サービスがグロースしたきっかけ

重松大輔氏(以下、重松):せっかくだから、グロースしたきっかけや、ヒット商品などあれば、教えていただきたいなと思っています。

山本大策氏(以下、山本):本格的に伸びたのは売却したあと一気に広告費をかけて、がつっとユーザーさんを入れたタイミングからかなり伸びてきたかなと思います。1年で10倍くらいにはなってきましたね。

重松:すごい、10倍。

山本:それまでは僕はずっと1人で会社をやっていて、ぜんぜんコストをかけずにやっていました。広告をかけてなくて口コミだけで基本やっていたんですけど、それだとなかなかパワーがないです。広告で集めるのも非常に重要だなと思いました。そのときにわりと体力のある会社で、広告費をかけてできたのは良かったと思いますね。

いろいろな広告を試したんですけど、結局一番良いのは「コンセプトをベタに伝える」みたいな広告が、TimeTicketの場合はハマりましたね。

売れている商品というと、初回の人はさきほどもご紹介した写真撮影のようなものがやはり人気です。SNSのプロフィール用の写真撮影が欲しい、など。

リピートされるのはまた違って、ビジネス系のものだったんですけど。上位の5カテゴリーくらいは意外と変わらなくなってきました。今はその上位5カテゴリーをうまく買ってもらえるような仕組みをがんばっている感じですかね。

重松:ありがとうございます。写真はプロフィール撮影なんですね。基本、(ユーザーに)会いますもんね。

山本:そう、基本は対面型です。そこで、意外と競合がないのかな。一般的な写真撮影サービスは少し高くて数万円するんですけど、それが5,000~10,000円くらいでできるので。

重松:へぇー。

山本:「プロっぽくない」写真が欲しい、というニーズもあるんですよね。

重松:(笑)。

山本:プロすぎない写真、というか。

重松:なるほど。ほどよくプロっぽい。

山本:ほどよくプロっぽい、というのもあって。

重松:確かに。ありがとうございます。

家事代行、高まる気運

重松:どうですか、タスカジは。

和田幸子氏(以下、和田):タスカジは、メディアが文化を作ってくれて、それに影響を受けた利用者が増える流れが今までずっと続いていると思っています。いろいろなテーマが年単位で切り替わっていくんですけれども、一番最初は「外国人のタスカジさんがいる」というところを、1年間くらいずっと注目をいただいていました。

それは当時、女性活躍推進という名前のもと、今後家事代行をしてくれる人材が日本では人口が減っているので減っていくだろう。そんな中、外国人の方にそこをサポートしてもらわなくちゃいけないんじゃないか、という仮説の中で、経済特区で外国人家事支援人材のビザ緩和の試行が始まったんですよね。ありますよね。

2014年、外国人の家事使用人人材を受け入れることに手を挙げた特区が3つか4つあったんですね。手を挙げるなどして、制度がだんだん決まっていくたびに、ニュースになるんですよ。

ニュースになると「外国人のハウスキーパーさんってどんな感じなの?」のようなこともセットでニュースに流したいみたいで、そこでタスカジに取材が来ることが多かったです。だからまず、「外国人の方」というところが注目されていました。

次に、日本人の方で調理師とか栄養士の資格を持っている方が、登録に来てくれることが増えてきたんです。もともと私たちは「掃除のニーズがほとんどで、料理はあまりないだろう」と思っていました。

栄養士の方が登録に来て、「私は掃除はあまり好きじゃないんだけども、料理がすごく得意で」とおっしゃるので、「すいません、あまりニーズないかもしれないんですけど、とりあえず働いてみますか?」と言って登録してもらったんですね。

そうしたら、あっという間に人気ナンバーワンになったんです。その方は3時間で、ずっとお料理を作っているサービスだったんですが、当時「作り置き」が世の中ですごく流行っていた。ただ作り置きは、自分でチャレンジするんですけど挫折するんですよね(笑)。

仕事しているととくに土日しか時間なくて、体力がない中、3時間もキッチンに立ち続けられないので、みんな本は買うんだけども挫折している。そんな中、それをタスカジさんにやってもらえばいい、という判断をした依頼者の方が何人かいました。

できあがったお料理の約14皿の写真が、レビューとしてタスカジのプラットフォーム上にどんどん登録されていくと、わーっと依頼が集中したんです。その流れの中で、実際に利用してくれた方が記者の方だったり、TV局の方だったり、ユーザーさんの中からそのテーマでメディアに取り上げてくれる方が出てきた流れが第2段としてありました。

『逃げ恥』ブームの思わぬ後押し

和田:次に第3段として来たのが、『逃げ恥(逃げるは恥だが役に立つ)』のドラマですね(笑)。あれはお金持ちではなく普通のサラリーマンがガッキー(新垣結衣)に家事の依頼をする流れだったわけなんですが。

重松:ガッキーだったら良いですよね。えらい違いですよねそこで(笑)。

(会場笑)

大知:そのタイミングは、たまたま?

和田:たまたまですね。でも当時、そのクールの中で家事代行に関するドラマが3つも制作されていたんですよ。だから、世の中の流れとしても、家事代行に注目が集まりつつあるけれども、使うのはどうなんだろう、という微妙な空気感が流れている中でのドラマだったと思います。

その中でガッキーが家事代行やってくれる新しさと、普通のサラリーマン家庭がこういうことお願いしていいんだ、ということが世の中に浸透してきました。私たちがターゲットにしたいと思っている富裕層じゃない、普通のサラリーマンセグメントが、だんだんそれでできてきた、というのが次の盛り上がりでしたね。

その次に来たのが、そういうガッキーのドラマで盛り上がったのを見た、各TV局のみなさんが、いろいろな番組でタスカジさんやハウスキーパーさんの「凄腕スキル」にすごく注目して取材をしてくれるようになった。

とくにバラエティーで、「伝説の家政婦」みたいなキャッチーなコピーや、「スゴ技家政婦」などが楽しく取り上げられるようになってきました。いろいろなキャッチーなコピーを作りながら世に送り出してくれたところが盛り上がってきている流れかと思います。

その次に来ているのが、やはり出版ですよね。その「スゴ技」をもう少しいろいろなかたちで出していきたくために、出版社からいろいろお声掛けをいただいている流れですね。こんな感じでブームが起きてきている。

重松:ええ、理想的な積み上げですよね。

和田:そうですね。でもやはり、こちらからそうやって仕掛けてきたのもありますね。世の中の流れを見ながら「これがみんな興味を持っているところなんだな」と思ったら、そのテーマをどんどんぶつけていって、メディアのみなさんにテーマを渡していく、という活動もしていました。

そして、そういう世の中の流れを先に読んで、そのサービスを中に作り込んでおく。そういうことはしていました。たとえば出版に関していうと、「いつか出版したい」と1年以上前から考えてたんですよね。そのときには「こういうテーマで出すんだぞ」みたいなことを内部で決めていたりしました。だからお話をいただいたときにすぐ、それに乗ることができるようなかたちで進めていましたね。

こんなふうに、少しだけ先読みをしながら、いろいろな選択肢を模索しながら進めてきました。

重松:素晴らしい。ありがとうございます。

billage OSAKAの理想像

重松:大知さん、(billage OSAKAは)これからだと思いますけども。

大知昌幸氏(以下、大知):そうなんですよ。

重松:「こうやって成功していきたい」ことはありますか?

大知:これからですか? さきほどのハロウィンのことなどを含めて、タイミングや偶発的ななにかを掴んでる、ということ。それと、その前からずっと計画的であること。

もともと人が集まる原理で言うと、そこに期待感がある、もしくは「楽しそうだ」みたいなことから、たぶん人が少しずつ集まりだすのだと思います。それが本当に期待通りなのか、本当に楽しいのか。そこから「本当である」という事実を積み上げる必要があるんだと思うんですよね。

地道に事実を積み重ねているうちに、偶発的なポイントが発生して、ブレイクスルーしていくのだと信じています。例えばbillageという場所は、ヒト・モノ・カネ・情報の出会いの場であり、交流の場であり、調達の場である。そのためのつながりがしっかり生まれたという、事実を積み重ねていくしかないかなと思っています。

わーっとホラみたいなことを吹きながら(笑)。「こうなっていくよー!」「こんな世の中になっていくよー!」「こういうのが必要な時代になってくるよー!」みたいなことを言い続けて期待感を煽るのと、その期待感に集まってきてくれた人たちに対して、価値としての事実を積み重ねていくしかないと思っております。

重松:はい、ありがとうございます。

日本にパーティー文化が広まってきた

重松:私のところは、一番最初の波はハロウィンが来ました。レンタルスペースや限られた空間やプライベートが守られた状況でパーティーをやることが、「これってなんか新しいね」というニーズがありました。

そのあとに来たのが一番最初は、「いろいろなスペースが借りられる!」という打ち出しでやったんですね。お城も野球場も借りられる、とか言って。実際にお城と野球場は1回も借りられたことがないんですよ(笑)。

(会場笑)

いろいろやっていったうちに、たくさんやったことで「なにが稼働するか」がだんだん見えてきました。一番稼働するのは、キッチン付きレンタルスペースだったんですね。なにで使われるかというと、まぁ飲み会ですよね。パーティーなんですけど、居酒屋などの「負」があったわけですね。

居酒屋は2時間限定で、しかもお通しを頼まなきゃいけない、好きでもない音楽が流れてきたり、「負」がいろいろありますよね。最近お酒飲まない人もいるから、別に飲み放題じゃなくてもいいし、実はいろいろな楽しみ方をしたい。どんどん消費者はわがままになっていくので、自分でカスタマイズしたいんですよね。

そういうトレンドが来て、ようやく日本にもパーティー文化みたいなものが出てきました。それでキッチン付きレンタルスペースの波が来ました。

あとは、働き方改革の流れで、やはりオフサイトミーティングやリモートワーク。なので、オフィスから少し離れたところで仕事をするのがかっこいい。やはりデザイン性のある場所で働きたいトレンドもきました。我々もそういう場所をうまく用意しながら、そこの場所を提供する個人が増えてきたんですね。

なので、そこは今、働き方改革の1つの流れである副業文脈ですね。「副業でこう稼げます」ということが、みんなだんだん当たり前になってきたのが大きな波できています。

花見のスタイルも変化する

重松:最近、意図的にこれはスペースマーケットのPRチームで仕掛けているんですけど、インドア花見に関しても、完全にもう全部2〜3ヶ月前ぐらいからSEOのワードも全部押させて、もう受けのページも全部作って、メディアもしっかり戦略的に押させていって、わざわざアンケート調査などもします。

そうすると、もう去年から一昨年ぐらいで、やはり花見が意外と苦痛だなという。今日も寒いじゃないですか。この寒い中、花見をやっている人たちは、よくよく考えたらクレイジーじゃないですか。

花粉症などの困難を乗り越えてやるのは「なんかおかしいんじゃないか」と、そろそろみんな気づきはじめてきたんですよ。

そういうのをしっかり言葉にして、しっかり絵面も全部押さえて、それ全部段取り組んで、それで私が一応「こういうのをやったらいいんじゃないの?」ぐらいは言いましたけど、PRチームが全部設計して、全部段取りしてやりました。

なので、そういう情報開発系がだんだんハマるのがわかってきたので、今それを横展開する。いくつも、みんなやりたいんだけど、意外と負を感じているものをどんどん仕掛けていこうかなと思っています。

あとSEO。やはり地道にやっていると、いろいろなものが効いてきました。おもしろいんですけど、やり続けると競合もみんな少し疲れてやめていっちゃったりすることで、また強くなってくるところがあったのかなと思います。

地域やコミュニティの可能性

重松:最後にこのテーマに一応触れておかないと。

それでは、「シェアリングエコノミーが発達すると地域経済はどう変化・活性化していくと思うか?」「発達すると働き手にはどんな変化があり、スキルや考え方が求められるようになると思うか?」「企業はどんな体制、働き方を受容していかなければならないのか?」。

堅いんですけど、好きなほうでもどちらでもいいんですけど、ご自身の考え方みたいのがあれば、山本さん、お願いします。

山本:個人的には地域やコミュニティにはすごく興味があります。TimeTicketも今かなりコミュニティを作ろうということは意識してやっていますね。

やはりコミュニティがあるといいのは、シェアリングエコノミーってコミュニティの中で売り手の人と買い手の人が集まるんですけど、そのなかで教え合うんですね。

「TimeTicketではこうやったほうが売れるよ」「この人に気をつけなよ」などの情報を運営がもらって、その人をバンできたりして、コミュニティのパワーはすごく自浄作用があるので非常に重視してきました。

また個人的に今すごく興味があるのがブロックチェーンの世界で、中央集権的なサービスと非中央集権的なサービスがあるなかで、今、非中央集権的サービスのトレンドがくることが言われていて。ここにいる3社は、それぞれ中央集権的に安心安全なシェアリングエコノミーサービスをやっていて、手数料を2〜3割いただいている。

それが非中央集権的になるとどうなるか。手数料がほとんどない世界で、お互いがトラストレスに信頼しあって、サービスを信頼して取引する世界がくるような試みがいくつか始まっているんですけど、僕はまだ懐疑的で「うまくいくのかな?」みたいなところはありますね。

なので、これからが過渡期で、中央集権的なサービスと非中央集権的なサービスがグラデーションしながら、どっちにいくのかみたいなことが、たぶんこれから3年ぐらいでくるのかなと思っています。

そのなかで、この地域がなぜ重要かというと、地域の中でだったら、僕は非中央集権的な仕組みがハマると考えているんですね。

もともと顔なじみの人しかいないコミュニティであれば、サービスを信頼して、昔の物々交換みたいな世界が成立するのではないか、地域通貨みたいな経済圏が回り出すのではないか。

そういう非中央集権的な世界になると、意外と地域の中での閉じたサービスがハマりだそうだなと思いますし、シェアリングエコノミーはすごく相性が良さそうだなと思っています。

大阪限定で、billage限定のシェアリング通貨など、この中にいる人しか使えないけど、みんな顔なじみだから安心して使えるような世界観はぜんぜんあると思っていますね。そこらへんが非常に期待しているポイントです。

重松:さすがですね。

働き方改革にシェアエコが貢献する?

重松:和田さんお願いします。

和田:私は働き方とか企業との関係などをお話ししたいなと思うのですが。

私から見える働き方というと、タスカジさんたちのように、プラットフォームに登録しつつも、フリーランスとして自分の個性を出しながら働くタイプの仕事と、企業に所属して、ある程度型決められたかたちの中でパフォーマンスを出していくハウスキーパーさんとしての働き方というのが、世の中には2択としてあるのかなと見えています。

そんななかで、やはり能力の高い人は、もっとチャレンジしていって自分の個性や能力をどんどん伸ばしたい、持っているものを出したい、もっとそれを伸ばしていきたい気持ちになっていもんなんだなぁと、タスカジを運営していて思ったんですね。

それは人間の基本的な欲望としてあるみたいです。マズローの欲求5段階説での承認欲求などがあると思うのですが、他人から承認されたい、そういうことが満たされてくると、今度は自分自身が自分を承認したい、成長したい気持ち、「もっと高く登っていきたい」みたいな気持ちが出てくると見ていて思います。

最初はみなさん他人からどう評価されるかというのをすごい気にしながら働くんですね。「こんなレビューもらっちゃった」「レビュー悪かった」とか落ち込んだりとかするのですが。

だんだんそれが「まぁ悪いレビューもらったけれども、ここを改善したらもっといいレビューがもらえるようになる」と前向きな気持ちに切り替わっていくと、今度はどうやったら昨日の自分より今日の自分がよくなるかや、前回よりすてきな自分になっているかみたいなところに視点がいって、もっと上に上り詰めたいとなってきます。

タスカジでもやはりそういう方々がたくさん出てきているので、次のステップにいけるように、そういう意味で一緒に本を出版する取り組みをやったり、文化人枠でテレビに出ていただけるようなタレントマネジメント事業をやったり、そういうことをやっているんですよね。

スキルの高い人たちと手を合わせて

和田:それはすごくスキルの高いタスカジさんたちが、ずっと一緒にビジネスをやってくれる関係にいてくれる環境を作りたいと思ってやっています。

そういう流れを見ていると、やはり企業で働いている方々のなかでも、スキルの高い方はもっとチャレンジしたい気持ちがどんどん湧いてきちゃうと、企業の中ではなくて、外に出てフリーランスとして働きたいみたいな気持ちが、これからもっと普通に出てくるのかなと思います。

とくにこのタスカジのようなプラットフォームがあると、企業から出て、いきなり自分だけで戦うのではなくて、一歩簡単に踏み出せる場所ができていることもあって、だんだんサラリーマンから一歩踏み出してフリーランスに出やすくなっている。

そうなると、やはり企業としてはそういう優秀な人材をつなぎとめておきたいと思うと思うので、そういう方の報酬を多くする対応策が必要です。

でも、やはりオリジナリティを出したいと思っている方のニーズは、どうしても企業としては叶えられないとなってくると、例えば「雇用保険があります」などのメリットを出しつつ、自社に半分留まってもらいつつも、外で半分活躍していただく働き方になってくるかなと思います。

たぶんホワイトカラー的な働き方としても、今、副業の流れが来ていますけれども、家事代行の世界でもそういう流れが今後も出てきていって、企業としてはどうやってその方々とつながっていくかを一生懸命考えないといけない時代になってきているのかなと思っています。

そんな少しふわっとしたお話ですけれども、もう今現在進行系でこれから起きていくようなことなんじゃないかなという感触を掴んでいます。

価値と価値の交換が地方では一般的

大知昌幸氏(以下、大知):基本的には山本さんとほぼ一緒なんですけれども、地域経済とシェアリングという考え方でいうと、さきほど言った中央集権的・非中央集権的という概念と、地理的な、いわゆる地方とか地域という枠組みがあります。

その地理的な地域・地方においては、もうすでに土壌はあるような気がしています。「お金」という資本主義が提示した尺度を媒介せずに、価値と価値の交換みたいなことは、すでに昔から行われている日常があります。

「私〇〇の子どもを迎えにいくわ」や、そのお礼に「獲れたミカンをどうぞ!」みたいな、そういうことが常々行われていて、地域におけるシェアリングエコノミーの概念は、もうすでにあるんじゃないかなと思っています。

ただし、例えばおじいちゃんおばあちゃんしかいない限界集落でシェアリングエコノミーの概念を入れて、そこの地域経済の活性化に取り組んだとしても、おじいちゃんおばあちゃんだけでは自信がなくなったり、うまくいかないのかなと思います。結局はそこにある一定のヒト・モノ・カネ・情報が集まるようにしないと(活性化は)起こり得ない状況に陥るのではないかと思います。

世の中の価値観の流れでいうと、お金という、マネーのボリュームを持っていることがすばらしいという価値観からどんどん変わってきています。違うかたちでの価値の訴求・価値の証明がどんどん浸透していると思っています。

そういう意味では、「都会にいなきゃならない」「都会でなければ働き先がない」という考え方から、地方・地域であろうとつながりは作れて、自分自身の持つ能力や情報に価値がある世の中になってきている。そういった非中央集権的な世界になれば、自分自身にも自信が持てて、世の中から必要とされていると感じることができると思います。そんなムーブメントというか、潮流を巻き起こしていくことで人がどんどん地方・地域へと移動していく。

そして地方・地域にはそもそもシェアリングエコノミーの考え方や土壌がもうすでにあるような気がするので、こういった方々が考えたアイデアを流し込んでいくことで、すごくいい地方経済が成り立っていくと思っていたりします。

あるものを徹底的に利用すべし

重松:ありがとうございます。私のほうは、今「シェアリングエコノミー協会」という業界団体の代表理事もやっているんですけれども、大きな日本の方向性として、これからどんどん人口が減少して、人口だけは先読みができるわけですよね。これからこの人数になってしまうという。

ドイツは今シリアの難民の方がすごい子どもを産んで2パーセントを超えたらしいんですよね。日本はどんどん下がっていく一方で、よっぽど移民政策をやらないかぎり大きくは変わらないと思います。

そうすると、秋田や青森などの平均年齢がいくつになることはもう見えていて、今、北海道などでもJRをどんどん廃線にしていったりしているじゃないですか。要するに交通やいろいろなインフラの維持がそもそも困難になってくるのはもう目に見えています。

夕張みたいな消滅可能性のある自治体がどんどん出てきてもうしょうがない。どうしても、そこに住みたいんだったら、自分でなにかやってください。もう税金がないので自分で自分を守るしかない世界になってくるのはもう目に見えている話だなと思っています。

そうするとどういうことやっていかないといけないかというと、よっぽど移民政策をとらないかぎりは、お互いで助け合っていくしかないわけですよね。もう自治体もやることは最低限。ムダなインフラとかは本当に作らずに、あるものを徹底的に有効活用して、助け合っていくしかない未来があるのかなと思っています。

ですので、今、政府も非常にこのシェアリングエコノミーの概念をやはり地方に入れていきたいですよね。あるものを本当にみんなで助け合ってシェアして、外貨じゃないですけど、ほかのエリアからヒト・モノ・カネを呼び込んでいくのが非常に大事になる。

今、シェアシティやシェアリングシティは、本当に首長と自治体が宣言をしてもらって、コミットしていろいろなサービスをどんどん入れていくのを今協力して進めていっています。

日本再興戦略と、いろいろな経済成長の戦略の中にもうシェアリングエコノミーの推進が入っています。お隣の中国とかも非常に強化していて、世界中のトレンドですよね。

やはり個人が今まで会社に属してなにかやっていたわけです。元を正せば、みんなパパママ商店みたいな感じでみんな個人でやっていたわけじゃないですか。大企業みたいな存在ができたのは、本当にここ数十年の、100年200年の話ではない。ですので、わりと昔に戻っていくとすごく思っています。

まさに分散型というか、力のある個人が稼ごうと思えば稼げるし、やはり身近な人をどんどん巻き込んで助け合っていく社会になっていくので、このトレンドは変わらないのかなと思っています。それをどう楽しい方向に活用していけるかを考えているところです。

残り10分ぐらいになりましたので、みなさんから質問とかなにか言いたいことがあれば、ぜひお願いしたいと思います。

タスカジのレビュー機能の工夫

質問者1:和田さん個人でもよろしいですか。ありがとうございました。出会いの場の価値を提供するために、家事代行からヒューマン的なところの価値ですばらしいなと思いました。

そのときのキーはレビューというところが、すごいポイントだと思うんですけど、一般的にレビューは信頼性が担保できなかったり、そもそも書いてもらうことにもけっこう負担かかってしまったりするのかなと思います。

そのあたりで工夫されたことなど、そういった部分を教えていただければと思います。

和田:ありがとうございます。レビューの入力を促進する方法ですよね。最初、サービスインするときには、どうやって設計しようかなと悩んだんです。ポイント制導入するなど、いろいろアイデアは出たんですが、そういうお金を目的に書かせると本当に思っていることを書いてくれるかというと微妙になるなと思ったので、とりあえずなにもなしでまず始めました。

その時にやはり書いてくれる動機がなんだろうと思った時に、まず1つはタスカジって継続取引がけっこう多いんですよ。同じ人に継続的に依頼したい思いがあるので、むしろフィードバックしたい思いが依頼する側に出てくるんですね。

改善点があったら次回までに改善してほしいし、よかったら「いい!」と言って、次回はもっとやる気を持って働いてもらえるとうれしい。なので、依頼する方はむしろ一生懸命レビューを入力するインセンティブがけっこう働いていて、今は7〜8割ぐらいレビューを入れてくれていますね。

あと、もう1つは、場の空気づくりも意外と重要だったりします。「みんなが入れているから、入れようかな?」のような空気感もけっこう重要だと思います。

そのための仕組みとしては、依頼者向けに発行しているメールマガジンの中で、「こうやってレビューを入れることによって、ハウスキーパーさんより良い働きをしてくれるので、良いところと悪いところを両方を書くようにしましょうね」という啓蒙活動をしたり。

あと、レビュー入力する欄にも、どうやってレビューを書くと、相手に思ったとおり、伝えられるかというガイダンスを載せてみたりとか、そういう細かいところだけども、空気感の作り方というのもやっています。この2つでしょうか。

質問者1:はい。ありがとうございます。

副業につきまとう「場所」の問題

質問者2:おもしろい話ありがとうございました。質問というか要望みたいになってしまうかわからないですけど。僕は会社に勤めていて、副業や兼業の許可を取り付けて1人でやっていこうとする時、今度TimeTicketさんでなにか売ってみようかなと思って準備しています。

そうしたときに、場所をどうするのかの問題があります。カフェなどで、例えば「2時間とかしゃべって大丈夫?」「23時半ぐらいまで開いてて使えたらな」など。

例えば、夜のプランなどがあると思うんですけど、月・水・金だけ使えてもっと安井。要するにサラリーマンたちが外に出ていくきっかけづくりとして、こういうサービスがあるというのは1つ、僕らにとってすごく心強いんですけど、もう一歩最初の一段目が下がったらもっといけるのにという思いがあります。

山本:このあとお話しさせていただきたいんですけど、TimeTicketとbillage OSAKAさんでなにかそのプログラムというか、少しお安く使えるみたいのを一応お話はいただいているので、たぶんできると思います。

大知:僕はお願いされたらなんでも「うん」と言ってしまうので、しょっちゅう怒られるんですね(笑)。

山本:そうですね。なので、ここでぜひ。

商売の感覚はメルカリで身につけよ

質問者3:今日はすてきなお話をありがとうございました。少し1つおうかがいしたいんですけど、私は奈良に住んでいて、今日奈良から来たんですけど、まだシェアリングエコノミーは奈良などの地方になるとあまり広まってないです。

私の感覚値なんですけど、個にフォーカスを当てたときに、個人の個性や自分が持っている良さすら少し見つけるのが難しいなと思っている人が多いからこそ、なかなか地域で広まらないのかなと思ってて。

そういったものを見つけるためになにかしようと考えていらっしゃることはありますでしょうか?

重松:僕は「起業したい」という学生には、「いいから、とりあえずメルカリで物を売ってみろ」と言っています。(メルカリが)いいと思ってます。値段さえ下げて、キャッチコピーさえ合えば、なんでも売れるのでなんでもいいんです。本当に。

安く仕入れて、高く売るのは、やはり商売の基本です。小学生・中学生みんなにやらせたほうがいいと思います。その原体験などがあると、人は工夫してどんどん上達していきます。

基本的にほかのサービスも似たようなものというか、それが(共有の)スペースになって、スキルになったり、家事代行みたいな感じになると思うので、わからないけど、「まずメルカリをやれ」と言っています。

山本:あと1個いいですか。一例として、TimeTicketにいらっしゃった方で、男性だったんですけど、その方は最初は「スキルとかないので、まずは私は買う側で使ってみます」と言っていました。

それで10万円ぐらい使って、いろいろな人のチケットを買ったんです。その中の1つに「あなたのいいところ見つけます」というチケットがあって、「あなた、こういういいところあるじゃないですか」と言われて、「今度売る側に回ります」。

その方が今はもう月50〜100万円ぐらい売れる方になっていて、独立もしましたね。そういう事例があるので、まずは人と会って自分のいいところを見つけてもらう使い方もありますね。なので、ぜひお願いします。

質問者3:ありがとうございます。

TimeTicketで自分の価値を測る

和田:私も起業したばかりの時に、自分自身が講演するときになにを話したら価値をみんな感じてくれるかわからなかったので、TimeTicketで検証したんですね。その時に1個だけじゃなくて、3つぐらい並行して出したんです。

1つが「大企業から起業する人に起業の仕方教えます」です。「私はまだ起業して半年しか経っていないけど、それでも教えられることがあると思うので教えます」。なにも成功していないし、サービスインしたばかりなのに、出しちゃっているんです。

というのと、「共働き夫婦の家事分担の仕方教えます」「夫の巻き込み方教えます」。でも、全部1,000円なんですよ。だから、来る人も1,000円ぐらいだったら、そんなに期待もせず来てくれると思うので、こちらのハードルも高くないと思っています。

15人ぐらいにいろいろお話しして、反応を見ているとどこがみなさんが興味あるポイントかがだんだんわかってくるので、そこから高い価格でみんなが欲しいポイントだけ売り始めるのが、自信を持ってやれる方法だと思うので、そういう検証方法もおすすめです。

質問者3:ありがとうございます。さっそくTimeTicketさん使ってみたいと思います。ありがとうございます(笑)。

地域とシェアリングの親和性

質問者4:本日はこういった場のご提供ありがとうございます。シェアリングエコノミーは地方とけっこうマッチしている、あるいはもともと地方にあったものだと思います。みなさまはどちらかというと、シェアリングの中でも、最後はリアルでお会いされたり、リアルの場へ行ってサービスをご提供されているかと思うんです。

逆にいうと、そういう意味ではマーケットとしてはけっこう都会側がまずはニーズがあるのかと思うんですけれども、この先で、さきほど奈良とかも出ましたけれども、地域という意味では、マーケットの可能性としてマッチできるかどうか、お考えでしょうか?

山本:今、別にリアルだけでやっているわけじゃなくて、オンライン型もしているんですね。ただ、まだ使いにくいので、そこは改善していかなきゃいけないんですけど。

シェアリングエコノミーで、ココナラさんとかはもう完全にオンライン限定なんですね。だけど、取引量でいえば、スキル型でいうとたぶん一番じゃないですかね。なので、オンラインでもすごく伸びているサービスはあるので、そっちのほうがマーケットとしては大きいはず。

クラウドソーシング寄りになりますけど、そっちが好きな方はそっちでやる。ランサーズやクラウドワークスも含めるとたぶん相当大きい市場です。

そういう売り方もありますし、対面型で相談に乗る。たぶん売る方・買う方は「自分はこっちのほうが合うな」というところで使い分けされている方が多いように思います。TimeTicketもこれからオンライン型をどんどん強化していきたいと思っています。

地域に埋まっている可能性

重松:私のほうは、地方の物件もいろいろあります。奈良のすごい山奥に廃校があるんですけど、そこは非常に稼働しているんですよ。木造の校舎なので、毎週末コスプレの撮影会が毎週末予約が入っています。だから奈良から2時間ぐらい行かなきゃいけない。すごい遠いところで、僕は行ったことないんですけど。

そういう物件が今、実はいくつかあります。本当に物件さえしっかりあって、ホストがしっかりしていて、PRがしっかりできていれば、しっかり稼働します。エリアも沖縄や長崎、北海道もそうですが、今、全国各地を回っています。

時間はかかるし、それは都会のほうがやはり稼働はするし金額も高いんですけど。でも利回りで考えると地方の物件は意外と安いじゃないですか。借りる値段はそんなに変わらなかったりするので、なにか1回・2回使われば、すぐペイしちゃうことは、まだまだ可能性あるなと思っています。

和田:家事代行の観点でいうと、業務軸も1つあるかなと思うんです。シェアリングエコノミーは、別にここの地域だけ限定でニーズがあるものではなくて、全国・世界中どこでもあると思うのですが、家事代行という業務で見たらどうなのかという軸も、もう1つあると思うんですよね。

共働きがターゲットとなると、東京など関東、そして関西が中心で、ほかの地方はボリュームがどんどん少なくなってくるので、ニーズが薄くなってくることは業務的にあるかもしれないなと思いました。

ただ、家事代行でいうと、共働きだけではなくて、シニア世帯のニーズなどほかの世帯のニーズもけっこうあるので、日本全国のニーズはありそうな感じで捉えています。

個性・才能のマネジメント方法

質問者5:本日はすてきなお話ありがとうございました。今タレント事業部を運営させていただいているんですけれども、そのなかで和田さんにご質問がありまします。

タスカジで働かれている方がメディアに露出されていっているというのをうかがったんですけれども、具体的にどのようなタレントのマネジメント・育成などを行っているかをうかがいたいです。

和田:ありがとうございます。そういった事業を立ち上げて間もないので、弊社にそのノウハウがあるかというと、ほとんどないようなヒヨコの状態ではあります。

才能や個性があるかは、実はタスカジの家事代行のマッチングプラットフォームのレビューで見えるんですよね。「こんなことやってくれました!」とやはり感動ポイントがあると必ずレビューに書き込まれるので、その人のプロフィールページのレビューをずっと見ていると、「あ、こんな特徴ある人なんだ」というのはもう一目瞭然なんです。

そこから少しピックアップして、この人、こういう特性がある、個性があるんだと思ったら、そこの個性を最も出るようなかたちでプロモーションしていくことをやっています。

なので、なにか育成しているというよりは、もともと持っている個性やスキルを、どの情報を見ながら見極めるかをについてむしろ力を入れているという感じでしょうか。

もう1つ、家事代行のプラットフォームだけではなくて、タスカジさんたちによるメディアも持っているんですよ。「助家事さん」というメディアなんですけど、家事好きのタスカジさんたちが記事を書く、家事好きの人たち向けのメディアがあります。

そこの記事もけっこうおもしろくて、マッチングサイトの家事代行のレビューだけではわからないような、その方の文章力だったり、実は絵心がすごかったり、お笑いっぽい感じで文章を表現することができる、そういった個性もそこで見極められるよな、と思ってまします。

実はそこで絵がすごく上手だった方が、この前「タスカジSeaさんのリセット5分の収納術」という本を出版されたりしました。そういうかたちで、実際にいろいろなほかの仕事をしているなかも含めて、その方のタレント性を見極めているという感じです。

質問者5:ありがとうございました。

和田:参考になりましたか?

質問者5:なりました。ありがとうございます。

重松:ということで、こちらで、時間がまいりましたので、このセッションは終了としたいと思います。本日はどうもみなさんありがとうございました。

(会場拍手)