集団的自衛権の行使について

角谷浩一氏(以下、角谷):続いての討論は、こちらのテーマです。

角谷:安全保障政策です。討論の皮切りに、今度は社民党党首の吉田さんからスタートしてもらいましょう。吉田さんお願いします。

社会民主党・吉田忠智氏(以下、社民・吉田):7月1日の集団的自衛権行使容認の閣議決定は、私は撤回すべきだと思っております。閣議決定の眼目は大きく2つありまして、ひとつは限定的な集団的自衛権の行使ということでございますが、数少ない国会の議論の中でも、限定的ではすまないということは明らかになっております。

もうひとつが、いわゆる武力行使との一体化の緩和、現に戦闘が行われていなければ、海外での後方支援は可能にするということでありますから、これはアメリカと一緒に戦争に巻き込まれる可能性が出てくる。

そして、集団的自衛権行使容認の閣議決定のそもそもの内容は、1981年の集団的自衛権行使容認ができないという文脈の中でそれを改ざんしたもの、「当てはめ」といったそうですけども、非常に曖昧な形での閣議決定になっております。したがって、自民党と公明党でも解釈が分かれる。あるいは、政府部内でも内閣法制局と外務省で綱引きが行われている。そして、曖昧な閣議決定は撤回すべきだと思っています。

角谷:ありがとうございます。さあ安全保障政策ですけども、皆さんからいろいろ活発なご議論をいただきたいと思います。では、安倍さんからいきます。

自由民主党・安倍晋三氏(以下、自民・安倍):今年の7月1日の閣議決定というのは、まさに日本人の命と幸せな暮らしを守るための閣議決定であります。いわゆる集団的自衛権の行使容認の一部を認めたのは、例えば国の存立が危うくなり、自由や民主主義、生存権といった権利が根底から覆される恐れのあるとき、明白な恐れのあるときに行うというものでありました。

そういうときに日本の持っている権利を行使しないのは、むしろそれは怠慢であろうと思っております。近隣諸国で動乱があって、そこから逃れようとしてくる日本人を輸送している米艦を、はたして自衛艦が守らなくていいのかどうか。そういう現実の問題であります。そのための閣議決定であると。当然、それに基づく法制を来年の通常国会で行っていきたいと思っています。

日本共産党・志位和夫氏(以下、共産・志位):集団的自衛権行使の現実の危険がどこにあるか。国会論戦を通じて、2001年のアフガニスタン戦争、2003年のイラク戦争のような戦争をアメリカが起こした際に、自衛隊が従来の戦闘地域まで行って軍事活動をすることになる。こういうことを総理はお認めになりました。

で、自衛隊が攻撃されたら、武器の使用をすることになる。このこともお認めになった。ですから集団的自衛権行使とは、日本の国を守ることでも日本の国民の命を守ることでもない。アフガン・イラク戦争のような戦争で米軍と自衛隊が肩を並べて戦争をする、海外で戦争をする国づくりだということは、国会論戦ではっきりしたと思います。

私たちは、憲法9条を破壊するような集団的自衛権行使容認の閣議決定の撤回を求めます。国民の目・耳・口を塞いで戦争に動員する秘密保護法は、きっぱり廃止に(する)ということを求めていきたいと思います。

次世代の党・平沼赳夫氏(以下、次世代・平沼):私どもは、やはり憲法解釈によって集団的自衛権というものは必要だということで、党も意思を決定しているわけであります。憲法の前文にあるように、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意」する。現実の世界ではそんなものはありません。

ですから、何でも戦争に巻き込まれる、アメリカの戦争に巻き込まれるから危険だということじゃなくて、要は日本国として絶対に侵略戦争はしない。そういう形で安全と平和を、いわゆる軍国主義になるという形じゃなくてしっかりと担保していく。こういう姿勢が、私は必要だと思います。

閣議決定された憲法解釈について

生活の党・小沢一郎氏(以下、生活・小沢):日本の安全は、日米同盟と大きくは国連の平和機能、この2つによって平和を守っていくべきだと思います。それぞれの国が集団的であれ個別的であれ自衛権を持っているということは、もう国連憲章にも書いておりまして、私は日本国憲法も同じ解釈だと思います。

ただし、日本国憲法で違うのは第9条がありますから、これは日本の国が直接攻撃されたりしたときじゃない「その他の国際紛争」については国権の発動たる武力の行使はいけないということになっておりますので、この憲法9条の趣旨を単に閣議決定で変えられるものではないというふうに思います。

したがって一般的な集団的自衛権の行使は、やはりそれをしたいということであれば、憲法の改正を主張すべきだと思います。

公明党・山口那津男氏(以下、公明・山口):集団的自衛権というのは、憲法にはどこにも書いておりません。今回の解釈では、あくまで憲法の考え方をはっきりと示したものでありまして、国際法でいうところの集団的自衛権のことを議論したわけではありません。

この憲法の解釈は、長年政府が採ってきた基本の枠内で今回確定したものであります。他国に対する武力攻撃があった場合も我が国が自衛権を行使できることを明記しましたけれども、その条件は「日本の国民の生命、自由(および)幸福追求の権利が根底から覆される」明白な危険がある場合に限っております。

この明白な危険があるというのは、我が国に戦火が及ぶ蓋然性、あるいは日本の国民がこうむる犠牲が深刻かつ重大である場合、これを客観的、合理的に判断する。こういう考え方を採っているわけでありますので、これまでの論理的な整合性と憲法の歯止めはしっかり守られているし、これからも改正をしなければ変えることができない。そういう解釈を確定しました。

維新の党・江田憲司氏(以下、維新・江田):我々維新の党は結党した9月の時点で、自衛権の範囲の明確化ということで統一見解を出しました。我々は他国攻撃であれ自国攻撃であれ、その結果国民の生命・財産に重大な危害、戦火が及ぶ場合には、自衛権を行使するのは憲法9条によってなんら禁止されていないという立場です。

いずれにせよ、国際法的にはニカラグア(事件の)判決に見られるように、自国を防衛する権利が個別的自衛権、そして他国を防衛する権利が集団的自衛権です。しかし、この「個別的・集団的」の範疇、外縁の部分が重なりあってきた。総体化されてきた。

したがいまして、我々が認めるのはあくまでも(昭和)47年見解の延長線上の「個別的自衛権」にあたる、しかし一方から見れば「集団的」とも言っていいようなケースを限定的に認めるというのが、今回の我々の統一見解の趣旨でございます。

民主党・海江田万里氏(以下、民主・海江田):今、国民が何を一番心配しているかというと、実は尖閣の問題であり、そして小笠原の問題なんですよ。これは我が国の領土と領海の問題なんですよ。ですから私たちは、まず我が国の領土・領海、そして領空もそうですが、これをしっかり守るということで「領域警備法」という法律を作りました。

これは個別的自衛権の問題ですが、今一番喫緊の問題であり、多くの国民が心配しているのはこの点です。そして、集団的自衛権の問題。今もお話がありました。これは我が国に対する直接的な攻撃じゃないんですよ。他国に対する攻撃でありますから、その意味ではまずしっかり国民の間で議論をしなければいけない。その議論が決定的に不足をしています。

特に7月1日の閣議決定というのは、そうした議論をしないまま、国会が閉じられた後に閣議決定しているわけですから。こうしたやり方はやはりおかしいということで、私たちはこの閣議決定は撤回すべきだということを主張しています。

現地での戦闘行為について

自民・安倍:先ほど志位さんが、まるでアフガン戦争やイラク戦争に自衛隊が参加するかのごときの発言をされましたが、そんなことはないということは再三、国会で私は発言しているとおりであります。いわば、武力行使を目的とした戦闘行為に参加することはありません。

ですから、例えばかつてのベトナム戦争や、アフガン戦争や、湾岸戦争や、イラク戦争。そうした戦闘行為に参加することはないということは、はっきりと申し上げておきたいと思います。日本の平和国家としての歩みは、まったく変わることはありません。もちろん、日本の領土・領海はしっかりと守っていかなければいけません。領空もそうです。

しかし、世界中で日本人が活躍をしている中において、いろんなことが発生した際、しっかりと守っていく。その責任を果たしていく。今、世界中で一国で自分の国を守れる国はありません。日本においては、日米同盟をきっちりと維持しながら絆を強めて守っていきたい。守っていかなければならないと思います。

共産・志位:はい、ちょっと。

角谷:じゃあ志位さん。

共産・志位:今、総理から反論があったんですが、私は安倍さんと国会の予算委員会で論戦しました。アフガニスタン戦争・イラク戦争のときに自衛隊を派兵しました。しかしそのときは「武力行使をしてはならない」「戦闘地域に行ってはならない」、2つの歯止めがあったんですね。

これを残すんですか、残さないんですかと安倍さんに聞きました。「残す」と言わなかった。結局、戦闘地域まで行くことになるのではないか。これは明らかになりました。そうしますと、攻撃されることになる。攻撃されたらどうするんですかと私たちは聞きました。「武器の使用をする。任務遂行のための、あるいは自己防衛のための武器の使用をする」とおっしゃいましたよ。

武器の使用をするということになりましたら、戦闘が起こるんです。ですから、アフガン戦争・イラク戦争のような戦闘に参加することはないと言うけど、実際そうやって論を詰めていったら戦闘に参加することになると明らかになったというのが、国会の論戦の到達点ですよ。これはごまかしちゃいけない。

角谷:じゃあ安倍さん、お答えになりましょうか。

自民・安倍:いわゆる武力行使を目的とした戦闘行為には参加をしませんし、一般に海外派兵はしないということを明確にしています。アフガン戦争については、いわば給油活動をしていました。そしてイラク戦争については、戦闘行為が終わってから、平和構築に我々は参加をしたわけであります。

そして、いわば後方支援。これは、集団的自衛権の行使の一部として行うものではありません。国際社会において国連決議があって、その中でどういう協力をしていこうという中で行っていく行為であります。その中においても、武力行使を目的とした戦闘行為に参加することはありません。

今までの概念を整理して、「今度は戦闘現場には行かない」という現実的なラインをきっちりと引いているわけでありますから、志位さんが言っているようなことにはならないということは、はっきりと申し上げておきたいと思います。