自衛隊の海外派遣で考えられる危険性

生活・小沢:安倍総理のお話にちょっと異論を差し挟みたいんですけれども、湾岸戦争と、ベトナムやアフガン・イラク戦争を同列で論じておられます。それはまったく性格の違うものだと思います。湾岸戦争のときは安全保障理事会、国連の理事会で「あらゆる手段を講じてよろしい」というお墨付きが出ております。その他は違います。

ですからそういう意味において、私はここははっきりと、国連の認めた平和作戦に……維持作戦なのか、あるいはそうでないアメリカなどの特定の国が行う軍事作戦なのか、そこは区別して考えなければいけない。私はそう思います。

それから武力の行使で、前線でドンパチするかしないかは別にしまして、後方支援・兵站線というのは昔から武力行使では一番大事なところなんです。ですから、それはまさに一体なんです。その意味におきましても、ここは認識をしっかりしていただきたいと思います。

公明・山口:志位さんのお話は、PKOと多国籍軍への後方支援を混同してるんですね。PKOは武力を使う活動ではありません。

しかも、これは受け入れる国々の同意が前提で、また紛争当事者の同意も別に求めて行われる活動ですから、基本的には武力が使われない。その中で、警察的な活動をする範囲で武器の使用を認めていこうという考え方を、今回はっきりさせたわけです。

また、多国籍軍の後方支援。これは、従来から「武力行使と一体となる後方支援はやってはいけない」というのがこれまでの政府の考え方です。今回も「戦闘行為が現に行われている現場ではやってはならない」ということを決めたわけであります。

そして、後方支援活動をやっている現場が、もし戦闘行為の現場になりそうになったら止める、休止して中断せよ。こういうことを決めたわけです。ですから、危険をいかに回避して後方支援の実を挙げるかが、これからのやり方であります。

共産・志位:総理は、武力行使を目的とした海外派兵はしないんだということをおっしゃいます。しかし私が言ったのは、米軍の活動に対する兵站支援・後方支援といわれる活動です。それを、これまでは戦闘地域ではやってはならないという、歯止めがあったわけですね。この歯止めがなくなるわけですよ。

戦闘現場ではやらないということをおっしゃいますけども、自衛隊が行った場所が戦闘現場になりうるということは、答弁で認めました。そうしますと、やはり相手から攻撃されることになる。そこで戦闘が起こるってことを、私は問題にしている。ですから、これは国会で詰めた議論をやったわけです。そして、まさに自衛隊をそういう海外での戦闘に参加させることになる。

私たちは、日本を殺し殺されるような危険な国にしてはならないということで、閣議決定の撤回を求めている一番の理由がここにあるわけです。

与党内で意見が異なるのは問題だ

社民・吉田:数少ない国会の議論の中で、総理は注目すべき発言を2つされています。ホルムズ海峡に機雷が撒かれて、原油を積んだタンカーが通れなくなって、日本経済に甚大な影響が及ぶ場合には機雷の掃海に行くと。それが1点。2つ目は、日米同盟は死活的に重要な関係ですから、アメリカから集団的自衛権の行使を求められればその行使もありうる。この2つを言われております。

総理は何回も、アフガニスタンやイラクのようなところに行って武力行使はしないと言いますが、その歯止めがまったくないんです。総理がいくらそう言っても、歯止めにならない。それをどういうふうに(歯止めを)付けていくのか。

そもそもそういうことができませんから、私たちは集団的自衛権行使容認の閣議決定は撤回すべきだ、専守防衛で今の解釈の範囲内でできることをやるべきだと主張しているんです。

自民・安倍:歯止めというのは、先ほど山口代表がおっしゃったように3要件という明白な歯止めがあります。我が国の生存、あるいはさまざまな諸権利が根底から覆される明白な危険がある際にしか行わないということであります。

また、先ほど志位さんが例として挙げられたのは、繰り返しになりますが集団的自衛権の行使ではなく、集団安全保障の中で何をするかということであります。その際にも、先ほど申し上げましたように戦闘行為に参加する、あるいは武力行使をすることを目的に参加をすることは決してないということであります。もし戦闘現場になれば、直ちに撤退をするということは明白であります。

そういう意味においてはちゃんとラインは決まっている、歯止めは決まっているということは申し上げておきたいと思います。いずれにせよ、日本人の命と幸せな暮らしを守るための閣議決定であり、そしてこれから進めていく法整備はそのための法整備であります。

維新・江田:確かに7月の閣議決定を私も読みましたが、究極の官庁文学というか玉虫色決着で、あの何ページにもわたる文書に「集団的自衛権」という言葉は1箇所しか出てこない。問題は、もっと国会で議論させてくださいと。

もっとそういう歯止めとかいろんな基準等を議論させていただきたいんですけれども、それはされてない中で、自民党・公明党の間にはいわゆる集団安全保障への考え方、さらにはホルムズ海峡の機雷掃海の考え方について違いがあるといわれています。

しかしこれは、我々野党は何の自衛隊指揮命令権限も持ってません。与党というか官邸、安倍総理が持っておられる。その中で与党の立場に違いがあるということは、危機はいつ何時降りかかるかわかりませんし、それに対応するときに「これから議論しよう」じゃ困ります。

その法案の整備とかが、まったく今、行われていない。この国会にも出てこなかった、そして来年の統一選だと。領域警備法のようなものは我々も作りましたけど、グレーゾーン対応の法案も出てこない。これは本当に残念なことだと思っています。

小笠原のサンゴ密猟への対処と自衛権

公明・山口:先ほど小笠原の話が出ましたけれども、これは尖閣の問題とは違います。領土の問題は関係しておりません。

そして、外国の漁船がサンゴの密猟に来ましたけれども、中国船と思われるものが多かったですから、事前に中国側とやり取りをして「これは中国から見ても違法なことである、日中協力して取り締まりを強化する」、こういう了解のもとに取り締まりの強化をする法律を、全党で一致して作ったわけであります。

一斉に、海上保安庁と水産庁は警察権を行使して取り締まりを強化する。そういう枠組みの中で一斉取り締まりをしまして、外国漁船はゼロになりました。こういう実績をすでに生んでいるわけでありまして、自衛隊はまったくここには関与しておりません。そういう解決が求められる場合があるということ、ここはよく見抜いていかなくてはならないと思います。

生活・小沢:紛争・戦争の個々の事例について、事前にいろいろ予測できるものではないと思います。ですから、私は自国が攻撃を受けたときには、もちろん自衛権に基づいて反撃をするということは当然ですけれども、他国の紛争については、たとえそれが後方支援であろうがなんだろうが……さっき申し上げましたように、後方支援というのは武力行使の最大の要因なんですね。

要因といいますか、大事なことなんですね。兵站線が続かなければ戦争はできないんですから。ですから、後方支援がどうだとか危険性がどうだとかという仕分けのしかたではなくして、他国の紛争についてはあくまでも国連の平和活動に日本は積極的に協力すると。そういう仕分けのしかたをすることが、一番明白だと私は思います。

民主・海江田:安倍総理の隣に座っていますと、安倍総理の発言がよく聞こえるんですね。この集団的自衛権の問題で「明白な危険がある場合」と「明白な危険のおそれがある場合」ということを使い分けしているんですよ、実は。で、もちろん言うまでもありませんけれども、閣議決定の中では「明白な危険のおそれがある」ということですから、ここはひとつ、やっぱり曖昧だということです。

それから、さっき江田さんからお話がありましたけれども、与党の自民党と公明党の間で、今まさに選挙の共同公約というものを作っているわけですが、この集団的自衛権の問題についてちゃんと共同的な公約ができているのかというと、私はできてないと思うんですね。

まさにこの政権与党の両党で、しかもこれからちゃんと法整備をするんだ、法律を国会に出してくるんだというときに、与党がどういうスタンスなのかということをはっきりさせてもらわなければいけないわけですから、その点はぜひお聞かせをいただきたいと思います。

公明・山口:先ほどの明白な危険があるかどうかについては、7月14~15日の予算委員会集中審議で、内閣法制局長官の答弁と安倍総理大臣の答弁は一致しております。明白な危険があるかどうかというのは「我が国に戦火が及ぶ蓋然性、そして我が国の国民がこうむることとなる犠牲の深刻性、重大性。これを客観的、合理的に判断をする」、こうやって答弁をしているわけです。

そして「また他国に対する攻撃があった場合であっても、我が国に攻撃があった場合と同様の国民に対する被害の深刻性、重大性があった場合である」、これも一致した答弁になっているわけなんです。ここが大切な部分でありまして、これをもとにこれから安全保障の法的整備をやろうと。ここは与党として一致しておりますのでご心配なく、これからていねいに議論を進めたいと思います。

自公は集団的自衛権についても完全に一致している

角谷:これが最後の質問になります。じゃあ、志位さんで終わります。

共産・志位:総理が、歯止めがあるんだということをおっしゃいました。しかし、これまでの政府の見解というのは、「日本が武力行使できるのは、日本に対する急迫不正の主権侵害があった場合だけだ」と。発生した場合以外の武力の行使、つまり「一般に海外での武力の行使はできません」と。これが政府の見解だったわけですね。これを変えちゃってるわけですよ。この歯止めを外したわけです。

ですから先ほど言ったように、アフガン戦争やイラク戦争の場合も、これまでは「武力行使をしてはならない」「戦闘地域に行ってはならない」、この歯止めはあったわけですけども、この2つの歯止めはもう外れてしまっている。歯止めを外して海外での戦争への道を開くのが、今行われていることの本質だと思います。

角谷:ここで……。

自民・安倍:一言だけ。

角谷:じゃあ一言だけ、短くお願いします。

自民・安倍:先ほど山口代表が述べられたことですべては尽きているんですが、自民党と公明党はまったく一致をしています。でなければ、閣議決定ができない。これをはっきりと言います。

そして山口代表がおっしゃったように、まさに我が国に対する侵略・侵害と同じ規模の侵略・被害を受ける場合でなければ、集団的自衛権の一部行使は行わない、武力行使は行わないということははっきりしていると。これほどの歯止めは世界中ではないだろう、このように思いますよ。

角谷:ありがとうございます。安全保障政策について、各党の皆さんでご議論いただきました。さて、テーマ別はこの辺で終わります。