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「虫が付いてる野菜は美味しい」は嘘 エンジニア思考で考える新しい農業

「虫が付いてる野菜は美味しい」は嘘 エンジニア思考で考える新しい農業

古荘貴司氏は、無農薬・無化学肥料栽培による栽培方法について研究し、実証実験を行ってきました。古荘氏は、無農薬栽培が難しいと言われていたキャベツの無農薬栽培に成功。無農薬だと虫がつくと言われていますが、実際に無農薬で綺麗に野菜を作ると虫がつかないということにも気づきました。古荘氏は数多くの人に美味しい野菜を届けるために、無農薬・無科学肥料の畑を広げるための活動をし続けます。(TEDxYouth@Kobe2014 より)

スピーカー
株式会社日本情報化農業研究所 代表取締役 古荘貴司 氏
参照動画
To face problems as an engineer | Takashi Furusho | TEDxYouth@Kobe

農業者はエンジニア

古荘貴司氏 皆さん、美味しいご飯好きですか? 好きじゃない人っています? いたらちょっと悲しいんですけど、好きですよね? 美味しいご飯って、材料、何でできていると思われます?  gazou 02 種とかいろいろありますけど、肥料も大事な材料です。肥料って何からできていると思われますか?  gazou 03 肥料っていってもいろいろありますけど、例えば、この中のいちばん主だった化学肥料の中では、窒素肥料というものがあります。これはかなり割合が天然ガスから作られています。 gazou 04 例えば、自動車。自動車がどういうふうに作られているか。最初は鉄鉱石だったものから、工場で鉄の板を作って、その鉄の板を加工して、自動車ができる。 gazou 05 これを農業に置き換えてみると、畑っていう生産設備に種とか肥料とか、そういった原材料を投入して、目的のものを栽培する。いっしょなんですね、構造。だから農業者っていうのはエンジニアです。 gazou 06 生産設備を使って、材料から目的のものを作るエンジニア。そうですよね。皆さん、農業ってどんな産業だと思われますか?  gazou 07 日本国内に限った言い方になりますけど、担い手の高齢化だとか、国際競争の激化、あとはこういうふうに使われていない畑がどんどん増えてきてしまっている。いろいろ問題が多い産業。そういうイメージをお持ちの方がたくさんいらっしゃると思います。 10年ほど前になりますが、農作物の流通の仕事に携わったことがありまして、そこでそういった問題に身近に接することができました。さきほど「農業者はエンジニア」という話をしましたが、エンジニアだったら、問題に接したときに、問題の解決は技術でしたい。 エンジニアだったら、そう考えるものです。今日は、今までどういうふうに技術開発に向かい合ってきたのかについて、お話します。でも、皆さんは農業についてあんまり興味を持たなくていいですよ。競合が増えても嫌なんで。他の業界だったら、どういうふうになるのかなぁと考えて見てください。

野菜の無農薬栽培はひじょうに難しい

gazou 08 さて、こちらのグラフ。これが、農薬と化学肥料の、ここしばらくの値段の推移なんですけど。どんどん値段が上がってます。特に肥料の値段ってすごい上がり方をしているんですね。 gazou 09 gazou 10 農薬・化学肥料を使わないで、美味しい野菜を十分な量作れたら、これはどういう農業を営むかということにあたって、すごく魅力的な選択肢になります。 gazou 11 でも、野菜の無農薬栽培ってひじょうに難しいって言われています。品目にも依りますけど、ひじょうに難しいって言われている。無農薬栽培の野菜ってどういうイメージですか? 農薬を使わないと、絶対に虫が付いてしまう。 無農薬で育てようと思ったら、虫を手で取らないといけないから、すごく手間が掛かる。だから、高く売れても割に合わない。そういうふうに思われていることも多いかと思います。流通の仕事をしていたときも「無農薬栽培なんて無理だ」って、皆さんおっしゃられていたんですね。日本国内での野菜の流通量・生産量のなかで、無農薬栽培の割合って、0.2%。 gazou 12 若干、古いデータなんですけども、0.2%って言われています。これは、政府から認証を受けているものだけなので、実際には認証を取らずにやっている部分もありますし、ちょっと古いデータなので、今はもうちょっとあるかもしれないですけど、それでもごく僅かです。だから、実際に難しいんですね。作っている人がすごく少ないんですよ。 じゃあゼロかというと、ゼロじゃなくて、京丹後市。流通のときに出会った、京丹後市の青木さんという方が、無農薬・無肥料で、ものすごく素晴らしい野菜を作っていらっしゃったんですね。 もし、青木さんがしていらっしゃることが誰でも・どこでもできるようになったら、いろんな問題の解決につながるんじゃないか。それがスタートでした。そう思って、生命科学の知識のあるメンバーを会社に迎え入れて、2年間、青木さんにも頼み込んで、調査させて下さいとお願いして、何が畑で起きているのかを調査させてもらいました。 そうしたら、いろんなことがわかったんです。場所は変えて、奈良県の桜井市。 gazou 13 ここで、ちょうどその調査が2年間、終了したときに、その調査にあたるメンバーの大学院の同級生が、農家出身でもないし、農業の経験もほとんどないという状態で、いきなり農業を始めたいって言い出したんですね。 gazou 14 「セレクトファーム」っていう名前で農場を始めたんですけども、協力関係を築いて、そこでいっしょに研究開発をやっているんですけども、そちらに2年間の調査のデータを全て渡したんです。 じゃあ何が起きたか。1年目からできたんですね。キャベツって数ある野菜のなかで、特に無農薬栽培がひじょうに難しいって言われている品目のキャベツも含めて、初年度から無農薬でいいものができたんですよ。 gazou 15 これは今年の夏のバジル。 gazou 16 これは去年の大根ですかね。今までも過去に、このセレクトファームでは60〜70品目くらいの野菜を栽培してきています。

「野菜は虫が付いているほうが美味しい」は嘘

gazou 17 写真は数年前のブロッコリーなんですけど、これは今ちょうど採れているブロッコリーですね。 gazou 18 さきほど、無農薬だったら絶対虫が付くみたいなお話をしましたけど、虫が付かないんですよ。ほとんど付かないんですね。綺麗に作ったら。 よく、虫が付いている野菜のほうが美味しいみたいな話ってあると思うんですが、あれは嘘です。虫は付いていないほうが絶対に美味しいです。人間が美味しいと思うものと、虫が美味しいものって違うので。虫が美味しいと思うものは、たいてい人間にはそんなに美味しくないです。 無農薬でも綺麗に作ったら、美味しくて綺麗なものができて、しかも虫が付かないということは、虫を取るような手間も掛からないんですね。当たり前ですけど、農薬を撒く手間も掛からないんですよ。 農薬を撒くって重労働ですよ。薬を撒くので、夏でも全身レインコートみたいなものを着込んで、重い噴霧機と農薬の入ったタンクを背負って、撒かなきゃならないんですよ。大変なんですよ。それもしなくていい。 こちらのブロッコリーのときは、生育が早かったものだから、雑草よりもブロッコリーのほうが強くて、雑草を抜く手間もほとんど掛からなかったというふうに聞いています。これはブロッコリーなんですけど、これはキャベツ。今できているキャベツ。こんなふうにできるんですよ。わかります?  gazou 19 これ、その辺で買ってきたんじゃないですよ。ちゃんとセレクトファームでできたキャベツですよ(笑)。

未経験でも正しい知識があれば無農薬・無化学肥料栽培ができる

まだ、これからクリアしていかないといけない問題ってたくさんあるんですけれども、現時点でもう、二つの大きな壁は越えてこれたかなっていうふうに思っています。 一つは、そもそも無農薬・無化学肥料でこういったものを作ることができるということ。どこでも。もう一つは、未経験でも正しい知識さえあれば、できるということ。 もちろん、そこをスタートとして経験を積むことで、さらに上を目指すということはあると思うんですけど。未経験でも正しい知識さえあれば、ある程度のものは作れる。 その二つのことは、もうわかったかなと思っています。でも、この二つは常識からは外れていますよね。始めるときにも、偉い先生とかベテランの方には、そんなん無理だから止めとけ、みたいな話って結構あったんですけど、もしそういった言葉を信じていたら、今ここまでさえも辿り着けていなかっただろうなぁと思います。 gazou 20 常識を疑えっていうと、なかなか簡単なんですけど、どちらかというと、どういうふうに常識を疑うかっていうところがひじょうに難しいな、と感じてまして。 今日、いいところばかりお話したんですけど、実際はもちろん失敗とか大変だったこともたくさんあるんですね。そういったときに役に立つのは、やっぱり目の前にある現象を見たときに、それを説明できる、どういう根拠が必要なのか。 さらにその根拠の裏もあたってみる。その根拠を元にしたら、例えば、ここが違う場合になったら、どういうふうに状況が変わるのか。そういうふうに話自体も組み立て直す。そういった力がひじょうに大事なんだなっていうふうに感じています。 だから、偉い先生とかベテランの方がお話されていることでも、よくよく突き詰めていってみると、実は根拠に曖昧な部分があったりとかってことが結構ありまして、それってすごいチャンスだと思うんですよ。 そこをちゃんと正しい根拠に置き換えてやれば、新しい世界がひらけるんですね。だから、そういったところで、まだまだ切り開いて行ける道はたくさんあるんじゃないかなっていうふうに感じています。 これは、3週間ぐらい前なんですけど、背丈の倍ぐらいある笹の林を張り倒してきました。すっごく大変だったんですけど。 gazou 21 こんなふうに少しでも、美味しい野菜を多くの方にお届けできるようにするために、今は会社でも畑を作って、広げていくことを計画しています。ありがとうございました。 gazou 22

  
※ログミーでは、TED Talksおよび各TEDxの定めるCCライセンスを遵守し、自社で作成したオリジナルの書き起こし・翻訳テキストを非営利目的のページにて掲載しています。
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