心拍数にまつわる科学

マイケル・アランダ氏:激しい運動をしているとき、自分の心臓がこれ以上速く動けないと思ったことがあるかもしれません。自分の限界に到達したと感じるでしょう。実際のところは、最大心拍数に到達したわけではないようです。

最大心拍数とは、自分の心臓が限界を超える手前の最大速度です。正確に言えば、そのような場合でも心拍数はもっと速くなることが可能で、単に体がそうしないだけにすぎません。

筋肉は運動をしているとき、もっと酸素が必要になります。

そうすると筋肉のエネルギーを供給できるからです。筋肉は、心臓がさらに多くの血液を送り出したり、もっと回数を多く送り出したりすれば、必要な酸素を得ることができるので、運動するときに心拍数が上昇するのです。しかし、心臓がどれだけ頑張って働いたとしても、いずれ物理学的構造に基づく限界に到達してしまいます。

運動を始める前、心臓は「安静時心拍数」よりも少し速い速度で動いています。安静時心拍数とは、睡眠時に細胞が必要とする最低限の速度で動いている状態の心拍数を言います。通常の成人であれば1分間60~100回ほどです。

それからどんどん激しく運動をしていくと、無意識に働く体の神経系の一部が、体に必要になるであろうことを予期して、心臓に速度を上げるよう指令を出します。すると心拍数は、最大限に体を動かした時の最速の心拍数に近くなっていきます。最大心拍数と言われる状態です。

その速度は20歳の成人であれば、人により10回くらいの開きはあるかもしれませんが、1分間200回ほどと言われています。そして20歳以降は1分間の心拍数から毎年1回ずつほどその数が少なくなっていきます。歳をとるにつれ、神経系の信号に反応する心臓の筋肉が少しずつ反応しなくなっていきます。

「活動電位」という指標

心臓の筋肉は実際動いている速度よりもっと速く動くことは可能なのです。その収縮速度は、それぞれの収縮信号の後リセットするのにどれだけかかるかにより決まります。

その信号は「活動電位」と呼ばれる電気刺激のことで、イオンが細胞膜にある伝導体やポンプのような役割をするものを通って動くことにより生じます。

信号が受信されると、十分なイオンが初めの場所に戻るまでその筋肉は信号を受けることができません。

心臓の筋肉のその必要となる時間は200~250ミリ秒なので、それから考えれば、最大心拍数は1分間に240~300回まで上がることも可能なはずなのです。しかし体はそこまで速度を上げさせることはしません。なぜなら心臓はわずかの間止まって、血液を満たすことが必要だからです。もし心臓が最速スピードで動いたら、あまり血液を送ることができません。

そうすれば筋肉が必要とする酸素を供給することができませんので、結果的に速度を上げる意味がなくなってしまうのです。そうするならかなり危険な状態で、通常それは体の悪い兆候です。

幸運にも、運動のメリットを得るには自分の心拍数を最大限まで上げる必要はありません。医者は通常、最大心拍数の50~80%のゾーンまで上げるのを目標にするよう推奨しています。

機能付きランニングマシンやアプリを使ってその速度を測るのもいいかもしれませんし、最大心拍数が1分間220回として、それから自分の年齢の数だけ差し引いてみることもできるかもしれません。それは正確な数字ではありませんが、運動をする際のおおよその目安になるでしょう。