企業とライターの理想的な関係

後藤:意外と1時間って早いですね。

梅田:もうそんな時間ですか。

後藤:そうなんですよ。加勇田君の自己紹介が長すぎたので、そろそろ質疑応答に移りましょう。この4名で何でも答えますので、お金のこと以外は。

質問者1:私自身は地方でライターをしていて、最近東京でライターをしているのですけれども、先程「事業会社に対して提案を」というお話があったと思うのですけれども、私に話が下りてくる時点ではある程度企画が決まっていて、「こういう意図で書いてください」という依頼が多いのですけれども。

そういう時は、「今後こうしたほうがいいじゃないか」と言いながら書き進めるときがあるのですけれども。一緒に提案できるような、もっていくスキル、そういうきっかけとか。

全員:ああ。

梅田:僕が一番答えやすい。

全員:そうですね。

梅田:僕はライターもやっていたんですけれども、企業がコンテンツを作る際、僕に下りてくる段階で「この企画だと面白くない」と思ったりすることがあるわけですよ、もちろん仕事なのでやる場合もありますが。 できれば「案件が始まる前から声をかけていただければ、もっと面白くなるような提案ができますよ」と言ったりする機会がありまして、「じゃあ次回からそれを提案してみます」みたいな感じで、今話が出たように意外とみんな提案を求めているというか。

こっち側はすごく提案を求めていて、一方でライターは「もう企画が決まっちゃってるから変更できない」みたいな。お互い不幸じゃないですか、今の流れは。なので、そこをつなげられる役目の人、僕のような編集者は、もっとライターの人とコミュニケーションをとって「企画を出してください」と伝えなければならないと思いますし、ライターも自分から提案をしていける関係を作っていくのが大事だと思います。

後藤:ちなみにどんなメディアを書かれているのですか。

質問者1:企業の広報誌を書いています。

全員:あーー。

加勇田:私が事業会社側に転職した理由でもあるんですけれども、事業会社って意外と要件定義って甘いんですよね。例えば、うちはスポーツメーカーですけれども、「スポーツって何ですか?」というところって、彼ら自身もわかっていないんですよ。

だから例えば、「スポーツの楽しさを伝えるコンテンツを出してください」みたいな依頼があったら、ぜひ「そもそもスポーツって何ですか」みたいな、「とらえ方って色々あると思うんですよね」って逆に突っ込んでいただけると。

事業会社で自分たちがかかっているバイアスって意外と見えてなかったりするので、そこを突破するきっかけになると思います。今インハウスということってよく言われると思うんですよ。エージェントの人が事業会社側に入って、みたいな。私もその中の1人ですが。で、なんでインハウスと言われているかというと、これは自分なりの解釈なんですけれども、そういうバイアスを突破してくれる人は中に入れたい、多分それが価値なのかなと思っているので。

それができていない事業会社だったらそこを突っ込んでいただければいいかなと、「スポーツって何ですか」とか。サイボウズさんだったら「チームワークって、どのように考えているのですか」とか。そうすると改めて考え直すきっかけにもなると思うんですね。

「チームワークって何だ」「グループウェアって何が価値なんだ」とか、先程事業価値の再定義みたいな話がありましたけれども、それがきっかけになるかと思うので、そこは突っ込んでいただけると、少なくとも私と藤村さんはすごく嬉しいと思います。

後藤:では自分からも。オウンドメディアを運営していて、ライターさんに色々お願いをしている立場から言うと、要件を定義してライターの方に下ろすのですけれども、そこで「もう少しこうしたほうがいいんじゃないですか」という意見をいただいたら、僕ら嬉しいですし、ちょっと体制がクラシカルで「ライターなのに、何言ってるの」みたいな感じであったら、お付き合いをしないほうがいいと思います。本当に。

ライターの案件って、今はすごくあふれていますし。ライターが足りないと言われている時代なので。正直仕事を選べると思うのですよ。そういう時はサイボウズさんとかプレスラボさんの案件をやればいいと思うし、これで大丈夫ですか。デサントも。

藤村:広報誌となると少し難しいかもしれません。企業側が伝えるべきメッセージというのを込めて作るのが、広報誌だと思っています。一方で、自社メディアみたいな、いわゆる商品をPRしない媒体もあふれてきていて、そういうところだと意見の出し合いとか提案ができると思うんですね。今仕事をされているフィールド以外の、もっと自由にやれるところとやっていくのは手かと思います。それは自社メディアかもしれません。

梅田:あとは企画が決まっていたとしても、ライターは取材対象者にインタビューして、深いところをいかにえぐるかが大事だと思うので、そういうの広報誌とかに必要な能力だと思いますね。僕は今、編集ライターの立場から事業会社の人とも話をする役割が多いのですけれども、わりとインタビューというふうにとらえていて、「この企業は何を考えているのだろう」というふうに進めていくと、わりと分かり合えてだんだん提案をしやすくなっていきます。

そこから始めるといいかもしれませんね。ライターとしては、「いきなり提案を出せ」と言われるのは大変なことかと思っていまして。基本的には、僕はインタビューをしながら「この会社の課題は何だろう」とかそういうことを考えながらやっています。

後藤:ゼロイチで企画を出せというのはしんどいですよね。そのイチに対して文句を言うというのは誰でもできるじゃないですか。それ大事かなと思いますよね。

紙とWebの違いとは

梅田:面白いですね、質疑応答。

後藤:他に何かある方。

質問者2:私は編集をしていたのですけれども、転職をしまして。今企業でWebライターとして仕事をしていて、社内のもろもろまとめてオウンドメディアを作り出したいなと思っているんですけれども、紙とWebの違いに今戸惑っていって、編集をしながらもライティングはしていたのですけれども。

皆さんが考える決定的な違いというか、大切というか必要なこと、衝撃的なワードを入れればそれでいいというわけでもないと思っていて。むしろそれ的なものは怖い部分などがあったりして、長くWeb業界で活躍してる皆さんが大切にしていることがあれば教えていただきたいです。

梅田:それはあれじゃないですか。個人でSNSとかFacebookとかTwitterとかやられていますか。

質問者2:ブログをやっています。

梅田:ブログ。結構僕、Facebookとかtwitter更新したりするんですけど、それは業務でやることもあれば、全然なんか関係ないこと呟いたりもするんですけど、意外とそういう単純なことなのかなと思っていて。どういう話題がどういう反応出るかみたいな。紙とWebの反応の違いって結局、反応がすぐ出るか出ないかだと思うんで、その反応を見ていればWebの雰囲気が見えてくるんじゃないかなと、僕は思います。

加勇田:答えになっているかどうかわからないんですけれども、紙とデジタルの違いって最近あんまり、ケースバイケースなんですけど、場合によってはあんまり無いなっていうふうに思い始めていて。確かにさっきの梅田さんのレスが見えやすいっていうのは、デジタルの特徴だとは思うんですけれども、最近雑誌5冊買うようになって、VERYとかもよく買ったりするんですけど、VERYって。

梅田::VERYって女性誌ですよね。

加勇田::ああ、そうです。嫌いなほうじゃないですよ。好き好んで買ってますよ。シュールとかそういう話じゃなくて、反応が面白いんで。

後藤:大丈夫ですよ(笑)。

梅田:え、コンビニで買うんですか。ごめんなさいね(笑)。

加勇田:一番多いのはやっぱ大きい書店とかですかね。

梅田:どんな顔してレジに持って行くのかなと思って。

加勇田:でも意外と普通ですよ。

梅田:普通ですか。

加勇田:ぱって、感じで。で、VERYとかって、例えばですけど、彼女らシロガネーゼみたいなキーワード作るのすごく得意な媒体だと思うんですけど、シロガネーゼとかああいうキーワードものって、わりと結構リアクションあったりするんですよね、Twitterとかで検索してると。キーワード検索。

なので、ちょっと話脱線しちゃうかもしれないんですけど、もし雑誌買う機会があったら、自分みたいなそういうケース見て買う機会があったら、是非キーワード検索も一緒にしてもらえるといいかなと思います。シロガネーゼみたいなの。そういうキーワードがあったら、一緒に見てもらうといいかもしれないんですけど。

いいコンテンツだったら、雑誌だろうがデジタルだろうが結構反応あって、テレビとかもやっぱり取り上げるんですよね。例えば、シロガネーゼみたいなキーワード。

本当に賛否両論が起こりそうなキーワードとかを仕掛けられたら、やっぱりいまだにどっちかっていうとテレビのプロデューサーさんも、雑誌の編集長とかに聞くんですよね、「シロガネーゼって何ですかみたいな」という反応あったりするんで、あんまり関係ない気もしなくも無いかな。

Webコンテンツは読まれないことが前提

質問者3:雑誌って、場があるというか。買ってくれた読者は必ず読んでくれるけど、Webって誰でも読めるけど、誰にも読まれない危険性っていうのがあって。

藤村:まさにそこあると思います。なので、読まれないことを前提としたコンテンツ設計が出来るかどうかって、ものすごい重要だと思います。

質問者3:読まれないことを前提?

藤村:雑誌って、お金を払って購入して、読むぞって気になって、全部読んで、ああ納得っていうメディアだと思っています。一方スマホとかWebって、基本的に流し読みだったり、何かたまたま友人とか知人からのシェアがあって、「自分に興味があったら読むよ」くらいの感じだと思うんですね。

メディアに接するモチベーションとか意識が全く違うんです。で、Webのところでいうと、それを前提として、「じゃあ興味の無い人にコンテンツを届けるにはどうすればいいか」を徹底的に考えて、形に落とし込めるかっていうところがすごい重要だと思ってます。

加勇田:そうですね。デジタルって競合が結構多いなと思っていて。さっきのスマホとか典型だと思うんですけど、スマホで何かコンテンツ見る時って、基本駅での待ち時間だったり、電車の中の移動時間だったりとかだと思うんですけど。

てなってくると、3分とか5分とかの隙間時間の奪い合いだったりするので、私がうちの中で一緒にコンテンツ作ってるメンバーに言うのが、「ブルボンのプチ好み、あれ競合だからね」って言ってるんですよね。ぱくぱく食べてる時間と、コンテンツ見させる時間みたいな。でも紙って言ったら「金払ったからね」みたいな。貧乏根性丸出しですけど、そういうのがあったりするんで、プチ好み競合にならないんですよね。

梅田:確かに。でも昔は雑誌でやられてて、Webに来て結構大変だっていうのはすごくわかります。読者とか、お客さんって、タダほど文句言うんですよね。

(会場笑)

梅田:例えば5万円する本を買ったとしたら、その内容は面白くなくても、文句を言うと5万円を出した自分を否定することになるじゃないですか。だからあんま悪く言わないんですけど、無料で読めるネットの記事とか、テレビのお茶の間の人達が一番うるさいんですよ。安ければ安いほど文句を言われやすくなってしまうというか。安いやきそばにゴキブリが入っていると、すごく文句を言われてしまうみたいな。

後藤:それはどこですか(笑)。

梅田:いや、別に(笑)。事例としてね。

後藤:そうですね。

梅田:そういう難しさはありますね。そういう場合は、僕の会社(プレスラボ)と組んで一緒に作っていきましょう。

後藤:最後に宣伝で終わるっていう。

梅田:さっきの企画書出せないっていう話。うちと組んでやれば、多分上手くいくと思います。

読み手の反響を予測する

加勇田:ちょっと1個だけ補足させていただくと、私、最近PRとかでこういう記事書きませんかって提案するんですけど、1個やってるのが、こういうタイトル付けると、おそらくTwitter上でこんな反応がありますみたいなの、それをセットで提案するんですね。それするとすごい面白いです。

Web、デジタル怖い、Twitter怖いみたいなのってあるとは思うんですけど、それを予測しながら書いていくと、正直外れることも多かったりするんですけど、当たった外れたみたいな、ちょっとゲーム感覚じゃないけど、そういったところは面白かったんで、やっていただけると、もしかしたら怖いっていうところはちょっとは払拭できるかなと。多分それしようと思ったら、普段からTwitterとかFacebookにある程度触れておかないと、予測なんて出来るはずがないので、自然と接触する時間というところも増えていくんじゃないかなとは思いますね。

後藤:書いた後の反響まで予測するって1個ありかなって思ってて。例えば、インタビューコンテンツを作りますってなった時に、加勇田くんにインタビューするのと、藤村さんにインタビューするのって反応する人が違うんですよ。加勇田くんにインタビューした場合、結構炎上癖があるので、ネット界隈のちょっとややこしい人達が反応したりするんですけど、藤村さんとかの場合は、前にイベントやった時に「キャー、藤村さん」っていう感じで、女性が多く反応したりするんですね。

藤村:そんな事はないですよ。

(会場笑)

後藤:そこはちょっと考えてもいいかなって思ってて。そうですね、書いた後の反応。後は藤村さんの話じゃないですけど、Webは受動ですね。雑誌は能動で。だと思います。じゃあ、次の方いらっしゃいますか。はい、じゃあ奥の女性の方。

オウンドメディアとタイアップ広告

質問者4:皆さんに教えていただきたいんですけれども、オウンドメディアと、従来のタイアップ記事の住み分けというか、どういうふうに考えているのかとお伺いできればと思うんですけれど。

加勇田:何だろうな。実は藤村さんと自分の共通点ってひとつあって。二人とも、東洋経済オンラインがあると思うんですけれども、あそこのブランドコンテンツを、両方とも出稿している事業会社っていう共通点があるんですね。自分が東洋経済のブランドコンテンツの出稿した時は、特にオウンドメディアだっていうのは、意識はしてなかったです。

あれをタイアップっていうのか、ネイティブアドというかっていうのは、詳しい方々にお任せするとして。いらっしゃるじゃないですか(笑)。で、特に意識はしなかったです。

とにかく、今まで接点がなかった人たち、すいません、繰り返しになって申し訳ないんですけど、エンジニアとか、ITワーカーの人達との接点を作るだとか、燃え尽きランナーでいうと、ガチでやっている人じゃなくて、ブームの裏側でやめてしまいそうな人たち、フェードアウトしそうな人たちと接点を作るみたいな、ああいうところは、多分、オウンドメディアとかネイティブアドとかというのは、特に意識はしていなかったですけど。

そこは共通でした。で、強いてあるとしたら、東洋経済さんっていうブランド力は、利用させていただいたところがあって。例えばなんですけど、燃え尽きランナーとかであれば、東急ハンズさんとかにコーナーをつくっていただいたんですけど、あれってやっぱり商売なんで、バーターがあるんですよね。「バーターの一つとして取材がくるかもしれませんよ」みたいな、面白がってくれてるメディアさんいます。

これは事実なんですけど「来てくれる可能性は高いです」までは言えるんですけど、来ますとは言えないんですよね、PRなんで。けど、東洋経済さんの場合はブランドコンテンツなんで、行ってくださいと言ってるんで。そこは「東洋経済さんは必ず来ます」というのはカードとして使いました。

彼らのブランド力というのは、そういう意味では利用させてもらいましたけど、考え方っていうのは、さっきのFNS、あれは共通というか、オウンドメディアであろうが、ネイティブアドだろうが、自分の頭の中では基本共通で考えたところではあります。藤村さんなんか違いってありますか。

藤村:タイアップ広告と呼ばれるものは、基本的に製品やサービスのPRっていう所に紐づいた記事っていうイメージでよろしいでしょうか。

質問者4:イメージとしてはクライアントさんから、この内容で製品やサービスを売ってくれっていうメッセージが強いですね。

藤村:それでいうと、まず、タイアップの方から。私の考えです。一般的ではないかもしれません。やっぱり製品を売りたいとか、サービスの売り上げにつなげたいと意図したものが、タイアップ記事というふうに思ってますと。そうなると企業の意向というのと、買いたい生活者というのを結び付けるためのコンテンツになってくるので、やっぱりどちらも見なきゃいけないというのはあると思います。

一方、自社メディアのほうは、あんまり製品PRとか売上アップとかっていう文脈がないメディアもあると思います。例えば生活者の方に、覚えてもらうというか、ブランドとして心の中に何か印象を残すとか、そういったことを目的としている自社メディアも多いのかなと思ってるんですよね。

なので、マーケティング文脈で売りを見るか、売り上げとかつながるか、実利的なところを見るか、それともブランディングの視点で、生活者との新しい接点を作るためのコミュニケーションツールとしてコンテンツを見るか。そこら辺で違ってきますね。答えになってなくて恐縮なんですけれども。

質問者4:では、自社メディアの場合は、自社のPRというよりは、あくまでユーザーのニーズをカタチにしたものをいう認識で大丈夫でしょうか?

藤村:まさにおっしゃる通りですね。製品が売れなくていいって言うと語弊がありますね。製品の売上に直接つながらなくていいと思ってます。「製品を購入するかどうか」っていうところの前段階にある「サイボウズを知ってもらう」とか、購入の検討段階に上がった時に「サイボウズっていいよね」と思ってもらうようなマインドを作る。そういったことを自社メディアでやりたいので。コンテンツの種類の違いというか、ニーズの違いというか、そういったところがありますね。

後藤:一概には言えないですけど、オウンドメディアがいわゆる生活者と握手する方で、タイアップとかブランドコンテンツが、言ってみれば出稿して、結構お金をお支払いしているんで。握手ではなくて、レジの前に並ばせる方なのかなっていうのは思います。シーンで考えると。

梅田:やっぱり、オウンドメディアにアクセスする時点で、読者はその企業のことはある程度好きというか、興味があって見る人ですよね。タイアップ記事は、媒体を見ている人に突然入ってくるものだと思うんで、見ている人のモチベーションの違いはありますね。僕はタイアップ記事は、合コンみたいなものと思ってまして。時間内にいかに自分をPRするかというかね。

オウンドメディアは、デートみたいなものかなと。ある程度関係ができた上でやっていくので。結果として合コンもデートも相手にいいと思われたいというのは一緒なんですけど、戦略としてはちょっと違うのかなみたいな。

後藤:時間も結構過ぎちゃったので、一旦Webライターミーティングはこちらで終了させていただきます。