眼球の仕組みを解説

ハンク・グリーン氏:眼球は不思議です。頭蓋骨の中に入った奇妙な小さな塊で、似たような器官は他にはありません。骨でもなく、皮下組織のように柔らかいわけでもありません。眼球を構成しているのは、外観のような白い組織ですらありません。大部分は透明なゼリー状のコラーゲンであり、鼻や耳を形成しているのと同じ類のものです。

眼の外観の白い色は、「強膜」です。これは、眼球の流動的な成分を袋のように保持している外層を指し、丈夫で薄い外膜です。

強膜は、前面の透明な角膜の組織を除く、眼球のすべてを覆っています。角膜の透明な部位は光を通すため、物を見ることができるのです。

眼底には光が届くよう、いろいろな器官が連携して工夫されています。

角膜を通った光は、さまざまな色のついた部位である、虹彩に届きます。虹彩の主な役割は、適切な量の光が眼球の奥に届くように瞳孔の大きさを調整することです。

虹彩のすぐ後ろにあるのは、固形でガラスのような水晶体で、(英名の)「レンズ」という名のとおり、光の焦点を合わせます。

眼底にある網膜は、文字通り物を見る役割を果たします。網膜にあるのは、光を感知する細胞と、神経の束です。この神経は、見た像を脳に伝達する視神経と繋がっています。

さて、眼にはその他の膨大なスペースが残されています。これは容量でいえば、眼球の80%の水晶体と網膜の間のどろりとした成分です。硝子体もしくはガラス体と呼ばれる流動体で、衝撃を吸収したり眼球全体を支える役割を果たします。

硝子体を表す「vitreous humor」とはラテン語で「ガラス状の液体」を意味し、この流動体が透明であることに由来しています。多くのジェル状態の物質と同様大部分は水分で、コラーゲンとヒアルロン酸という糖分の一種が混じっています。つまり、私たちの眼球は、ほぼ甘くてどろりとしたコラーゲンでできているわけですね。他にも低い割合ではありますが、さまざまな成分が含まれています。

硝子体からは、120種類以上の性質の異なるたんぱく質が検出されています。硝子体の中心部はゆるく、外縁部はやや固めで、加齢と共にだんだんやわらかくなります。部分的に角膜から剥がれてしまうこともあり、そのため飛蚊症と呼ばれる動き回る小さな影が見えるようになります。

水晶体の前、虹彩と角膜との間には、房水と呼ばれる液体が挟まれています。このジェルは眼球の残りの20%の容積を占め、房水という名前「aqueous humor」のとおり、硝子体よりも液体に近い状態です。眼球の形を保持するほかに、角膜への栄養補給の役割を果たします。

房水には、血液やヘモグロビンなど、眼球前面部の透明な細胞に酸素を送り届ける成分は含まれていません。これは、物を見るのに赤い色が邪魔にならないので理にかなっています。角膜にも血液は含まれてはおらず、そのおかげで角膜は透明です。

ということは、角膜が酸素を得るには他の手段が必要となります。これは涙の中に溶け込んでいる気体から得ます。

なんと角膜は呼吸をしているのです。つまり眼球は、呼吸をするのです。涙の中にはそれほど多くの酸素は溶け込んではいませんが、眼球の中の流動体を留めておく役割を果たす、角膜細胞が生きていくには十分です。