負けることが大嫌い

司会:ここから質疑応答にうつらせていただきたいと思います。

記者:日本テレビのスズキともうします。よろしくお願いします。就任おめでとうございます。ハリルホジッチ監督にききます。日本サッカーの印象、そして課題、具体的にどんなサッカーをすれば世界のトップと戦えると思ってますか?

ハリルホジッチ:この2週間、色んなビデオも見てきました。ブラジルのワールドカップ、それからこの前のアジアカップに関しても見ました。全試合みて、分析しました。結果はすべてが良かったとは思わないですけれども、彼らは本当にクオリティを見せたと思います。

しかし、そうとはいっても少し自信を失っているかもしれません。いくつかの点で、これらを向上させることができます。まず簡単なものもありますし、難しいものもありますけど、向上させることができると思っています。

先ほど皆さんにお伝えしたんですけれど、少し時間をください。そうすることによって、より良い結果を皆さんにお見せすることが出来ます。私は人物的にですけれども、かなり要求が高いです。負けるということは大嫌いです。私がこれまで仕事をしてきたところで負けた時には、少し病気になってしまいました。

私はいつも口にする一言目は「勝利」です。たとえば世界で1番強いチームとこれから試合をするというときでも、勝つトライをしようと。そういったときに1番問題として起こってくることなんですけれども、トライをしないことで負けるというのが最も最悪なことです。

私がここに来ている意味としては、勝利に対する気持ち。それを植え付けたいと思っております。これから3月に2試合やりますけれども、これは絶対に2つとも勝利しなければならないと思っております。私はネガティブなことを言うのが嫌いなので、本当に彼らを復活させたいと思っております。

夏にかなり大事なこともあると思いますので、まずこの21日と27日の3月の試合に向けて、ワールドカップに出場するに向けての最高の試合にしたいと思っております。

日本代表は大きなことを成し遂げる準備ができている

記者;メンバー選考についてききます。メンバー選考の基準ですが、これまでの代表選手たちがベースになるのか、それとも全く1から新しく選ぶというふうになるのでしょうか?

ハリルホジッチ:まず皆さんにお伝えしなければいけないのが、まだそれほど代表をそんなに深く知っているわけじゃないということです。霜田さんと短い時間ですけれども、ディスカッションをして色々話しあう必要があります。

もちろん私は現段階の力よりもさらに引き出さないといけないと思っております。私はすでにデリケートなシチュエーションで仕事をする経験があります。できるだけはやく彼らに自信を与え、勝利に対する意欲を与えるということをやらなければいけないと思っています。

まず会って皆さんと話さなければいけないですし、ビデオをいっぱい準備しなければいけないですし、ディフェンス面に関してもオフェンス面に関しても分析しないと。もちろんそれに関して多くのアイデアを持ってきました。

私のやり方に対して、本当に選手がモチベーション高くやってくれることを望みますし、まず何よりもどうやってプレイするかというのを受け入れてもらわないといけないんですけれども、もちろんこの日本代表というのは規律正しく、何か大きなことを成し遂げる準備ができているんじゃないかと。それに関しては楽観的に見ています。

ハリルホジッチ監督のサッカー哲学

記者:最後の質問になります。ハリルホジッチ監督のサッカーというのはより攻撃的なものを目指していくのか、まずは守備的なものを目指していくのか。そのサッカーの哲学的な部分を教えて下さい。

ハリルホジッチ:フットボールには2つの面があります。ボールを持っているときと、持っていないときです。ボールを持ってないときは皆が全員同時にディフェンスしています。ブロックをつくって、全員が守備しています。

この守備、ブロックに関しては、高い位置、中くらいの位置、低い位置というのがあります。そして全員が関わらなければいけない。たとえばこのような全員が努力しなきゃいけないっていうところでひとりだけ欠けてはいけませんし。

そのあと、我々がボールを持っている状況があります。これも同じで、ビルドアップに関しても皆が関わらないと行けないと思います。私はもともとフォワードでした。私は全選手に期待したいのは、効果的な選手であること。

私はどちらかとうと、オフェンスが大好きなので。ビルドアップもどんどん前に行って欲しいし、たくさんの選手が関わって欲しいし、オフェンスに働きかけるときでも、本当にたくさんの人数をかけたい。

それから、ボールタッチ数なんかも制限していきたいと思っております。たとえばワンタッチ、ツータッチとかっていうのを多く使っていきたいなと。最後のペナルティエリアのところでは、何人かの選手が関わっているという状況をつくりたいです。3人ないし、4人ですね。

日本代表の人たちもこういうクオリティを持っていると思うので、おそらく現段階で持っているレベルよりも高いレベルを見せることができるのではないかと思います。最初に選手とこういったことを話して、個人個人とも話したいですし、個人個人のクオリティがこのチームに活きていくんだよという話もしたいですし。

バルセロナやブラジルのようなサッカーがしたいという指導者もいると思うんですけど、ただ我々は日本なので。日本代表としての戦い方をしたいと思います。現代フットボールでは高いレベルを求められます。それはフィジカル、テクニック、タクティカル、それからメンタル面もそうです。

そういったことを向上させないといけないと思っております。向上させることができると思っておりますし、楽観的に考えております。勝利するということが大事で、皆さんに勝利という言葉をたくさん届けたいと思っております。

この考え方に関して、本当に貢献する選手が必要です。本当にスターというのは、チームというのがスターだと思っております。ただそうとはいっても、個人的な能力をダメにしてはいけないと思っております。

スター選手のような能力を持った人でもチームのために仕事をしてもらわないといけないと思っております。すでにどうやって組織的に戦うかというのも選手ひとり一人に話したいと思っておりますし、それはオフェンス面に関しても、ディフェンス面に関してもそうです。できるだけはやくそういった仕事ができればなと思っております。

これからグループとしてプレイしていくと思うんですけれども、もしかしたらメンバーは毎回変わってしまうかもしれません。今のところ確定しているっていう選手はいません。スターティングメンバーも決まっていません。まずはプレイしてもらう。

もちろん国内にいる選手も、国外にいる選手もそうです。本当に国内のフットボールをしっかり見て、国内のJリーグには能力の高い若い選手がたくさんいると聞いています。今のところ、できるだけたくさんの選手に可能性を与えてあげたいと思っております。

日本代表というのはすべての人のためのものです。ただそこに入る能力がある人が入るということです。

アジアのサッカーに対する印象

司会:ありがとうございました。それではこれよりいくつかご質問を受け付けたいと思います。

記者:ハリルホジッチ監督はワールドカップで韓国と対戦しました。そして以前、コートジボワールの監督としても日本と戦ったことがあると思いますが、アジアの印象っていうものを聞かせていただきたいと思いまして。

先ほど日本は55位というランキングだったんですけれども、それ以上のものを目指す能力を持っているといってらっしゃいましたが、どのくらいのランキングまで行く可能性があると思っていらっしゃいますか?

ハリルホジッチ:まずアジア全体のことですけれども、アジア全体のレベルが上がっております。ただ、いわゆるサッカー強国と呼ばれるヨーロッパや南米のレベルまで達していません。ここに来る以前も日本代表のことは知っていました。今はより知っています。

ここ2週間、日本代表のために働いてきましたので、このチームは本当にもっと上のレベルに行けます。私と仕事をするためにすべてのクオリティを持っております。ただ、いくつかの点で向上させないといけないところがあります。

それはもちろん攻撃面に関しても、守備面に関してもです。日本代表は数年前、20位とかのFIFAランクだったと思うんですけれども、おそらくそれぐらいまで上げたいと思っていますけれども、そのためには時間が必要で、皆さんの我慢が必要だと思っております。

本当にたくさんの仕事が必要です。会長と2回お話しましたけれども、彼にも要求しました。まず我々スタッフがファミリーになることが大事だと。良い仕事をするために、良い雰囲気を作って欲しいと言いました。この我々の良い関係づくりがグランドに良い影響をもたらすと思います。

ただ、今の日本代表を今より高いレベルにすることができると思っております。私のノートにも今からやるべきことをたくさんノートしてあります。今日は詳細には入りませんけれども、本当にいくつかの点を伸ばしていきたいと思っております。なぜかというと本当に良い選手がいます。テクニックを持った選手がいます。

たくさんのことはできないですけれども、あることはできる。皆ボールを欲しがる。そういった選手に対してもっと良いプレーができるということを教えてあげたいですし、もちろん引いてきた相手に対しても、引いた相手に対しても、どんなスピードで戦えばいいかという話をしたいですし

はやく攻撃することだけが全てじゃないし、そういったポジショニングの仕方だとか。スピードだけじゃなくて、リズムの変化とか。それから動きのフェイント。そういったことを小さいものは色々あるんですけれども、皆さんに教えていきたいと思っております。私はもともとフォワードの選手だったので、こういった私の経験をふまえて向上させていきたいなと思っております。

私にはメダルをとらせる責任がある

記者:これまで日本代表の監督というのは国民に非常に愛されていて、愛称で、お名前で「なになにジャパン」と呼ばれることが多かったんですが、ザック監督は「ザックジャパン」。アギーレ監督は「アギーレジャパン」といった感じで。ハリルホジッチ監督は、なんとお呼びすればよろしいでしょうか?

ハリルホジッチ:まだついたばっかりですので、日本で過去に何があったのかはよくわかっていないです。ただ私たちはここに来て、はやく仕事がしたいという気持ちでいっぱいです。すでに大仁会長、霜田技術委員長は我々を信頼してくれていますし、もちろん代表の監督というのは間違いを犯すことがあります。

ただ、私はここに来たのは皆さんと仕事をしたいということです。皆さんの助けが必要です。私はここに来ましたけれども、日本のこのデリケートな現状よりもさらにデリケートな状態で働いたことがあります。

もちろんグランド場でもデリケートな問題はありましたし、グランド外でもありました。だけどもそれを向上させることをやってきました。先ほども申し上げたんですけど、日本には日本代表が大好きなサポーターがいます。

皆さんが何年か前にオシムさんとここで仕事をしたことも知っています。彼は私にフットボールの情熱を伝えてくれました。日本の国民の皆さんがフットボールに情熱があって、仕事に熱心なことも聞いています。

それに対して私は幸せですし、ここに来て何か成し遂げることができたら更に幸せですし、私がここに来て1番嬉しいと思うのは、あがるときに誰かがきて「ありがとう」と。ブラジルのワールドカップのときに起きたことなんですけれども、アルジェリアである人が来て、アルジェリアと日本を比べるわけではないんですけど、アルジェリアというのは代表レベルで結果を残してきたことがなかった国でした。

彼らが私に対してすごくリスペクトしてくれて、日本代表でもそのようなことが起きて欲しいと思っておりますけれども、今アルジェリアに行くと、道ですれ違っても、道で会っても本当に幸せな顔をしていて。本当に我々がここに来て、皆さんにメダルを届けたいと思っておりますけれども、その責任は私にあると思っています。

司会:ありがとうございます。

フットボールのおかげで人生が素晴らしいものになった

記者:こんにちは。私は昨年もボスニアヘルツェゴヴィナのモスタルのほうに足を運んだんですけれども、監督の母国であるボスニアヘルツェゴビナは90年代に紛争があって。

その紛争が監督に与えた影響があれば教えてください。監督も辛い思いをされたと思うんですけれども。サッカーのほうではなく、人生の哲学があれば教えてください。

ハリルホジッチ:ボスニアは本当にデリケートな時代を送りました。私の妻が2〜3日前に日本の歴史に関しての本を買ってくれて、それを読みました。日本でも本当に難しい時代を送ったというのを知りました。

私も個人的に人生の中でものすごく困難な時代がありました。ユーゴスラビアの戦争のときに私はそこにいましたし、戦争で私も怪我をしました。その戦争で私はしっかり守らなければいけないなと思いました。

国を守るために、たくさん戦いました。その中で、私の仕事に関してしっかり自分で信頼を持ちながらやっていました。その中でフットボールが大好きになって。私は政治的な話、それから宗教的な話もしませんけれども、ただフットボールのおかげで人生が素晴らしいものになりました。

選手としても、それから監督としても、色々なタイトルを取ることができました。今私が本当に集中していることは日本代表の監督としてより良い状態に持っていくことです。これに関しては本当に私は熱意に満ちあふれていますし、皆さんの国で何か成し遂げたいと思っております。

本当に日本がそういうフットボールをしかりやっているところで感謝していますし、フットボールは本当にマジックのようなもので、このフットボールの情熱というものが色んなものに影響してきます。私はすべてをフットボールにささげています。

日本代表の自信を回復させる方法は?

記者:日本での生活が始まりますけれども、日本の国や文化に対する印象と、新しい生活でサッカー以外で楽しみにされていることがあったら教えてください。

ハリルホジッチ:少し日本の文化を知っていますし、それから日本のレストランがパリにたくさんありますので少しはわかります。私の家族は私よりも寿司が大好きです。私は今晩、大仁会長と霜田技術委員長と慣れるために日本の食事をしてきたいと思います。日本の皆さんが口にしているものを口にして、だんだん慣れていきたいなと思っております。

皆さんの文化、料理に関してもリスペクトしていきたいと思っております。そうすることによって私の生活もうまくいくのではないかなと。皆さんここに私を紹介してくれた方も、日本の国は素晴らしいと言っています。

ただ、家族が常に私と一緒にいるわけではないので、少し難しい時期もあるとは思いますけれども、とにかく家族といないので、たくさん仕事ができるなと。時々は日本のスペシャルな食事も試していきたいなと思っております。

記者:先ほど、「日本は少し自信を失っている状態」とありましたが、その自信を回復させるためにはどのような手法を用いるつもりでしょうか?

ハリルホジッチ:まず個人的に選手とは話をしなければいけないなと思っております。選手の何人かは自分自身に対して、自信を失っているとみられます。2〜3年前は選手に関してもっと良い選手だなと思っておりました。

そのために勇気づけることが大事だと思っております。私の仕事も多くは、彼らを勇気づけること、自信をつけること。それから喜びを持つこと。彼らがすでに良いプレーをしたことを忘れてはいけないように、そうすることの経験を私は持っていると思います。

彼らは自分たちで自信がないかもしれないですけど、時々選手には個人的な問題を抱えている場合もありますし、私もコーチングとか、私のやり方で向上させようかなと思っております。会話することによって、建設的な関係を築ければなと。選手がもっともっと努力できるようにしていけたらなと思っております。

オシム氏は親友

記者:先ほども少し話が出ましたけれども、以前日本で監督をされていましたオシムさんなんですけれども、ハリルホジッチさんにとってどういう人であるのか。日本に来るにあたって何か会話しただとか、もらった言葉だとかがありましたら教えてください。

ハリルホジッチ:皆さんご存知ですけれども、オシムさんは、今健康がよくないと。日本で働いてからということなんですけれども、彼とは1年前も会っていますし、アルジェリア代表監督をしていたときに、ボスニアと試合をしました。彼とたくさん話をしまして、本当に素晴らしい人物だと思っております。

本当にフットボールに関しては素晴らしい仕事をしてきましたし、ボスニア・ヘルツェゴビナでは本当に素晴らしい人物として皆、評価しております。フットボールだけではなくて、政治的にも彼は国をサポートしてきました。親友です、本当に。

彼と、もしくは彼の友人と私はしっかりコンタクトをして、「健康状態はどうなのか?」という話もしますし。最近は会えてないんですけれども、日本の協会関係者がオシムさんとコンタクトをとったのかどうかは私も知りませんし、彼に関して言えることはそれくらいです。

ただ私が期待したのは、いつか日本に来て試合を見ていただきたいなと。本当に会長はじめ、皆さんに彼と一緒に試合を見て欲しいですし、彼は見にくることに関しては嬉しいんじゃないでしょうか。なぜかというと本当にオシムさんは日本のことが大好きで、日本のことに関してたくさん私に話してくれました

司会:ありがとうございました。

ハリルホジッチ:アリガトウ、メルシーボークー。