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“才能を活かせない国”No.1は日本かも… PayPal創業者ピーター・ティールが語る、日本の弱みとは

“才能を活かせない国”No.1は日本かも… PayPal創業者ピーター・ティールが語る、日本の弱みとは

PayPal創業者ピーター・ティール氏と、楽天・三木谷浩史氏が「技術革新が生む新たなる金融サービス像」をテーマに意見を交わしたトークセッション。本パートでは、ピーター・ティール氏が、能力が高いにも関わらず世界を舞台に成功できない日本に向けて、その課題を提示します。

シリーズ
楽天金融カンファレンス
スピーカー
PayPal 共同創業者 Peter Thiel(ピーター・ティール) 氏
楽天株式会社 代表取締役会長兼社長 三木谷 浩史 氏
日本経済新聞社 論説委員兼編集委員 関口 和一 氏
参照動画
SESSION 5 パネルディスカッション 「総括セッション技術革新が生む新たなる金融サービス像」

イノベーションの連鎖を生むための条件

関口和一氏(以下、関口) おそらく会場の皆さんから質問していただくのに、良いチャンスかなと思うんですけれども。もしよろしければ、会場からご質問を募ってみましょうか。マイクを準備していただけますか? それを用意していただいている間に、もう1つご質問させていただきます。 特にピーターさんにお伺いしたいんですが、これまでのお話もあったようにPayPalはeBayに売却されました。ベンチャーを売却した人たちは、大きなお金を得たので、スペースXですとかテスラ、リンクトインとかを始めることができました。 PayPalマフィアとも呼ばれていますけれども、イノベーションの連鎖がシリコンバレーで始まったわけですね。こうした連鎖を日本や他の国で始めるには、どうしたら良いのでしょうか? ピーター・ティール氏(以下、ピーター) 非常に大切な質問です。なぜシリコンバレーにおいてこれが上手くいくのか? いかにしてそれをコピーしようか? ということについて、いろいろなことの組み合わせが考えられます。おそらくネットワーク効果が必要で、成功の歴史というのも重要だと思います。 例えば誰かが成功した時にはそれが手本となり、他の人たちがその軌跡に続いていく。長い間何も起こっていなかったところから、いきなり何かを始めるのは難しいものです。ですから多くの意味で、多くの人たちがいろいろな新しいことにトライして、その中から成功の歴史が生まれてくるのが理想だと思います。

1つの成功が次の成功を生む

ピーター 過去40年間、ITの世界においては多くの成功談があります。半導体からパソコン、インターネット、モバイル、モバイルインターネット、いろいろなことが成功してきました。だからこそ有能な人たちがベンチャー企業として、この部門に入ってきたのです。 この40年で成功が少なかったテクノロジーもあります。そうするとどうしても、優秀な人材をその分野に引き付けるのが難しくなります。成功すれば変わるのです。2008年にイーロン(・マスク)氏にお話を伺ったことがあります。 「最後に成功したアメリカの自動車会社はどこだろう?」と。テスラが始まったばかりだったんですけれど、1941年、ジープはまだアメリカでは始まっていなかったとおっしゃっていました。 実は67年間、この業界では何も成功していない。イーロン氏は非常に楽観的で、「新しい会社を起ち上げるべき時だよね」と言っていました。次の成功する車が生まれるまでに、今度は67年もかからないと思います。

楽天がビットコインを導入しない理由はない

関口 それでは前の方お願いいたします。 質問者 三木谷さんに質問させていただきたいんですが、ビットコイン関連企業の口座開設を、銀行によっては許さないそうですね? これが本当なのかどうかはわからないんですが。 楽天銀行でも、ビットコイン業界に関しては口座を開きたくないというふうに聞いたことがあります。これは本当なんでしょうか? もしそうだとしたら、おそらく規制的な障害物があるせいなのかなとは思いますが、銀行あるいはビットコインの業界が協力して、こうした問題を解決する道はあるんでしょうか? 三木谷浩史氏(以下、三木谷) これは日本政府に限られたことではないと思います。世界中の多くの政府が、非常に慎重です。デジタル通貨の扱いに関して、恐れているとは言いませんが、慎重だと思います。ビットコインも含めてそうです。 私自身は、実際に政府から圧力を受けているのかどうかなんていう話は知りませんけれども。しかし一般的に見て、銀行はおそらく慎重な態度を取っているのではないでしょうか? 「楽天バンク」というものはありますけれども、楽天そのものは銀行ではありませんから、そういう意味ではビットコインの使用を実験してみたいと思います。 私たちの決済システムの一部として使ってみたいなという気はしています。DellやExpedia、PayPalもそうですし、成功するのかどうかわかりませんけれども、やらない理由はないかなとは思っています。そうした企業も、いろいろとやることを決めたようですから。

金融業界への参入障壁の高さはその価値に比例する

関口 ちょっとわかりやすく手を挙げていただけますか? 真ん中の方。 質問者 ピーターさんに質問があります。金融業界における起業、ベンチャー精神というのは、他の分野におけるよりも難しそうだと言われています。ハードルが高いなど、いろいろと理由が挙げられています。 でも日本では三木谷さんが成功されて―ちょっと厳しいかもしれないんですが―それは楽天が金融のビジネスとして、買収に依存してきたからではないか、とも思うわけです。ですので日本の起業家には、この金融部門において大きなハードルが存在しているように思います。 おっしゃったように、日本はコーディネーションが得意であると。金融サービスの現役企業が、非常に保守的な状況下において、日本の金融分野における起業家が前に進むには、どうしたらよいのでしょうか? ピーター 確かに、おっしゃったことはもっともだなと思います。ご質問というよりは前提条件のように思いますけれども、確かに金融に関しては、参入障壁が高いということはありますから、開始するのが難しいでしょう。それは日本ばかりではなく、アメリカでもそうですし、世界各国においてやはり金融業界は規制されています。 2008年以降は、ヨーロッパにおいても規制が強化されてきているので、そういう意味では課題が大きくなってきています。ただ、この金融テクノロジーに関して非常におもしろいのは、ポテンシャルとして改善すべきところがたくさん存在している。これはとても価値が高いことなのです。

金融業界参入の壁は、必要資本額の高さ

ピーター ですから現実問題として参入障壁となるのは、おそらく資本。何かを始めるために必要な資本が多過ぎるということだと思います。例えば新しいテレビゲームなら、10万ドルもあれば始められるかもしれませんけれども、金融テクノロジーであれば、もっとたくさんの資本が必要だと思います。そこも障害になるかもしれません。 ITヘルスケアの会社でオスカーというところがあるんですが、新しいヘルスケアのソフトウェアを展開するために、保険会社とリンクアップしなくてはいけなかったので、保険会社まで始めました。そしてITソフトを使うことによって、例えば遠隔医療であるとか、安い保険料であるとか、非常におもしろい新しい保険商品を出し始めたんです。 正しいやり方でできた例だと思います。例えばニューヨーク州においては、4,000万~5,000万ぐらい資本がなければ、新しい保険会社を作らせてくれません。それは非常に高い障壁になりますから、資本が必要だという辺りに、それが1つあると思います。 起業家にしてもベンチャーにしても、金融業界においてはおそらく、資本を投資家あるいは大手の企業から集めることができなければ、始められないと思います。でも一旦それができれば、大きな価値が生まれるのです。 テスラにしても「新しい自動車メーカーが67年も生まれてなかったね」という時に、新しい自動車会社が生まれました。これはとても良いことです。誰もそんなことは思ってもいませんでしたし、既存のメーカーは動きが遅い。要するにそんなことから、「コップに水が半分入っていたか、半分空だったか」っていう問題が生まれたように思います。

才能と成功にギャップを抱えた日本

質問者 ピーターさんありがとうございました。それから三木谷さん、今日は主催ありがとうございました。私も起業家で、カリフォルニアから来ております。日本・韓国でこの4年間仕事をしてきました。GoogleやFacebookが生まれたあたりにカリフォルニアで育ったんですけれども、起業家になりたいというのが夢でした。 アジアで国境を越えたメッセージング・エンタープライズ・プラットフォームを作ろうとしているんですが、韓国や日本には、そういったポテンシャルがないという声もあります。こういった文化的なパラダイムシフトのためには、何が必要だと思いますか? ピーター そうですね。第三者の私にとって、これを判断するのは難しいんです。というのは、日本でそれほど時間を費やしていないので、おそらくそういった意味では適任ではないと思います。私はドイツで生まれまして、1歳ぐらいの時にアメリカへ行きました。 例えばドイツとカリフォルニアというのは、かなり違うと感じます。カリフォルニアというのは文化的に、とても楽観的です。しかしちょっと必死になっているところもあります。 ドイツは悲観的です。ただ、とても快適です。とても自信を持っているんです。日本も、もちろんドイツとは違うと思いますけれども、ひょっとすると、ちょっと共通点というのがあるのかもしれません。 2万人がロサンゼルスに行き映画スターになろうとして、20人ぐらいしか成功しないんですけれども、そういった意味ではクレイジーです。カリフォルニアっていうのは、そういうふうに楽観的であり、ちょっと必死でもある。 ドイツっていうのは悲観的でありつつ、とても快適であるという文化があると思います。ドイツに関して当てはまることというのは、ひょっとすると日本にも当てはまるのかもしれません。ドイツは世界中で最も、人の才能とそれが実現されるギャップが大きいと言われています。 ひょっとすると日本では、そういったギャップがより大きいのかもしれません。つまり教育水準も高い。そして会話をしても、多くの情報を持っている。いろいろな分野の、いろいろなこと知っている。しかしなぜか、日本にもっとできることがあるはずなのに、そうでもないと。 それならそういった、楽観主義になるためのコミュニティを作るべきなんでしょうか? コミュニティというのは、やはり「ニワトリが先か卵が先か」ということで、どっちが先かということになると思いますが、一度大きな大成功が何かあったとすると、1つのパターンというのが壊れると思うんです。 ですから楽天やソフトバンクは、そういったサイクルを一部壊したのだと思います。それを再現していけばいいわけです。ですからゼロから成功ではないと思います。何も成功しなかったということではないので。ですから、何もこれまでなかった。ゼロであれば、もっと大変だと思いますけれども。

インターネットの可能性は新たなステージへ

関口 上手いですね。チェスはお得意ですか? いつか対戦させていただけますか? それでは、ありがとうございました。ディスカッションを続けたいんですが、残念なことに時間がきてしまいました。 インターネット技術というのは、世界中で20年前から使われてきたと思います。一般の人が使ってきた第1段階というのは、メディアとかeコマース、またはエンターテイメントでしたけれども、今では新しい段階に入ってきていると思います。インターネットというのが、産業向けに使われる。 例えば、Internet of Things (IoT)。いろいろな技術というのが、金融セクターでも使われるようになる。また宇宙の技術とか、クリーンテックとか、いろいろな分野でこれが出てきています。 ということで、今日はいろいろと勉強になったと思います。2人の方からいろいろな見通しを得ることができました。ということで、お2人に拍手をお願いします。

  

(制作協力:VoTX

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