アフリカ系の人々の「国際の10年」

司会:まず初めに、国連広報センター所長の根本かおるさんです。

根元かおるさん(以下、根元):よろしくお願いいたします。

(会場拍手)

司会:いろいろお仕事についてなどもお伺いさせてください。そして2015年ミスユニバース日本代表、宮本エリアナさんです。

宮本エリアナさん(以下、宮本):よろしくお願いいたします。

(会場拍手)

司会:お願いします。宮本さん、書道五段なんですか?

宮本:五段持ってます。あははは(笑)。

司会:いろいろお話をお伺いしていきたいと思うんですが、今、お客様はこの作品をご覧になってくださったばっかりということですので、お二方にもご覧いただいたご感想をお伺いしたいなと思っています。根本さんいかがでしょうか?

根本:私はもう、この映画のパワーに圧倒されてですね。しばらくずーっと頭の中を主題歌の『Glory』が駆け抜けてたんですけれどもねぇ(笑)。

司会:わかります!

根本:この映画は、国連で特別上映会も催されまして、そして潘基文(パン・ギムン)事務総長も見てるんですね。

先ほどご紹介にもありましたように、今年2015年から2024年まではアフリカ系の人たちのための国際の10年としています。これは、アフリカ系の人たちの権利がまだまだ十分に実現されていないということで、力を入れていこうという取り組みです。

北米と中南米、あわせて2億人の人たちがアフリカにルーツを持つと言われていまして、他の大陸も合わせるともっともっと数は多くなります。でも残念ながら、いろんな形で排除、差別を受けているのは、この人たちが特に多いということで取り組んでいるということです。

キング牧師のことを深く知ることができた

司会:ありがとうございます。宮本さん、いかがでしたか?

宮本:本当、ひと言で言うと「感動した」というひと言で。私も今、人種に対する問題を世界中に伝えようという活動をしていまして。

改めてこの映画を見て、自分が今後どうしたらいいのかを考えさせられましたし、人種というのをもう一度改めて考えさせられるきっかけになりました。すごく感動しました。

司会:キング牧師のことはご存知でした?

宮本:そうですね。私も黒人ということがあって、知ってはいたんですけども、とことん深く活動について知ることがなかったです。今回『グローリー/明日への行進』が出ると聞いて調べたんですけど、やっぱり素晴らしい方だなと思いました。

司会:お客様の中にも、今回ご覧になって、「あぁ、こういう人だったんだ」と深く知った方が多いと思います。根本さん、いかがでしたか?

根本:この映画は、ただ「こんな偉いことをした」というのではなくて、一人の人間としてどう悩んで、夫婦間の問題もいろいろありましたし、いろんな仲違いもあったり、いろいろありましたよね。

そういったものを乗り越えて、大きな成果をあげるまでの道を描いているので、私自身「こんな苦しいことあったな」あるいは「こういうふうに思ったな」「こういうふうに乗り越えればいいんだみたいな」という秘訣を学ぶこともできる映画かなとも思いました。

女性が描かれているのも面白い

司会:先ほど仰ってくださいましたけれども、葛藤だったり仲違いもあったりして、女性の目から見ると「奥様も大変だな」と思ったりしますよね。

宮本:そうですねぇ。

根元:ねえ。

宮本:でもこの映画はオプラ・ウィンフリー(アニー・リー・クーパー役/製作)も出ていたりして、偉人の物語はとかく男性ばかりが主人公として描かれることが多いかなと思うんですけれども、しっかり女性の姿も描かれていて、その辺も面白く観ました。

司会:しかも監督さんも女性の監督さんで。

宮本:同じ女性からすると嬉しいですよね。

根本:まだまだハリウッドで女性って、マイノリティじゃないですか。

名スピーチ「I have a dream.」の意味

司会:といったように、いろんな女性の方が今回活躍している作品でもあるんですけども、やはり印象的なシーンと言えば、あの行進のシーンだと思うんですね。

歩くことで世界を変えようとしたキング牧師なんですけど、人種も宗教も違う老若男女が手をつないでというあのシーンは、ご覧になっていかがでした?

根本:まさにああいうことだと思うんですね。そのグループに属する人だけで声を上げていっても全然変わらない。それが立場を超えて横に広がった時に、初めて歯車がカチっと噛み合って物事が動くんだなぁなんて。

宮本:言葉じゃなくて歩くだけでっていうのが、私はすごい心に響きましたね。

自分も今は言葉で訴えてはいっているんですけれど、私がユニバースに出たことで勇気をもらえたという人もいるので、言葉だけじゃないなって改めて思いました。

司会:自分の行動で、そして歩くという誰もができるというその行動で示していたのは大変感動するものがありました。

その一方で、やはり言葉の力もキング牧師はすごかったということで、あの有名なスピーチとか、心に残った言葉やシーンなどがあれば教えていただきたいです。根本さん、いかがですか?

根本:言葉の力もあるんですけどね。私は主人公のデビットさんの目力にやられちゃいました。目に吸い込まれちゃって、えへへ(笑)。

司会:7年間役作りをしてたということですからね、それだけ情熱も入っているかと思います。宮本さん、いかがですか?

宮本:有名なと言うとあれですけど、「I have a dream.」っていうのは本当に見ていても思いました。これから自分がどうしたいということも、明確に夢があるからこそ、行動に移せるんだなと思いましたね。

一度もっと明確に「何かこうしたい!」というものを見つけれたらなと思います。

現在でも黒人差別は解消されていない

司会:ありがとうございます。そしてここは根本さんにお伺いしたいところなんですけども。本作の舞台は1965年、ちょうど今から50年前なんですね、この50年でアメリカではオバマ大統領という初の黒人大統領が誕生して、歴史は大きく変わったと思います。

でもやっぱり、人種差別が原因となった事件が起きていることもニュースで流れていたりすします。根本さんにはこの今の世界的、社会的に見て、人種差別の現状はどういうものかを教えていただけないでしょうか。

根本:これは言うは易く行うは難しで、1948年にできた世界人権宣言で、まさに「肌の色によって差別があってはならない」と言っているのですが、その当時の現実を考えると、アパルトヘイトもあったし、まだまだアジア、アフリカには植民地だらけだったし、明確なヒエラルキーがあったわけですよね。

それから時間をかけて、ようやく世界の現実が、世界人権宣言の中身に追いつきつつあるけれども、今もアメリカなどから黒人をターゲットにした警察の暴力などが悲しいニュースが伝わってきて、暴動も起きてしまったりしてるわけですよね。

まさに今日的な問題として、まだまだ粘り強く、忍耐強く言い続ける、声を上げ続けるということが必要だと思います。

司会:ありがとうございます。今のお話を聞いて、宮本さんいかがですか?

宮本:本当に、まさにそうだなと思いました。人種に対する問題も、いろんな問題もすべてそうですけど、誰か1人が1回言ったからそれで終わりというのではなくて、それをみんなでどんどん広げていって訴え続けるというのは、本当に大切だなと思います。

ハーフであることがコンプレックスだった時代

司会:ありがとうございます。そう仰ってくださった宮本さんも、今ではハーフの女性タレントの皆さんがご活躍ですけども、かつてはハーフでいらっしゃったことに色々悩みや葛藤もおありだったと伺っています。

宮本:はい。私は黒人と日本人のハーフなんですけれども。やっぱり見た目がどうしてもいわゆる日本人ではないということで、学校でも肌の色が私だけ違うのが。まぁ、イジメって言えばイジメなのかな? プールでも「肌の色が移るから一緒に入らないで」とか言われてきてたので、やっぱりそういった思いはありましたね。

司会:でもそういったバックグラウンドが、今回ミス・ユニバースに応募されたきっかけにもなりましたか?

宮本:そうですね。本当は出るつもりも全然なかったんですけど、私に白人と日本人の男の子のハーフの友達がいたんですね。その子が自ら命を断ったということがあって、その人とも人種に対することで相談を受けていた中だったので、自ら命を断つというのは、すごく自分の中でショックで。

それを止めれなかった自分もすごくもどかしくて、今回ミス・ユニバースという大きな舞台を使って世界に訴えていけないかなと思って出場しました。

司会:そうだったんですね。根本さん、今の話聞かれていかがですか。

根本:キング牧師みたいですね。

一同:あははは(笑)。

根本:本当に自分の行動で周りを変えよう、あるいはそのお友達の気持ちを何らかの形で昇華させようという部分で、まさに行動に移してらっしゃって、素晴らしいと思います。

宮本:ありがとうございます。

司会:世界大会はいつになるんですか?

宮本:世界大会はまだ何も決まってなくて。場所も日程も、本当に何もまだ決まってないですね。

司会:そうなんですね。じゃあ、まだ未定ですけれども、世界大会に向けてもっともっとご活躍を、私たちもお祈りしたいと思います。お二人とも貴重なご意見ありがとうございました。

一人ひとりが自分らしく生きられる

司会:それでは最後にですね、お二人にご用意いただいているものがありますので、ご紹介していただこうと思います。スタッフの方には今フリップをお持ちいただきました。

キング牧師は平等な未来を夢見て「I have a dream.」という有名な演説を行いました。そこで、「お二人が夢みる未来はどのようなものですか?」という質問を事前にさせていただいております。そして本日は「I have a dream.」にかけて、それぞれお持ちの夢をここでご紹介いただこうと思います。

じゃあまずは「せーの」で開けてもらえますか。じゃあいきましょう。せーのっ! 開けました! 後ろの方は読めないかもしれないので、きちんとお2人からお伝えいただこうと思います。ではまず根本さんお願いします。

根本:私は「一人ひとりが自分らしく生きられる社会」です。やはり男であろうが女であろうが、白人であろうが黄色人種であろうが、黒人であろうが、LGBTであろうが、ストレートであろうが、身障者であろうが、なんであろうが一人ひとりが自分らしく生きられる、そういう世の中を目指したいと思います。

司会:具体的には何かご活動の中で、今後お知らせするような事はございますか?

根本:今年は国連ができて70周年なんですよね。こうした人権の話のみならず、平和のために国連がやってること等々、力を入れて皆さんにお伝えしたいなぁと思っています。

まずは自分自身を愛して欲しい

司会:ありがとうございます。それでは宮本さん、お願いします。

宮本:「Love yourself」です。人のことを救いたいという方は本当にたくさんいらっしゃると思うんですけど、まずそういうことをする前に、まず自分を大事に愛してほしいなと思って。

自分を愛さない人って他の人を心の底から愛せないんじゃないかなと思うんですよね。私も今までハーフのことがコンプレックスで、自分自身好きじゃなかったんです。

でもあるきっかけで、自分のことをすごく好きになった。そこから今やっている、ミスユニバースに出よう、人前に出よう、こういった活動しよう、と思えるようになったので、やっぱり一人ひとりが、まず自分を愛して欲しいなと思います。

司会:ありがとうございます。世界大会はまだ未定ということですけど、今後皆さんにお知らせするようなご活動とか、具体的にこんな事していきたいなぁという思いってございますか?

宮本:具体的にはまだないんですけど、昨日、アメリカ大使のケネディさんとお会いすることがありまして、ケネディさんから「これから一緒に仕事がしていけたらな」という言葉をもらったので、そういう活動もして、世界に向けてどんどん自分をアピール、そして日本をアピールしていけたらなと思います。

司会:ありがとうございます。皆さん本当に、心にしみるお話ができました。貴重なお話、どうもありがとうございました。

一同:ありがとうございました。

(会場拍手)