現代女性の理想像「エフォートレス・フレンチシック」

松井朝子氏(以下、松井):皆様、ようこそお越しくださいました。私、『ELLE』の編集長代理を務めております、松井と申します。本日はよろしくお願いします。こうして、ELLEの読者、ELLE Onlineのユーザーの皆様と直接お会いできる機会はなかなかないので、本当に嬉しく思ってます。今日はよろしくお願いします。

さて、この「おしゃれアイコンに学ぶ エフォートレス フレンチシック ビューティ講座」ではランコムが提唱する、エフォートレス・フレンチシックを体現するお2人のスペシャルゲストをお招きして、お話を伺いたいと思っております。皆さん本当に楽しみにいらして頂いていると思います。

まずお一人目はミュージシャンのシシド・カフカさん。そして、もうお二方目は作家の川上未映子さんです。ではお呼びいたしましょう。シシドさん、川上さん、お願いします。

松井:どうぞおかけください。

シシド・カフカ氏(以下、シシド):よろしくお願いします。

川上未映子氏(以下、川上):よろしくお願いします。

松井:よろしくお願いします。本日はお忙しい中、特別ゲストとしてお越し頂いて、本当にありがとうございます。

シシド:ありがとうございます。

川上:ありがとうございます。

松井:今日はいろいろお話を伺っていきます。さて、まずこのエフォートレス・フレンチシックとは何かということをちょっとお話させて頂きますと、「パリジェンヌ達のように自分らしくあることを大切にして、自分なりの人生哲学を持っている。自分の個性を知り、肩の力を抜きつつ、自由であることの美しさを謳歌している」そんな女性です。

例えば最近でいうと、ランコムのミューズの1人である、パリジェンヌのカロリーヌ・ド・メグレ。皆さんご存知ですよね。私も2回ほどお目にかかったことがあるんですが、本当にナチュラルで、エフォートレスな女性でありながら、自分らしさをすごく貫いている方で、モデルでミュージシャンのキャリアを重ねている方です。

パートナーともう大きな息子さんもいらっしゃるんですけど、常に世界中を飛び回っている、いきいき仕事をしている方で、最近、というか去年かな、『パリジェンヌのつくりかた』っていう本も、日本でも出版されましたよね。読んだ方も多いかなと思います。

古いものも自分らしく楽しむのがパリジェンヌ

松井:さて、今日のスペシャルゲストのお二方は、このカロリーヌ・ド・メグレさんに負けないくらい、エフォートレス・フレンチシックな生き方を体現されている方達です。川上さんもシシドさんもお2人とも、まさに自分らしさを貫いて今のようなお仕事をされている方々です。

まずお伺いしたいのは、カロリーヌ・ド・メグレの話を最初にしたんですが、シシドさん、川上さんにはお好きなフレンチアイコン、フランスの女優さんとかはいらっしゃいますか? シシドさん、どんな方がお好きですか?

シシド:そうですね。ぱっと思いつくのは、ジェーン・バーキン。

松井:ジェーン・バーキン。

シシド:うん、ですかね。はい。

松井:ジェーン・バーキン、今ちょっと後ろに映ってますが。シシドさん、どんなところが、ジェーン・バーキンの魅力だと思われますか。

シシド:そうですね、やっぱり単純に立ち姿がかっこいいっていうのもありますし、おしゃれでこう、颯爽となさっているところだったりとか、有名なバーキンありますけれども。

何て言うんですかね、よいものも経年変化っていうものも楽しみつつ、長く物事を楽しんでいる。1つ1つを自分らしく楽しんでいるっていう印象があるので、かっこいいなって思って。

松井:まさにパリジェンヌらしい方という感じですよね。実はイギリス出身なんですよね。知ってる方は多分多いと思うんですけれども。ですけれども、典型的なパリジェンヌというか、私達がイメージする、ナチュラルでエフォートレスな女性そのものという気がしますよね。

シシド:そうですね、うん。

美魔女のように取り繕わない、歳を重ねた美しさ

松井:川上さんにも先にお伺いしましょうか? どんな方がお好きですか?

川上:私はカトリーヌ・ドヌーヴがすごいかっこいいと思うんですよね。

松井:カトリーヌ・ドヌーヴね。

川上:ドヌーヴ。まず、すごい迫力があるんですよね。女性としての迫力なのか、人間としての迫力なのかがわかんないぐらい、迫力があって。若いときからあんまり芯がぶれてないというか、変わってないと思うんですよね。年齢を重ねるにしたがってどんどん、見た目もそうかもしれないけど、存在感が増している感じ。文句も誰も言えないような。

日本でいったら、美しい女性っていうと、どうしても美魔女の方向にいくじゃないですか。若さをずっとキープして、幼く見えてって。強い女ってやっぱり敬遠されるっていうのもあるし。1人でやっていけそうな女の人ってやっぱり皆こう避けられちゃうんですね。

ドヌーヴみたいな人のこの貫禄みたいなものっていうのは、やっぱりこれからどんどん日本の女性が「なんかいいな」と思うふうになっていけばいいなっていう、種類のタフネスっていうか、強い感じがしてすごく好きです。

松井:ドヌーヴは60年代初頭の若い頃は本当に美しい顔・形で。だんだん見ていくと、やっぱり本当に女性としてある意味、歳を重ねて、歳を取っているんですよね。でもその姿、老いてもなお女性らしさが全然老いてきてないというか、むしろ花開いているというか。

でも例えば、それこそ美魔女のように、頑張って繕ってはいない。そのまま体型もだんだん大きくなってますもんね。

川上:だから何か、「ドヌーヴって昔、すごいきれいだったよね」って言わせない今があると思いません? だから、昔の若いときの写真の顔とか見ても、若いからきれいっていうことにね、何か、満足してない顔してるの。

「私はそれだけじゃなくって、もっとどんどんよくなっていく」っていう意思が若いときからすごくある感じがする。だからこの人すごくかっこいい人なんだろうなって思って。その強さが多分、今現在にも多分みなぎってて、この自信に繋がってるんだと思うんです。誰にももう言わせないみたいな。

松井:そうですね。ジェーン・バーキンの在り方とカトリーヌ・ドヌーヴの在り方って、そういうふうにお話伺っていくと結構違いますね。同じエフォートレス・フレンチシックなパリジェンヌだとしても。

川上:おもしろいですよね、やっぱり。タイプの違う二大巨頭みたいな方がいらっしゃるっていうのは(笑)。すごいいいですよね。

オンオフ問わず自然体なジェーン・バーキン

松井:そうですね、シシドさんは、ジェーン・バーキンから何か影響を受けたこととかありますか。またちょっと違うのが映ってるんですが。

シシド:そうですね。彼女は女優であり歌手でもありというところで、ステージに立つっていうことも多いと思うんですけれども、そういうところでの彼女の顔と、あとそうじゃないインタビューを受けているところとかの映像を見ると、そのスイッチの入れ方っていうのが、すごく自然であり……そうですね。

松井:スイッチの入れ方というと、やはりスイッチを入れる必要があるんですか? ミュージシャンとしては。

シシド:ステージに立つときだったり、多分演じるときにももちろん、入れなきゃいけないスイッチっていうのは絶対的にあると思うんですけど、それをオフにしたときの彼女のその存在感というか、そこに立っている様っていうのがまた、内面が滲み出てるっていうか。もう本当にそのままそこに座ってらっしゃるって。

でも何にも、つくっていないというか。そこにそうやって座れるのは、やっぱりいろいろなことを自分自身でつかんで、自分の中に落とし込んでいったからだろうなっていうのは思いますね。

松井:なるほど。スイッチを入れてるけれども、それこそ肩の力はもう完全に抜けていて、私達から見てスイッチ入れてんなっていう気が全然しない方ですよね。

シシド:そうですね。普段しゃべってる姿を見たりとかすると、でもやっぱり内からこう、漂わせるオーラというか、そういってしまえば簡単なんですけど。っていうものがやっぱり、今まできっと培っていった、積み重ねていったものが、滲み出てるんだなと思って。

「いつもと違うメイクは、自分を違うステージに連れていってくれる」

松井:ジェーンのヘアーメイクとかはどうですか? ヘアーメイクで素敵だなって思うところとかって。

シシド:あんまり化粧っけがないですよね。ジェーン・バーキンって。

松井:はい、基本的にないですね。

シシド:うん。でも何かそれでも、紅いルージュを引く瞬間があったりとかして、女っていうものを忘れていない感じというか。ちゃんと押さえるところを押さえているっていうか。っていうところも素敵ですよね。

松井:何かこう、それこそオンオフの切り替えじゃないですけども、昼間のナチュラルな感じと夜のちょっとこうナイトアウトな感じというか。女らしい感じみたいな切り替えですかね。

シシド:そうですね。

松井:シシドさんご自身もそういうメイクはお好きで、いつもされてるんですか? 自分で?

シシド:本当に簡単なものだけですね、私は普段やっているのは。ただやっぱり、どこか特別なところに行くっていうときにする、ちょっといつもと違うメイクっていうのはまた、自分をちょっと違うステージに連れていってくれるというか。楽しいことですよね。

松井:例えばそういうときは何をちょっと変えるんですか、いつもと。

シシド:ライン。アイラインの引き方と、あとは、口紅に色を乗せるかどうかっていう感じですかね、うん。

松井:アイラインをちょっと特別に引いて、リップをちょっと赤にスイッチする。

シシド:そうですね、いつもより強めの色を乗せることが多いですね。

どんなメイクでもにじみ出る自信が美しさに

松井:うん。そしたら、カトリーヌ・ドヌーヴのお顔もちょっと見てみましょうか。

松井:これは1964年当時のちょうど『シェルブールの雨傘』のときのドヌーヴのELLEの表紙ですね。川上さん、このお顔、先程ちょっと一筋縄ではいかないお顔だっていうお話で出たんですけれども(笑)。

川上:(笑)。

松井:魅力的だなって思うところってありますか?

川上:やっぱり多分ね、その人の素敵さって、何か1つだけ取りだしてもうまく言えないと思うんですよね。ヘアスタイルとかそのときのファッションとか。あと写真によったら、その全体の写真のムードとかトーンとかもあると思うんですけど。

でも彼女の場合は何なんだろうな、やっぱり目なのかもね。若いときでもさ、若いのかそうじゃないのか、わかんないような顔をしてるのね。

だから「あ、こういうメイクをしてるからこういうふうになりたいんだな」とか、「こういうふうに見られたいんだな」とか、「こういう気分なんだろうな」っていう、こっちの解釈とかもあんまり必要としてないっていうか。どんなメイクをしていても、やっぱり彼女の強さが出てる感じがするの。だから、何ていうのかな……。ねえ、この感じってどこからくるんでしょうね?

松井:ね~。本当、若いのにもう自信がみなぎってるというか、そういう印象はありますよね。確かにそして、目が強い。やっぱり睫毛ですかね。

川上:うん。だから何か1つっていわれると、やっぱり目、睫毛だと思いますね。でも多分、彼女は睫毛をそんなにしてなくても、同じくらいの強度を持ってると思うのね、美しさのね。それやっぱり引き立たせるって感じで。

松井:そうですね。まず、女性としてみなぎる自信が彼女のこの若い頃の美しさとなって表れてるのかもしれないですね。

川上:うん、そんな気がする。