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貧困層が土地を追われ、よそ者が街を支配する… アメリカで注目を浴びる「ジェントリフィケーション問題」とは

貧困層が土地を追われ、よそ者が街を支配する… アメリカで注目を浴びる「ジェントリフィケーション問題」とは

都市再生における最先端の取り組みとして注目を集める「ジェントリフィケーション」。しかし、その負の側面を正しく理解している人は少ないと都市計画学者のStacey Sutton(ステイシー・サットン)氏は指摘する。TEDxの舞台で聴衆1人1人に、理想の都市づくりについて考えてほしいと訴えました。(TEDxNewYork2014より)

スピーカー
都市計画学者 Stacey Sutton(ステイシー・サットン) 氏
参照動画
What we don’t understand about gentrification

ジェントリフィケーションの本来の定義

ステイシー・サットン氏 ニューヨークやサンフランシスコ、シカゴなどの大都市では、ジェントリフィケーションについてよく議論されています。最近私は様々な人々とジェントリフィケーションについて語り合いますが、よく聞く言葉であるはずなのに、本当の意味を理解している人は少ないということがわかりました。 ある男性は「近隣地域が新しくなるとか、古かった場所を新しくするっていうことじゃないの?」と言っていました。ジェントリフィケーションについての理解は実に混乱しています。しかし、ジェントリフィケーションを「近隣地域の改善」と定義することは、極めて短絡的といえます。ジェントリフィケーションとは、もっと複雑なものなのです。 gazou1 gazou2 gazou3 gazou4 ほとんどの人々はジェントリフィケーションを、ハイラインなど歴史的な場所や荒廃した建物の適応型再利用、高級高層ビルの建設や、カフェやワインバーなどのリテールショップの急増、19世紀のブラウンストーン住宅や90年代のビクトリア式住宅の復元のことだと思っているでしょう。 しかし、ジェントリフィケーションと同義であると考えられているこれらの事柄は、ジェントリフィケーションの本当の定義とは異なるのです。 ジェントリフィケーションとは、収入や肩書きの高い人々が都市において比較的貧困層が多く住む停滞した地域に引っ越したり、投資をしたりすることです。

ジェントリフィケーションが引き起こす人種差別

こういった地域は今まで政府からも民間からも投資を受けてこなかったエリアです。高所得者がこの地域へ移住することで、低資産価値を還元してしまいます。そうすることによって資産価値が高騰し、低所得層は追い出され、築かれてきた地域の文化や特徴を一変させてしまうのです。 都市地理学専門家のトム・スレイターは、「ジェントリフィケーションとは、『経済不平等における空間的発現』または、『地域やコミュニティ内の不平等』であると評しました。私たちが忘れてはならないのは、ジェントリフィケーションはアメリカにおける人種不平等の遺産と混同されているという点です。 ジェントリフィケーションは、アメリカ合衆国内において肌の色が濃い人種が多く暮らしている地域で起こっています。つまり不平等なことに、肌の色が濃い人々が立ち退きを余儀なくされているのです。そしてその立ち退きは一般的に、白人の流入によるものです。 この動きがあらゆる緊張状態をもたらしていることは、容易に想像ができますね。ですから、ジェントリフィケーションを適切に表現するとしたら、それは不平等の象徴であると言えるでしょう。私たちの考えるような防止策や政策は、ジェントリフィケーションとは言えないのです。

ジェントリフィケーションにまつわる3つの誤解

ではまず、皆さんがよく誤解している事柄を3点あげます。先ほども申し上げましたが、ジェントリフィケーションはリバイタリゼーション(復興)とは違います。 リバイタリゼーションとは、近隣地域がより良く変わる・改善される・アップグレードすることで地域全体の底上げを図ることです。通常これらは公共や民間の手を借りて、地域住民や地域団体によって行われます。 住宅の改築や治安改善、地域清掃活動を企業に持ちかけるなどのことが考えられますが、リバイタリゼーションにおいて特に大切なのは、低所得者たちにも支払い可能な程度に地価を保つことです。 2点目にお話ししたいことは、きっとジェントリフィケーションにおいて1番不利益な効果であろう「立ち退き」問題です。専門家たちもジェントリフィケーションが立ち退き問題を起こすことには同意するでしょう。まったくもって驚きの新事実ではありません。 ジェントリフィケーションの影響の大きさについて話し合いましたが、問題のひとつとして人々の立ち退きに対する考え方の違いがありました。立ち退きには直接的な立ち退きと間接的な立ち退きがあります。間接的な立ち退きは排他的な立ち退きとも呼ばれています。まずは直接的な立ち退きについて説明いたします。 gazou5 想像してみてください。5~10年住み続けている家、月々の家賃は1800~2000ドルほどだとします。ある日突然大家さんに「60日以内に3000ドルに値上げする」と言われたとしたら? いきなり50~60%の賃料値上げに直面することになります。どうしますか? ほとんどの人は立ち退くほかありません。これが直接的立ち退きです。

精神的孤立による立ち退き

排他的立ち退きはさらに陰険です。それはどういう意味でしょうか? では、このように考えてみてください。多くのニューヨーク市内の地域には保護された区画があります。家賃規制区画や家賃固定区画などと呼ばれもする、公共住宅のことです。それらの限られた地域の人々は立ち退かなくて済みます。 排他的立ち退きとは、家族や友達が立ち退かされてしまった時に、その地域に残った人々が社会的交流を失ったことにより感じる精神的孤立感から発生します。さらに、手の届かないような高級レストランや高級ブティックが流入してきたことによる精神的な孤立感のことでもあります。 閑静な住宅街になるのは素晴らしいことですが、もしウィンドウショッピングしか出来なかったら、それはいい気分ではありませんよね? また違う視点からの孤立感を味わうことになります。 排他的立ち退きに関する最後の点は、時間をかけて起こります。保護区画の人々でも立ち退くことを選ぶ場合があると判明しました。 それは確かに、自ら選んだことかもしれません。自ら手続きをして引っ越しをしました。しかしその理由は、住み慣れたその地域やコミュニティーが変わってしまったことによって快適に感じられなくなったからです。こういった色々な過程が争いを引き起こすことになるのです。

市民にとって不利益な税もある

排他的立ち退きの3点目は、ジェントリフィケーションは根本的に社会的公正の問題なのです。多くの人々にとって利益となり少数に不利益になるような準公共財ではありません。そのまったく反対なのです。 不動産市場においてよく見られますが、最終的にニューヨークのような都市の高級不動産に投資をすることを目指す人々が急増しています。その一方で、中流階級のニューヨーカーたちは市内に留まります。このような不動産のつり上げが市にとって有益であると言う人々もいます。確かに資産税収が増えますね。 しかし、新開発による10年減税や一般助成金、不動産開発者らが得る20年免税のことを考えてみると、増えると考えられた税収は生まれないことがわかります。ですが、物品販売税は増えます。こちらは市にとって有益ですが、多くの人々にとって高額です。

数値だけでは計れない影響

現在ジェントリフィケーションの影響力を複数の都市で数値化し、学校や犯罪への影響力の違いについて研究されています。ここでも様々な意見や見解があります。これらの研究から一般的に、ジェントリフィケーションが起きた地域において、学校には改善が見られませんでしたが犯罪件数には減少が見られました。 市全体の犯罪件数は減少しました。しかし影響力の効果は複雑なのです。ジェントリフィケーションを数値化することは、多くの学者が使うような統計模型においてのみ重要であり、実生活でジェントリフィケーションを受けている人々にとっての問題は現実のものなのです。数値化する必要などありません。 gazou6 私は様々な年代において、ジェントリフィケーションが行われていた様々なニューヨーク内の市街について調査しました。この時測定方法を固定していなければ、必然的にどの市でジェントリフィケーションが起こっているのかという正確な統計結果を得られません。しかし、これもまたジェントリフィケーションに直面する当事者たちを救済しようとする時には関係のないことです。

ジェントリフィケーションは社会的公正の問題

ジェントリフィケーションは基本的に社会的公正の問題であるため、私たちは都市計画や革新的政策に関してもっと深く考えるべきです。つまり私たちに出来る事柄があるということです。 例えば、社会的公正の問題であると理解した上でジェントリフィケーションについて話したり、ブログを書いたり、Twitterで「都市は常に変化し続けているじゃないか」というようなツイートをしないことです。 なぜならこれは、自然な変化ではないのですから。ジェントリフィケーションは対処可能な問題なのです。手の打ちようのない問題ではありません。私たちに出来る事柄を数点あげてみましょう。まず、家賃設定についての契約について再考すること、そして増え続ける税金がしっかりと弱い借家人のサポートに使われるように、累進課税についての契約を再考することです。 また、人を食い物にしてしまうような投資計画を制限することも考えるべきです。認定投資家たちがベッドフォード=スタイベサントやクラウンハイツ、ハーレム、ブッシュなどの急激に成長する地域への投資を誘発するような投資信託を制限することも考えるべきです。 そしてもう1点私たちが考えるべきなのは、ニューヨークや国内全土における、ジェントリフィケーションを行う予定の地域住民への説明の仕方です。都市景観の話を持ち出し、「自由な開発のためにはその地域の活性化が極めて重要だ」などと告げることでしょう。しかし実際には、必ずしも適切な表現でないことが明らかです。

都市開発の根本となる価値観

最後に、ジェントリフィケーションと立ち退きを防ぐためには一刻も早く取りかかることが大切です。こう言いながらも、人々がどこかに住む必要があることは理解しています。私がここで強調したいのは、ジェントリフィケーションやその対処法について真剣に考えなければならないという点です。 みなさんに考えていただきたいのは、ジェントリフィケーションとは根本的に社会的公正の問題であり、社会的公正は重んじるべきものだということです。いくつか例をお話ししましょう。 1992年、ニューヨーク市が急激に発展しようと奮闘していた頃、都市開発部は将来的に海岸通りの地域をニュ—ヨーカーたちに売り込むために土地利用規制や区画規制を取り入れようと試みました。 この時、「どんな規制や規律も開発には効果がない」という反対意見も多く出ました。しかし、実際にはそんなことは起きませんでしたね。ここで何が大切だったかと言うと、都市開発部にははっきりとした価値のある展望があり、それに向けて行動を起こしたことで道が開かれたということです。 ジェントリフィケーションの問題に関しては、立ち上がり行動を起こすことが出来るのです。規制などを活用することも出来ますが、大切なのは私たちが何に価値を置き、誰を尊重し、どのように行動したいかです。ありがとうございました。

  
※ログミーでは、TED Talksおよび各TEDxの定めるCCライセンスを遵守し、自社で作成したオリジナルの書き起こし・翻訳テキストを非営利目的のページにて掲載しています。
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