。でも30歳を機に会社を辞めたときに、一つ決めたのは、やりたいことを全部やろうと。これは慎さんの気持ちと同じだと思うのですが、やりたいこと全部やろうと。

ただ、これをどう自分の中で整理をつけていけばいいんだろうって思ったときに、最近ネットサーフィンをしていて出会った言葉なんですけれども、「プロティアン・キャリア」という言葉を発見しまして。ギリシアの神話にでてくるプロテウスという神。変幻自在に何にでも姿を変えられるプロテウスという神からつけられた、「プロティアン・キャリア」という言葉で、全く一般的に浸透してはいないと思うのですが、つまり、変幻自在にいろんなキャリアを作っていくということ。

私は、元々ノマド的な生き方というか身軽に働く場所とか、時間とか、そういうものに囚われずにいろんな場所で働くっていう要素もすごくもっているんですけども、どちらかというと、キャリアの根本の想いはこの「プロティアン・キャリア」に近くて、一人の人間が時代の流れとか自分の想いの変化に合わせて、変幻自在にキャリアを作っていくっていう。

これの一番いいことはですね、ネットに書いてあったんですけども、外から何と言われようが、内的な欲求がすごく満たされることらしいんですね。この「プロティアン・キャリア」の一番の目指すところというか、いいことっていうのは、人からどう評価されるかとか、人からどう思われるかってことじゃなくて、内的な想いが満たされる。内的な充実度がすごく高まるっていうことだそうなので、これはまさに私のことだっていうことで、一応今日紹介させていただきました。

木暮:また同じ質問をしますけど、安藤さんが今のワークスタイルを目指したときに、得たいものは?

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