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結論! 人の役に立つのが一番幸せ–ビービット代表・遠藤直紀氏が語る“貢献志向”の重要性

結論! 人の役に立つのが一番幸せ–ビービット代表・遠藤直紀氏が語る“貢献志向”の重要性

ビジネスにおいて「売上目標」と「役に立つこと」どちらを選ぶべきか。株式会社ビービットの代表取締役・遠藤直紀氏は、誰かの役に立つための「貢献志向」の働き方で世界は幸せになると語りました。(TEDxTodai 2013 より)

スピーカー
貢献志向の仕事(Integrating altruism into your job)
参照動画
株式会社ビービット 代表取締役 遠藤直紀 氏

仕事の目的とは何か

遠藤直紀氏 みなさんこんにちは。今日は「働く時の気持ちを変えれば世界中が笑顔になる」という話をさせてください。ちょっとあやしい話だと思われるかもしれないんですけど……。 (会場笑) すごく簡単な話なので気楽に聞いてください。 gazou2 私は今から13年前、西暦2000年に起業しました。その当時、今はモノがたくさん溢れているので、これ以上モノを作るのではなくて、あらゆるものを人間中心にもう一回作り替えて、品質を改善していくべきだと考えました。 2000年当時はすごくインターネットも盛り上がっていましたが、とは言ってもすごく使いづらいものが多かったです。なので「インターネットの世界を使いやすくする」という仕事を始めました。 今まで山あり谷ありでやってきたんですけれども、仕事とは関係なく、そもそも「働くとは何か?」というのを考えないといけないシーンにたくさん出会いました。 ちょっとその一例をお話しさせてください。ある証券会社さんのプロジェクトです。 「この商品の強みって何ですか? Webサイトで見せる商品の強みって何ですか?」と聞いたら、お答えいただいたのが「いや、正直言うとこの商品に強みはないです」「あ、そうですか……」 「もっと正直に言うと、絶対両親には売りたくない商品なんだよね」って言われたんですよね。 (会場笑) 「それをあの手この手で何とかお客様に売るんだよ」って言われて、「いやぁ~、そうなんすか……」みたいな(笑)。それで私が思ったのは「仕事だから仕方ないのかな? でも仕事だったら理不尽なことをしてもいいのかな?」ということ。どうしても「仕事とは何か」を考えざるを得ない状況になりました。 gazou3 みなさんは、仕事って何だと思われますか? 仕事の目的は何ですか? 色々あると思います。例えば「食べるためには働かないといけないよね」とか「人生充実させたい」「成長の機会だよ」とか、色々捉えられると思います。 ただ1つだけ事実としてあるのが、やっぱり多くの時間が仕事に費やされるというのは間違いないと思います。

「今が最高に楽しい」と答えた89歳の祖父

私には兄が2人いました。1人は4歳の時、もう1人は28歳の時に亡くなりました。それを通じて「思ったよりも人生は長くないかもしれない。限りある人生をどういう風に生きていくのか?」というのを考え、仕事にはやっぱり長い時間を使うので、その仕事が有意義で幸せになれるものだったらいいなと思いました。みなさんもそう思われますよね?  どちらかと言えば、幸せになれる仕事のほうがいいなと考えられると思います。幸せになれる仕事をする前にまず考えないといけないのは、そもそも「幸せとは何か」ということですね。その「幸せとは何か」を定義する上で、ちょっと祖父の話をさせてください。 祖父は公務員だったんですけれども、46歳の時に起業しました。種とか苗とか農薬を販売する小売業を始めたんです。私は高校3年生の時に、祖父は89歳でした。故郷を離れるので、もう祖父とそんなに長く話すことはないだろうと思って、それまで聞きたかったことを1つ聞いてみたんですね。 「明治時代から生きてきて、これまでいちばん面白かったことって何? いつがいちばん楽しかった?」っていうのを聞いてみました。「うーん」と考えて答えてくれたのが「今が最高に楽しい」と言ったんですね。 「ちょっと待ってよ、89歳で今が最高に楽しいの? なんでそんなに楽しいの?」って聞いたんです。そしたら「仕事ができてるのが最高なんだよ」と言ったんです。高校生の僕は、仕事って大変なことなのであまりやりたいことじゃないよなぁ? と思っていたんですけど、なんか楽しいって言っているので「なんで楽しいの?」と聞いたんです。 そしたら「『今年はどういうトマトを作ればいいかな?』『今年はどういうキュウリを作ればいいかな?』という農家の相談に乗る。そうすると、収穫の頃に『美味しいのできたよ~』って持ってきてくれる。それが最高に嬉しいんだ」っていうことを言っていました。役に立っている実感、それが自分の人生を最高に楽しくしているということを言っていました。

人の役に立つことが幸せを形成する

翻って私は、真逆の体験があります。起業する前に最初に勤めた会社なんですけれども、正直なことを言ってインチキなことをしていました。 (会場笑) 自分の問題かもしれないですけど、役に立とうという感覚は全然なかったです。むしろ、どうやればクライアントさんからお金をむしり取れるかということばかり考えていました(笑)。 そうすると働く意義なんて全く見いだせないので、毎日穴を掘っては埋める、穴を掘っては埋めるという感じで、どんどん生きる意欲を失っていくんですね。それと同時にお金も全然なかったので、栄養失調で倒れました。救急車で運ばれて、ベッドの中で考えたのが「食べられないのって思った以上につらいな」というのと、もう1つ。 「何も人の役に立たずにこのまま死んでいくのかもな」っていう絶望感を覚えました。なので、「僕は誰かの役に立つことが幸せなんじゃないかな? 幸せの定義ってこういうことなんじゃないかな?」というのを実感しました。 僕の実体験だけでみなさんに「幸せとはこうです!」と言うのもちょっとおこがましいので、色んな文献を読みあさりました。例えば最新の脳神経学や行動分析学や心理学、色々あさっていくとわかることがあります。 ほとんどの結論が同様です。「人の役に立つことが自分の幸せを形成している」と定義されています。その中でも明確に言い切っているのが、アレフレッド・アドラーという方です。 gazou6 この方は「人間の幸せを最大限構築しているのは、貢献している実感だ」と定義しています。自分の実体験でもそうですし、学術的な研究結果を加味してみても、そう結論付けてもいいんじゃないかと思います。「幸せとは、誰かの役に立つことである」と。そうすると、貢献できる仕事、貢献する仕事というのが幸せになる仕事だと言えると思います。

「笑顔の売上」と「憤りの売上」

私自身を振り返ってみても、個人としていちばん嬉しかった仕事は何かと言うと、大変なプロジェクトをやった後にクライアントのご自宅に招いていただいて「本当に今回のプロジェクトは大変だったけどよくやってくれた、助かったよ。ありがとう」って言われた時……。 たくさん売上を上げた時はもちろん嬉しいんですけど、それ以上に全然次元の違う喜びがありました。そんな中、「そりゃあ役に立ったほうがいいよ。でも、反対に役に立たない仕事なんてあるの?」と考えられる方もいらっしゃると思います。 そもそも、売上が立った時点でニーズがあって買っている人がいるんだから、売上があれば社会的に意義があるという風に言えますよね? これはすごくよくある議論なんですね。売上を追求していけば世の中はどんどん良くなっていく、そういう考えが資本主義を形成していると思います。 ただ、私自身が感じているのは、売上には2種類あるということ。まず「笑顔の売上」ですね。お客さんが喜んで「本当に買ってよかった、ありがとう」と言って払ってくださるもの。それと「正直本当は払いたくないけど、我慢して払うよ」という「憤りの売上」ですね。 この2種類があるので、純粋に売上だけ追っていけばいいかというと、全然そんなことはないと思います。「憤りの売上」を考えた時に、自分自身も思い当たる節があります。 私は起業してから長い間、営業責任者を務めていました。ある日、大きなプロジェクトが獲得できそうだったので、嬉しくて意気揚々と会社に帰って、みんなを集めて「こんなプロジェクト獲得できそうだよ!」っていうのを話したんです。 そうしたら共同経営者が私に疑問を呈しました。「おい遠藤、こんなプロジェクト本当に獲得するのか?」と。「何でですか?」と言うと、「このプロジェクト、詐欺じゃないか? 金融商品を何も考えずにユーザーが申し込んじゃうWebサイトを設計するなんて、どう考えても詐欺だろう!」と……。 (会場笑)

「売上目標」と「役に立つ」を天秤にかけて導き出した答え

「そんなプロジェクトやっちゃダメじゃないの?」「誰かの役に立たないじゃん」「貢献しない仕事なんかしても意味ないんじゃないの?」というのを言ってきました。 でも「ちょっと待ってください。僕は営業責任者なので、どうしても売上目標を達成したいんです」と。なので、あの手この手で説得を試みたんですけれども、「お前が色々言うのはわかる。でもちょっと考えてくれ。一緒に働いている仲間がどういう気持ちで働いていて、何を目的に働いているのかをしっかり考えた上で結論づけるんだったら従ってやるよ」と言われました。結論としては、断りました。 ただ「売上目標」と「役に立つこと」を天秤にかけた時に、本当に役に立つことを選ぶというのは、かなり難しい意思決定です。私は聖人君子ではないので、今でも葛藤があります。 ただ、立ち止まって「何のために生きているんだろう?」というのを考えると、やっぱり幸せになりたいと思います。 そうすると、先ほどの定義に返ってみても「役に立つことが幸せになる」というのが明確であれば「役に立つ」以外の選択肢はないですよね。なので「役に立つ」という意思決定を自分自身もしました。 そうすると全然生き方が変わってきます。仕事がすごく楽しくなります。ただ、仕事は大変になるんですね。やることが増えます。断ることも増えるので、仕事は増えていきます。ただそれがあまり苦にならないのと、心持ちを変えるだけでこんなにも感じ方や生き方が変わるんだなというのを大きく実感することができます。

多めにもらったおつりは返すべきか

実はもう1つ役に立つための仕事を始めてから起こった大きな変化があるんですね。それは想定していなかった変化なんですけど、そんな話をさせてください。 私は雑誌が好きなので、よく雑誌を読みます。1つすごく興味深い記事を最近読みました。それはどういうものかというと、少年院にいる17歳の少年の話。彼に「なんで罪を犯すようになったの?」というのを聞いている記事です。 そこに書かれていたのが、小学生の頃にお父さんと手をつないでタバコ屋に行ったと。お父さんが5千円札でタバコを1個買いました。おつりを9,800円もらいました。おかしいなと思って歩いていましたが、やっぱりおかしいと思ったのでお父さんに言ったんです。 「おつりもらいすぎだから返しに行こうよ」と。そしたらお父さんは怒り出しました。「間違えたやつが悪いんだから返す必要はない!」と。「お前何言ってんだ? 馬鹿じゃないか?」と怒りました。 父は一部上場企業に勤める部長です。「自分は偉い」と毎日言っています。その彼が「インチキするのは当たり前だ」と言ったので、「『僕はインチキをして生きていこう』ってその時に決めました」と……。 本当ですか? って思ったんですけど(笑)。それがあまりにも心に残ったので、家に帰って妻にその話をしたんです。「大の大人がお金をちょろまかすなんてありえないよね」って言ったんですね。 そしたら妻は唖然として「え、何言っちゃってんの? 本当にそんなこと言ってんの? あんた自分が10年前にやったこと覚えてないの?」って。え~っと……。思い出しました(笑)。 真っ青になりました。何を思い出したのかというと、2人で海外旅行に行って、海外の町でお金を払った時にたくさんおつりをもらって、また歩き始めたんですね。妻が気付いて「これ返しに行こう」と言ったら、「ちょっと、何言ってんの? 間違えた人が悪いんだから……」 (会場笑) 「あ、俺、同じこと言ってた!」って思いました。その時はすごい険悪な雰囲気になって、ちょっとやばいなと思ったんですけど(笑)。本当に100%忘れてたんです。全く悪気はなくて、今だったら絶対100%返すという自信があるんですね。 なんでこんなに10年間で僕自身に大きな変化が起きたんだろうと考えると、やっぱり2000年から一緒に働いてきた仲間たちとの仕事における価値観というものがものすごく効いていて……。あっ! もちろん今日来ている妻にも感謝をしていてですね……。 (会場笑・拍手) ありがとうございます(笑)。ただ、やっぱり多くの時間を使って働く時の、どういう気持ちで働いているのかが、ものすごく効いてきてるなというのが実感としてあります。

仕事が人格になる

gazou9 このことはアブラハム・マズローという心理学者さんも述べられています。「1人ひとりの仕事が1人ひとりのアイデンティティを形作っている」、つまり「仕事が人格になる」ということを言われています。 結局みなさんがどんなに素晴らしい道徳教育を受けられていても、仕事がモラルを失ったものであれば、5年10年と働いていればそういう状態になっていきます。結局仕事はものすごく人生において重く影響があるよというのを自覚しないといけないことに気付きました。 gazou10 さらにもう1つ気付いたことがあります。実は仕事のあり方や働いている時の気持ちが個性を決めているのであれば、先ほどの少年院の子どものように、家族の性質も影響を与えているということがわかります。 実は、家族は社会を形成しています。そうすると、仕事のあり方は社会そのものが規定しているということがわかります。これは結構大きい話だなと思いました。それに気が付いた時に私が最初に思ったのは、自分がエゴイスティックに幸せに生きたい、幸せに生きればいい、だから役に立つ仕事をしたいと思っていたんですけれども、そんなレベルの話じゃない、と。 実は働き方や働く時の気持ちが社会そのものを規定しているので、もっと根深くて重たい話だということに気付きました。みなさんが働き始めた時、学生の方はこれから働き始められると思うんですけれども、みんな夢と希望に燃えて働き始めます。 でも現実はそんなに甘くないので、私自身もそうだったように、売上や利益目標を追って生きていくことになります。そうすると、いつの間にか目標と目的がすり替わるんですね。 売上が目的化していきます。目的のためには手段を選びません。結局手段を選ばないということは、奪うことを厭わない仕事をするようになります。奪うことを厭わない仕事は、奪うことを厭わない個性を作ります。奪い合う家庭を作って、奪い合う社会を作っていくことになります。大半の戦争は資源の奪い合いによって発生しています。 これは言い過ぎかもしれないですが、実は仕事のあり方が、争いを起こすかどうかというところにまで影響を及ぼしているんじゃないかなと思っています。

「貢献志向」の仕事で世界が幸せになる

最初に申し上げた証券会社さんの例なんですけれども、実はその方には全く悪気はないんです。むしろ、ものすごく一生懸命、精一杯働かれています。なので、全力で働かれていることに対して私は尊敬をしています。 ただ、だからと言って働くことに対して目をつぶってもいいのかというと、そうではないと考えます。我々はどういう気持ちで働かないといけないのか、働くのかというのを選択しなければいけません。みなさんは次世代にどういう社会を手渡したいですか? 私はできれば次世代に、支え合う、貢献し合う安らいだ社会を手渡したいです。でも現実は甘くないです。「ごはんを食べられなくなっても同じことが言えるのか? 手段を選ばないんじゃないの?」そう言われるかもしれません。 また、「役に立つために頑張ってみたけど、結局上司に殴られました、怒られただけでした」。そういった理不尽なことは社会にたくさんあります。なので、簡単ではないのはよくわかります。 ただ、どういう気持ちで働くのかというのは1人ひとりの心の問題なので、自分自身で決めることができます。誰にも縛られません。だから僕は希望を感じています。社会制度を変える必要もないし、絡みあった政治を変える必要もないし、何も変えなくてもいいんです。変えるのは自分自身だけ。 世界中の1人ひとりが「貢献志向」の重要性を認識して、ただ誰かの役に立つために働けば、必ず笑顔と感謝にあふれた社会が実現できると信じています。 gazou12 僕は、子どもたちには笑顔が必要だということを確信しています。これはビービットで働く仲間の子どもたちです。彼らには笑顔が必要です。 世界中を見渡した時に、次世代の笑顔を望まない人がいるとは思えないんですよね。なので、貢献志向の仕事がどれだけ重要か、このアイデアが世界中に広がれば、必ず世界はより良い場所に変わると確信しています。私のお話は以上になります。誠にありがとうございました。

  
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