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私も孤児だった–女優サヘル・ローズが訴える、「養子縁組1%」の日本の現実

私も孤児だった–女優サヘル・ローズが訴える、「養子縁組1%」の日本の現実

血のつながりと心のつながり、親子の絆として大切なのはどちらだろうか? 児童養護施設で7歳まで育った女優のサヘル・ローズ氏は、血のつながりのない母親に引き取られ、愛情深く育てられたおかげで今の自分があると告白します。誰もが生まれてきてよかったと思える社会にしたい、そう語る彼女が1人1人の子どもと向き合うことの重要性を訴えました。(TEDxKyoto2014より)

スピーカー
タレント・女優 サヘル・ローズ 氏
参照動画
Love and dreams for every child | Sahel Rosa | TEDxKyoto

私と母は血がつながっていない

gazou1 サヘル・ローズ氏 みなさんは、子どもの頃、どんな夢を持っていましたか? きっと、夢って色々と変わってきたと思います。 でも、小さい頃にはお菓子屋さんになりたいとか、お医者さんになりたいとか、サッカー選手になりたいとか、ヒーローになりたいとか、それぞれ色んな夢を持っていたと思います。 私も今、ちゃんと夢を持っています。ですが、小さいときに、その夢を持てなかった時期がありました。そんな私と同じような子どもたちが、実は今現在も世界中に、この日本にもいるということを皆さんには知っていただきたいと思います。 まず始めに私の話をさせてください。実は私は今、お母さんと2人で日本で生活しています。私自身は、ペルシア絨毯に乗ってイランからやってまいりました(笑)。 絨毯は嘘です(笑)。8歳の時に日本に来て、かれこれ20年経っているんですけど、この20年間が濃厚で色んなことがありました。 gazou2 これが私の母です。よく「似ているね」と言われるんですけど、実は私と母は血がつながっていません。私は3歳から7歳を施設で過ごしました。 彼女が施設に来て私を引き取ってくれたセカンドマザー、養母になります。彼女が引き取る前の私はサヘル・ローズではなく、ナイゲスという名前だったんです。 出産届もなかったので、私自身いつ生まれたのかわかりません。彼女が引き取ってくれたあとに、私の誕生日や今の名前を与えてくれました。きっと彼女と出会っていなければ、今の私はいないと思っています。

親子を救ってくれた給食のおばちゃん

でも彼女は私を引き取ることで、たくさん苦労したはずです。その苦労があって、自分の国に居場所がなくなってしまったことがあって。今こうして日本に来ることになったのもいろんな方の手助けがあって、私たちは20年前に日本に来ることになりました。 でも言葉がわからなくて、仕事もなかなか見つからなくて、公園で生活する時期もあったんです。その時に救ってくれたのがこの方です。 gazou3 彼女は、私が通っていた小学校の給食のおばちゃんです。公園で生活をしていた私たち親子を、自分の家にかくまってくれたり、お母さんに仕事を与えてくれたり、言葉を教えてくれたりと、たくさん面倒を見てくれました。 ランドセルも、自分のお子さんが使っていたものを私にくれました。血のつながりがない私たちを、まったく血のつながりのない給食のおばちゃんが、また助けてくれたわけです。 私もお母さんも、彼女以外にも多くの方々に救われて今があるので、本当に日本の方に心から感謝をしています。そして大好きです。

児童養護施設の子どもが抱える心の闇

だからこそ、そんな皆さんに知ってもらいたいことが沢山あります。今日伝えたいのはこれ。 gazou4 この数字は2013年度に発表された、今現在、児童養護施設で生活をしている子どもの数です。児童養護施設に入りたくて入っているわけではありませんよ、子どもは。 色んな理由で親を亡くしてしまったり、また虐待をうけてしまって親元を離れなくてはいけなくなってしまった子どもたちが、行かなければならなくなるのが児童養護施設です。 では、みなさん児童養護施設ってどんな場所か想像ができますか? 私がいた施設はこんな場所です。 gazou5 これはイランの児童養護施設です。一見楽しそうにケーキを囲んで食事をしているように見えます。食事を見たり、甘いケーキを見たらみんな自然にハッピーになります。なかなかお菓子なんて出てこないので。 けれど、心の中はすごく寂しかったです。誰かに抱っこされることもなければ、頭をなでてもらうこともない。心の闇はそれぞれにありました。

「心から愛してくれているわけじゃない」という子どもの言葉

gazou6 今度はこちらをご覧ください。これは日本のとある児童養護施設の写真です。 gazou7 お部屋にベッドがずらっとならんでいますね。このベッドの上が、それぞれに与えられたスペースなわけです。みんなで生活をしているのが、ここの児童養護施設。子どもたちの面倒を見てくれる人もちゃんといるんです。 でも、大人1人に対し、多いときでは10人の子供の面倒を見なくてはなりません。そうすると、子どもってそれぞれに個性があったり、考え方もバラバラですよね。 面倒を見る方は結構大変だったと思います。でも、私としては、本当は1人1人の子どもに愛情を注いでほしい、1人1人の勉強をちゃんと見てあげてほしいと思うんです。 でも、それが叶わないのが現状です。子どもはそれを理解するまでに時間がかかるので、なんで「ちゃんと向き合ってくれないんだろう」と思ってしまうんです。そんな子どもが言っていたことがあるんです。 「どうせ職員は仕事でしょ。仕事だから僕たちの相手をしてくれているだけ。心から愛してくれているわけじゃない」 心から愛してくれているわけじゃない、私はこの言葉をその子から聞くと心が痛みます。 きっと職員の人はそんなつもりはないと思います。一生懸命接してくれているのが本当です。だけど、子どもの心にはそれがリアルなんです。

血のつながりって関係ありますか?

施設だけではありません。学校でも冷たい言葉を掛けられることが沢山あります。 私もそうでした。先生に「ここ分かりません、教えてください」って言ったら、「どうせ施設の子だろ」って言われるんです。また他の子たちには、「君たちは僕たちの税金で暮らしているんでしょ」って言われたり。 また学校に行くと、例えば修学旅行とか遠足ってありますよね。そうすると「あなたは施設から来るんでしょ、大丈夫なの? お金あるの?」と言われるんです。 それはある意味、差別だと思います。なぜそんなことを言われなくてはいけないのでしょうか? 確かに私たちには実の親がいないかもしれない、もともとの親のところから離れなくてはいけないかもしれないけれど、同じ人間なんです。 同じように転んで傷口から出てくる血の色はみんなと一緒。悔しくて流す涙だって一緒なんです。なんでそこで境界線を引かれなくてはならないんですか? こういう子どもたちは実際にみなさんの国民でもあるんです。だからこそ見て見ぬふりをしてはいけない。その現状に気づいていただきたいと私は思います。 続いてこちらをご覧ください。 gazou9 これは2011年度に発表された養子縁組が成立した数です。430人しかいないんです。全体の1パーセントと行き届いていないのが現状なんです。この養子縁組というのは、親戚同士でされる場合も多いんですけど、私とお母さんのように血のつながりがない者との養子縁組は日本ではほとんどないんです。 なぜだろう、と私は疑問に思いました。血のつながりってそんなに関係ありますか? 本当は心と心がつながれば本当の親子になれると私は思います。母は私を引き取った時に、実の両親から縁を切られました。今は仲直りしているんですけども。 実の両親は血のつながりがありますよね? なのに縁を切られた。でも血のつながりがない私のことを、彼女は一度も「あなたを引き取って私は損をした」とは言わなかった。 それどころか彼女はこう言いました、「私はあなたをちゃんと育てることで社会に見せたい、血のつながりがなくても、施設の子どもであっても立派な大人になることができる。夢さえ持てれば!」と。

1人ぼっちの子どもを見て見ぬふりしないで欲しい

gazou10 彼女のおかげで今の私があるんです。 私はこの間故郷に帰った時に彼女に言われました、「自分がいた施設を見に行ってみて」と。自分のいた施設に20年ぶりに行ったときはすごい緊張しました。 でもそこにいた人たちが「あー! ナイゲス、あなたなの!? 大きくなったね、今何しているの?」と聞いてくれたんです。 私は「今、日本で頑張っているよ」と言ったら「すごい、日本にまで行ったの、他の子どもたちの勇気になるから頑張って!」と言ってくれたんです。 でも、施設にいた子どもたちに「どんな夢を持っているの?」と言ったら「うーん、わかんない。ただお母さんが欲しい」と言われるんです。 夢を持っていない子が多いんです。いや、夢が持てないのかもしれない。なぜなら、どうしたらいいかわからないんだと思うんです。本当だったら親がいて親に色々相談をして、背中を支えて、1人の人の瞳に自分の姿が映るということを感じ取るのが一般的な社会だと思う。 でも、虐待だったり色んな理由で親元を離れなくてはいけなくなってしまったときに、頼れる場所がない。1人ぼっちになってしまう子たちが沢山いるのが今なんですね。 でもその子たちもいつかは施設を出なくてはならない。社会にある意味放り出されてしまったときに、夢が持てないまま出て行ってしまったら、どうしていいのかわからない。 それを見て見ぬふりをしていいかと言われたら、してはいけない。だって、今も皆さんの周りにそういう子がいるかもしれない。それに私たち1人1人が気付いてちゃんと見てあげることが必要だと思います。

恩返しを胸にかなえたい2つの夢

私が思うのは、「夢」、夢ってすごく大切。私も母と出会って夢を持てたことで前を見ることができた。ちょっと前までの私は後ろばかり見ていた、いや、立ち止まっていたと思います。 でも母と出会って夢を持てたことで、今の私の夢は、役者をやっているんですけど、役者として成功して賞を取って母にプレゼントしたい。 彼女と血のつながりはないけれど、母がしてくれたことに私はお金では返せない。だけど私が頑張れたという姿を、夢を持てたということが彼女へのひとつの恩返しだと思います。 そして2つ目の私の夢は、「サヘルの家」を作ることです。「サヘルの家」というのは児童養護施設を表わしています。なぜ「家」を付けたかというと、私は家というものが必要だと思っているからです。 日本に来てすごく素晴らしい会話を耳にしました。それは、(ドアを)カチャン、「ただいまー」と言うと「おかえりなさい」と言ってくれますよね。「いってきまーす」と言ったら「いってらっしゃい」と言ってくれる。その関係、その会話って素晴らしいじゃないですか。 でも今、その会話すら日本の中でも減ってきていると思います。血のつながりがある親子同士でもお互いに傷つけていると思います。 それをなくしたいし、今日ここにいらっしゃるみなさんに言いたいのは、第一歩としてひとつ目のステップとして、まずこれだけの子どもたちが親のぬくもりを求めていること、夢が持てない子どもたちがこれだけたくさんいるということを皆さんは今日知った。 知ったからこそ、次のステップとして施設に行ってみてください。触れ合ってください。別に子供はお金を求めていません。会って会話をするだけで、1人1人の目を見てあげるだけで、「あなたはちゃんとここに存在しているんですよ」と言ってあげることが、第一歩だと思います。 ぜひ、生まれてきた子どもたちに、生まれてきてよかったなと感じてもらえる社会にしていけたらいいなと思います。1人1人の子どもに夢を、そして家庭を。そして皆さん、ここにいらっしゃる方たちも、大人になっても夢を持ち続けてください。 私はこれからもこれを言い続けたいですし、今日本でもたくさんの施設に足を運んでいます。いつかその施設で今日出会った皆さんとも出会えたらうれしいです。 家に帰ったらみなさん大切な人を抱きしめてあげてくださいね。明日があるか誰にもわかりません。1日1日を大切に生きてください。最後まで話を聞いてくださって、ありがとうございました。

  
※ログミーでは、TED Talksおよび各TEDxの定めるCCライセンスを遵守し、自社で作成したオリジナルの書き起こし・翻訳テキストを非営利目的のページにて掲載しています。
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