時代劇でありながら、新しさに溢れた映画

司会:それでは早速ではございますが、登壇者の皆さまから一言ずつご挨拶をちょうだいしたいと思います。まずは戯作者に憧れる見習い医者であり、離縁を求める女たちを手助けしていく、駆出しの離縁調停人・中村信次郎を演じました、大泉洋さん。お願いします。

大泉洋氏(以下、大泉):どうも、中村信次郎を演じました大泉洋でございます。今日は雨が降って、足元が悪いんですが、お集まりいただきましてありがとうございます。

『駆込み女と駆出し男』という映画は、井上ひさしさんの『東慶寺花だより』という原作がもとになっているんですけれども、本当に原作も実に意識したし、監督がお書きになった脚本も、とにかくすごくエネルギーに満ちていて。

実際に撮った時にも、勢いを損なわないような撮影だったのを覚えています。できあがったのを見た時に、時代劇でありながらも、ものすごく新しい映画を見たな、という感覚に囚われたのを覚えております。より多くの方に見ていただけるように、宣伝をしてください(笑)。よろしくお願いします。

(会場拍手)

司会:どうもありがとうございます。

事前に決めすぎず、時々の感性を重視する

司会:続きまして、夫の暴力から逃げ出し、駆け込むが、改心した夫の懇願に心震える、働きものの鉄練りの女、じょごを演じられました戸田恵梨香さんお願いします。

戸田恵梨香氏(以下、戸田):じょごをやらせていただきました戸田恵梨香です。私は時代劇をはじめてやらせていただいたんですけれど、できあがった作品を見て、とても見やすくて、笑えて、涙もあって、若い世代の方たちにも楽しんでもらえるような作品になっているんじゃないかなと思いました。できるだけ多くの方に、若い方たちに見ていただけるように頑張りたいと思いますので、ぜひともよろしくお願いします。

(会場拍手)

司会:どうもありがとうございます。さて、縁切り寺では、豪商・堀切屋の愛人・お吟がある秘密を持って東慶寺に駆込みます。そのお吟を演じたのは、満島ひかりさんです。ご挨拶お願いします。

満島ひかり氏(以下、満島):こんにちは、満島ひかりです。記憶を探りますが(笑)。とても難しい役柄でした。べらんべえ口調を喋ったりとか、着物を着て肩を落としたりとか、荒っぽく、粋にとか。

色々と注文もありましたので、どこまでできるかわからなかったんですけど、原田眞人監督は、とても感性の素敵な監督で、私はこんなに進む方向がわからないというか、決めすぎないで、ちゃんとその時の感覚で進んでいく監督さんっていらっしゃるんだなって、とても楽しかったです。

撮影していて難しかったし、苦しかったし、楽しかったし、できあがった映画みて、なんか見たことのない時代劇でした。時代劇っていうと、皆が「通さん」みたいな芝居をするイメージがありますけど、とても現代に通じる、かつて私たちの先祖だった人が生きてきた時代の映画だな、って感じることができたので、とても色んな人間が出てきますし、楽しんでもらえると思います。よろしくお願いします。

(会場拍手)

司会:ありがとうございます。

時代劇を崩していく映画

司会:続きまして、ゴロツキの剣豪に夫を殺され、無理やり結婚させられた、女サムライの駆込み女の戸賀崎ゆうを演じました、内山理名さん。よろしくお願いします。

内山理名氏(以下、内山):戸賀崎ゆうを演じました内山里名です。私は映画自体もすごく久々でして、原田さんの『わが母の記』を見て、すごくご一緒したいなとおもっていたので、この話がきたとき、まず何が何でもやろうと思っていました。

私の役がですね、女侍ということで、映像でも女侍ははじめてでしたので、毎日刀を片手に持って稽古して、今回は映画に入る前にも色々な稽古をしまして、それも私にとってはすごく思い出で、こんなに準備期間をいただいたこともなかなかないので、贅沢にやらせていただきました。

時代劇自体はけっこうやらせていただいているんですけれども、この作品で、私は時代劇というものを、時代劇はこうじゃなきゃいけないんだというものを監督に崩していただきまして、新しい時代劇をつくることができて、すごく良い影響を受けました。

皆さんの中にも時代劇見たことない方やあまり興味のない方にも、すごくテンポがよくて見ていただける作品なので、沢山の皆さんに見てほしいと思います。よろしくお願いします。

(会場拍手)

司会:どうもありがとうございました。

今までの作品で、1番の良作

司会:続きまして、御用宿・柏屋の主で母性と父性を持ち合わせたベテラン離縁調停人、3代目・柏屋源兵衛を演じた樹木希林さん。

樹木希林氏(以下、樹木):樹木希林です。こういうところに出てくるほど、映画の中で役にたってないのですが、行きがかり上、こうやってつながっています。

未だに題名が覚えられないんですね(笑)。内容は、男と女の離縁を調停する柏屋源兵衛を演じさせていただいております。よろしくお願いします。

(会場拍手)

司会:どうもありがとうございます。さて、本作でメガホンをとりました原田眞人監督、ご挨拶お願いします。

原田眞人氏(以下、原田):原田です。『わが母の記』以来、いつも作品を考える時に、今度は樹木さんにどういう役で出ていただこうかと、そればっかり考えておりまして。

原作に、おとら婆さんというのがいまして、おとらさんをはじめは樹木さんにやっていただこうと思っていたんですけれど、やはりもうちょっと貫禄があるほうがいいと思って、おとらさんの樹木さんが目立ちすぎちゃうと、源平さんが目立たない。もういっそのこと2人を一緒にしちゃえと考えまして、樹木さんにお願いした次第です。

若いキャストも本当に素晴らしかったし、皆さん、演技指導の段階から一生懸命やってくれて、僕自身、はじめての時代劇でしたけれども、皆と一緒に学んで、少しずつ成長することができました。

映画監督になる前、映画ファンであった頃、僕自身が時代劇と戦争映画と西部劇で育っていますから、やっとこれではじめての時代劇を撮れて。時代劇というよりも今回は19世紀の映画という意味で、当時を色々調べて、皆と一緒につくりあげました

非常に現場も楽しかったし、できあがったものも自分の今までの中では1番良いものができたのではないかなと思ってます。よろしくお願いします。

『アナ雪』を超える女の連帯を描きたかった

司会:それではここから皆さんに色々なお話をうかがっていきたいと思います。まずは私から登壇者の皆さまに代表質問をさせていただこうと思います。

原田監督にうかがいたいのですが、今ご挨拶にもございましたように、はじめて時代劇に挑まれたということで、その中で心がけたもの。また、井上ひさしさんの持つ原作の世界観をどのように描こうと思われたのか。その辺りをお聞かせください。

原田:時代劇ということでこだわったのは、儀礼、礼儀ですよね。そこはきっちりとやりたいなと。今までの時代劇の延長上にあるような、江戸ものって観点からいうと、この作品は江戸から話がはじまって、鎌倉に駆け込むというところからはじまっています。

そして、やはりその距離感とか、道中の雰囲気であるとかが、主人公たちの生きている「生き様」や生活、風俗というものを見せたくて、それから女たちの連帯の話であると同時に、進次郎の成長の物語であるということで、それぞれの背景のリサーチですよね。

脚本を書く上で時間がかかったんですけど、もともと井上ひさし先生が原作で、この本読めば全部わかるんですけど、井上先生というのはもうリサーチマンですから。

それと同時に他の作品ですね、井上ひさし原作、原案ということになってますけど今回の『東慶寺花だより』以外にも『戯作者銘々伝』や『手鎖心中』とか色々ありますけど、そういうものからも参考にさせていただいて。

あと1番最初苦労したのは、これ実を言うと原作は時代がはっきり限定していなかったんですね。15のエピソードがあるんですけど、そのうちの1つには約150年前の振袖火事という記述が出てきて、振袖火事というのは明暦の大火ですので、1807年頃の話かなあと。

その後に出てくる話で、座敷ずしというのがあって、座敷ずしが取り締まられたのは天保の改革の頃ですけど、1840年くらい。だから1810年くらいから40年くらいまでの幅のあるところでどこに話を絞ったら、若い主人公たちが女たちの連帯を、『アナ雪』よりももっと素晴らしい女の連帯を描きたいというときに、どの時代が1番いいのか。

その時に原作者が弾圧されてる、当時としても特別秘密保護法案みたいなのができちゃった天保の改革の頃のほうが今に通ずるんじゃないかなと。そこに時代設定をしてからは、あとは凄くスムーズに準備が進むようになりました。

司会者:どうもありがとうございます

現場での印象的なやりとりはない!?

司会者:続きまして、離縁調停人を演じられました大泉さんと樹木さんにうかがいたいんですけれども、お二人は現代でいうところの離婚調停人のような役どころを演じられたわけですけれど、作品を拝見しますと、けっこう物騒な出来事が起こったりする中で、お二人ともやりとりが軽妙で楽しく、私も印象に残っているんですが、ご共演を振り返って、撮影現場で特に印象深いやりとり、エピソードなどがございましたら教えていただきたいんですが。

樹木:大泉さんと柏屋源兵衛のやり取りで印象的なのは何にもないです。

大泉:そんなことないです!(笑) あります、多少は。

樹木:むしろ、お勝役のキムラ緑子さんと信次郎とか、すごいやりとりやってらしたじゃないですか。

大泉:はい(笑)。

樹木:ああいうところのほうが凄いなと思いました。ただ、大泉さんに決めたというのは、監督はどういう趣旨で? たぶん意図がおありだと。

(会場笑)

司会:気になるところですね(笑)。

原田:大宮さんたちとのマシンガントークは原作で1番気に入ったところなんですけど、あそこを読んだときに、これはもう大泉しかいないなと思いました。

樹木:はやすぎて……。見た方、話がわかりましたでしょうか?

(会場笑)

足を引っ張るようなこと言いましたけど、この大泉さんはじめ、若い人たち皆、自分の力量以上の力を発揮しているなと感心いたしました。

私的な収穫はあまりなかった!?

司会:素晴らしい言葉をありがとうございます。大泉さん、樹木さんがそのようにおっしゃってますけど、いかがでしょうか?

大泉:本当に嬉しい限りでございまして。樹木さんはああおっしゃいましたけれども、進次郎と源兵衛さんの印象的なシーンもありますのでね(笑)。ぜひ見てもらいたいなと思いますけど。

とにかく現場では、希林さんを常に、待っているあいだに囲んでいるんですよね。京都は寒いので、火にあたりながら延々と希林さんの楽しいお話を聞きながら、爆笑して待つというのが印象深かったですね。映画の中でも希林さん見て笑っちゃうし、待っているあいだも見て笑ってたね。

樹木:そうですかね。私は2月の寒い時期にやらしていただいて、だいたい皆さんと芝居の役を離れた仲で話をするのですが、今回はあんまり私的なところで何の収穫もありませんでした。

(会場笑)

大泉:何が言いたいんですか!(笑) 私的な収穫って……、何を求めてらっしゃるんですか!

樹木:もう少し、ワイドショー的な色合いがあるのかなと思ったら何にもなかったので、もう忘れちゃってるんです。

大泉:確かにお話の中で、「あのことはあれらしいわよ」みたいなのが多かったことは覚えています。

すべてのことを自分で決める樹木希林氏

大泉:希林さんの役者としての存在の仕方というか、非常に勉強になったのは、スタッフではなく、「すべてのことは私が決めるんだ」というところで、希林さんは帰る時間も自分で決められるんです。

確かにその日は押していたかもしれない、でも、このあとシーンはまだあるという時に、希林さんは「もう来ないわよ」と言って、帰る。

それで、やっぱり確かにシーンはこなかった。そのシーンまでその日の撮影は行かなくて、今日はここで切らしてくださいと終わりました。じゃあ急いで希林さんに伝えなきゃって行ったら、希林さんはもうお帰りになられてました。

全てを希林さんが決めていく。そこまでの役者になりたいなと。

(会場笑)

樹木:それはね、私、大変身体が弱いのよ。私が「勘弁してもらいたい」と言うと、皆、 「ぜひ来てください」って言って。

いざ来るとね、「お体大丈夫ですか?」って聞かれるから、「ダメです」って言うんです。

だから、そんな状態でご迷惑かけましたけれども、なんとか終わりましたね。素晴らしい出来で。

大泉洋氏と樹木希林氏の掛け合いに注目

大泉:でも、そういう割にはですね、一度、今日はもうこの後のシーンは出なくていいってなって、お帰りになられてけっこうですってなったんだけど、希林さんが「今日は宿に夕食いらないって言っちゃったのよ」って。だから私はここで食べるしかないからって、映画の中で食って帰るっていって出てったことがあるんです。

全ては自分で決められる、このあと私いらないわよ、シーンでなくていいわよって出ないこともあるんですけど、出なくてもいいって言われても、出ていくってことがあったんです。

樹木:撮影所の控室で、橋爪功さんとばったり会ったら、「あんた、男の役もやるようになったのね、僕らの役とらないでちょうだい」っていうような目で見られましたね。そういうのは印象深かったんですけど、2人のやりとりはあんまり印象に残らない。

大泉:そんなことないから! あります、印象的なのあります。

司会:今日の会見をきっかけに、ぜひみなさんお二人の掛け合いに注目していただければと思います。どうもありがとうございます。

参考にしたのは、着物を着ても奔放に生きていた女性像

司会:それでは続きまして、戸田さん、満島さん、内山さんにうかがいたいんですけれども、それぞれ江戸時代の庶民の女性を演じられまして。この映画を拝見しますと、縁切り寺に駆け込んでくる女性たちというのは、強くもあり、もろくもあり、そして現代の女性に通ずる部分もあるのかなと感じました。

皆さま、ぞれぞれ演じられた女性たちに共感された点というのはございましたでしょうか? では、戸田さんからお願いします。

戸田:私はなかなかあまり、色々なことを経験したことがないのでわからないんですけど、じょごは心から信用できる人がいなくて、その中で本当の姉のように慕う、満島さん演じるお吟さんとの2人の掛け合いだったりとかはすごく大好きで、なんかじょごはいつも人のために生きていた人だなと思うんですけど、1人の女性としてすごく尊敬できるなと思います。

司会:満島さんはいかがでしょうか?

満島:映画やる前に、原田監督に杉浦日向子さんという作家の本を色々教えてもらって 杉浦さんの本に出てくる女性たちがお着物を着ていても、とても奔放に生きていたりとか、色々な閉じ込められた世界にいても、とても心が大変豊かに生きている女性像がいっぱい描かれていて、わりかし参考にさせていただいたところがあります。

シリアスなシーンを崩す、やわらかさ

満島:ラストの場面でお布団に寝ている場面があって、その横に進次郎さんと希林さんがいるんですけど、希林さんに、シリアスな場面ですけど、「あなた、鼻の穴が綺麗なのね。私もそういう縦型の鼻の穴にうまれたかったわ」と言われて。

樹木:鼻の穴がキレイって言ったんじゃなくて、鼻の穴の形がキレイ。

(会場笑)

満島:普段だったら皆静かに、集中切らさないようにっていう場面だったりするんですけど、そういう他愛もない会話をして、撮ってるのは私とても好きでした。

司会:ありがとうございます。続きまして、内山さん

内山:共感ですよね。そうですね、私は結婚をまだしていないので、これだけ夫をすごく恨んで、敵討までしたくて、寺に入ったという気持ちを、正直これからもここまで人を恨むかどうかわからないんですけど。

その時代では離婚すること自体がまずなかったと思いますし、その時代でここまで、寺まで入るぞという気合いを入れてく。そこは今の女性に近いものがあるのではないかなと思いました。

司会:決意の固さというか。

内山:そうですね。今の女性ってけっこう物事をはっきり言いますし、女性のほうから離婚を言い出すことってけっこう多いのではないかなと思いますし、この3人が演じた女性はけっこう今の年代に近いような女性像ではないかなと思いました。

司会:なるほど。ありがとうございました。

台本の分厚さにまず驚いた

司会:それでは、皆さんからのご質問をいただきたいと思います。では、1番前に座っていらっしゃいます女性の方からお願いします。

質問者:最初のキャストさんの挨拶で、これまで見たことのない新しい時代劇っておっしゃってたんですけれども、完成した作品を見て、驚きとか発見とかのエピソードがあったら、教えてください。

司会:それでは、大泉さんからお願いします。

大泉:最初、台本いただいたときにすごく厚くて、やってても終わりがないというか。「いったいいつまでかかるんだ、この映画は……」って思うくらい、シーン数がものすごく多かったんですね。

それだけ多いと、監督っていうのは普通、シーンをもっとカットしていくんですけど、どちらかというと、監督は撮りながらシーンを増やしていくんですよね。しまいには、助監督さんが「このままだとこの映画は4時間になるで!」って言ったことがあって、どうなるんだろうこの映画と思って、仕上がってみたら2時間23分になるんだっていう。

(会場笑)

だから、見た時に思ったのはとにかくそのスピーディーさですよね。時代劇というすごく古典的な題材を扱いながらも、その編集のテンポの良さが見てみて心地よいというか、2時間23分あるんですけれども、決して長く感じない。

それは時代劇を見ているんだけれども、すごく新しい現代の映像感覚というか。すごく新しいものを見たなと思ったんですよね。

樹木:むしろ……

大泉:私が話しているんですよ、今!

(会場笑)

樹木:ご覧になりました? この映画、どんなところがどうでした?

大泉:向こうの話を聞きましょ、それじゃあ。

質問者:先ほど皆さんがおっしゃってたように、セリフがすごくはやいなと。

樹木:内容わかりました?

質問者:内容はややわかりました

樹木:やや、ね。

(会場笑)

セリフのスピード感やテンポの良さが魅力

大泉:セリフはちょくちょくはやいですよね。すごい長いセリフをいただいても、とにかくべらべらべらべら心地よく、でもセリフ回しは、もともと監督が書いてくれた脚本がすごく読みやすく、すごいテンポのはやいセリフも言わしてもらったんですけど、そういうところも新しいなと。

戸田さんもおっしゃってましたが、時代劇というと年配の方が見てくれるイメージがありますけど、本当に若い人も楽しめる作品だなと思いました。

司会:戸田さんはいかがでしょう?

戸田:私はそこまで時代劇に詳しくないので、詳しいところはわからないんですけど、ただ、そういうテンポだったりとか、絵も美しかったですし、時代劇なんだけど古さを感じさせないというか、すごく見やすくて楽しい作品だなと私は思いました。

司会:満島さんお願いします

満島:他の人の場面をみて、こんな場面あったんだとか。皆、お芝居の仕方とかもぜんぜん違いましたし、違うアプローチをしているものがうまくまとまっているけど、なんか混沌としていますよね。

でも絵がすごくキレイなので。照明の方も不思議なところで影をいれたりとか、色んなことをしてましたし、何度か見ると、色んな魔法がかかっているような場面がいくつかあるような気がします

司会:では、内山さんお願いします

内山:テンポが良いのはもちろんで、時代劇なので話はすごくシリアスな部分多いんですけど、すごくこんなに時代劇で笑えるんだなって思って楽しかったです。

ほんと笑える時代劇、でもシリアスな部分はちゃんとシリアスで、新しい時代の時代劇の形だなと。でも本当に映像はものすごくキレイなので、見ていただきたいですね。どうもありがとうございます。

低予算でも、お金をかけたかのように撮る監督の手腕

原田:テンポはですね、僕自身はやいほうが好きなんですけど、準備している最中に満島さんが色んな資料の映像の中で、『幕末太陽傳』をものすごい気に入って、それで僕ももう一回『幕末太陽傳』見なおしたんです。

はやいんですよね、めちゃくちゃ。川島雄三監督の大傑作ですけど、しかもエキストラまでどんどんどんどん走ってるんですよね。このテンポをやっぱり継承しようと、それは強くありましたね。

『幕末太陽傳』のヒロイン2人が女郎なんだけど、お歯黒してるんですよね。それで、水島さんにもお歯黒してもらおうかなと、そこから来てるんですよね。

司会:ありがとうございます。そして、樹木さんは何か本作について。

樹木:この映画は時代劇の色んな時代の日常がかいま見える、この時代はこうだったのか。ちょっといやらしい場面があるから、小学生には見せられない部分もあるけれど、学校の勉強になるんじゃないかなと思いました。

(会場笑)

それから絵がキレイ、絵がキレイってなんだか馬鹿みたいだけれども、これは監督の腕なんですね。この監督の私の好きなところはね、低予算でもすごくお金をかけたかのようにつくる。この腕、職人芸というか、これには感心しましたね。

特に東慶寺の、あのたくさんの尼さんがいるシーン、撮影現場をきちんと捕まえてくる監督の腕だなっていうふうに思いました。これはやっぱり見て損はないなと思う、私が好きな映画です。

「離婚」は幸せのはじまり!?

司会:それではお時間のほうも迫ってまいりましたので、あともうお一方くらいご質問を。

質問者:この映画のテーマでもあるかと思われるんですけれども、「離婚は幸せのはじまり」という。ご自身たちの中でこの言葉をどういうふうに捉えているのか教えてください。

樹木:上手に映画とひっからめて来ましたね

司会:なかなか手ごわい質問が参りました。

原田:「離婚は幸せのはじまり」というのはテーマではなくて、これは単にキャッチです。

司会:では、樹木さんいかがでしょうか?

樹木:私の話は長くなりますので、大泉さんから。

大泉:めんどいのだけ僕にふりましたね!(笑) 離婚は幸せのはじまりというコピーでありましたけれども、3歳の娘がいるもんですから離婚はもう……。

樹木:絶対できませんよね

大泉:結局しゃべってるじゃないですか!

(会場笑)

できないですね。もう私にとって家庭は全てですから家庭を失うというのは辛いですし、娘がとにかくかわいくて仕方がない中で、離婚をすればだいたいお母さんに娘は取られますからね。

映画では私は離婚に対して調停する人ではありますけれども、やっぱりしないほうが良いんじゃないでしょうか。

縁を切るときに、全てを犠牲にしなければならない時代

樹木:結局私しゃべりますけど、男と女っていうのは縁を結ぶのは簡単ですけど、縁を切るのは非常に難しいんですよね。たまたまこの3人の役は子どもがいない、そういう部分もあったので。この3人に大泉さんのように子どもがいらしたらちょっと違うなと。

あの時代に行動に起こせる範囲の年齢と、足かせのない方の縁切りじゃないかなというふうに思います。それが幸せかどうか、この3人の場合には自分もうんと傷つくんですね。

現代の縁切りはどうかわかりませんけれども、縁を切るときにこの3人の役は、自分を全部犠牲にして縁を切るぐらいの覚悟で駆け込むんですね。自分だけ助かって、あっちを嫌いというのはちょっと違うので。その辺はやはりこの時代独特のものかなというふうには思いますね。

質問者:樹木さん自身はどうですか?

樹木:私? 個人的なことは言わないように……。

司会:あくまで映画にまつわるお話ということにさせていただいておりますので、ここまでということで。

皆さまたくさんのご質問いただきましてありがとうございました。色々と手強い質問もあったなかでお答えいただきましてありがとうございました。

(フォトセッションをはさむ)

同じメンバーで映画を撮り続けたい

司会:それでは最後に原田監督と主演の大泉さんから締めの言葉を一言ずつ頂戴したいと思います。原田監督からお願いします。

原田:本日は色々ありがとうございました。本当にもっと色々話したい、色んなことをキャストと話し合いたい、そしてそれを語り合いたいと思うんですけれども、今回、僕自身がはじめて時代劇をやって、前に本物の時代劇はいつあったのかということを考えました。

お話的には色々あるかもしれないですけれども、ラストサムライがつくってくれた映像というのは1つ参考になるかもしれないですね。話の展開であるとか、一生懸命やったというのは僕自身、現場で見ましたから、今回の出演者全員が、ラストサムライの登場人物以上にその時代の人間になりきってくれて。

じょごの鉄練りシーンも素晴らしかったですし、それからお吟の粋な深川芸者、あれを満島ひかりができると思わなかったんですね、最初は。でもそれをやってくれて。それから、信次郎のすばらしい芝居など、まばたきも素晴らしかったですけど、口調も素晴らしくて。

でも、信次郎のまばたきパチパチは最初、NGだったんですけど、どうしても使わずにはいられなかったんですね。そのどうしても使わずにはいられないような瞬間が全員にありました。もう本当に編集させるときもそうでしたけど、編集でまた1つ楽しめましたね。

それから、できるならばどんどんどんどんこのキャストで、またこのメンバーで撮りたいと思っています。その時まで長く、このメンツで作品を撮り続けられるよう皆さまの応援をよろしくお願いします。

司会:ありがとうございます。

女性の生き様からエネルギーを感じる映画

司会:最後に大泉洋さん、お願いします。

大泉:とにかくこの話をいただいた時にまず江戸時代の女性が離婚するっていうのがとにかく大変だったと。女性から離婚を切り出せなかった時代に、それを救済する縁切寺「東慶寺」というのがあって、そこに女性がかけこんで、2年間の修行をしたら男は離縁状にサインするしかないという、その仕組みがなんて面白いんだろうという。面白い時代があったんだなという。

離婚されちゃたまらないということで男が追っかけてって、でもその鎌倉の東慶寺の目の前で何かものを投げて、東慶寺に入ったら、それで駆込み成就。そこで2年間修行したら、離婚しなくちゃいけないという女性が不遇だった時代にその女性を助けるために作られたお寺があって、今でも鎌倉にありますけど

様々な人の人生というのがそこに行くと今でも読めたので読んだり、もちろん原作を読んだりして、現代とは違って面白い時代だなあと思いながらも、映画で描かれている世界は現代にも非常に通ずるものがあって、弱かった女性の時代ということもあるんだけれども、この作品に出てくる女性は非常にパワフルで、強くて。

様々な女性の生き様。そこにまつわる男の生き様が見事に描かれてて、本当に様々なエネルギーを感じる映画だと思います。本当に様々な年代の方が楽しめる映画だと思いますので、よろしくお願いします。

司会:それでは完成会見を終わらせていただきます。ありがとうございました。

取材協力:シネマズ by 松竹