選挙に出て、はじめて社会的意義を考えるようになった

ナカノヒトヨ氏(以下、ナカノヒトヨ):タイムラインとかをちらっと覗きにいったら、また家入さんは何かをしている。

家入一真氏(以下、家入):最近、何かしたかな……。

ナカノヒトヨ:今度はDJをしているとか。

家入:でももう、ちょっと……。

ナカノヒトヨ:いやいや。そこが、若い人とか特に、意外とみんなできないと思うんですよね。この社会とかルールに縛られちゃっていて。でもそこを突破できる、いい意味で振り切れられる。あそこまで振り切れられないよって人は、この会場の中にも多いんじゃないかなって思って。

家入:そうなんですかね。僕はあんまり自分で自覚ないというか、最近は本当にずっと引きこもっているので、新しいことをやっているかどうかも自分じゃよくわからないし。みんなができないことをやっているつもりも特にないし。

そこら辺はよくわからないんですけど、こういうことをやったら何かこうなるかもみたいなのは、確かにありますよね。世間一般的に、ちょうど1年前ぐらいですか。僕、都知事選出たんですけど、やっぱり出る前はちょっと怖くて。出たら逮捕されるんじゃないかなとか、色々ありましたけど。

出てみたらやっぱり面白かったし、道が開けたというか、視野が広がったんですよ。それまで僕、政治とか一切わかんないし、政治のこと考えたこともなかったし、むしろ自分だけが楽しければそれでいいっていう人間だったんですけど。

その選挙に出て、政治家の方々とふれてみて、「その後、じゃあお前何しているの?」って言われたら、ちょっと僕、今は正直何にも言えないですけど(笑)。「インターネッ党どうなってんの?」って言われたら何も答えられないですけど(笑)。

僕が会社をやったり、Webサービス起ち上げたり、個人でも色んな活動をやっていく中で、そういう活動を通じて、社会っていうとちょっと偉そうになっちゃうし、何かきれいごとになるので、あんまり使いたくないですけど、僕たちが生きていて楽しい社会を作るっていうことに、繋げていくことってできるんだな、みたいな。それを意識するようになったというか。

これをやるってことはどういうことなのか。社会的にどうなのか。僕が楽しいからやるとか、僕がおもろいから、お祭り騒ぎでやってみるとかの、その先をちょっと見るようになったんですよ。

選挙出た後に、それって社会的にどういう意味があるのか、それを僕がやることにどういう意味があるのかっていうのを考えるようになったので。そういった意味でいうと、選挙に出てみたのはすごく良くて。だから、これやったら怒られるかもみたいなのは、やっぱりあんまり怖がらないほうがいいなっていうのは、すごく思ったというか。

ニッチなものをお茶の間に広める「拡声器」

ナカノヒトヨ:リアルタイムで成長されていますよね。何かちょっと偉そうなんですけど。

家入:齢36にして日々(笑)。

ナカノヒトヨ:普通は守りに入るじゃないですか。何か新しいことをするっていうよりは、前例のあることをするとか。レールが引いてあって、この成功哲学に沿ってとか。でも、そこで道なき道を開拓していっている姿が、私含め、いろんな若い方たちに影響を与えていると思いますね。

家入:そうなんすかね、どうなんだろう。でも僕は、あんまり前例がなさすぎることも特にしてないと思うんですよね。やっぱりずるいなって自分で思いますね。

誰かが一応いて、「その次辺り行けんじゃねーの」みたいなのを。別にそこまで考えたりしないですけど、肌感覚でそういうのを何か感じて、上手いことやっている胡散臭いおっさんだなって自分のことを思いますね。

ナカノヒトヨ:いやいや。

家入:死にたい(笑)。

ナカノヒトヨ:(笑)。家入さんのすごいところって、それをニッチなものとか、例えばクラウドファンディングとか、海外でもともとあったものを、いち早く日本に持ち込んで、ポップにすることだと思うんですよね。

それってスティーブ・ジョブズとか、ビートルズとかがやっていたことと一緒なんですよね。ミスチルとかもそれですね。もともとアングラシーンとか、もうちょっとニッチなヒッピーカルチャーとかをお茶の間に広めたり。

それをする翻訳家っていうか、ニッチなところから末端へ届ける拡声器のような存在でもあるなって思っていて。実は私もそこは意識してるところでもあるんですけどね。最先端の情報をお茶の間まで、できれば広めたいんですけど、最近ちょっと偏り過ぎてきちゃって。

家入:結構ブログとかで語っていますよね。

ナカノヒトヨ:そうですね。

家入:いいこと言いますよね。

ナカノヒトヨ:ありがとうございます。ちょっと格好付けていますね(笑)。

家入:そうなんですか(笑)。

ネット上の家入一真像と、現実のそれは違う

ナカノヒトヨ:でもその辺のキャラクターとか、Twitterのアイコンとか、あとは家入一真さんっていう、インターネットの中の家入一真像と、現実の家入一真像って、絶対違うと思うんですよね。

それこそ私もですけど、アンチの方とかいて、外から見ているだけの人はどう思ってるか。色んな人がいると思うんですけど、リアルでお会いしているネット業界の方たちとか、私自身もお会いして思ったことなんですけど、めちゃめちゃいい人ですよねっていうのを(笑)。

家入:僕はいい人以外の何者でもないと思うんですけどね。

ナカノヒトヨ:周りの方たちも、あの人はネットとリアルとで、いい意味でギャップがあるっていうか。

家入:それよく言われるんですよね。でも、僕は自分のこと良くわかんないので。例えばこういう会で、終わった後に懇親会とかで、「もっと怖い人かと思いました」とか「もっとすごい喋る人かと思いました」とか「オラオラしているかと思った」とか「もっと身長デカイかと思った」とか、それは余計なお世話なんだけど(笑)。よく言われるんですよね。

だからネットの人格とリアルがそんなに違うのかなって思うんだけど、僕自身は別に嘘ついているつもりもないし、そのままなので。不思議ですね。そう思われるのが。

インターネットでは視覚と聴覚でしか受信できない

ナカノヒトヨ:結構みんな勝手に脳内変換、都合の良いようにされていると私は思っていて。よく言うんですけど、インターネットって、五感の内の視覚と聴覚だけしか、人間には5つの感覚があるんですけど、そのうちの2つしか受信できないんで。

それで、残りを何が補正するかって言うと、自分のイメージ、脳内のこうあって欲しいとか、固定観念とか、そこに反映されるのは自分自身なんですよ。自分にこういうコンプレックスがあるから、この人がこう映るとか。そういう意味でも、サザエbotとかでも言っているんですけど、鏡的な役割だとも思うんですよ。

だから、もうこれについて何かを叩いている人ってのがいたら、この人はここに悩みがあって、ここに何かを抱えているんだなっていうのが、もろ見えるんですよね。

家入:確かにそうだな、ルサンチマン的な。逆にそう思えると、叩いてくる人たちが、かわいくなりますよね。

ナカノヒトヨ:わざとちょっと傷をえぐってやろうとか、ちょっと包みこんであげようとか、もうちょっと次元を上げて見渡すことができるようになって。家入さんもたぶん、自然とそれをやっているんだろうなって私は思っていて。

家入:やっているのかな。満たされている時は、人にも優しくなれるけど、やっぱりちょっと荒ぶっている時、酒も入ってたりとかすると、「死ね」は言わないですけど、むかついたりとかしますよね。

だからそうやって、「この人タイミング悪いな」みたいなの翌日思ったりしますけど、そうやって何かやってんのかな。わかんないですね。

フォロワーとの相互作用で物語を描いていく

ナカノヒトヨ:色んな方に突っ込まれるので先に言っておくと、これ「N」って書いてあるんですけど、反対なんですよ。これ何でかって言うと、さっきも言った通り、インターネットがこの鏡の役割だと思っていて。

中からこうやって外に出てきた、このディスプレイという鏡を隔てて出てきたから、敢えてこれは反対にしていると見せかけて、カッティングシート切る時にミスっちゃったんですよ。だから別にこじつけなんですけど。でもそういう意味に変換させるのが、自分のいいとこだと思っています。

家入:そういった意味で言うと、僕はよく物語が大事だって話をするんですよ。

ナカノヒトヨ:はいはい。コンテクストとかですか?

家入:コンテクスト、そうですね。文脈というか、僕が今まで生きてきた中で、僕は例えばいじめに遭って登校拒否になって、一応高校には入りましたけど高1でもう学校行かなくなっちゃったので、学歴がないんですけど。

引きこもったりしたとか、いじめられたとか、あとは家が貧乏だったとか、いろんなコンプレックスがあるんですね。こうやって言えていること自体コンプレックスじゃないっていう話もありますけど。

でも、その劣等感とか、そういう色んなものがあって、その中で居場所づくりみたいなことをキーワードにして活動をやったりとか、発言をしたりしているわけですよ。要するに僕は自分の人生を振り返った時に、物語の続きを描くような感じで、新しいことをやりたいなって思ったし、そこに説得力が生まれるじゃないですか。

そうやって僕は、僕の人生の中で次に何をやるべきかってことを考えながらやっているし、たぶんサザエbotはサザエbotで、人生はちょっと僕わかんないですけど、サザエbotが立ち上がって、これだけのフォロワー数になるまで。

色んな発言をしてきて、そのフォロワーが集まった中から、今度は「じゃあ次こういう活動をしていこう」とか。きっと相互作用で、サザエbotとして発言した結果が、今度フィードバックでいろんなフォロワーが増えたりして。

そのフォロワーの方からの声が、サザエbotの意識を変えていくし、そうやって相互作用で今のサザエbotが生きるわけで、結果が今のイベントじゃないですか。だから物語をちゃんと描いていると思うんですよ。綴っていると思うんですよね。

ナカノヒトヨ:嬉しいですね。

フォロワーとの共犯関係で新しい物語をつくる

家入:あれ、僕何の話したかったのかな。僕なんで今この話したんだろう。さっき、僕のこの話の前まで何の話していました?

ナカノヒトヨ:コンプレックスか。

家入:コンプレックスの話? 最近コントレックス飲むんだよな。

ナカノヒトヨ:(笑)。あの硬水ですよね。

家入:あれやっぱり1日1本は飲まなきゃいけないらしいですよ。

ナカノヒトヨ:徐々に脱線していっている感がしますね(笑)。

家入:だから結果、勝手なサザエbot像を望むとか、勝手な家入像を望むっていうのは、それは僕らの言い分であり、それを利用しているつもりはないし、利用してやろうとも思わないんですけど、そこに対して期待に応える形で自分たちが成長しているのも事実なんですよ。

だから、何かそこって上手く言えないですけど、共犯関係というか、そこでがっかりして離れて行く人たちもたくさんいるけど、結局ついてきてくれている人たちとも共犯関係で、色んな物事を新しく立ち上げているなっていうのは、すごく思うんですよね。

ナカノヒトヨ:すごくわかります。その辺りの共通点だと勝手に思っていることなんですけど、家入さん都知事選に出られた時も、何リツイートいったら都知事選出るみたいな感じで、いい感じに共犯関係にみんなをできていると思うんですよ。

「アンチ家入ダッツカム」も、確か自分の記憶では、もともと誰かが「家入アンチに向けて何か販売しては」みたいなのを言ってくるフォロワーさんがいて、「あ、こいつ天才」って言っていて。

家入:そうだそうだ。エゴサーチで見つけたんですね。

ネット上の人格は、フォロワーによってつくられる!?

ナカノヒトヨ:そうですね。ちょっと近いなって思うのが、私もサザエbotを探せっていうのも、もともとフォロワーの方が勝手にハッシュタグを作って始まって、「サザゼミ」っていう、このProphetの前身のイベントがあるんですけれども。

それも「サザエさん、何かゼミやってくれないかな」っていうフォロワーの方がいて、そういうのを結構適当に拾って、「まず孫さんっぽくやります」みたいな、「やりましょう」って言って、やってないのも結構あるんですけど。サザリークスみたいなのとかやってないんですけど。

だから、いい意味で自分をこの水みたいに、何もない器の状態にして、フォロワーさんの声とか、期待通りに振舞うことで、1番成長ってしていくのかなって思っていて。そこで個人的なことを言うと、その辺りも恐らく思い当たる節があると思うんですけど、フォロワーさんが減っていっちゃったりとか。

ネットの中の家入一真さんっていうのと、もちろんサザエbotさんっていうのって、リアルとは違うんですよね。この物理的身体と精神が分離しちゃっていて、誰かが育てている。それは、たまたまそのパイロットが自分なだけで、サザエbotって誰なのって思ったら、完全に私ではないし、あのインターネット上の家入一真さんっていうのも、フォロワーが作った家入一真さんなんじゃないかなって思うんですよね。

サザエbotと家入一真の共通項

家入:そうですね。だから選挙の時も、僕はただの器ですっていうことを言っていたんですよ。

ナカノヒトヨ:そうですね。

家入:政治って考えると、皆さんの質問がよくわかんないじゃないですか。政治を勉強している方とか、好きな方は詳しいですけど、普通に生きてきて政治をあんまり意識するタイミングってない。

でも実は、何で毎年3月に何でもない場所を道路工事しているんだろうとか、それで歩きづらいなとか。例えばジングルマザーになってしまって職がないなとか、生きてく中で、生き辛さを感じるタイミングって結構あるんですよ。

でも、その瞬間では疑問に思うんだけど、生きてく中で忘れてしまう。そういう小さい質問をとりあえず僕に投げてくださいっていうことをやったんですよね、Twitterを使って。ただ僕は、僕自身も政治のことなんてわかんないし、難しいこともわかんないから、みなさんの声を集める形で政治をやっていきたいっていうことを言っていたので、ある意味器なんですよ。

ナカノヒトヨ:そうですね。

家入:僕がこういうことしたいっていうのを、偉そうに上から目線で言うっていうのはできないし、わかんないし。だから、何かいわゆるリーダー像。政治家はこうあるべき、リーダー像ってこうあるべきっていうものに対して、そこには合致しないけど、とりあえずみんなの声を聞くことはできるよっていうことを言ってはみたんですけどね。だから本当に、ただの器なんだなっていうのをすごく思います。サザエbotもそうだし。

ナカノヒトヨ:初めて政治っていう分野の器が作られたんだなって、あの時思って。その時ちょっと海外に行っていたんですけど、日本ですごく面白いことが起こってるって言って、海外の人たちに自慢しましたもん。この家入一真って男がこうなんだって。

家入:本当ですか。ありがとうございます。でも結局、僕の悪いところで、継続しないっていうね(笑)。これちょっとちゃんとそろそろ言わないと、また怒られるなって。統一地方選もあるんでね。

だからさっき言ったように、その共犯関係を作っていくっていうのは、何か狙ってやる場合もあるのかもしれないけど、肌感覚でやっているところはすごくありますね。そこはたぶん共通点だなってすごく思うんですけど。そろそろインターネットの未来の話をしたほうがいいかもしれない。

ナカノヒトヨ:そうですね(笑)。何か、いろいろ突っ込みすぎちゃって。

家入:今のところTwitterの話しかしてないですね。

ナカノヒトヨ:そうですね(笑)。Twitterだけで3~4時間いけそうですよね、これ。

家入:全然いけますね(笑)。

制作協力:VoXT