上流と下流のつながりを大事にするファクトリエ

藤田功博氏(以下、藤田):資金調達などもされて、今実際、会社の経営をされる上で一番ポイントにしておられること、重点的に取り組んでおられることっていうのをお聞きできればと思うんですが、山田さんどうですか?

山田敏夫氏(以下、山田):僕は、結構ファッションっていう分野もあるんですけど、やっぱ「リアルなブランディング」という、この10月から第3期が始まったんですけど、リアルブランディングをすごく大切にしてまして。

3つあって、ひとつが今回銀座にかなり大きめのガイドショップを作ったっていうのがひとつ。もうひとつは伊勢丹新宿店さんとの取り組みを始めたと。リアルの場所で、信頼できる場所で信頼できるものとして、紹介されること。

今まではインターネットで何かやってる、ブランドなのかよくわからんサイトがあると思ってたところが、きちんと銀座にも構えて、そういう信頼できる場所にも置いてやっていくと。

3つ目は、リアルって意味で毎月やってるんですが、「工場ツアー」っていうのを始めて。岩手の北上とかに、東京駅から3時間くらいかかるんですけど現地集合・現地解散で、お客様に呼びかけてですね。「現地集合・現地解散、自腹で日帰り岩手旅行するか? 誰も来なかったらどうしよう」と思ったんですよね。

30人限定とか言いながら。でも30人来てもらっても、工場まで離れてますしその人たちを運ぶ手がないんで、結局北上市役所にお願いしてすごいデカイ30~40人乗りのバス出してもらえることになったんですね。それはもう彼らも「外から人が来てくれるんだったら嬉しい」みたいな話になって、でもそのときの応募人数まだ2人しか来てなくって「やばい」とかって(笑)。

でもやっぱりファクトリエのお客様たちなんで、メルマガ打ったりFacebookでいろいろしたら、結局は40~50人応募が来て、その中から参加者30人ってなったんですよね。

それによって、作ってる工場、日本のメイドインジャパンが激減してる中で、僕らって販売することも大事なんですけど、どうやってそれ食い止めるかとか、そこに入りたいと思わせるかってことも結構大切で。

ファクトリエは今14の工場でやってるんですけど、14工場の半分はファクトリエを始めて2人以上の新卒採用に成功してるんですよね。その子たちが残ってくモチベーションって、最初は自分たちのブランド作ってるとか、「ファクトリエ by 工場名」なんで、やってるとモチベーション続くんですけど、やっぱり半年くらい経つと「つらい」とかなるんですよね。

そのときに工場ツアーとかで、ユーザーと今までつながるはずもなかった、流通上のたくさんの人たちがいて、消費者がいてアパレルメーカーがいて卸がいてうんぬんてあるわけじゃないですか。つながることのなかったユーザーが工場に来てくれて、今回皆で寄せ書きして、その工場に渡したりしてるんですよね。

そしたら大切な場所にそれが飾ってあったりして。ちゃんとモチベーションを保つとかそういうことを、今の3つっていうのはこの半年間掲げてやってくことなんですけど。

インターネットで今までやってきてIVSでも出させていただいて、インターネット業界での知名度って思いっきり上げようと、そこが第1段階だとすれば、次はそのものがちゃんとブランドになっていくために「きちんとした適切なジャブを打ち続ける」ていう段階かなと思ってます。

WHILLが編み出したアメリカでの採用方法

藤田:なるほど。杉江さんどうですか?

杉江理氏(以下、杉江):僕は採用に力を入れています。簡単に言うと、長期的に我々のチームってちょっと分散してる、地域が違ってるところがあって、日本はセールス&マーケティング、R&D(Research & Development)ですね。アメリカはプランニング&マーケティング、台湾では量産をやってるんですけど、これって人がいるんですね。

WHILLの社員が必要なんですけども、結局会社作ってくのとか、業績上げてくのって人なんで、これを本当、適材適所の人間をハイアリングするということに、もう命燃やしますね。

特に僕はアメリカにいてチーム作るっていうところあるんですけど、やっぱ日本で育っているんで、カルチャー的には日本のほうが楽なんですよね、採用も面接も楽だし。ただ、本当にアメリカのカルチャー・採用基準をしっかりと理解して、レギュレーションも理解した上で、人を、Right Personを採用するっていうのが、やっぱりすごく苦労するんです。

僕、何回か失敗してる経験もあるんですけど、そういった意味で採用っていうのをしっかりやろうと思ってます。結構、それのノウハウを今体系化してて、特にアメリカにおいてはやっている採用プロセスがあるんですよ。

これが順番で行くと5つあって、まずレジュメ送ってもらいますね。レジュメ送ってもらうんですけど、いろんなとこ張り巡らせたりとか自分で行ったりとか、レジュメ送ってもらってまず僕チェックします。で、面接しますね。これはFace to Faceがベースですけど、そうじゃない場合は別にSkype使えばいいですと。

その後にチームミーティング持つんですね。チームで、一人一人会って行ってもらって、チームフィッティングをしっかりと見てもらうっていうの、時間かけてやりますね。そしてreference、最低2人はとります。その後にこの人いいねってなったらOne month projectって言ってるんですけど、課題を与えて。

こういった課題に対して、たとえばビジネスストラテジーだったら、「今課題があってこういうこと目指して、この月に10台とかこれだけ売りたいんだけど、あなたならどういうアプローチしますか? リソースはこうですよ」。

全部情報与えて、あなたはどういうビジネスストラテジー作りますかっていうのを1週間に1回ずつとか面接したり、わかんないとこどんどんやったりとかするんですね。

そうすると、彼らが言っている自分のスタイルプラスアルファ、リアルなものって少なからず見えてくるんですね。それでもわかんないことたくさんありますけど。ていうプロセスを経て、ハイアリングするようにしてますね。

やっぱ、2つ重要なことがあると思っていて、これはRight Personだと思ってるんですけど、会社にプランってあるじゃないですか。「このときまでにこうやりたい」。そのときのタイミングですね。

タイミングに合わせたスキルをちゃんと持った人であること。チームフィッティングだったりとか、会社でこうやってやりたいっていうビジョンを共感できる。この2つっていうのを4つのプロセスで見てるんです。

ということを体系化していて、最近僕も、2年くらいなったんで徐々にアメリカの生活も慣れてきて、今はいい人見極めることとか、やっていることの知名度も上がって来たんで、できるようになってきてるっていうのが現状ですね。

資金調達だけじゃない、クラウドファンディングの活用で得られた意外な効果

藤田:実際時間もかけてやるんですね、一人採用するのに。その母集団というか、そもそもの応募エントリーの人はどうやって集めているんですか?

杉江:すごくいい質問ですね。本当そうなんですよ、結局そこから日本と違うんですよ、掟が。

もう本当にあらゆる手段を使うんですけど、僕の場合は。そういう欲しい人材が、スキルマッチしそうなミートアップ行ったりとか、あとはもうサービスは使いますね。Indeed.comとか、Angel list だったりとか、Linkedinとか、そうですね。

200ドルだったらどのくらい来るのかとか、全部データとか貯めながら、このくらい金かかるとかバジェットとかわかったりするんですけど。あとは紹介ですね、投資家からの。

投資家に「こういう人を集めてるから紹介してくれ」って、あらゆることを全部やりますね。レジュメはまあまあ来るんですよね。そこでレジュメを1回スクリーニングして、僕はできるだけ会うようにしてて、明らかに外れてない人以外は。

なんでかっていうと、僕が慣れなきゃいけないんですよ。アメリカのカルチャーとか、アメリカ人の考えてることとか、あとは盗んだりとか、こういうことをやったらいいんじゃないかとか(笑)。そういうことを結構時間かけてやりましたね。

だから無駄と思えるようなこともやりましたね。今ではやらないこともやって、確かめたりしましたね。本当。

山田:全部アメリカ人ですよね?

杉江:アメリカ人ですね。ハーフの人もいますがアメリカ人ですね、基本的には。

山田:それをまた理念とマッチングさせるってすごい難しそうですね。

杉江:結構ね、そんなことないですよ。なんでかっていうと車椅子持った家族がいたりとか、そういうのって別に万国共通で。そういうの買いたいって思ってる人って世界中にいるんで、それはそれでいます。

藤田:イメージではアメリカ人って自己PRとかうまいから、インタビューしててもなかなかこう、本当のところっていうか……。

杉江:めちゃくちゃうまいですよ。なんかもう胡散臭いんですね。「100%の自信を持ってあなたの会社をうまくします」みたいな。定型文みたいですね。「何卒よろしくお願いします」みたいな、アメリカの。

でも嘘言ってる人はわかりますからね。こういういろんな人のリファレンスとか、そういうのやるんで基本的にわかりますね。わかるようになりました。

藤田:じゃあもう執務時間の大体7割とか8割くらい、採用に。

杉江:最近までそうですね、7割くらいやってましたね。もちろん日本のほうもやりますし。

山田:あれって効果あったんですか? Kickstarter。

杉江:あれはファンを作るっていう効果がありましたね。もともとあれの目的っていうのは資金調達するっていう話じゃなくて、マーケティング要素が強かったんですよ。ファンを獲得するっていう。基本的に100万円のものをKickstarterでボーンと買うっていうのはあんまりなくて、アベレージとして10万円以下なんですね。Kickstarterのもの買うって。

なので、そもそもそこで買うってものではなくて、Tシャツだったりそういうものを買ってもらう、及び認知してもらうんですね。それにおいてWHILLってものをそもそもアメリカで知ってもらうっていうのが重要でしたね。そういう目的で使いました。