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「北朝鮮は、地球上でもっとも破綻した国家」 元CIA職員が示した、“朝鮮半島問題”解決への道筋

「北朝鮮は、地球上でもっとも破綻した国家」 元CIA職員が示した、“朝鮮半島問題”解決への道筋

「北朝鮮は地球上でもっとも破綻した国家だ」と、コロンビア大学主任研究員のスー・ミ・テリー(Sue Mi Terry)氏は語る。アメリカをはじめとする国際社会の働きかけがあってもなお、核兵器問題や人権問題が解決しないのはなぜか? 目先の出来事に捉われ、長期的な展望を失っている国際社会に対し、1つの解決の道筋を提示しました。(TEDxNewYork2014より)

スピーカー
コロンビア大学主任研究員 元CIA外交政策担当 スー・ミ・テリー(Sue Mi Terry) 氏
参照動画
A bold idea for North Korea

目先のことを追いまわすのはもう止めよう

スー・ミ・テリー氏 ここ数週間、私は非公開の警備下にあるアラスカの自宅にこもって、メディアからの電話をやり過ごしていました。ありとあらゆるレポーターが電話攻撃をしかけ、北朝鮮の若いリーダー、金正恩氏の居所を掴もうとしていました。 彼はおよそ40日間公の場から姿を消し、西側のメディアはヒステリー状態だったのです。金氏の身に何が起こったのか? 死んだのか? クーデターの勃発か? 軍による革命か? 今や実権を握っているのは彼の妹なのか? デザイナーブランドの上げ底靴で転んで、足首でも骨折したのではないか? (会場笑) こんな質問に答えるなんて、私は御免でした。なぜなら……1つ、北朝鮮内部で行われていることを正しく把握するのは、他の惑星でのできごとを知ること同様不可能だからです。2つ、そんなことは知ったことではないからです。金正恩氏がどこにいるかなんて、私の知ったことではありません。 どの金氏が北朝鮮の現支配者か、などという疑問も同様です。今いる金氏は3代目です。そして北朝鮮は依然、抑圧的な機能不全の国家たり続けています。しかし、核兵器の開発で武装した今、状況は変わりました。 これからの私たちは、目先のショーを追いかけまわすのはもう止めて、広い視野で物事を見るべきです。長い目で見て我々は、北朝鮮との関係において何を成し遂げるべきでなのしょうか。 そしてそれは、どのような手段で達成されるべきでしょうか。このような命題は、北朝鮮との関係性において提起されることはまずありません。大局観そのものについてことも同じことが言えます。ISISやウクライナ、ロシアは、何を要求しているのでしょう? 政策を決定する立場にある人間は皆、常に相手国の顔色を伺っています。レポーター同様、見出し記事になる派手なニュースを追いかけまわし、大局的な長期展望なんて微塵も考えようとはしていません。 10年、20年先に我々が達成できることは何か、ということではなく、今日明日せいぜい来年あたりにできることは何か、ということにばかり着目します。 しかし我々は先を見通さなければなりません。あらかじめ先を見通して計画を立てるだけで、我々は世界的に最も困難とされる問題のいくつかを解決できる可能性があるのです。

地球上でもっとも破綻した国家

少なくとも北朝鮮に関しては、私から1つの提案があります。長期の展望において我々は、北朝鮮と韓国の再統一に全力を尽くすべきです。それが北朝鮮問題を解決する、唯一の方法だと考えています。 みなさんの中には、「北朝鮮の政権を交代させればよいのではないか」とか、「自主的に政権崩壊するのではないか」、「統一などは考えられない」とおっしゃる方もいるかもしれません。 しかし、東ドイツや、旧ソビエト連邦に関しても以前は、そんなことは考えられないと言われてきたはずです。率直に言って、再統一こそこの問題の唯一の解決策です。歴史上の記録を紐解けば、失敗国家は長く存続することはありません。そして北朝鮮は、地球上でもっとも破綻した失敗国家です。

引き裂かれた家族

朝鮮系アメリカ人として朝鮮統一問題は、私にとって特にプライベートなものです。私の父方の一族は北朝鮮出身です。父方の祖父母は私がごく幼いころに亡くなった父に代わり、私を育ててくれたとても近しい存在です。 彼らは幸運でした。なぜなら1950年に朝鮮戦争が勃発した当時、彼らは偶然朝鮮半島南部にいたのです。しかし、彼らの家族は不運でした。家族はそのまま北朝鮮に閉じ込められてしまったのです。残念ながら祖父母は、家族の身に何が起こったかを知ることなく他界しました。 父母、兄弟姉妹、おじ、おば。私の家族や、家族と引き裂かれた他の多くの朝鮮半島の人々が耐え忍んで来た運命を思う時、そして今なお北朝鮮に暮らす人々を思う時、私は涙をこらえられません。 彼らはこれまで60年間、捕らわれの身なのです。私は、自分や5,000万人の韓国人に与えられたものと同じようなチャンスが、彼らにもあったらよかったのに、と願ってやみません。

核兵器放棄の交渉など無意味

アメリカによる過去20年間の対北朝鮮政策は、極めてシンプルです。「核兵器開発を放棄せよ」というものです。単に核兵器を放棄させるためだけに交渉を試み、食糧やエネルギーなどのインセンティブを与えてみたりしています。北朝鮮は、喜々としてこれらの援助を懐にする一方で、全く約束を守ろうとはしません。 北朝鮮が常に約束を守らず、核兵器開発と弾道ミサイル発射実験を続けてきたこれまでの経験から、私の見解では北朝鮮は今後も一切変わることはないだろうと思っています。 北朝鮮が、近隣諸国と平和的に共存できる国家に変貌することは決して無いでしょう。そして地球上で最も人権侵害の甚だしい国家であり続け、兵器を増産し続けるでしょう。 これまでの北朝鮮へのアプローチは、全てが目先のことにとらわれており、効果がありませんでした。もしこのままの政策を続けるなら、現政権の自滅か、別の政権の台頭による再統一を待つしかありません。それ以外に解決策は無いのです。

速やかに解決すべきは人権問題

今現在、我々には限られた影響力しかありません。しかし充分に時間をかければ、威力を発揮することはできます。できることはいろいろありますが、まず第1にするべきことは北朝鮮国民への援助です。 一例を挙げますと、情報の勢力的な流布です。外部の情報を、徐々に北朝鮮内部に浸透させ、金正恩氏の情報操作を破ります。広く組織的に行われている、非人道的な虐待に光を当てます。国連は今年史上最多の、実に400ページにも渡る「人道に対する罪」とされる、人権侵害の調査報告書を発表しました。 南アフリカのアパルトヘイト同様、北朝鮮では倫理はまったく重んじられていません。何百人もの自国民を強制収容所に収容し、残りの人々は食糧難や飢餓にさらされています。1990年代半ばには、約200万人が餓死しました。 北朝鮮における人権問題は、北朝鮮の人々にとってだけでなく、東アジア地域における平和と安定にとっても核心となる脅威です。私は地域における平和と安定について、核兵器開発より人権問題の方が、現在進行形で緊急性が高いと思っています。

経済制裁の足並みをそろえる

第2に我々は、北朝鮮のエリート層をターゲットとした経済制裁を引き続き行って行くべきです。特に金正恩氏が、党の最高幹部の支持を得ることを目的に購入する、コニャックや競走馬などの贅沢品や、高級車などの購入資金源である密輸、マネーロンダリングなどの非合法な活動を取り締まるべきです。 更に我々は地域の関係諸国、特に北朝鮮への最大の資金援助を行っている中国へ、足並みをそろえるよう働きかけていくべきです。中国は北朝鮮、金正恩氏について快く思っていません。しかし緩衝材として利用し、国境の安定を確保するため北朝鮮を支援しているのです。 中国はアメリカ軍の国境への接近を警戒しています。ですから我々は、中国と交渉する必要があります。例えば朝鮮半島統一の有事の際には、朝鮮半島に駐在している米軍を減らすとか、「韓国の米軍をすべて撤退させるから、中国の北朝鮮への援助をやめてくれ」などと持ちかけるのです。 私の意見には多くのみなさんが反対でしょうね。それでも構いません。実際に、非常に多くの人が反対意見です。韓国の人々、特に統一に伴う弱体化と、統一準備に向けてかかるコストとを警戒する、若い世代の層も反対します。 独裁政権の終焉は常に醜悪です。さまざまな試練や、問題が山積みとなるでしょう。北朝鮮は瀬戸際の軍事政権です。カオス、秩序の崩壊、人道上の問題、難民の群れ、さらには、核兵器を確保しようとする動き、核兵器を使用しようとする動きもみられるでしょう。 しかし充分な計画性と注意深い準備をして、アメリカと韓国が手を組めば、これらの問題に対処することができるでしょう。統一を的確な手段でうまく達成できれば、真の改善への可能性がひらけます。自由な1つのコリアのために。

長期展望のゴールの先

想像してみてください。2,500万人の北朝鮮の人々を、今ある苦境から解放できるのです。北朝鮮で普通に生きる人が飢餓から脱し、文字通り知的にも解放され、食糧、情報、資源、生活用品など、現代の資本主義の賜物を享受できるようになるのです。 統一朝鮮は、基本的には韓国の拡大バージョンです。そのように考えてみてください。自由で、もしかしたらより豊かな、アジアにおける統一ドイツのような国です。 地域の未来の経済大国、地域安定の大きな力となるでしょう。統一を考慮に入れていないという事実は、我々の視点が短絡的であることの表れです。アメリカ政府は10年後ではなく、単に今年は何が達成できるか、来年には何が達成できるか、などという考え方をします。 たった1人の大統領の任期では、政策は達成できず称賛も受け得ないので、そんな政策は推進されることはありません。2~3期も先の政権で成果が上がるようでは、将来野党に利益が行ってしまう恐れがあるからです。でも我々は、長期の展望を以って考えることを始めなくてはいけません。 2つほど例外があります。アメリカは旧ソビエト連邦に対し、封じ込め政策を行って来ました。1940年代から1990年代にかけての全ての政権において、アメリカは忍耐強く封じ込め政策を続けました。また、アパルトヘイトに対して南アフリカを孤立させた国際社会の尽力を思い出してください。 こういった圧力は次第に功を奏し、ソビエト連邦もアパルトヘイトも崩壊しました。アメリカや諸外国政府は、これを外交政策のモデルとするべきです。我々は、長期展望のゴールを設定し、忍耐強く精力を傾けなければなりません。 そして成功した暁には、なんてすばらしいことが達成できたのだろうと歓喜に沸くことでしょう。ロングスパンの目標と朝鮮半島の統一を目指す政策を設け、辛抱強く力を注げば、北朝鮮問題も困難には見えなくなります。ありがとうございました。

  
※ログミーでは、TED Talksおよび各TEDxの定めるCCライセンスを遵守し、自社で作成したオリジナルの書き起こし・翻訳テキストを非営利目的のページにて掲載しています。
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