インターネットの時代は、ギブ、ギブ、ギブ

尾原和啓氏(以下、尾原):今度新しく『どこでも誰とでも働ける――12の会社で学んだ“これから"の仕事と転職のルール』という本を書かせていただいたんですけども、いかがでした?

どこでも誰とでも働ける――12の会社で学んだ“これから

前田裕二氏(以下、前田):めちゃくちゃおもしろかったです。おもしろいというか、本当に寸分違わず共感する内容だったので、途中から自分が書いてるような感覚になりました。

尾原:ははは(笑)。

前田:本は読んでいくと、抽象的な命題や言ってることが一緒になってくるじゃないですか。その命題にどんなエピソードを紐づけるかという勝負になってくるじゃないですか。

尾原:うん。

前田:でもエピソードだけ違うから、「こういうのをくっつけるんだな」みたいなのをすごい学ばせてもらったというか。

尾原:なるほど、なるほど。

前田:僕が本当に一番興味を持ったのは、一番最初の章の、一番最初のエピソード。「インターネットの時代は、ギブ、ギブ、ギブだ」という話があったと思うんですけど、本当に共感しました。そこに紐づける話題が「(尾原氏が若手の頃に)議事録を誰より取るのが早い」みたいな話でした。

尾原:本当に僕の時は、まだパソコンも普及したてで、ノートパソコンがIBMのThinkPadとかが出たてで、リアルタイムで議事録を取れる人が少なかったのもあるんですよね。でも、前田さんもそうなんですか? それが逆に意外ですけど。

絶対的な強みである「競争性」の価値

前田:僕は、本当に尾原さんほどじゃないにせよ、他の人よりも早くメモを取ってまとめてみたいなことが得意だったんですけど。投資銀行の時に、アナリストの話を聞いて……。

尾原:そうか、最初の仕事(注:前田氏は新卒で外資系投資銀行に入社)はそうですもんね。

前田:それでやってたので、そこは得意だったことなんですけど。最初は、これが得意になったら自分が人に対して与えられるようになるとか、深く考えてなかったんですけどね。

やっているうちに、気づいたら自分の競争制(注:他との競争に打ち勝つ力)になって、与えるとすごいみんなが感謝してくれるようになった。

自分の周りに仲間が増えてきて、「前田のメモが見たい」って言ってくれるような人が増えて。それによってお客さんも増えるし、自分の売上も増えるし。

それこそ、投資銀行でいうと、お客さんに与えるだけじゃなくて、「前田くんが書いたメモをシェアしてもらえる?」と、本来は競争相手である他の営業マンにもあげてたんですよ。

尾原:すばらしい、すごい。

前田:他の人がコピペしてお客さんに送ったら、自分のユニークさがなくなっちゃうから、本来的にはよくわからないことなんですけど、「別にいいや」と思って。そのあとお客さんにメールを送って電話でカバーすれば、付加価値をさらに上げることができるし。

ギブ、ギブの好循環が起きる

尾原:しかも相手が前田さんのノートを読んでる状態で話せるわけですもんね?

前田:そうです。だから、わりとオープンイノベーション的というか。自分が持ってるノウハウは、仲間・競争相手も含めて全部共有して、その前提でさらに自分はどんな付加価値を出すのかというゲームのほうがおもしろいなと思ってやってたんですけど。

どうせテキスト情報はコピー・複製可能なものであって、これだけで付加価値(を生み出す)というのは無理だと思ったから。

気づいたら意外とメモを取って構造化して送るみたいなことが「こんなにギブしてくれるなんて」「前田にはこういう情報を先に伝えてあげよう」と周りに言われたり、わりとそういう循環が起きたんですよね。

尾原:そうですよね、その循環はかなり大事ですよね。こっちがギブしてあげたら、向こうもギブしてくれるから、そうするとどんどん情報が集まる。もっと言うとたぶん、前田さんが前にホウドウキョクで話した時のノートのまとめ方とか、やっぱりすごくヤバかった。

結局、前田さんのノートは、単なる議事録というよりは、その議事録からどういうことをインサイトとしてまとめれるかというふうに抽出してあったり、それがさらに構造化すると、こういう大きな流れがあるんじゃないかというふうに、ちょっと次元が(違う)。

テイクするにはギブから始めよ?

尾原:僕はあれを見て思ったのは、前田さんって、ディレクターとしての目で書いたその場のメモと、もう一個俯瞰したプロデューサーとしての視点という、両方の意味合いがすごく書かれている。

前田:おもしろい。

尾原:だから、みんなありがたがる。もっと言うと、結局ディレクター前田、プロデューサー前田に情報を提供すると、プロデューサーの視点でフィードバックをもらえるから。

前田:あぁ~。

尾原:そんなことを、周りがどんどんやり始めることじゃないかなと思うんですよね。

前田:なるほど、おもしろいですね。最近、すごくおもしろいと思うのが、本当はテイクしたいとするじゃないですか。

そうすると、逆のことをやると、本来望んでることが起こる現象がある。

尾原:そうそう。

前田:それは、言ってみたらSHOWROOMのモデルもそうなんですよね。本当はビジネスだから、お客さんがお金を払うテイクを我々はしたいわけじゃないですか。そうなんだけど、無料で全開放してるわけですよ。だから、そういう意味では、ギブから始めているサービスなんですよね。

だって、コンテンツをすべてタダで見せて、「この場は別にお金使わなくていいんですよ」というサービスが、日本の動画配信アプリの中で売上1位になる。お金を払わなくても見れるサービスなのに、売上が一番だという不思議な現象が起こっている。

でも一方で、「お金を払わなきゃダメだよ」というサービスがそこまで伸びなかったりもしている。

尾原:そうですよね、むしろサブスクリプション型のほうが下がっていることもあります。

前田:これ、おもしろいなと思いました。

ギバーになったほうが得な時代

前田:「インターネットはギブから始めるんだ」という話はすごく共感して、実際の自分の実態に本当に通ずるところがあって、深く共感しながら読ませていただきました。

尾原:それを僕はすごく知りたかったんです。アダム・グラントという人が4年前に本を書きました。

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