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金持ちはなぜずっと金持ちなのか?–話題の経済学者トマ・ピケティ氏が、富の格差が起きるホントの理由を解説

金持ちはなぜずっと金持ちなのか?–話題の経済学者トマ・ピケティ氏が、富の格差が起きるホントの理由を解説

世界の富の大部分を富裕層が独占しているのはなぜか? 経済的不平等について研究する経済学者・Thomas Piketty(トマ・ピケティ)氏が、歴史的、統計的視点から所得と富の分布の変遷を解説します。21世紀の資本論についての新たな考察とは?(TEDSalon Berlin 2014より)

スピーカー
経済学者 Thomas Piketty(トマ・ピケティ) 氏
参照動画
New thoughts on capital in the twenty-first century

経済的格差が広がる原因

トマ・ピケティ氏 よろしくお願いします。私は所得と富の分布の歴史を15年間に渡り研究してきました。その中でわかったのは、長期的に見ると資本収益率が経済成長率を超えるという傾向があることです。 gazou1 そして、これが資産の分布が偏る原因となる傾向に繋がるという結論が出ました。永続的な富の集中ということではなく、資本収益率と経済成長率の間のギャップが大きくなればなるほど、経済的格差が社会的に広まっていくということです。 このことについて今日はお話したいのですが、所得と資産の分布において重要なポイントはこれだけではありません。長期的な所得と富の分布を考える上で重要なポイントは他にも多々あります。 そして今後も収集しなくてはならないデータがたくさんあります。今日の私達の知識量は過去の人々よりも少しは増えているものの、経済的、社会的、政治的分野においてまだまだ解明せねばならないことがたくさん残っています。 それを踏まえた上で、格差社会をつくるひとつの要因についてフォーカスしてお話をしたいと思います。しかし、ひとつに絞るからと言って他の要因を無視しているわけではないということをご理解下さい。

所得格差は教育格差だけでは説明できない

今日紹介するデータのほとんどは「ワールド・トップ・インカム・データベース」というオンラインデータベースに基づいています。 これは格差に関する歴史的データベースの中で現在存在する最も大きなデータベースです。そしてこのデータベースのデータは数10カ国から30人の学者が集まって収集したものです。 まずはこのデータベースの中からいくつかのデータをご紹介したあとに、資本収益率が経済成長率を上回るという話に戻りたいと思います。 gazou3 まずこれがデータに基づく事実、ポイント1です。この1世紀の間で所得格差におけるアメリカとヨーロッパの立場が逆転しました。1910年当時はヨーロッパにおける所得的格差はアメリカよりも大きかったのが、今日ではヨーロッパよりもアメリカで所得格差が進んでいます。 この大きな理由は資本収益率が経済成長率を上回るからではありません。それよりも、スキルに対する需要と供給の変化、教育とテクノロジーの間の関係性、国際化、そしてアメリカ国内で生きていく為に必要なスキルを皆が平等に得る事が出来ないという事実が挙げられます。 最高の教育を受けることが出来る大学がアメリカに存在する反面、低所得者の手に届く教育機関ではまっとうな教育を受けることが出来ない。つまり経済的弱者には成功する為に必要なスキルを身に着ける為の教育を受ける機会がない。そしてアメリカではある特定の人々だけが高所得を得るという状況が生まれました。 しかし、これを教育格差だけで説明することは出来ません。それ以上のことが起きています。資産的格差について今日はフォーカスしたいので、教育格差に関してはここまでにしておきます。

富の大部分を富裕層が独占している

gazou4 ではこちらをご覧ください。所得格差をシンプルに表しています。トップ10%層が全所得を占める割合です。1世紀前にはヨーロッパの全所得の45%から50%がトップ層に、アメリカでは40%程度がトップ層によって占められていました。 つまり1世紀前はアメリカよりもヨーロッパで格差が進んでいたのです。20世紀半ばに突如これが落ち込み、直近10年でアメリカはヨーロッパよりも格差が進みました。データに基づく2番目の事実はより資産格差的で、収入格差よりも資産の格差のほうが大きいということです。 過去数10年で富の格差は広がりましたが、1世紀前に比べればその広がり方はまだ緩やかです。全体の所得に対する資産率は、第一次世界大戦、世界大恐慌、第二次世界大戦によって混乱が起きた状態から回復しました。 gazou5 gazou6 事実その2、その3を裏付ける2つのグラフをお見せします。 gazou7 まずはこちら、資産格差の程度をご覧ください。これがトップ10%の資産家が保有する資産のシェアです。所得格差でも見られる、アメリカとヨーロッパの逆転が起きたことを読み取ることが出来ます。 1世紀前には資産分布がアメリカよりもヨーロッパで偏っていましたが、今はその逆のことが起きています。

中間階層の資産量の変化

更に2つのことが読み取れます。まず、全体的にみて、資産格差が常に所得格差よりも大きいということです。 所得格差では、30%から50%の所得がトップ10%に集中していました。それが資産となるとトップ10%に60%から90%が集中しています。これをよく覚えておいてください。所得よりも資産のほうが、より多くトップ層に集中するのです。 gazou9 第2に、この数10年の資産格差の高まりは1910年当時のレベルほどではないということです。トップ10%層に60%から70%の資本が独占されているという近年の資本格差拡大が見逃せないものであることには変わりはないですが、1世紀前に比べれば状況は良くなっています。 1世紀前のヨーロッパでは90%の資産がトップ10%に独占されていましたから。私は近年の状況を「中間40%」と呼んでいます。「中間40%」とはトップ10%でもなく、下層50%でもない、20%から30%の総資産を保持する中間の階層です。 「中間40%」層は1世紀前には貧困層と認識されていましたので、これは重要な変化です。そして全体の資産の量が回復したにも関わらず、第一次世界大戦前の状況まで資産格差が戻っていないということが興味深い点です。 これは総資産量に対する所得の問題です。特にヨーロッパでは、ほとんど第一次世界大戦前のレベルまで戻っています。つまりこの話には2つの側面があります。ひとつ目は私達が積み上げてきた資産量に関連があります。もちろん資産を蓄積することは悪いことではありません、特にそれがある一部の人々に集中していない場合には。 つまり私達がフォーカスすべきは長期的な資産格差の改革であり、未来を変えることです。第一次世界大戦勃発前は資産格差が大きく広まりつつあったことをどのように私達の未来への教訓にすればよいでしょうか?

資産が一部の人間に独占される理由

ここから未来の話をしましょう。なぜ所得に比べて資産がこれほどまでにある一部の人々に独占されているかの理由として、個人が様々な理由で資産を蓄えていることが挙げられるでしょう。 もし人々が老後の為に資産を蓄えているのであれば、資産格差レベルは所得格差レベルと大体同じ程度になるはずです。しかし、人々が老後に備えて貯蓄しているだけなのであれば、なぜこんなにも資産格差レベルが所得格差レベルを上回るという事実を説明することが出来ません。 つまり人々が老後の為以外に貯蓄する理由があると考えることが理に適っていますね。子供達やその次の世代に資産を残したい、資産を多く持つことで社会的ステータスを確立したいだとかが老後の為の貯蓄以外の典型的な理由になります。 所得格差よりも資産格差が広まっているという事実を説明するには、人々が老後の為以外に貯蓄をする理由を考える必要があります。 そのような理由で人々が貯蓄をすると、複合的に様々な影響が出てきます。例えば、家庭の子供の数で、その子が得る資産分配の率は変わります。多く子がいれば分配率は減り、子の数が少なければ分配率は上がる。資本収益率もそうです。 ある家族はより大きな資本収益を得ている反面、他の家庭は失敗する投資に手を出していたり。つまり資産を得る過程は常に流動的です。ある人々の資産が増えれば、またある人の資産は目減りする。 gazou11 ここで重要なのは、このような要因に左右され、富の格差レベルは急激に増加するr(資本収益率)引くg(経済成長率)として表すことができます。

もともとの資産格差が更なる格差を加速させる

資本収益率と経済成長率の差がなぜ重要かというと、最初からの資産格差が資本収益率と経済成長率の差が広まるにつれて加速していくからです。簡単な例を挙げます。 gazou12 例えば資本収益率が5%だとして、経済成長率が1%だとする。すると資産家が 資本収益のたった5分の1だけを再投資すれば、 彼らの資産は経済の規模と同じ速度で 増加するのです。つまり資産があればあるほど、より多くの財産を築くことが出来る。単純に税金を考慮せずに考えてしまえば、資産の5分の4は自由に消費することが出来るのです。 もちろん、人によっていくらを消費するかは変わってきますので、それも分布に流動性が出る要因となります。しかし、資産家が資産の5分の1を再投資し富を得続ける事実が、資産格差が縮まることがない理由です。 そして資本収益率は永遠に経済成長率よりも大きくあり続けることを歴史が証明しています。そしてシンプルな理由からもこれは明確です―これまでの歴史的に経済成長率は常にほぼゼロなのですから―。 成長率はだいたい0.1、 0.2、 0.3%程度で、人口とひとり当たりの生産高の増加は緩やかです。それに比べて資本収益率はもちろんゼロなどではありません。昔からある資産の王道、不動産で言えば大体5%ほどでした。 ジェーン・オースティンを読んだことがある方はよくご存じのはずでしょう。年収を1000ポンド得たければ、総資産20,000ポンドを保持している必要があります。ある意味これが社会の基盤となっています。 資本収益率が経済成長率よりも大きいことが、資本家が彼らの資本を元にしてどんどん資産を増やしていき、毎日食べる心配とは無縁の贅沢を許してきたからです。

今後、世界的に経済成長は鈍化する

gazou14 私の歴史的研究の重要な結論は、近代産業の成長はこの社会的基盤をそこまで揺るがすことがなかったということです。 gazou16 もちろん産業革命後、ゼロから2%ほどに経済成長率は上昇しました。 しかしそれと同時に資本収益率もまた上昇しており、経済成長率と資本収益率の差が縮まることはありません。20世紀には歴史に残る出来事がたくさんありました。1914年から1945年までは、戦争のショック、経済崩壊、インフラ、世界大恐慌の影響で個人の資本収益率はとても低かったのです。 gazou17 それが戦後跳ね上がりました。この原因として再建があります。ドイツ、フランス、そして日本では1950年から1980年の間の国の再建によって、成長率が5%となりました。そこにはベビー・ブームで人口が増えたことも影響します。 しかしもちろんそんなことは長くは続きません。少なくとも人口はどんどん減っていくと考えられています。なので将来的には経済成長率は5%を望めず1%から2%が続くと考えるのが妥当でしょう。 世界のGDP成長率と資本収益率を最も精密に予測したのがこちらです。 gazou18 ご覧の通り、歴史的にみるとほとんど常に経済成長率はとても小さな数字であるのが、戦後だけ跳ね上がっている。その時代だけ資本収益率と経済成長率の差が縮まっています。ここでは国連の人口数予測を使っていますがもちろん、これはあくまで予測です。 gazou19 近い未来、一家庭がたくさんの子供を持つ時代が来るかもしれませんし、経済成長率が高まることもあるかもしれません。しかしこのデータが今ある最も緻密に研究されたデータであり、このデータは世界的な経済成長率減少と経済成長率と資本収益率の差が広まっていくことを示唆しています。

不動産業界とエネルギー業界の動向に注目すべき

20世紀に起きた出来事、すでに触れましたが経済が崩壊し資産に対して課税されることになりました。 gazou20 これが税引前利益率でこちらが税引後利益率です。世界経済が崩壊してからはこれが税引後利益率の平均数値で、その下が長期に及ぶ経済成長率です。経済崩壊や課税が起きなければこのようなことにはなっていません。 ここで言っておきたいのは、資本収益率と経済成長率のバランスは多くの要因に起因しています。テクノロジーだとか、資本集約的技術だとかも関係してきます。今現在経済において最も資本が集中しているのが不動産、住宅、そしてエネルギー業界です。 しかし、将来的には多くの業界でロボットが使われるようになって状況が変わるかもしれません。それでも今それが起きているわけではないので、現時点では不動産業界とエネルギー業界で何が起きているかということが総資産と資本分配を考える上で重要です。 gazou22 もうひとつ重要な問題は、金融の複雑さや金融自由化に追い風を受けてポートフォリオ・マネジメントの経済効果が向上するということです。巨大なポートフォリオを持っている、特に億万長者が高い利益率を得られる事実に繋がっています。 gazou23 ひとつ例を挙げましょう。1987年から2013年のフォーブスの億万長者ランキングをみると、中でもトップの富裕者はインフレもものともせずに毎年6%、7%成長率の数字を上げてきました。その反面で世界の平均資産は毎年2%の上昇です。 gazou24 大きな大学の財産基金も同じことで、元手となる資本が大きければ大きいほどそのリターンも大きくなります。

今後必要となる措置は?

gazou25 では今後どんなことがなされなければならないのでしょうか? まずは経済に透明性を持たせることが必要だと考えます。 世界資本のあり方について、私達が知っていることが少なすぎます。世界中の銀行情報にアクセスできるようにすべきです。世界全体で誰がどれだけの資産を持っているのかを登録制にしたり、資産課税法を見直すべきです。 そして、資産に対する課税率を減らしてでも資産家に資産を申告してもらい、今後の対策を練る為の情報・データとして集めてもよいでしょう。ある意味ではタックス・ヘイヴンへの反対意見や情報の自動共有が今お話したことを実現へと後押ししています。 それ以外にも富の再分配への道はあります。税法見直しよりも新しくお金を刷ってしまったほうが簡単なので、インフラだ! と考えたくなるのは当然ですが、お金を考えなしに刷るのではいけません。 資産家の資産を強制収用すればいい! これを考える人もいるかもしれませんが短絡的すぎます。 ある特定の人々だけが莫大な財産を抱えているのであれば、それを収用してしまえばいいというのはいかがなものでしょうか。もちろん、また戦争を起こせばいい! などという考えを持ってもいけません。 私は累進課税をサポートしたいですが、歴史がその時に最高な方法を自ら生み出し、社会は進化を遂げることでしょう。ありがとうございました。

『21世紀の資本』gazou
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