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ネットはグローバル市場をどう変えていくか? 2種類の”コンテクスト”で読み解くこれからのブランド戦略

ネットはグローバル市場をどう変えていくか? 2種類の”コンテクスト”で読み解くこれからのブランド戦略

インターネット時代のブランド戦略はどうあるべきか? ブランド戦略のプロである山口義宏氏と、インターネットのプロである尾原和啓氏が、「ローコンテクスト」「ハイコンテクスト」という2つのキーワードを元にその実態を紐解いていく。

シリーズ
NHK出版 > 10分対談
2014年1月28日のログ
スピーカー
ブランドマーケティング戦略コンサルタント 山口義宏 氏
楽天株式会社 執行役員 尾原和啓 氏

グローバルブランディングと、日本的ハイコンテクスト

尾原(以下、尾) 山口さん、こんにちは。本(『ITビジネスの原理』)、どうでした? 山口(以下、山) 今日、尾原さんと話したかったのは、本に出てきた”ハイコンテクスト(コミュニケーションの基盤である言語・知識・体験・価値観・ロジック・嗜好性などの共通性が高いこと)”の話です。言葉の意味は断片的に理解していたけど、僕の場合は、それが本質的にビジネスにどう影響しているのかを掘り下げていなかったんだなと気付かされました。 尾原さんは本の中でアメリカのような国は、移民が多く、文化も異なる人たちが共存しているのでローコンテクストと書いていらっしゃいましたが、僕がブランドコンサルティングの仕事をしていて特に思うのは、日本の企業がグローバル化していくときに、どうしても我々日本人はハイコンテクストな社会で無意識で共有しているものが前提のコミュニケーションになってしまいがちなんです。 ハイコンテクストでしか通じない価値の発信の仕方をしてしまうことがある。本を読みながら思い出したのは、グローバルな価値観の調査結果ですが、全世界の人に本当に共通している価値観って意外と多くないんですよ。たとえば「家族への愛」とかは結構本当に普遍的なことなんですよね。 やっぱりグローバルにうまくブランディングできているブランドというのは、ローコンテクストでも通用するような、普遍的な価値訴求がうまい。それこそP&Gのパンパースなんかも「母が子供を思う気持ち」、ユニリーバのAXEは、男性が持つ「多くの女性に同時にモテたい」という、世代や人種を超えて共感される価値にフォーカスしている。  すごく面白い。実は、グローバルで普遍的な共通の価値観はいくつかあって、そこをうまくくすぐる、と?  グローバル化するほど、普遍的なことをくすぐるブランドコミュニケーションにならざるをえない。ネットによってエリアの壁がなくなりフラットになったことで、ローコンテクストなコミュニケーションでグローバルな共感を得ることもできるようになったし、それが重要になった。  テキストでもうバーンとできちゃうしね。

ネットが生み出したハイコンテクストの価値

 とはいえ、今までは企業と生活者が触れ合うメディアがマス広告中心だったのが、SNSやTwitterのように日頃からもっと細かい、よりハイコンテクストな情報にも触れられるようになりましたからね。 ブランド・コンサルティングの仕事に置き換えると、インターネット環境の浸透によって、生活者に密着して触れ続けるハイコンテクストな価値訴求と、エリアを超えて普遍的な価値を訴求するローコンテクストなグローバル市場のブランディングの両方が実現できる環境が整ったということですね。  結局グローバルに出ると誰でも通じるために一回ローコンテクストのテキスト価値だったり、機能価値、数値価値に落とさないといけないということにぶつかる訳ですよね。もちろんこれはこれで売れる世界があって、多分Amazonなんですよね。 一方でハイコンテクストの部分が出しにくいかというと、ここで思うのは、これからのギガビット・インターネットできれいな映像が送受信できるってこともいいけど、常時接続の価値があると思うんですよね。スマートフォンでダラダラとつながっているからこそ、写真をずっと送り続けたり、非言語でなんとなく共有し続けていると積み重なって出来上がるアセットが作れるんじゃないかと思います。 ハイコンテクストで一つ面白い話を思い出しました。TEDxで、イランとイスラエルがいさかい合っている時に、イスラエル人が子どもを抱えた写真で「私、イラン人のことが好きなの」という写真をFacebookにアップしたら、今度は逆にイラン人が「イスラエル人のことが好きよ」とアップした。それで心理的な距離が縮まってくる。この例のようにグローバルで共通するハイコンテクスト領域はどのぐらいあるんでしょうね。

“ニッチ”がマーケットになった理由

 多分、ハイコンテクストだけじゃなくローコンテクストを含めて、あらゆることが増幅していると思います。インターネットで情報はすぐ伝播しますし、それこそプロダクトもすぐにグローバルで情報リリースされるので、グローバル調査をするとイノベーターやアーリーアダプターと呼ばれる各国の先進層の地域特性が昔より減ってきているんですよ。  へえ。  ある程度の先進国のイノベーター~アーリーアダプターならアップルが好きだし、スターバックスも好きです。そういう消費者のプロファイルを分析すると、ある程度の高い所得を持つ層のイノベーター~アーリーアダプターはエリアを超えて似てきているから、それを横串で刺すと各国ではニッチだった人たちがグローバルにはすごく大きい規模になる。インターネットによって、ニッチな塊を横串した施策が実現しやすくなり、大きなマーケットが出来てきたなという印象があります。  ある意味、そのマーケットにおける最大のECがKickstarterな訳ですね。  そうですね。だからある意味、ハイコンテクストに依存したブランドもそこにセグメンテーションしてグローバルにやってくと、独特の何かを作っていけるブランドもたくさんあるなと思います。  昔はそういうことをトライブ(部族)と言っていましたよね。僕みたいなうなじフェチというトライブもそうですけど(笑)。そこは深堀りすると超面白いですよね。  色々な物事を考える重要な線、整理する時の軸として、尾原さんが提示してくれたハイコンテクスト、ローコンテクストという話はコミュニケーション環境とか考える上でとてもいいなと思いました。

  

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おばら・かずひろ
楽天株式会社執行役員・チェックアウト事業長。1970年生まれ。京大院で応用人口知能論講座修了。マッキンゼーを皮切りに、NTTドコモのiモード事業立ち上げ支援、KLab取締役、リクルート2回、Googleなどの事業企画、投資、新規事業など歴任。現職は11職目になる。「TED」の日本オーディションに従事するなど、IT以外にも西海岸文化事情にも詳しい。
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