ユーザーを頭の中でイメージできるか

高野福晃氏(以下、高野):結論から言うと、(「ママリ」というサービスを)成長させる仕組みとして、私たちが大事にしていることは3つあります。1つ目が「ユーザーの輪郭を想像すること」。2つ目が「ただ言われたとおりに作るのをやめること」。そして最後、3つ目が「同僚の一歩を支えること」です。1つずつ見ていきます。

まず1つ目の「ユーザーの輪郭を想像すること」。これは職種を問わず、今日参加されていらっしゃる方はなにかしらサービスを作っていたり、もちろんto B、to C関係なくサービスを開発していると思っているんですが、自分の関わっているサービスのユーザー像をイメージできる方ってどれぐらいいらっしゃるでしょうか。

なんとなくではなくて、ユーザーさんの話し方であったり、表情や服装や身振り手振りまで脳の中でイメージできる方って、どれぐらいいるでしょうか。イメージできない方もけっこういらっしゃるんじゃないかなと思います。

強みとか弱みとか、自分のサービスをユーザーさんはどう見ているのかを理解できている方も、どれぐらいいらっしゃるでしょうか。最後に、そもそもドッグフーディングとも言いますが、自分がユーザーとなってサービスを日常的に触っている方、これもあまり多くないんじゃないでしょうか。

コネヒトでは、これらがサービスを作る上で重要なポイントだと思っています。なぜなら、ユーザーの輪郭を想像できると、仮説の質が上がるからです。サービスの成長には改善が欠かせません。改善していくためには、質の高い仮説が必要になります。そういった仮説の検証を繰り返すことで、初めてユーザーに刺さるサービスを作ることができます。

一方で、ユーザーの輪郭がぼやけているような場合は、作ったものがけっこう中途半端なものになりやすくて。結果として、だれからも愛されないようなサービスになってしまいがちかなと思っています。

ユーザーの目線を知るための「ママリタイム」

高野:そんな「ユーザーの輪郭を想像する」ですが、コネヒトではユーザーを知るために、当然なのですが、ユーザーインタビューを行っています。部署は関係なく、開発、企画から、ふだんはあまり表に出てこないバックオフィスの社員まで、全員で持ち回りで実施しています。

ユーザーとの一対一の対話を通して、さまざまな気付きやフィードバックを受け取ることができています。参加できない人には、DocBaseで全社に共有しているのでいつでも見ることができます。

また、実はコネヒトは全従業員の45パーセントが「ママ」なんです。なので、ユーザーと一緒に働き、一緒にサービスを作っている環境になっています。

ここまでは定性的にユーザーを知ろうということでいろいろやっていたのですが、もちろんRe:dashとかTableauを使って定量的に分析することも重要です。これは非エンジニアのメンバーも当然のようにやっています。

さらに、コネヒトではユーザーの目線を知るために、「ママリタイム」という仕組みを持っています。ママリタイムとはなにかというと、毎日14時から10分間、全社員で「ママリ」を触る時間のことです。簡単に言うと、ドッグフーディングの時間ですね。これは開発者目線とは違って、1ユーザーの目線でサービスに毎日触れるということで、いつもとは違った気付きが得られるかなと思っています。

例えばサービスを触っていて、ふだん開発しているときには気づかなかったけれど、「この表記はちょっとわかりづらいな」とか、「ここがこうなっているのはなんでなんだろう」とか。そういうことが、このママリタイムを使って、ユーザーの目線でサービスに触れることで、理解できると思っています。

ここで出てきた疑問については、Slackの質問チャンネルに投稿されて、担当者が常に確認する流れになっています。

他にもSlackチャンネルはいろいろありまして、ユーザーからサービスについて届いた声をSlackに集約して、誰でも見られるようになっています。先ほどのスライドにあったのと同じように、いい声があったらSlackに投稿しています。

本来実現したいことはなんなのか、目的を確認する

高野:具体的にはストアのレビューなどを流したり、CSチームから「こんなお問い合わせがきたよ」、「今週はこんなお問い合わせが多かったよ」みたいなものを共有してもらったり。あとは、今画面に出ているような、ユーザーさんからきた喜びや感謝の声を積極的にSlackに投稿して、みんなで見るようにしています。

こういうのは、眺めるだけですごいモチベーションになると思うんですが、それが次のアウトプットに繋がって、さらにいいサービスになるんじゃないかなと期待してやっています。

さて、続きを。大事にしていることの2つ目は、「ただ言われたとおりに作るのをやめること」です。ただ言われた通りに、依頼された機能を実装するんじゃなくて、最初に必ず目的を確認しています。その人がなにをしたいのか、本来実現したいことはなんなのか。「それがなかったらどう困るんだろう」とか。そういうことを考え、ヒアリングしたうえで、もっといいやり方がないかを自分で考えて、可能性を疑っています。

例えば、可能性を疑った結果、よりコストの低い代替案が考えられたり、「これはそもそも開発しないで、別の方法をやった方がいい」とか、「極論、WordPressを使った方が仮説を検証するだけならいいんじゃないか」とか。そういうのも可能性の1つとして頭の中に入れながら、課題を解決したりしています。

なんで可能性を疑うのが重要なのかというと、やっぱりユーザーに早く価値を届けることがなによりも大事だと思っているからです。ここを我慢すれば、この運用の苦労を我慢すれば、2倍のスピードで市場に出せるとか。

こうすればグロースはできないけどある規模まで耐えられて、そこまでにかかるコストが半分になるとか。そんな選択肢を頭の中に入れながら、常にその時の状況や目的に合わせて最適な方法を採用するようにしています。

コネヒトではユーザーに早く価値を届けるために、当然ですがエンジニアも一緒になって仕様を考えています。またSaaSというものを積極的に採用することで、無駄な開発や運用を抑えて、事業ドメインに集中してリソースを投下することができています。

「同僚の一歩を支える」という文化

高野:例えばCIも、自社でJenkinsとかをサーバーに突っ込んで運用するのではなくて、普通にTravis CIなどを使って、事業ドメインに開発リソースを集中させていたりします。

あと一番重要だと考えているのが、作らないですむための非エンジニアへのスキル向上策をすごくがんばってやっています。

コネヒトで働くママさんたちも、Slackやスプレッドシートを駆使してガンガン使いこなしながら仕事をしていますし、最近では営業とかディレクターとか編集チームの方もRe:dashなどを使いデータ分析などを始めています。

さて、最後に大事にしていることの3つ目。「同僚の一歩を支える」です。コネヒトは同僚がなにかにチャレンジしたとき、もしくはなにかを始めたいと思ったとき、それを応援して支えて、さらに自分も乗っかっていく文化があります。

たとえそれが自分の担当範囲を超えていても、最終的にサービスや会社、またはその人自身の成長に繋がるようなことだったら、積極的に応援して関わっていくという人が多くいます。

この文化が浸透しているのは、たぶんコネヒトのメンバーが変化を楽しむ組織でありたいと考えているからかなと思っています。サービスが成長すると、いろんなことが変化していくと思います。それは一見すると、プラスのようなものからマイナスのようなものまで、さまざまなものがあると思います。

そういった変化を逆に楽しめる、柔軟性を持って対処できる組織がすごく強い組織だと思うので、サービスの成長をさらに加速させることができるんじゃないかなと思っています。

具体的には、例えば社内で行っていたLT大会というものがあったんですが、最近は外部の方を招いてオープンに開催するようになりました。これももともとは1人の社員が、「なんか社内でLTをやりたいな」と言ったことから、みんなでヨイショして開催していました。

それが定期開催になり、最近になって外部にも公開してオープンにやっていくようになっています。他にも「開発合宿をやりたいな」と誰かが言ったら、それに乗っかってやったり。

変化を楽しむ文化はサービスの成長に寄与する

高野:あとは、普通に技術が好きで「KotlinとかPHPにコントリビュートしたいな」という人がいたら、それを積極的に支えてあげるような感じにすると、コントリビュートをする人が出てきたりとか。

そのあたりはいろいろあるんですが、スキルセットの垣根を超えて、iOSエンジニアが「サーバーサイドを触ってみたいな」と言ったら、手とり足とり教えたりとか。逆もあります。サーバーサイドのエンジニアが「iOSをやりたい」と言ったら、ちょっとそこで「1on1してやってみようか」とか「ペアプロをやってみようか」ということをやっています。

こんな感じでさまざまな動きが生まれて、その度にそれに乗っかる人が出てきています。こういった変化を楽しむ文化は、今後必ずサービスの成長に寄与していくんじゃないかなと思っています。

最後にまとめです。「ママリ」のさらなる成長を支える仕組みとして、私たちが大事にしていることは3つあります。1つ目が「ユーザーの輪郭を想像すること」。2つ目が「ただ言われたとおりに作る、をやめること」。最後が「同僚の一歩を支えること」です。以上です。ご清聴ありがとうございました。

(会場拍手)