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ネガティブな感情から子供たちを脱出させたい–リアル脱出ゲーム生みの親が「謎解き」に込めた想いを語る

ネガティブな感情から子供たちを脱出させたい–リアル脱出ゲーム生みの親が「謎解き」に込めた想いを語る

Life is Tech !が主催する教育とテクノロジーの祭典「Edu×Tech Fes 2015」。本パートでは、リアル脱出ゲームの生みの親であるSCRAP代表・加藤隆生氏が「学生時代にいい思い出がなかった」と自身の経験を告白する。いまの子供たちにネガティブな感情とは真逆の場所を作りたかったとリアル脱出ゲームに込めた想いを語りました。(Edu×Tech Fes 2015)

シリーズ
Edu×Tech Fes 2015 > 謎×教育
2015年3月1日のログ
スピーカー
株式会社SCRAP 代表取締役 加藤隆生 氏

「ひらめきの快感」が謎解きの熱狂をうみだす

加藤隆生氏 なぜ謎を解くことで熱狂が生まれるのか。ひらめきの快感、皆さんにお出しした問題「日本の消防士全員に聞きました。好きな惑星は一体何でしょうか。必ず1位になる惑星があります」がわかった方、いらっしゃるかもしれませんね。 ちなみにわかった方、います? ちなみに答えはですね、地球です。消防署といえば、電話番号は119なんですね。1位地球だという。その今の「おお」というのがひらめきの快感です。 このひらめきの快感が積み重なって、実は最後、大きなどんでん返しが起こったりですね、さまざまなことが起こります。まさか一番最初に言っていた、あのことが伏線になっていたのか。それがピタンと、最後にストンときれいなところに落ちます。それが僕らのつくるリアル脱出ゲームの大きな特徴です。 さらにですね、物語への没入感というのがあります。例えば物語の中に入りたい、入りたいと思っていても、なかなか入ることはできません。今まで皆さんはテレビの中で何度も見たことがあると思います。 目の前にアタッシュケースがある。アタッシュケースの数字をあけるとガチャっと開く。中には爆弾のようなものが入っている。そして赤い線と青い線がそこから出ている。手には、はさみを握っている。 ここから先はもう、わざわざ言葉で説明する必要はありません。おそらく赤か青のどちらかを切れば爆弾が止まる。多分、好きな女の子が、その日の朝に着ていたワンピースの色とかを切らないようにすると爆弾が止まったりとか、そういうことがします。 かつて爆弾から赤と青の2本が出ていて、どっちかを切って爆発したというシーンは見たことがありませんけど。とにかく、そういうことが僕らのイベントでは実際に起こります。 さあ、どっちの線を切る? というシーンが、僕らのイベントではやってきます。それが物語への没入感です。ユニバーサルスタジオジャパンさんと一緒につくったリアル脱出ゲームを、さらにリアルにしていこうというコンセプトの下にまた新しくつくったりしています。 多少脚色がありますけれども、「バイオハザード・ザ・エスケープ」は世界最高のリアル脱出ゲームと今のところユニバーサルスタジオはおっしゃっています。僕らもおおむね、そう思っています。 これが物語の中の没入感というの、先ほど言いましたけど、例えば「バイオハザード」の世界とかだとですね、もう主人公を操るんじゃなくて、自分がその中に入っての体験ができるものを今、つくっています。

リアル脱出ゲームを親子で楽しんでもらうための「仕掛け」

実例として、ベネッセさんとつくらせていただきました「探偵ズーノとふしぎな遊園地」というイベントなんですけれども、これがわりと大変な反響を呼びまして、予約が一瞬でなくなってしまったりとか、追加したやつもすぐなくなってしまったりとかで、ずいぶんな反響をいただきました。 これをどんなふうにやったのかというとですね、難易度はかなりやさしめにしました。ちなみに対象は小学生の方です。遊園地の中を、謎を解きながら進んでいくというゲームだったんですけれども、難易度は全体的にかなりやさしめです。 最後の謎だけ、やや難易度が高いです。大人でも難しいぐらい、ちょっと大人でもパッとは解けないぐらいの難易度です。ちょっと考えればできるんですけれども、パッとは解けません。それでご両親にだけ、ヒント用紙を配るというふうなやり方をしました。 ちなみに、このヒント用紙にはですね、リアル脱出ゲームというか、われわれのつくる謎解き史上初めてだったんですけれども、もう謎の答えも書いちゃいました。なぜかというと、ほかのところと組んで親子のイベントをやったときに、子供がキャッキャ楽しんでいるのに、もう親がかんかんに怒っているというシーンを過去、何度か見ましてですね。 いろいろ話し合った結果、答えも、もう書いて配っちゃおうということをやってみました。その結果、親のストレスがなく謎解きイベントが楽しめるというようなイベントにはなりました。 何かすごく子供たちがキャッキャ楽しんでくれていてですね。親たちも何か子供がキャッキャ楽しんでくれている様子をうれしがってくれて、つくって本当に心からつくってよかったなと思うイベントでした。 子供が遊園地の中で乗り物に乗るだけではなくて、物語の中への没入感と、そしてひらめきを楽しむ。そして、その子供たちが楽しんでいる様子を親たちが温かく見守るという空間が本当につくれてよかったし、これはちょっと大したものなんじゃないか、何か大きな可能性があるんじゃないかなと思いました。

5教科+謎解き

それでいろいろ考えたんですけれども、例えばリアル脱出ゲームが学校の授業になるということを検討できないのかなと思っていまして。僕、本当に10代もしくは小学校のとき、小中高と、あんまりいい思い出がないんですよね。 別に楽しかった記憶とかないし、別にいじめられも、いじめもしなかったし、特になにもなかった。まあまあキャッキャ楽しくやっていたんだけど、心のどこかは別に満たされてなくて。 例えば算数、国語、理科、社会だけじゃなくて、もうひとつ謎解きみたいなものが授業の中にあったらどうなるんだろうなというのを最近ずっと考えています。例えばだけど、算数、国語、理科、社会、英語の成績と関係ない結果が得られるということがあるんじゃないかなと思います。 謎解きという新たな才能、これは例えばマイクロソフトの入社試験で、パズルとかちょっとした謎解き問題が出されたりとかしました。3つのスイッチがあります。そして隣の部屋には3つのランプがある。 この、どのスイッチとどのランプが連動しているかということを1回、スイッチの部屋から電灯の部屋に行くだけで、すべて3つとも、どのスイッチとどのランプが連動しているかというのを当ててください、みたいな問題が実際に出ています。 これはなかなか難しい問題でして、1個だけスイッチをポンと入れる。それで隣の部屋にタタタタッと行く。それで、あのランプがついている。1個はわかるけど、残りの2つはわからないんですね。これはどうやったって、そうなります。2個つけたって、結局どっちがついたのかわからない。 これはどういうことかというと、実はこれ時代が変わっちゃって、今、成り立たなくなりつつあるんですけれども、2個のランプをつける。つけて、しばらく待ちます。それで片方、ピッて消します。 タタタタタッと隣の部屋に行って触ると、消えていて温かいやつが途中で消したやつ。消えていて冷たいやつが最初からつけてないやつ。そしてついているやつは、もちろん今、つけっ放しのやつというふうにパチッとわかるという問題が、マイクロソフトの入社試験とかで出たりとかしていて。 頭のよさを測る基準というのはなかなか難しいんですけれども、そういう算数も国語も理科も社会も苦手だけど、なぞなぞだけ、めっちゃ得意みたいなのって、頭のよさというか、回転のよさというか、視点の豊かさみたいなものを評価してあげれるような世界がやってこないかなと思って。 多分、僕、むちゃくちゃ得意だったんですよね、小中高とこういう謎解き問題が。でも、そのことでだれかから評価されたことは決してありませんでした。僕という才能が危うく埋もれるところでした。 (会場笑) ありがとうございます。笑うところでした。

リアル脱出ゲームはアナログなゲーム

そしてコミュニケーションの育成というのは、ベタな話ですけれども、謎解きってチーム戦でするんですね。そしてチームで話し合わないと絶対に解けません。よく、チームで話し合って何か企画を考えてくださいみたいなこととか言われたりしますけど。 あんまり僕はもうそんなのよくわかんなくて、目の前の何か答えがある対象に対してコミュニケーションをして、それを乗り越えていくみたいなことが、コミュニケーションを本当に発展させるんじゃないかなという気がしています。 つまりクリエーティブのコミュニケーションが取れない人も、取れるんじゃないかなということです。遊びつつ学ぶというのも、もう本当に何かとにかく楽しいですよね。 あと創作への意欲というのもとても重要で、今日のテーマと真逆をいくんですけれども、実はリアル脱出ゲームって、テクノロジーが一切要らないんですね。もう紙とペンがあればつくれるんですね。 もう恐らく僕の世代のゲームデザイナー、いいゲームデザイナーは、ほぼ全員、子供の頃にゲームブックの洗礼を受けていまして。自分でゲームブックというのをつくっているんです。 アナログでできるゲームなので、リアル脱出ゲームを遊んでみておもしろかったら、すぐ自分で、じゃあつくってみようというふうに視点を変えられるというところがひとつおもしろいのかなと思っています。

謎解きが教えてくれる3つのこと

最後にまとめるんですけど、謎解きが教えられることって、こんなことがあるんじゃないかなと思っています。まず、ひらめく喜び。先ほど皆さんに体験していただきましたが、ひらめく喜びというのがあるんじゃないかな。 これが大事なのは、ひらめきがデザインできるということです。勉強していておもしろいなと思うことって、あんまりなかったけど。でも例えばビートルズの曲を聞いていて、歌詞の中に習った英語の構文が、構造がパッと出てきたときに、ああ、これだ、この構造になっているんだというときって、それはひらめきではないし、気づきなのかもしれないけど、すごいうれしかったんですよね。 それで、もっと英語を勉強したいなと思ったりする。自分が好きな小説を原文で読んでみたいなと思ったときに、その原文の中に、習った単語や構文が出てくるというのはすごくうれしいし。 僕は京都に住んでいたんだけど、日本史で習ったことが、道の真ん中でばったり出会って、わあ、すげえって思うことがよくあった。でもそれって、デザインできないんですよね。 でも、謎解きだったら、そのひらめいた瞬間、自分がずっと考えていたことがパチッとはまる瞬間というのをデザインすることができる。それってすてきなことなんじゃないかなとは思います。 あと、答えがあるということ。何か答えがないことをずっと考え込んでしまったり、答えが本当にあるんだろうか、これは自分にはたどり着けないんじゃないだろうかということをずっと悩んだり、考え込んじゃったりしている。 そして達成できないまま、次のステップに行ってしまうということがすごくたくさん、僕の人生ではあったんだけど、答えがあるということを明確に伝えられるというのは、このツールのすごく大きな特徴なんじゃないかなと思う。 そして、答えが鮮烈な印象を持って伝えられる。答えを聞いたときに「ああ」って声が上がるような、そういうとても特別ですてきな答えが、僕らのつくるゲームには待っている。そして、答えが必ずあるという信頼感の中で僕らは悩むことができます。

物語はそこら中に転がっている

最後です。現実の中に物語があるということを、何としてもたくさんの人に伝えたいと思っています。ちょっと前にとても残念な殺人事件がありまして、それはとても陰惨な事件だったんだけど、その犯人の人はすぐつかまって、裁判の中でいろんなことを証言するんだけど、彼は「もう早く死刑になって死にたい。どうぞ死刑にしてください。早く死んで生まれ変わりたい」と言っていて、裁判官が「じゃあ、生まれ変わって何をやりたいの」って言ったら、「勇者になって世界を救いたい」と彼は言うんですね。 もう人を何人も殺している人物が、生まれ変わったら世界を救いたいと言っている。もう何かそれを聞いたときに僕は、ああ、もう急がなきゃと思って、もっと僕が、もしくは僕のつくるものが、もっともっと有名になって彼らを救わなくちゃいけない。 今いるこの空間で起こっていることというのは、物語がきちんとあるし、本の中とかゲームの中とかでだけ、世界を救うようなすごいことができるんじゃなくて、とてつもない物語というのは本の向こう側にあるんじゃなくて、現実の世界にもある。 多分、僕らだったら、その人が学んでいる教室に行って、ペタペタと紙を10枚ぐらい貼って、あと紙切れ1枚、ポッと渡して。さあじゃあ、ここから脱出してごらんと言えば、その教室をものすごくエキサイティングな物語の空間にすることができます。 謎の力で閉じ込められた教室を魔法の力で、凶悪な魔法に立ち向かう勇者を今、この現実の世界でつくることができる。 現実の世界には、ちゃんと目をこらしてみれば、とてもすてきな物語が埋まっていて、それは人を殺してしまうとか、もしくは自殺をしてしまうとか、何かネガティブなことを考えるということの真逆の場所に、僕らがつくるものがあると思う。 多分、僕が中学とか高校のときに考えていた暗い気持ち、それって一歩間違ったら、もっとひどいことになっていたかもしれないなと、今、振り返って思います。でも今ならわかる。現実の世界には物語があるし、空から女の子は降ってこないけど、空から女の子が降ってくるみたいな体験は、つくり出すことができるんですね。 そのことを謎解き、リアル脱出ゲームは伝えられると思います。それがいろいろ考えたんだけど、僕らが教育というものに対してできることかなと思いました。以上で僕の講演を終わります。ありがとうございました。

  
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