資金調達と成功の関係性

マーク・アンドリーセン(以下、マーク):ここまではポジティブに考えてきましたが、ネガティブな考え方も出来ます。スタートアップの創業者にとってベンチャーキャピタルを集めることほど簡単なことはありません。

エンジニアを雇うこと、大企業に売り込むこと、カスタマー・ビジネスにおけるバイラル・グロース、広告収益を得ることに比べればVCを集めることは何でもありません。スタートアップを続けていく上で、ベンチャーキャピタルを集めることが最も簡単な部分であると言えるであろうということを覚えておいてください。その後が大変なのです。

資金を集めることが出来るというのは成功することとイコールではありません。資金を集められるということは、その後にしなければならないことが少しやりやすくなるだけのことです。

サム・アルトマン氏(以下、サム):創業者の資金集めのやりかたをみて、ここを変えて欲しいというポイントはありますか? マークは特に、お金と投資の関係性について話をしていましたね。

マーク:多くの創業者が重要なポイントを見逃してしまうのは、私達がこのことについて十分に話をしていないからかもしれませんが、ファンドレイズと会社経営に関して起業家の多くが見逃している最も重要なポイントは、リスクとキャッシュの関係性です。

「リスクのたまねぎ理論」とは

マーク:これはリスクとキャッシュの集め方、そしてリスクとキャッシュの使い方の両方です。Andy Rachleff に昔教えられたのは、彼が呼ぶところの「リスクのたまねぎ理論」です。スタートアップにはリスクが付き物です。

リスクのリストをつくります、その中には、創業者が皆で協力することが出来るか、プロダクトをつくることができるか、そして技術的なリスク、上手くローンチすることが出来るか、市場に上手く受け入れられるか、収益を得ることができるか、などがあります。

セールスフォースを持っている多くのビジネスの最大のリスクは、セールスのコストを十分にカバーできるほどプロダクトを売ることが出来るかです。消費者向けのプロダクトであれば、バイラル・グロース出来るかどうかがリスクになります。

初期のスタートアップにおいては、このように沢山のリスクがあります。スタートアップを経営していくことと資金を集めること、この2つに対する私の考え方は同じです。だんだんとリスクのレイヤーをむいていくのです。

つまりシードマネーを得る事でリストの最初の2、3のリスク―創業チームのリスク、プロダクトのリスク―を除外することができます。シリーズAで投資を受けることが出来れば、次の段階のプロダクトリスク、そして人を採用するリスクも回避できるかもしれない。

この段階ではエンジニアチームがしっかりと立ち上がっているので。そして最初の5人のカスタマーを獲得したので、カスタマーリスクも除くことが出来るかもしれない。つまりマイルストーンを達成するたびにリスクの層をはぎ取っていくこととなる。

そしてマイルストーンを達成するということは同時にビジネスも前に進んでいるということです。そしてビジネスが発展しているのであれば、投資家も魅力的に感じますよね。

つまり皆さんが私達のような投資家のところに来て「今シリーズBで資金を募っています」とピッチをする。その時に1番有効なのは「私達はシードラウンドで資金を獲得し、これらのマイルストーンを達成してきたと同時にこのようなリスクも排除してきました。そしてシリーズAでも資金を獲得しました、今はこのようなリスクがありシリーズCを目指す頃にはこのような感じになっています」と説明することです。

そして集めることが出来る金額とリスクに費やす金額を予測したものを提出してください。私はそれをみて投資するかどうか判断します。当たり前の話に聞こえるかもしれませんが、これが客観的に判断することが出来る最も良い方法です。

最近では出来るだけ多くの資金を集め、素敵なオフィスを設計して、出来るだけ多くの人を雇おうとすることに囚われる人が多いので、参考にしてください。

NDAへのサインを求めてはならない

ロン・コンウェイ氏(以下、ロン):私は計画的・戦略的な話をします。絶対にNDAへのサインを求めてはなりません。ほとんどの創業者が今ではこれを理解しているので、ほとんどサインを求められることはなくなりましたが。

まだ知り合って間もない段階で投資家にNDAへのサインを求めるということは、「あなたを信頼していません」と言っているのと同じです。投資家と創業者の人間関係は信頼に基づきます。最も致命的なのはすべてを書面に残しておかないことです。

ファンドレイジングは自分の力で可能な限り早く能率的にやりましょう。資金を集めることだけに心を奪われないように。一部の創業者はどれだけ資金を集めることが出来るのかを自慢のタネにしますが、資金集めはマークも言っている通り最も初歩的で小さなステップです。出来るだけ早くそのステップを終わらせましょう。

投資をしたいと言ってくれる人が出たら、すぐにメールで「投資してくれると約束しましたね」と最終確認します。多くの投資家は忘れっぽいので、投資をすると約束したことを忘れてしまうことがあります。なので口約束だけではなくメールで言質を取るように。投資家とのミーティングでは必ずノートを取り、重要なポイントはフォローアップするように。

投資にいたるプロセスについて

マーク:もう少し戦略的なことについて話をしたいです。どんなプロセスになるのか? 投資家に直接メールしても良いのか、または誰かに紹介してもらうのか? 投資決定までに何回くらいミーティングを重ねればよいのか? どのような規約にすればいいのか? いつ小切手を書いてもらうように頼んでもよいか?

すごいね。6個も質問がでたね。ロン、先にどうぞ。

ロン:SV Angelはシードステージにいるスタートアップに投資しています。私達はその会社にとっての最初の投資家でありたいという考えでいます。以前は100万ドルだけでしたが、近年私達は100万から200万ドルを投資しています。

つまり250万ドルを投資する時、シンジケートが5、6社あるということです。SV Angelには現在13人のスタッフがおり、私はもうデューデリジェンスに関わっておりません。私はもうどこに投資をするか選ぶ立場ではありません。

大きなプロジェクトや熟し始めたポートフォリオ会社の手助けをしています。すべてのプロセスを行うチームがいます。結果として今は30の候補社からひとつの会社に投資しています。そして投資をするのは1週間に1社という割合です。

ネットワークを広く持っているので、投資先候補として上がるのはほとんどが私達のネットワークから紹介された会社です。しかしネットワーク以外の会社も、素晴らしく完結なサマリーを送ってくれれば検討します。

突然どこからともなくアプローチがあった会社で、良さそうなものがあればその会社に連絡を取ってみるかどうかを投票で決めます。時間をムダには出来ませんので。もしもチームの大半以上が面白そうな会社だという投票結果が出たら、その会社の創業者に電話をかける人を決めます。

そしてその電話の感触が良ければ、ミーティング日時を設定して実際に会ってみます。SV Angelがミーティングの機会を設ける時は、ほとんど大抵の場合、投資にかなり前向きです。ミーティングも上手く行ったら、後はバックグラウンドチェックをして、よりその会社のことや彼らが狙う市場のことを理解した後に、投資することを最終的に決定します。

トップVC から投資を受ける2つのポイント

マーク:ベンチャーステージ、シリーズAについて少し話をしたいと思います。トップVCが投資するのは2つのタイプの会社に限ります。ひとつはシードラウンドで資金を受けた会社です。シリーズAまでくるとシードで勝ち取った100万ドルや200万ドルでファイナンシングしている会社の中から選んで投資することになります。

つまりシリーズAに行きたいのであればまずはシードラウンドで資金を得ることができるようにすること。稀にシードラウンドを飛び越してシリーズAに出てくる会社がありますが、その会社の創業者はほとんどの場合過去にも会社を興したことがある成功した人、過去に私達投資家と一緒に仕事をしたことがある人です。

2006年にある会社のエンジェル投資家だったのですが、その会社は最終的にもっと大きな会社と合併しました。そこで合併後にその同じ会社のチームは新しいビジネスを始めました。これがシードを飛ばしてシリーズAに登場する一例です。

彼らは既に投資家と多く知り合っていますし、実績もありますから。でもこれはあくまで例外です。もうひとつのタイプについてです。

毎年私達の持つネットワークから、約2000のスタートアップが紹介されてきます。そのうちの多くがシード投資家からの紹介です。つまりシリーズAの舞台に立つにはシード投資家と知り合い認められる、またはYCombinatorのような組織の中で何かをやってみることが最善の策でしょう。

※続きは近日公開!