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一年間お金をいっさい使わずに過ごした女性が見出した、お金と仕事の本当の価値

一年間お金をいっさい使わずに過ごした女性が見出した、お金と仕事の本当の価値

モノにあふれ、人々が目の前の仕事に追われる現代に疑問を抱いた、環境心理学者のキャロライン・ホーグランド氏は、1年間お金を使わずに生活してみることを決意しました。周囲にサポートを呼びかけながら過ごした生活を振り返り、本当にやりたいことに挑戦する意義と、社会の中で助け合うネットワークの重要性について語りました。(TEDxErasmusUniversity 2014より)

スピーカー
環境心理学者 キャロライン・ホーグランド(Carolien Hoogland ) 氏
参照動画
My year of living without money

一年仕事をせずに生きてみることに決めた

nomoney1 私は、まだこれくらいのとても小さな時に「大きくなったら地球を救うぞ」と決めました。ティーバックについている小さなラベルとティーバッグをきちんと分別して捨てるような。私にはもうひとつ夢がありました。コメディアンになることです。 しかし、コメディアンになることは諦めて、環境を守る為に出来ることを学ぶために大学に行きました。十年後、修士課程に入り、学術の世界に入り博士号を取得して、環境心理学者になりました。研究プロジェクトをいくつか抱え、コンピューターの前に座りながら思ったのです、「私は地球を守る為に何もしていない」と。 2009年の1月のある時、アムステルダムの北にある小さな村で、昔一緒に働いていた同僚が開催するクラスに参加しました。ディナーをしながら、「優秀な友人達が仕事を失っている、世界は不況の危機に直面している」と語り合いました。 参加者の一人が言います、「皆が仕事を持たない世界はどんなだろうか? 私達はただシンプルに生きるだけの世界」と。私はそれを聞いてとてもわくわくしたのです。「それはすごくいい考え! 朝起きて、出かけていって自分が得意なことや好きなことだけするの。社会の中で支えあって生きるの。」 翌日自分に約束しました。「私は絶対にやってやる。シンプルに、仕事無しで生活してやる」と。そう決めると、たくさんのアイディアが浮かんできました。あの人と一緒にあれをやって、これをやって……と。自分の思いつきにとても興奮していました。 その後帰宅し、ボーイフレンドに私の思いつきについて話すと、彼は「それはすごいね。一年間貯金だけで生きていくなんて、とてもデカダンな考えだ。」私は言いました、「どうしてやる気を削ぐようなことを言うのよ? これはお金の話じゃないの。お金がある無しに関係なく誰でもできることなの。わかった。お金無しで生きてやる。出来るということを証明してあげるわ!」 博士にはサバティカル(長期研究休暇)があるので、休暇を取ることは出来ます。あとはこのクレイジーな思いつきを実行するだけです。「私よ、落ち着け」と自分に言い聞かせ、数ヶ月たった後もまだ挑戦したいかどうか、自分の様子を見ることにしました。 そして2009年の中頃まで待ちました。私の気持ちは変わっていませんでした。時間が経っても、私は自ら設定した「エベレスト」登頂目指してわくわくしたままでした。七つのプロジェクトにより食事し、アパートに滞在し、踊りに出かけ、仕事場をキープすることが出来たうえに、2010年の私の銀行口座の残高は収入なしでも変化しませんでした。

社会に相互協力関係を求めてみた

私は冒険するのが大好きです。そしてプロジェクトに取り組む際には、しっかりと詳細な計画を練ってから取り組むことで、それをより楽しむことが出来ます。ライターの友人たちに三回添削をしてもらいながら、自分のプロジェクトを説明し、協力を願う手紙を書き、履歴書と一緒に各所に送りました。 すると多くからイエスの返事が返って来たのです。私のプロジェクトを知り、ガス、電力会社等の大手企業も彼らのグリーン化促進マーケティングのリサーチの手伝いをする代わりに、「わかりました。一年間無料でガス、電気を提供しましょう」と言ってくれたのです。 近所の顔見知りのオーガニックストアにも援助を求めました。「うちはギリギリでやっているから無理だわ」と最初は言われました。説得する為にはもう少し私のプロジェクトを説明する必要があると思ったので、ケーキを焼いて彼女のところに持っていき、コーヒーを飲みながら話をしました。私はお互いの利益になるように相互サポートをしていきたいのだと。そこで私達が同意したのは、毎週土曜日に彼女の店の前にコーヒースタンドを出すことです。 しかし、医療に関しては別です。私には当時三歳だった息子がいました。保険会社と話をしましたが、彼らからは「ノー、プロジェクトに参加することは出来ない」と言われました。私のプロジェクトによって息子に迷惑をかけるわけにはいきませんし、自分の健康を冒すこともできませんので、そこだけは支払いを続けました。 もうひとつ。最後に手紙を書いたところは、タンゴのスクールです。食事してアパートに住むだけでは満足できません。ダンスに出かけることも私には必要なのです。「してもらうことはこれからいくらでも考えられるから、とりあえずいつでも踊りに来てくださいね」と良い返事がありました。 新聞が「2009年は不況に陥った。あなたのキャリアの新たなチャンスはどこにある?」という見出しの記事を書いていたので、それに対して私は投書をしました。そして私が「お金なしで一年過ごしてみるのはどうでしょう?」と書いたものが2009年の大晦日に新聞に載りました。とてもうれしかったです。 同じ大晦日の日の午後、友人たちに来年一年取り組むことについて、長いメールを送りました。午前0時を回ると、自分の財布を記事が載った新聞に包んでガムテープでぐるぐる巻きにしてそれを封印しました。2010年の始まりです。

周囲との関係性がより深まった

お金を全く使わない生活というのはどんなものなのでしょうか? とよく聞かれます。始める前は、お金がなければきっと惨めになるだろう、人も離れていくのだろうと思っていました。 しかし、このプロジェクトは多くの人それぞれと小さな協力をしながら行いましたので、私の人生は新たに生まれた多くの人間関係で、以前よりも活気づきました。 毎週木曜日は、レストランに食事に行くのではなく、自宅で料理して友人たちを招待しました。毎週違う顔が揃い、皆がそれぞれ飲み物などを持ってきてくれます。私のキッチンは、多くの人がやってきては食べ、飲み、議論する場となりました。 何か必要なものがあれば皆にメールを送り、協力してくれる人を求めました。例えば、私の息子は三歳で、自転車に乗りたがっていました。 Nomoney2 このように彼は自転車を手に入れましたし、私も何か必要なものがあれば、必ず手に入りました。人間関係も充実していました。たくさんの人から支援を受け、その人達の為に仕事をしていましたので、街中を駆け回っていました。関わる人々との仲は深まるばかりでした。 クリエイティブハブの中に仕事場のスペースも得る事が出来ました。そしてここで転機が訪れました。その一年を過ごすまで、お金についてしっかりと考えたことがなかったことに気がつきました。そしてそんなことを考えていると、偶然にもハブでお金のシステムについてのドキュメンタリーが上映されました。 それを見て、衝撃を受けました。その映画の内容に対して、というよりは自分がいかにお金について無知であったかを知り愕然としました。私はこれまで知らぬうちにシステムの中で生活し、仕事をしてきたのだと。銀行にお金を預け、それを他の誰かが運用に回す、そんな単純なことだと思っていたのです。 皆さん周りの人に聞いてみてください。「お金のシステムはどのように機能しているか知っているか」と。お金の為にこのプロジェクトを始めた訳ではありません。もっと自由に仕事を選べるようなりたいと思ったことが動機です。

惨めで、もうやめたいとも思った

「一年の間にもう辞めたいと思ったことはありますか?」と聞かれます。実は、あります。あの一年の中頃にベルリンにいる友人から、「しばらくベルリンに滞在しないか」という誘いがありました。しかし、そこでは私が地元で築いていたネットワークを築けていませんでした。 オーガニックストアをいくつか訪ね、私の取り組んでいるプロジェクトについて説明しました。食べ物を分けてもらうことは出来ましたが、その時とても惨めな気分になり、社会的疎外感を感じました。友人に頼りきっていることについても考え直し、全くお金を使わないで生活するというプロジェクトに妥協点を見出そうとしました。そんな風に考え始めてから二日後、ATMに行き、お金を引き出して友人たちにアイスクリームをご馳走しました。 オランダに帰ってきてからはまた元通り、お金を使わずに生活を始めました。この生活を初めた当初は、私の取り組みを人に話すのを渋りました。変人だと思われるに違いないと思ったからです。 しかし、始めてみてから会う人会う人に私のプロジェクトについて話してみると、多くの人が私の話に興味を持ち、「そんなことが出来るのか?!」と一緒にワクワクしてくれることを知りました。周囲のネットワークに頼っていましたから。そしてどうやら多くの人が「お金は絶対に必要なものではないかもしれない」という考えに安心し、うれしく思っている様子もありました。 時が経つごとに、自分の取り組みに自信を持ち、それを人と共有することも進んでできるようになりました。一年が経ち、2010年の大晦日がやってきます。最初にこのアイディアを思いついた村に戻りました。プロジェクト終了を祝う素晴らしいセレモニーが開かれました。その翌日、息子が私の財布を取り出す手伝いをしてくれました。 nomoney3

お金に頼らない真のネットワークと築きあげた自信

そしてまたお金を外で使う日々が始まります。とても変な感じがして、最初はお金を使うことをためらいました。プロジェクト中にお金を使わなかったことに馴れて、周囲のサポートネットワークがあること、人に頼ることができることに感謝するようにもなっていたので。友人は私のプロジェクトを人間関係の経済学と呼びました。私の持つ小さな経済ネットワークが私に安定、安全、安心感を与えていたのです。 あれから三年、現在私は自身のビジネスを立ち上げ、それによって生計を立てています。あの一年がなければ私の人生は違ったものになっていたでしょう。 あの年、私は外で飲む大好きなコーヒーを諦め、旅行することを諦め、ショッピングをすることも自分の香水を選ぶことも諦めました。いろいろなものを諦めた結果、欲しかったものが手に入りました。地球を守る手助けをする仕事です。 あの一年、私は毎週オーガニックストアの前のコーヒースタンドの手伝いをしたり、エネルギー関連の大企業のコンサルタントとして手伝いをしたりしていたので、そこから繋がった信頼できるネットワークが私の自信に繋がりました。自分が好きなこと、嫌いなこと、自分が出来ること、出来ないことを基準に人々と相互関係を築いてきましたから。 今では、今後自分のキャリアがどうなるか心配することはなくなりました。「常に人生はより面白い挑戦に向かって動いていくに違いない」と自信を持っているからです。皆さんも私と同じように一年を過ごすべきだと言っているわけではありません。 でも、一ヶ月でも一週間でもいつもの生活を変え、自分が本当にやりたいことをやってみてください。自分が好きな人と、ワクワクする人と一緒に仕事をしてみてください。必ずや新たな人生の教訓を学び、自分自身の成長を感じることでしょう。 キャリアやお金を心配せずに動くと、周りの為にもなります。「経済は人の為にあるべき」なのです。そして自分が好きなことだけやっていくと、必ず経済活動に貢献できることに繋がりますから。好きなことをして、新しいことを生み出し、経済活動に貢献する。すると今度は経済が皆さんの為に仕えることとなるでしょう。ありがとうございました。

  
※ログミーでは、TED Talksおよび各TEDxの定めるCCライセンスを遵守し、自社で作成したオリジナルの書き起こし・翻訳テキストを非営利目的のページにて掲載しています。
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