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「寝不足な人ほど脳内に毒素がたまる」 睡眠の研究者が語った、眠りを大切にすべきもうひとつの理由

「寝不足な人ほど脳内に毒素がたまる」 睡眠の研究者が語った、眠りを大切にすべきもうひとつの理由

「脳を回復できるのは睡眠だけである」と語る、神経科学者のJeff Iliff(ジェフ・イリフ)氏。脳内の老廃物を除去するという睡眠がもつ重要な役割を紹介し、人間にとって睡眠がいかに大きな意味を持つかを解説します。(TEDMED2014より)

スピーカー
神経科学者 Jeff Iliff(ジェフ・イリフ) 氏
参照動画
よく眠る事が大切なもう一つの理由

脳を回復できるのは、睡眠だけ!?

2015-04-27_145555 ジェフ・イリフ氏 「睡眠」それは私たちが人生の3分の1を費やして行うものです。しかし、睡眠について本当に詳しく知っている人はいるのでしょうか? good-night-sleep1 2000年前、古代最も高名な医学研究者の1人ガレノスは、私たちが起きている間、脳の原動力は液体であり、その液体が脳から身体の隅々まで行き渡って身体を活性化させていて、脳は枯渇するという仮説を唱えました。 そして彼は、我々が寝ているときは、その身体へと行き渡った水分が戻ってきて再び脳を潤し、新たな活力を与えると説明しました。現代の私たちにとってそれは、完全に馬鹿げて聞こえますが、ガレノスは単に人間が毎日行う睡眠について解明しようとしていたのです。 私たち自身の体験からわかることですが、睡眠によって気持ちはすっきりし、寝ないと逆に、頭がぼんやりした感じがします。 ガレノスがいた時代と比べて現代にいる私たちは、睡眠についてずっと多くのことがわかっているのです。しかしまだよくわかっていないのは、あらゆる身体活動の中で、睡眠だけが驚くべき脳の回復機能を持っているということです。 本日皆さんに共有したいのは、この脳の回復機能についての疑問に一筋の光を当てる、最新の研究についてのお話です。睡眠が、他の器官にはない脳の基本的で特有なニーズに、しっかりと応えるということを我々は発見したのです。

全ての器官は、老廃物の排出が必要

我々が目にする生物学のほとんどは、問題とその解決策の一連にあると言えます。ひとつひとつの身体器官が解決していかなければならないのは、体中の細胞への継続的な栄養供給です。 そして、その中でとても重要な役割を果たすのが脳であり、それは生死に関わります。脳の電気的な活動は、身体の全エネルギーのうちの4分の1を使いますが、質量は体重の2パーセントしかありません。循環系は血管を通して栄養や酵素を身体の隅々に送り、栄養配給の問題を解決します。 good-night-sleep2 実際にそれをこちらのビデオで見られます。ここには生きたマウスの脳内系血管が映し出されています。血管は複雑なネットワークを作り、脳全体を埋めています。脳の表面から、はるばる組織の奥深くまで入り込み、広がるにつれて酸素を脳の細胞一つひとつに供給します。 個々の細胞が活動をするために栄養が必要なように、全ての細胞はまた、副産物として老廃物を排出し、それがどの器官も持つ2番目の基本的な問題なのです。

脳は老廃物をどう除去するのか

good-night-sleep3 こちらの図は、人体のリンパ組織を表しています。老廃物排除のために進化した組織です。血管に次ぐ並列ネットワークが体中に広がっています。リンパ組織はタンパク質やその他の老廃物を取り込み、血液の中に入れ、排出することができます。 この図をよく見てみると、何か納得のいかないものが見えるのではないでしょうか? この人体図の頭内を拡大するとわかることの1つは、リンパ管が脳にはないということです。全くおかしな話ではないでしょうか? 脳はこれだけ活発な器官であるのに。 また脳は、大量に排出される老廃物を効率的に排出していかなければなりません。なのに脳にはリンパ管がなく、つまりは老廃物排除の仕方は、脳内では体と異なるということです。 ではどうやって脳はこの問題を解決するのでしょうか? その一見何でもないこの疑問が、我々グループが最初にこの研究に臨む一端となりました。脳内をのぞいてみて、ニューロンと血管の間に想像もしていなかったような、老廃物排除の解決法があることがわかったのです。 それは想像を遥かに超えてよくできていて、そのうえ美しいのです。我々が発見したことをお話します。 脳には大きなプールがあり、そこには無色透明の脳脊髄液(CSF)という液があります。CSFは脳の周りを埋め、脳内からの老廃物はCSFに吸収され、他の排泄物とともに血液中に排出されます。そのあり様はリンパ系にとても似ています。

脳内におけるリンパ管の役割

でもおもしろいのは、その液や老廃物は脳内からきていて、むやみにCSFに染み出すわけではなく、特別な循環システムを形作っているのです。それが組織化してこのプロセスを行っています。次のビデオでそれを見ることができます。 good-night-sleep4 good-night-sleep5
こちらもまた生きたネズミの脳内を映し出したものです。左手に見えるのが脳の表面で起きていることです。そして、右手に見えるのが脳表面下の組織内で起きていることです。
赤いのが血管であり、脳を囲うCSFは緑です。脳の外側にあるCSFは、外側には留まり続けないということです。その代わりにCSFは血管の外壁沿いに脳中を流れ、脳内に入り込みます。その過程で、脳細胞の間から出る老廃物を排出する手助けをします。 よく考えてみると、このような血管の外壁を利用するという方法は、実によくできた解決策だと思います。なぜなら、脳は頭蓋骨の中に詰まっており、ぎっしりと細胞が広がっていて、中には余分な空間はなく、血管やリンパ管組織を格納する余裕がないのです。 good-night-sleep6 しかし血管は、脳表面から脳内の全ての細胞まで広がっていて、血管外壁沿いに流れる液は、脳全体に容易に到達することができるのです。これは実にうまくできていて、脳内にある血管を機能変換させ、リンパ管のような機能を実現し、それがリンパ系の代わりの役割を果たしているので、脳はリンパ管を必要としないのです。 驚くべきことは、他のどの器官もこのような方法では老廃物は排出せず、これは完全に脳特有の処理法だということです。

脳の浄化作用は寝ているときしか働かない

しかしながら最も驚く発見は、この脳を流れる液に関してお話した全てにおいて、この出来事は眠っている時にだけ起きているということです。 good-night-sleep7 左のビデオを見てください。CSFがどれだけ目覚めているマウスの脳内で動いているのかがわかります。ほとんど動いていません。マウスが眠ってしまうまで待つと、CSFが脳内を駆け巡るのが見えます。 同時にわかったことは、眠ると脳細胞自身が縮み、脳細胞間の隙間が広がることでCSFが流れやすくなって脳の老廃物を排出させることです。 つまりガレノスの説は全くの的外れではなかったのです。彼の言うように、脳内を液が駆け巡るのは眠っている間だけなのですから。 それから2000年後の今、我々の研究でわかったのは、脳が起きている中で最も活発な時は、細胞間からの老廃物排除を後回しにしていること。そして睡眠中には脳の働きは静まり浄化態勢に入って、脳細胞間のスペースからその日に蓄積された老廃物を排除するということです。 我々がすることと似ていますね。仕事で忙しく時間がないので、家事は後回しに。週末に今までの掃除を全部まとめてやるということと同じです。

脳に老廃物がたまると恐ろしい事態に…

老廃物排除について多くお話してきましたが、どんな老廃物を睡眠中に排除して健康でいられるかについては、あまり具体的ではなかったですね。最近の研究の1番の焦点である老廃物アミロイドβは、常に脳で作りだされているタンパク質です。私の脳もあなたの脳もそうですが。 アルツハイマー病患者の脳では、排除される代わりにアミロイドβが脳細胞間に蓄積します。アミロイドβの蓄積は、恐ろしい病気のカギとなる第1段階だと思われています。 そこでアミロイドβの除去速度を、目覚めている時と眠っている時の脳で比較して測定しました。結果、アミロイドβの排除は睡眠中の脳のほうが、ずっと速いということがわかりました。 睡眠が脳の老廃物排除の問題解決の1つだとしたら、それは今までの睡眠とアミロイドβとアルツハイマー病との関係についての考えを大きく変えるかもしれません。最近の一連の臨床試験でわかったのは、アルツハイマー病を発病していない患者の睡眠の質と、睡眠時間の劣化と大量のアミロイドβ蓄積量が関係していることを示しています。 はっきりしておくべきことは、これらの研究では睡眠の量と質の劣化がアルツハイマー病の要因であるとは検証されていません。しかし確かなことは、脳の浄化作業において、アミロイドβのような老廃物除去がうまくいかないと、アルツハイマー病のような症状が起きる可能性があるということです。

脳の浄化作用の大切さを理解しよう

この新しい研究でわかったことは、皆さんが睡眠に関して既に知っていること、ガレノスでさえ理解していた睡眠についてのことです。 「睡眠は脳を回復して浄化する」 これが睡眠に関する全てと言っても過言でないほど重要な部分だろうということです。私も皆さんも毎晩眠りますよね。でも、脳は決して休むことをしません。体は動かなくても、どこか夢の中を歩いている我々の脳、優雅な脳という機械系は静かに働いています。 浄化作業をし、想像を絶する複雑なシステムを維持しています。それは家事のように、汚くてあまり考えない作業ですが、重要なことです。あなたの家で1カ月も台所を片付けなかったら、全く住めないところになりますよね? でも脳内で掃除を怠ると、その結果は恥ずかしくて汚い台所の比ではありません。 なぜなら脳の浄化作業は、脳自身と体の健康と機能を大きく左右するからです。だからこそ、脳の1番基礎的な浄化機能を今理解することが、これからの脳疾患を予防するには不可欠なことかもしれないのです。ありがとうございました。 【このテーマの記事をもっと読む】
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