投資家がリーダーの適性を見極める方法

サム・アルトマン(以下、サム):マークとロンへの質問から始めたいと思います。本日のメイントークになりますが、起業家、またはある会社への投資を決めるポイントを教えてください。

ロン・コンウェイ(以下、ロン):色々ありますね。1994年から多くの企業に投資をしてきました。SV Angelとその事業体で投資してきた会社は700社以上に及びます。

700の企業に投資する為には数千人の起業家と話をする必要があります。起業家と会って話をする時には、色々な側面をみながら話を聞きます。今日はどんな側面をポイントにしているかについてお話します。

出会ってから数分で「この人はリーダータイプだろうか?」「この人はプロダクトづくりに誰にも負けない情熱を持っているか?」と見極めようと心掛けています。

大抵の場合、起業家に会って私が最初にする質問は「どうしてこれをつくろうと思ったのですか?」です。その質問に対しての回答が起業家自身の抱えていた問題に対してのソリューションを自分で見つけようとしたから、であることを期待します。

そして、その人のコミュニケーション能力も判断材料となります。組織の中でリーダーとなり、チームをまとめ、プロダクトを成功させるには素晴らしいコミュニケーション能力が必要不可欠であり、生まれながらのリーダーである必要があるからです。

リーダーとしての能力の中には後から学ぶべきものもありますが、人を率いていく能力があることが前提です。

投資における2つのコンセプト

マーク・アンドリーセン(以下、マーク):今のお話に同感です。少しだけロンと私達が違うのは、私達が全てのステージで投資することです。シード・ステージ、ベンチャー・ステージ、グロース・ステージにも投資します。

そして異なったビジネスモデルにも投資しています。まずは2つのコンセプトについてお話していきます。

第1にベンチャーキャピタルビジネスとは100%アウトライヤーの勝負の世界です。よく言われるのは、1年に4000のベンチャー・キャピタルを得ようとしているベンチャー企業があるという話です。そのうちの200が「有名」なVCから投資を受けます。そのうちの15がいつか1億ドルの収益を得る。

ある年のその15の企業がベンチャーキャピタルの97%のリターンを占める。つまりベンチャーキャピタルビジネスとは大きく勝つか負けるかのどちらかしかありません。そこで私達は物凄いアウトライヤーであることを投資する会社や起業家に求めます。

第2のコンセプトは弱点よりも強みに投資するということです。当然のことのように聞こえますが、実はこれは非常に微妙なのです。チェックリストにチェックマークをつけていくのがベンチャー・キャピタルのやり方のデフォルトになっています。

「良い創業者であるか」「良いアイディアであるか」「良いプロダクトか」「顧客がついているか」等にチェックマークをつけていきます。すべてチェックがついた、良さそうだから投資しよう、という具合に。

しかし、チェックマークをつけているだけでは素晴らしい可能性を秘めたビジネスを見逃すこともあります。一定の基準を超えているからといって、彼らが素晴らしいアウトライヤーになるとは限りません。

逆に言えば、物凄い強みを持っている会社は大抵物凄いマイナスポイントを持っています。つまり、とてもシビアなマイナスポイントをも受け入れて投資する覚悟がなければ後に大きく勝つことになる会社に投資することは出来ないということです。

私達は物凄い強みを持つスタートアップに投資するように努めています。そして彼らの持つ弱点をも受け入れる覚悟でいます。

クビにするかの決断も素早く

ロン:最初に投資家と会う時はひと言でどんなプロダクトかを説明する、投資家を魅了出来るような決め文句を何度も何度も練習をして臨むべきです。投資家がそれを聞いただけで、皆さんがどんなことに取り組んでいるか明確にわかるようにするのです。

私のところにやってくる起業家の約25%がこれが出来ていないと言えます。彼らが何をしているのか、即座に明確に伝ってこないのです。私は年を重ねて辛抱が効かなくなってきていますから、「もういいです。君たちが何をしているのか全く見えてきませんから」と言ってしまいます。なので最初のひと言で自分のやっていることを明確にわかりやすく説明出来るようにしましょう。

次に、決断能力をつけましょう。前に進む為にはどんどん決断をしていくしか方法はありません。物事をぐずぐずと引き延ばすことはスタートアップにとって致命的です。

決断しなければならないことが誰を雇うか、誰をクビにするかであれば決断を素早く下します。素晴らしいチームが成功の鍵です。素晴らしいプロダクトづくりが出来たら、その後は実行力と素晴らしいチームづくりにフォーカスします。

誰かの投資を期待しているようじゃダメ

サム:パーカー、シードラウンドの経験がどうだったか、何か違う方法でアプローチ出来たのではないかということがあれば教えてください。

パーカー・コンラッド(以下、パーカー):はい。今回取り組んでいる会社のシードラウンドは素早く上手くできたと思っています。しかし、やっている会社の前に6年ほどやっていた会社のシードラウンドは私と共同創業者がシリコンバレー中のVCにピッチするという状況でした。

60社ほどのVCと話しましたが、全員から「ノー」と言われました。そこでピッチをどのように変えればいいのか、スライドをどう変えたらいいのか、Twitterをどう利用するか、と色々なことを考えて試しました。

ある投資家からターニングポイントとなるアドバイスをもらいました。彼は「君たちはわかってないよ。もし君たちがTwitterで働くチームであれば、ミーティングで何を言おうが、話が長くなろうが投資家は投資してくれるだろう。でも君たちはTwitterの人間ではないのだから、資料をすべて用意したりだとか、何をやっているのか投資家が一目でわかるようにしなければだめだ」と。

でもその時は彼の意味するアドバイスを理解せずにこう思ってしまいました。

「どうやったらTwitterの人間になれるんだろう……」

(会場笑)

今やっているZenefitsを始めた理由のひとつに、VCから投資を受けることが出来ずに2年間四苦八苦したことがあります。誰かが投資してくれることを期待してはならないと思いました。他の人に投資してくださいと頼んで周るのではなく、誰からも投資を受けずに始めたいと思ったのです。そこでキャッシュフローが十分にある道を模索した結果がZenefitsです。

それが結果的には多くの投資家が投資したがるビジネスになったので、その後はとても楽でした。サムはファンドレイズのエキスパートと私を評価してくれていますが、実際のところ私はエキスパートではありません。他のタスクに比べて、私はファンドレイズを不得手としています。

ロン:なぜその投資家はフェイル・ホエールが2年もの間続いているのにTwitterのようになれと言ったんでしょうか?

マーク:上手く行っていたからでしょうね。

誰もが無視できない実績をつくれ

ロン:もうひとつ言っておきたいことは出来るだけ長くブートストラッピング(自立起業)を続けること。テクノロジー業界で最も優秀な創業者の1人が新しい会社を始めようとしていた時に聞きました、「いつ投資を募るつもりですか?」。彼女は「もしかしたら投資は受けないかもしれません」と答えました。それは素晴らしいことだと思いました。ブートストラッピングは大切です。

マーク:このトピックについてはまとめて、次のトピックに進もうかと思っていましたが、パーカーが、私も話そうと思っていたとても大切なことを言ってくれました。

コメディアンのステーィブ・マーティンが彼のキャリアの始まり、どうやって成功したかについて書いた本があります。その中で彼は成功の鍵とは誰も無視することができないくらいに上手くやることだと言っています。

パーカーのようにやればビジネスは物凄い成功を収めることになり、そうすれば投資家は頼まれなくても自発的に投資をしたいと言ってくるでしょう。逆にデータに基づかないプランだけを提出しただけでは、他の数千の投資を受けたいと思っているスタートアップの中に埋もれてしまい、投資家の目につくことはありません。

つまり、誰からも無視されることがないくらいにまずは実績をつくる。ほぼ確実に言えるのは、上手くピッチしようと努力するよりも、ビジネスづくりを改善したほうが上手くいくということです。

※続きは近日公開!