オンラインとオフラインで広がる楽天経済圏

三木谷浩史氏:もう一つ、今日お話をさせていただきたいのは、オンラインとオフライン。これ、英語でO2Oといいますけれども、オンライントゥオフライン、あるいはオフライントゥオンラインでO2Oと言われております。これは何を意味しているのかというと、色んな意味があるのですけれど、一つはオンラインとオフラインのエコシステムを繋げていくということでございます。

例えば、楽天市場で貯めた通貨ポイント。これをサークルKさん、あるいはポプラさんはじめ、さまざまな流通のリアルな店舗で使っていただけるようになった。これによって楽天で買おう、なぜならば、そこで貯まったポイントを使えるから。ということになります。

そしてもう一つは、逆にそういう所で、楽天カードを使って貯まったポイント、Edyを使って貯まったポイントを、楽天市場で使っていくことも出来るようになっているわけでございます。

今、日本の市場を見ますと、オンラインの市場が約7.8兆円。そのうちの2兆円近くが楽天ということになっているわけでございます。一方、いわゆる流通、サービス業というものが213兆円あります。今までは3.7%のところで皆さんと一緒に商売をしていたんですけれども、我々の考え方はそうではなくて、これをオフラインに広げていこうということであります。

すなわち、どういうことが実現するかと言いますと、楽天で買ってもらったもの、これを、今までであればこのような形で家に届けるということがメインでございました。これからはそれを例えば店頭に届けて、皆さんに店頭でピックアップしてもらう。

あるいはリアルな店舗を運営されている方は、これからはオンラインで買っても良いですよ。あるいは近くで、この店でこういう商品もあります。という紹介をしていくことによって、常に買おうと思った瞬間に、楽天のトップページにてサーチをするということを実現していこうということでございます。

今日、日経新聞に出ておりましたけれども、もう一つは受け取り。この形式もですね、どんどん多様化をしていきます。「楽天BOX」これは大阪を中心にですね、試験的にもう運用開始させていただきました。

大変好評ということで、「楽天BOX」もこれから日本中に展開をしていこうと思っておりますし、もう一つは日本郵便さんとの連携というのを始めました。まず、国内約30箇所の郵便局にロッカーを設置させていただきたいということで、もうすぐ今年の春から始めております。

将来的にはこの受け取り、こういうものをより効率化していく、より皆さんに安く使っていただけるようなネットワーク型の配送というものを考えていきたいと思っております。

世界のプラットフォームを一つに

もう一つ、やはり考えていかなくてはいけないのが、グローバル化ということかなと思っております。ご存知のように楽天は今、社内公用語が英語化ということで、英語をメインにやっております。一つ楽天にかけていただきたいというのは、やはり楽天の考え方というのは、日本の知恵だけではなくて、世界の知恵を集めていくということかなと思っております。

現在、今日、おそらく言葉の関係もありますので、このステージに立ってお話をさせていただくのは日本人が中心だと思いますが、実際に楽天の色んなサービスであったり、あるいは様々なプログラムを書いている人間というのは、かなりの部分がもう外国人の社員であるということを申し上げたいと思います。

そして皆さんのマーケット。これも考えていかなくちゃいけません。

ピーク時の日本のGDPシェアは世界の10%を超えておりました。すなわち非常に大きなマーケットシェアだったわけですけれども、すでに2010年、現段階で5.8%しかありません。そして2030年、もうすぐそこですよね。

その時には3.4%、2050年1.9%。これは日本が情けないのかっていう話ですけど、そういう話じゃないんですね。先ほど言ったインターネットによって情報格差が無くなってくると。そして国境という考え方が変わってくるっていうことになってくると、だんだんと人口比率に応じてマーケットシェアというのは決まってくるということかなと思っております。

これがすごく頑張れば、日本の製品なり皆さんが頑張れば、もしかしたら2.5%ぐらいで収まるかもしれませんけど、基本的には明らかにどんなことがあっても、日本の世界でのGDPシェアというのは下がっていく。それは日本が弱体化していくという話ではなくて、他のマーケットがグロースしていくということだと思っております。

現在、楽天のECのマーケットシェア、これは国内94%、海外6%。今回買収をしましたイーベイツという会社を入れると、海外は18%になります。まだまだ伸びしろがあります。そして皆さんにとってもですね、日本の1億人のコンシューマー相手に商売をするのではなく、世界の70億人を相手に商売をしなくてはいけないということでございます。

じゃあどうやってやるんだ、ということでございますが、我々の発想としてはですね、プラットフォームを出来るだけ少なくして、皆さんにも色んなプラットフォームで簡単に売っていただけるようにしていきたいと思っております。

すなわちRMSG、楽天のグローバルサーバー。今は正直言ってブラジルとか、あるいは台湾、アメリカ、フランス、様々な違うプラットフォームで運営しています。

これをまず世界のプラットフォームとして一つにする、そして日本のものと連携することによって、皆さんがワンクリックで世界中にものを売れるようにする、と考えております。当然、サイトについては英語にするものは英語にしなくちゃいけないと思いますが、自動翻訳も含めてどんどん技術は発展をしていくということかなと思っております。

では世界で楽天がどういうアクティビティをしているかということなんですけれども、昨年の11月に買収しましたイーベイツ。これはアメリカのほうで年間3,600億円、今年は1年間おそらく5,000億円を越えるマーケットになります。

そこに皆さんの商品を乗っけられるようになっているということでございます。これからどんどんとこういう形で楽天はグローバルなショッピングのサイトを増やしていきたいと思っております。

キュレーションを活用した施策

少し話をまた変えまして、じゃあショッピングの新しいトレンドっていうお話をさせて頂きたいと思います。1997年に楽天を創業したわけでございますが、その時の考え方はとにかくカタログをWebサイトに変えるのではなくて、リアルな店舗をインターネット上に作ろうという発想で開始致しました。

そこからその発想というものが世界に認められ、そして世界の色んなサービスが楽天のモデルをコピーして参りました。またそこからですね、今度は新しく次の段階にインターネットショッピングは、今進化しようとしているのではないかなと思っております。

いくつかの切り口があるんですけれども、その一つは、このキュレーションというふうに考えております。キュレーションというのは、日本語で言うと目利きということですね。わかりやすく言うと、自分の目利きの商品を人に紹介する。そういうことがですね、これからきわめて重要になっていくということでございます。

楽天の動きとしては、一つはROOM。これを始めました。ROOMというのは、自分のお気に入りの商品をソーシャル上にインフォメーションできる。ストアじゃなくて、自分の部屋に店舗が作れるので、ROOM。楽天のRを取りましてROOMという名前にさせていただきました。本当に、いまや100万人以上の会員さんに使っていただいて、実際の購買も起こっているということになっております。

大方がオフィシャルユーザー。ここにこれからどんどん著名人を乗っけることによって、ここでキュレーションされたプロダクトがどんどん出てくる、というふうにしていきたいと思っていますし、またコンテンツ自体も、よりリッチにしていかなくてはいけないと思っております。

楽天が出来た1997年というのはですね、月額50,000円。商品数は1店舗25商品までという時代でございます。そこからですね、単純に商品数は1店舗あたり1千点、軽く商品を超えておりますし、そして1店舗の売上も本当に大きくなったと。

それによって、今までみたいなスタティックなページを出していれば良い、こういう退屈なサイトというのはだんだんと駄目になって置いていかれていっちゃうんですね。商品力だけに頼っててはいけないということでございます。いかに上手く自分の商品、あるいは自分の店舗を、様々な手段を使ってアピールしていくかっていうことが重要だということでございます。

今日は3店舗ぐらい、ビデオを上手く使っている店舗さんをご紹介させていただきたいと思います。夢展望楽天市場店さんでございます。これはご存知ファッションの。

ふたつめはscope version.Rさん。これはヨーロッパの食器を専門に扱っていらっしゃる店舗さんでございます。

まあ、こういう形で単純にリアルな感覚ができるということかなと思います。

3店舗目がアスターHomeShopさんということで、こちらはナレーションですね。

実演販売ということでございます。

こういうビデオを使ってらっしゃる店舗さん、この月額の流通総額、100以上のビデオをアップしている店舗さんの流通総額というのは月額4,820万円であるということでございます。すなわち、それだけ表現方法は重要だということかなと思っております。

このビデオだけでなくて、楽天ではバーチャルフィッティングルームであったり、3Dであったり、色んな形での機能を開発していこうと思っております。

それから次、これをより簡単に早く出来ないか、コストもどんどん下がっていくと。今iPhone、あるいはアンドロイドフォンで簡単に動画の編集ができる時代が来たということで、楽天R-Video、こちらを使っていただければ、色んな動画が非常に簡単に作れると。この辺のサービスも今後どんどんと充実をしていきたいと思っております。

発展と共にやはり見逃してはいけないのは、デバイスの対応ということかなと思っております。先ほどお話させていただいたスマートフォン、タブレット、これはもう本当に大きくなっています。

確か5年くらい前ですかね、モバイルのシェアが2020年には50%を超えますという話をしておりましたら、なんと今年の元旦、モバイルタブレットで楽天の流通総額57.2%。もうこっちがメインになってきているということですね。

特にモバイルになればなるほど画面が小さいので、よりインタラクティビティ、すなわちビデオというのが重要になってくるということでございます。

それからもう一つ、新しい取り組みとしましては、様々な編集者、スタイリスト、あるいはスペシャリストを中心にですね、インターネットマガジン、既存の出版社と提携をしながらマガジンコマースというものもやっていく。

つまり、エンターテイメントとショッピングというのは離れていたんですけれど、これが一気に近づいてくると考えていただいていいかなあと思っております。

また、取り組み方も様々な形態で発展をしております。ご質問いただきました楽天スーパーDEAL。これは恐らく将来的には楽天市場の流通の30%から40%、これぐらいは最低限でも作っていく。すなわち1兆円を超えていくサービスになっていくのではないかなと思っております。

何が起こっているかというと、基本的には今まで広告費であったりそういうものが色々あったわけですけれども、そういうものも一部ユーザーに還元をしていこうという考え方でございます。全国にスーパーDEALを積極的に入れていって、これは楽天が2015年最も力を入れるサービスの一つなので、是非皆さんも積極的にやっていただきたいと思います。

それから、楽天ID決済。これも、皆さんご自分の店舗、いわゆる自社サイトもやっていらっしゃる方も多いと思うんですね。それも結構だと思います。

先ほど言った外部経済もどんどんと広げていかなくてはいけないということで、楽天については、楽天ID決済というものをどんどんと使っていただけるような形にしていこうということですね。皆さん、やりたいという方は、是非ですね、ECC(ECコンサルタントの略称)に言っていただいて、楽天のID決済やりたいんだけど、と。

大体コンバーションレートが倍から、楽天会員になると3倍になると思っていただいていいのかなと思っております。また集客にも役立つということかな、と思っております。

スマートフォンの電話料金は高すぎる

もう一つ、今日お話をさせて頂きたいのは、先ほど「BEYOND」という話をさせていただきました。最低費ということを考えていくと、スマートフォンのサービスというのはどういうふうに展開していくのかなと考えております。

ちなみに皆さん多分、スマートフォンの電話料金が非常に高い。昨日もあまりにも高すぎる、何とかならないのかという話をしておりました。大体200時間電話で話すじゃないですか。ボイスで普通に200時間。それで圧縮すればどれくらいのデータ容量かって計算をすると、大体ですね、72MB。72MBっていうと、大体YouTube3分から5分ですね。

YouTube3分から5分のデータ容量しか実はボイスっていうのはないっていうことでございまして、それに対して何千円という料金を取っている日本の通信サービスというものは、日本の消費全体を押し下げていると思っております。

私どもの思いとしましては、単純に楽天モバイルを事業で成功させたいというより、このモバイルのプラットホームを安くする必要があると思っております。そこで楽天は、楽天モバイルというサービスを始めました。

先ほど言っていました端末を買って頂いても良いですし、またはSIMカードを買っていただいて、現在と同じ番号、そして次の契約で切り替えるということで、非常にコストを下げることができるということでございます。

大体家族4人乗り換えていただくと、年間20万円くらいセーブが出来ると。その分楽天市場でお買い物をしていただけるということかな、というふうに思いますね。是非皆さんと一緒に、このモバイルのコストを下げるという意味においても、楽天モバイルを積極的に活用していきたいと思いますので、今日、お子さんがいらっしゃる店舗さんは、是非乗り換えをしていただければと思っております。

楽天モバイルについては、次の段階としては単純に安いだけじゃなくて、スターティングページがほぼ楽天のサービスになる。当然これは変えることができます。まず出荷段階では全てが、楽天のサービスがそこに埋まっているというふうにしていこうと思っております。

楽天経済圏という話をさせていただきました。このインターネットショッピング、トラベル、コンテンツ、そして金融に加えて、今後はこのモバイルという切り口も入ってくると考えていただいていいかなと思っております。

未来は今の延長線上にはないかもしれない

今日のテーマは「BEYOND」、これはどういう丘を今後社外が、インターネットが、あるいは楽天市場が超えていくのかというお話をさせていただきました。私がいつも考えておりますのは、未来は今の延長線上にはないかもしれない、ということかと思います。

すなわち我々、店舗さんのために未来を考え、将来を考え、世界を見る。どういうふうに世の中が変わるのか、あるいは一つのテクノロジーが全く違う方向に持っていくのか。そういうものを低所高所から色々見ながら、皆さんと二人三脚で進んでいきたいと思っております。

楽しみですよね。将来こうなるのかな、あれ、なんで今までそれって人対人で、ヒューマンでやらなくちゃいけなかったんだっけとか。あるいはインターネットのほうがもっと有効に出来るんじゃないの、というようなことも考えられるわけでございます。

一回この既成概念というものを捨て去る必要がある。例えばeラーニング。インターネットを通じての学習。これは統計学的に言うとですね、インターネットラーニングをちゃんとやれば、普通のface to faceコミュニケーションの70%以上学習効率が上がると言われております。

どうしても日本人の場合はそうじゃなくてface to face、これが重要であると。でも私が言いたいのはface to faceの要素をインターネットに置き換えられます。まさしく、それを実現したのが楽天市場じゃないかなと思っております。

このリアルとデジタル、ネットワークとリアル、これをどういうふうに上手く繋げていくかということが、より本当の社会に極めて近い世界、あるいは現実の世界、パーソナルな世界を皆さんと一緒に作っていきたいと思っております。

楽天はこれからも様々なことにチャレンジしていきます。失敗することもあると思いますけれども、とにかくこの未来、2020年、2030年を見据えて、皆さんと共に発展をしていきたいと思います。

最後になりますけれども、今年1年、皆様の店舗のご商売がますますご繁盛、ご発展することを祈念させていただきまして、私のスピーチとさせていただきます。どうもご清聴ありがとうございました。