これからICOをしようと思っている人へのアドバイス

柿木原明良氏(以下、柿木原):MJEの柿木原です。よろしくお願いします。先ほどちょっと控え室でも話してたんですが、みなさん、意外と会われるのが初めてな方がほとんどで、お話したかったことや興味あったこととか、いろいろあると思いますので、僕がしゃべるよりも、登壇者さん同士でご質問をしていただけたらと思っております。

鶴岡英明氏(以下、鶴岡):全員分質問があるんですけど。

柿木原:トークセッションなので、質問からトークを広げていきましょうか。

鶴岡:安さん。

安昌浩氏(以下、安):はい。

鶴岡:さっきもSPOTSALE(スポットセール)と言ったんですけど、今後ICOも考えてるんです。これからICOをしようと思っている人に、なにかアドバイスはありますか?

:ちょっとありすぎて、「どこからいこうかな?」って思うぐらいなんですけど。でも、やっぱり一番大事なのは、結局「コミュニティと何の価値をつくりあげたいか?」ということ。それをちゃんとシャープにして、本当にコミュニティと対話しながら価値をつくりあげていく。僕は、その意識が一番重要かなと思ってます。

他にも法規制とか。すごくテクニカルなことで1個だけ言うと、税金はめちゃめちゃ気をつけたほうがいいですね。ICOの税金周りは、まだ世界的にもルールがなにも決まってないんですよ。なので、急に課税されるというリスクは背負うんですよね。

鶴岡:日本だと55パーセント?

:日本だと法人税なので、例えば集めたイーサリアムは……。

鶴岡:売上認定?

:そう。売上認定されて、30パーセントですね。売上なので、コストを引いた利益の30パーセントというかたちとか。ただ、まだ実は事業者主体が持ってるトークンに関する課税などは、ICOに関しては決まってなかったりするんです。

テクニカルなところでは、そこさえ気をつければ、あとはみんなが気をつけるようなことに出会えると思うんで。税金だけは、けっこう出会えないですね。

鶴岡:今はどうですか? 今するべきですか? もうちょっと待ったほうがいいですか?

:日本は交換業登録なしに今すると、たぶんお縄になっちゃいますよね(笑)。

鶴岡:そうですよね(笑)。

:この前、意見書とか出して、日本でやろうとしてたところとかけっこうあるんですけど、金融庁に許可を取りにいくと止められる可能性が高いでしょう。かといって、世界でやったとすると、海外のユーザーは今、日本のユーザー向けにICOはできないんですよね。今はできないというのが正直なところなので、ちょっと機が熟すのを待ったほうがいいですね。

鶴岡:わかりました。ありがとうございます。

独自の経済圏がつくられるときの壁

:じゃあ、僕もちょっと質問あるんで。

柿木原:ぜひぜひお願いします。

:僕は今日、なんかすごい「(他の参加者と)いろんな共通点があるな」と思っていて。(清水氏に)リクルートのお話をされていましたよね、まさにホットペッパービューティー。私もリクルート出身ですが、清水さんのお話は身に沁みました(笑)。

(会場笑)

清水篤彦氏(以下、清水):よかったです(笑)。

:(奥田氏に)鞍手のお話されていましたが、鞍手って、実は僕の地元のすごい近くなんですよ。

奥田雄馬氏(以下、奥田):あ、そうだったんですね。

:北九州なんですけど。

奥田:あー、はいはい!

:(今田氏と鶴岡氏と自分を指して)ここ、田舎者ですよね。

今田孝哉氏(以下、今田):(笑)。

:(鶴岡氏を指して)大分。

鶴岡:そうですね。

:僕も北九州で、(今田氏を指して)田舎なんですよね。田舎の人って、いろんな不具を抱えながら育つので、やっぱりこういう場って、田舎者が集うのかな、田舎に関係するやつが集うのかなって、僕はなんとなく思ったんですけど。

なんで田舎の話をしてるかというと、これはできればみなさんに聞きたいんですけど、あえて絞るとしたら、独自の経済圏をつくる時に、この田舎者のお二人に(お聞きしたい)。

柿木原:みなさんに聞いていただいてもぜんぜん(かまわないです)。

:そう、聞きたいと思うんですけど。結局、独自の経済圏をつくっていくというのは、実はけっこう難しいなと思っています。ブロックチェーンで信頼は不要になったかもしれないんですけど、それってイコール「価値が担保される」という話じゃないと思うんですよ。

信用が不要だからといって、価値が勝手に出てきて、独自の経済圏ができるわけではなく、そこの課題はまだありますと。それが独自になって、小さくなっていけばいくほど、やっぱり経済圏をつくるのが難しくなっていく。なぜなら、取引が少なくなっていくから。

例えば、(鶴岡を指して)僕、お店のコンセプトが本当にすばらしいなと思って、使いたいなと思う一方で、例えば僕が、北九州の田舎の店とか、より助けたい田舎の店ほど、人が少なくて経済圏がつくりにくいという課題がどうしても出てくると思ってるんですよね。まあ、北九州はまだ大きいんでちょっとあれなんですけど。

結局こういう新しい独自の経済圏が出てくるのは、東京のすごく盛り上がってるファンコミュニティだけ、みたいなことになりがちなんじゃないかなと思って。みなさんに、本当に独自の経済圏ができていく時に、「何があればそれが突破できるのか?」を、ぜひちょっとおうかがいしてみたいなと思いまして。

経済圏を発展させるための方法

柿木原:清水さんから、お願いします。

清水:そうですね、何があれば突破できるか。僕は、その独自の経済圏をつくっていくための手前の準備をやっていて。それが先ほど言った、まずコミュニティをつくっていくと。それがバーティカルになっていくので、そのターゲットをセグメントした上でやっています。

その中で流通がどう動くかは、今の経済、資本主義の中でどういうふうにこの経済が動いているかをまず突破しないとならない。つまり、今の現象の中でちゃんと稼げていないと、その先もないんじゃないかなと思っています。

僕らのサービスは、コミュニティをつくった上で、今ある商品などを、当然今の通貨で売買できるように成立させて、その中でまた価値が出てきた人たちが、徐々にそういう新しい通貨、小さい経済圏をつくっていく方向になっていくんじゃないかな、と思っています。

なので今の多層構造というか、今のベースありきなのかな、と思ってますね。突破の方法は、そういうコミュニティをまずどういうふうに抱えて、今の経済の中でどうやって成立させるかというのも、重要なんじゃないかなと思っています。

奥田:独自の経済圏を発展させるにはというところなんですが、私はやはり流通させること、そして、入口をちゃんと用意してあげることが重要かなと思います。ちょっとポジショントークにはなってしまうんですけど、ウォレットを開発してるものですから、そこがやはり重要にはなってくるかなと思います。

最近、その経済圏の価値は、意外と後からついてくるものなんじゃないかなと思ったりもしています。今まではやっぱり、「価値ある人や価値ある団体がなにかトークンを発行したりコインを発行するから、みんな買うんだ」と思っていたんですが、意外とそうではないのかなと。

またちょっとこの話を出して申し訳ない。なんJさんのコミュニティを見てると、本当にそう思うなと。なんJコイン自体には、正直なんの付加価値もなかったと思うんです。ERC223という規格でつくられた、ただのデータでしたと。

それに共感する人々が集まって、絵を描く人や会社を率いていく人が集まってきたので。まあ、それをちゃんと持つことができたのは、ウォレットというアプリがあったからなのかな、とはやっぱり思ったりします(笑)。

江戸時代の藩札とトークンエコノミーの共通点

鶴岡:僕、やっぱりわかんない(笑)。わかんないんですけど、僕たちがやろうとしてるのは、SPOTSALEっていうプラットフォーム上に上場することで、信用を生みたいということなんです。その信用がきっかけになって、上場してるお店が担保される。信用があるからこそ、お店に興味を持ってもらって、まず知ってもらって、買ってもらうという流れができると思うので、まず信用をつくることかなと思っています。

僕はちょっと前に、江戸時代に出されてた藩札について調べたことがあって。あれもけっこう今のトークンエコノミーと同じような流れだと思っています。

まず地方で、福山かどっかで最初に発行されたと思うんですけど、やっぱり貨幣の流通量が足りなくて、福山の藩主の方が独自の貨幣を発行したんですね。そういうものが全国に増えていった時代で。結局、発行されすぎて、信用がなくなって、どこかのお金持ちの人が集約して発行するようになった、という流れがあったと思うんですけど。

そういう意味では、今はいろいろ独自で誰でも発行できるような時代なんですけど、それがたぶんどこかで、ちょっと分散化とは逆だと思うんですが、大阪だとテックビューロさんもあると思うので、そういうところにいったん集約される。そこからちゃんとまた(分散化される)、という流れができるんじゃないかなと思っていて。

……何でしたっけ?(笑)。

:(笑)。

鶴岡:信用です。

:信用がまず必要ですね。

鶴岡:信用を生むこと。

:はいはい、なるほど。

今田:僕は、マッチングする仕組みをいかに構築できるか、というところを考えています。「トランジション藤野」という、神奈川県の小さなコミュニティがあるんですけど、そこが500人ぐらいの小さなコミュニティで、マッチングが無数にできてるみたいなんですね。

そこで生活してる人がいて、そこでの通貨もある。一種の経済圏ができて回っているっていうのが、けっこう参考にしてるんですけど。そこに非常に近いなと思っていて。

いわゆる、「イベント、手伝います」とか「相談乗りますよ」みたいな、人のスキルをしっかり可視化してあげて、マッチングしていく仕組みをいかに構築できるか、というところですね。

人って結局、「知ってる人から物を買いたい」とか、「知ってる人に頼みたい」と思うんです。なので結局、同じ美容室に通うとか。ただコミュニティ内でのマッチングの仕組みって実は今は中々ない。でも実際にそういう仕組みがあれば、マッチングするのではないかと思っているんで、そこを僕らも構築していきたいなと思っています。

資本主義とトークンエコノミー

:いろんな解答をいただけて、すごい参考になりました。ずっと「トークンエコノミーをどう発展させるか?」ということを考えている中で、やっぱり価値に紐づいて報酬が与えられるということが、僕が思う未来なんです。

例えば、ゴミ拾いを30年間やってきた人がいたとして、ゴミ拾いトークンを30年分持ってたとしたら、その人が困ってる時に「助けてあげたい」って思うんですよね。そっちのほうが価値がある場面が絶対あると思うんで。

ただ、それを推し進めようとすると、やっぱり資本主義のうねりに飲まれていくというか。なので、(清水氏を指して)「資本主義でまず成立させる」っておっしゃったじゃないですか。僕も今の答えはそうなんですよ。やっぱり、そこで価値のあるものをつくって、トークンエコノミーに流し込まないといけないんじゃないかなと思ってるんですけど。

そうしちゃうと、本当に価値があるものに対して報酬がつくというもの、価値が「今までも別にそれ、価値があったじゃん」というところにしか値段がつかない課題感をどうしても突破できないので。

(奥田氏を指して)それこそ「地域通貨が難しい」って、僕もまったく同じ意見で、「絶対こんなの無理だろ」と思うんですよね。ただ、そういう未来がきてほしい時に、どうつくっていくのか。この後もし交流の場があれば、ぜひみなさんにご意見いただければなと思います。ごめんなさい、ただの感想でした。

奥田:次は僕から。

柿木原:はい。

奥田:ちょっと一気に話が変わってしまうかもしれないんですが、みなさんが会社を立ち上げてここにくるまでの苦労話なんかを聞きたいなと思います。

というのは、我々はようやく1年間持ちこたえて、まあ、1年と2ヶ月やってきたんですが。意外と人集めってそんなに苦労しなくて。というのも、取締役がみんなエンジニアだったのもあって、若い人を集めて育てれば、なんとかなったかなと。ブロックチェーンという専門性のある技術も、なんとか徹底的に教え込むことで、自然とみんながお互いに教えるような循環ができていたんです。

一番苦労したのは、仮想通貨というイメージをどう払拭させるか。あやしさ、詐欺、そういったところをなんとかしたいな、というのがあったんですが、「他のみなさんはどんなところで苦労されたのかな?」というのを聞きたいです。

日本と海外のICOに対する反応の違い

柿木原:じゃあ、今田さんからお願いします。

今田:苦労ですね。まだ僕らも立ち上げて半年ぐらいなんで、まだこれからではあるんですけど、やっぱり今は法務面の調整ですかね。

金融庁等とも調整しているんですが、自分たちの思ったようなスピードで進まなかったり、明確が答えがなかったりと。まだまだ未開拓の分野だからこその悩みが今は一番大きいです。ただ、そこに関しては、仮想通貨交換業者を取得してる仮想通貨取引所を見てる方にもサポートしていただきながら進めているので、なんとか調整できていますが。やはり今一番苦労しているのはその辺りですかね。

奥田:そこはまったく我々も同じことを悩んでいますね。やはりまだまだ国の法律が追いついていないのかな、というところがあったり。日本で本当にずっと事業を続ける意味があるのかなというのは、最近思ったりもします。

:僕ももちろんそこには悩んでるんで。これ、ちょっと悪気ないように捉えてほしい。別に悪い話をするわけじゃないんですけど、日本文化にはけっこう苦労したなと思いますね。

ICOをやった時に、最初は法律の問題があったので、実は海外でしかやってなかったんですよ。なので、海外の人とだけコミュニケーションしたんですけど、海外の人ってけっこうポジティブなんですよね。質問も、「これでどういう世界がつくれるんだい?」とか、「何があれば、このコミュニティがもっと盛り上がるんだい?」みたいな質問だったんで、すごい楽しかったんですけど。

日本向けにICOをやるとなった瞬間に、「詐欺がきたぞ」みたいな、すごい風潮だったんですよ。そう言われないために、あんまり使いたくなかったんですけど、株式会社リクルートとか使うと、「うわ、六本木に遊びに行ってるやつだった」みたいなところまできて。

僕はリクルートの中で少なくともそういう人とはちょっとあんまり気が合わないと言いたいんだけど(笑)、そういうことを言ってもしょうがないんで。思った以上にすごく批判ファーストで来る文化にびっくりしたというか、「あ、こんなにも違うんだ」というのは、その時にわかったんですよ。

これって別に一概に悪くなくて、やっぱりマイナスポイントはちゃんと消さないといけないというのはあるんですけど、たぶん起業家にとって、いきなり批判からこられるって、けっこうつらい体験なのかなと思います。そこはちょっと……。

僕たちは海外から入って、日本のコミュニティもちゃんとお話を続けてなんとかなったんですけど、いわゆる普通のスタートアップだと、けっこうそこでやられるんじゃないかなって思いましたね。

地方に本社がある企業の苦労

鶴岡:金融庁さん周りはまったく同じで(笑)。

今田&安:(笑)。

鶴岡:ちょうど今日の午前中に、「会員権は仮想通貨じゃない」っていう認定をいただいたばかりなんですけど、そこはすごく苦労しました。

:おめでとうございます。

鶴岡:ありがとうございます。

:楽な道に入りましたね(笑)。

鶴岡:はい(笑)。いったんですね(笑)。なので、胸を張って運営できるんですけど(笑)。

:(笑)。

鶴岡:そういうところもありますし、あと、たぶんこの中で、本当の意味での地方に本社があるって、うちだけだと思うんですけど、けっこうそういう中で苦労がたくさんあって。

一番苦労したのが、やっぱり地方色がすごいついちゃうというところがあって。さっきちょっと説明した、一番最初のAIRPO(エアポ)っていうサービスがあるんですけど、それは最初に大分ですごい発展させてしまって、大分色がすごいついちゃって。東京に出た時とかに、「それ、もう結局、大分のサービスでしょ」というふうに言われちゃって。なかなかそこからの発展がすごい難しかったりというところがあります。

あと、僕らはシステム開発の受託もやっているんですが、やっぱりそういうところで、エンジニアの採用ですとか、あとバランスのつくり方とか。

やっぱり地方って、どうしてもリテラシーが低い企業さんたちが多いので、サービスだけじゃなくて、僕らみたいなサービスもできるし、そのノウハウをもって受託サービス、システムが開発できるというところは、すごい貴重な存在なんですけど、そういうところの理解をしてもらうのがけっこう今まで大変だったですね。

あとは、資金調達とか(笑)。うち、今5年目なんですけど、何回かつぶれそうになった時がもちろんあって。自分の車を売って、会社にお金入れたりとかしたことがあったんですけど。もう地方のほうが、資金調達はより難しいなというイメージがあります。

アナログな美容業界でのベンチャーの苦労

清水:僕も10月に設立してるんですが、僕らまだ仮想通貨のところは触ってないんで、ちょっとみなさんの悩みとは違ってるかもしれないんですけど。先ほど言ったように、美容業界ってけっこうアナログな業界なので。ここのプレイヤーの中でも商品を取り扱うディーラーさんたちは、もう創業4代目の人が今40代で、商売していますというような会社ばっかりなんですよね。

この人たちが「ライブコマース」って言われると、「なんですかね?」、「それってなんか新しい武器ですか?」みたいなレベルなので、「そうじゃないですよ」っていう説明がまず難しかったのと。

僕らが起業する際に、商品がないと当然成立しないんで、商品をまずどこかしらから供給してもらわなきゃいけない時に、まず、商品を大量に持っていてオンライン上には商品を絶対供給しないぞ!という方針の業界でも力をもっているディーラーさんに話しにいったんですけど。

オンラインに商品を供給しないって決めている方々にライブコマースに商品供給してください、とそれを説得するのにめちゃくちゃ時間かかりましたね。

結局もう、そういうところが見つかって、商品供給してもらって。立ち上げて、商品がいろんなとこからまた乗っかってきて、できるようになってるんですけど、そこがけっこう苦労してましたね。まあ、そんなアナログな業界です。

奥田:ありがとうございます。まあ、やっぱり、みなさんここにいるのは社長さんだと思うんですよね。社長あるあるが出てくるのかなと、あと経営者か。それもありますし、やっぱり市場をどこに定めるかが、みんな共通の課題なんだなというのは再認識しました。というのが、正直なところです。

世界に独自の経済圏が成立したら日本はどうなるか

今田:ここにいるみなさんは、わりと急成長してるサービスを運営されてると思っていて、「わりと順調なのかな」とプレゼンを見ていて思ったんですけど。逆に、今抱えてる課題と、それに対する「どうしていこうか」みたいなことを聞きたいなというのが1つです。

:法規制と税務は、課題というか、なにも決まってないんです。しかも、ICOを国内でやったところがほとんどいないので、ベンチャー企業なのに、なんかよくわかんないことやってるんですよ。それはやっぱりけっこう課題なんですけど。

もうちょっと広い視野で言うと、「グローバルにこのトークンエコノミーみたいなものをどう発展させるか?」が、やっぱりけっこう課題としてありますね。

要するに、経済圏を発展させる時に、結局日本だけ閉じちゃうと、またなんかガラパゴス化して、取り残されるようなことが起きると思うので、なんとかこの日本国家っていうのがそこに食い込んでいかないといけないだろうな……そこに食いこまないと、自分たちも死ぬという話なので。

というので、海外行ってきたんですけど、やっぱ海外の人って、「日本はなんか変だ」みたいな感じなんですよね。「日本のプロジェクトだ」と言っても、もう一瞥されちゃうみたいなのがあって。ミートアップに来たかなり好意的な方々でも、ようやく議論してもらえるぐらいでした。

本当に国家というものがいらなくなって、独自経済圏が成立した時に、当然それは世界でも起こる話なので、日本人だけが取り残されて、もう米しかつくれませんみたいなことに普通になりうるんじゃないか。個人的には、突破口が見つかってないところがけっこう課題です。

鶴岡:本当にたくさん課題があるんですけど、SPOTSALEの場合は、本当に自分の母親にも会員権を買ってほしいという目標があって。なので、仮想通貨系のニュアンス、例えばトークンとかコインといった言葉はなるべく使わないようにしてたりするんですけど。

とはいえ一方で、サービス初期の頃って、そういう投機目的の人を集めないといけなかったりすると思うので、そのへんのバランスがすごい難しいなと思っていて。……どうすればいいんですか?(笑)。

:(笑)。

鶴岡:この後、ちょっと相談させてください。

ブロックチェーンという言葉を意識させない大切さ

今田:(バランスの難しさは)すごく思います。僕はどっちかっていうと、いろいろ迷った結果、投機性のユーザーを減らして、実際に活用してくれる人の割合を比較的増やそうと思ってるんですよ。ちなみにSPOTSALEさんの場合そのへんはどれぐらいのバランスで、今考えてるんですか?

鶴岡:毎日バランスが変わってるようなイメージで、本当にジレンマな感じですね。後で答えを教えてください(笑)。

今田:答えはないです(笑)。

鶴岡:(笑)。

奥田:基本的には、今までのお二人と非常に似た課題は、弊社も持ってはいまして。

1つは法規制のところであったり、あと、やっぱり国境がこれからどんどん薄れていった時に、今まで日本という括りで捉えられていたけど、それがなくなると戦えるのかなというのは、すごい心配なところはあったりはします。

それは技術的に遅れてしまう。やっぱり言語の問題が大きいのかなと思ったりはしますが、海外の文献を読める人って意外と少ないなと。まあ、読む気にならないですね。そこを1つ、やっぱり問題だなと思うのと。

あと、難しいことはやっぱり、「これからどうユーザーのITリテラシーを高めていくか?」っていうところがあったりもします。

それでもっと狭いところの課題でいきますと、本当に経営的なところなんですけど、「アクティブユーザーをどう増やすか?」ですね。本当に、ダウンロード数っていう目先の数字だけを追いかけて、アクティブユーザーがぜんぜんいない。そんなところではもう絶対に続かないというのは目に見えてますので。今後、仮想通貨、暗号通貨、ブロックチェーンという中で、いかに使える人、使う人を増やすかを常々今考えてるところです。

対策としては、やっぱりもうブロックチェーンという言葉を意識させないこと。それがけっこう大事になってくるかなと。例えば自動車、一般的に(乗って)動いてますけど、エンジンの仕組みがわかってる人なんて、ほとんどいないと思うんですね。気づいたら最新のエンジンを使っていたとか、そんなレベルにまで持っていけたらいいのかな、というふうに思います。

日本にライブコマースを浸透させる方法

清水:そうですね。まず1つは文化のつくり方というか。ライブコマースって、まだ日本でそんなに浸透してるわけじゃないので、「一般消費者が、そのライブコマースというものに、日本人としてどうスムーズに入ってこれるか?」というところ。

あと配信者に関しては、「『売れたよ』という文化形成がどこまでできるかな?」と思っていて。それは、初期のスマホがガラケーがスマホにスイッチした時に、Appleが取った戦略なんですけど、ガラケーからスマホにぜんぜんスイッチできなかったんですよね。これは、国民性から日本の市場に理解されなかったと思うんですけど。

そこってやっぱりコンテンツ。いいアプリがぜんぜんなかったところを、Appleが自分たちでお金を出して支援して、アプリをつくらせて。それで、「アプリで儲かったよ」みたいなコンテンツをわざと書かせて。それがどんどん文化に。文化というか「アプリが跳ねたよね」というのがどんどん出てきて、おもしろいコンテンツが増えて、今こうスイッチしてるっていうことになってる。

たぶんライブコマースでは、それとまったく同じ方法を取らなきゃいけないだろうなと思っていて。いかに配信者たちが「売れたよ」ということを、文化として形成していくのを我々が支援できるかが大切だなと思っていますね。

あともう1点だけ。今、中国に行こうとしていて。中国って、日本のサロン専売品が手に入らないので、中国からバスツアーが組まれて、日本のサロンに行って、「サロン専売品買います」みたいなとことか、けっこうあるんです。だけど、中国資本が入っていないと、アプリをBANされるので(笑)。あれをちょっと本当にどうにかしたいなと思ってて。

需要はあるのに、たぶん持っていったら持っていっただけ、中国でバーティカルなところだけパクられて、サロンのところだけ(持って)いかれて、むしろ逆輸入してきて食われる可能性もぜんぜんあるなと思っているので、この中国の対策を「ちょっともうどうしようかなあ……」みたいなところがありますね。

今田:中国って相当に競合が多いというか、発展してますよね。

清水:発展してますね。

今田:そのへんはどういうふうに対策するんですか?

清水:ライブコマースというのは、もう中国では文化としてできあがっているので、ほとんどの購買がけっこうライブコマースで行われてるような状況なんですけど。まだまだ全体を取りに行くプラットフォーマーがほとんどで、バーティカルにいってるところってなかなか少ないんで、そこをどう見せていけるかですかね。

中国市場の捉え方

奥田:その流れでぜひ質問したいんですけど、「中国の市場はどう捉えられてるのかな?」というのは、聞いてみたかったりはしますね。

弊社の場合だと、なんとしてでもほしい市場であって。ただ、iOS、Androidのどちらも「中国だけはやめてくれ」と直接言われたという経緯があって、配信できていないんですけれども。そこでちょっとデスクトップ版というかたちを使って配信をした、という経緯があったりはするんですが、「みなさん、どう捉えられてるのかな?」というのは気になります。

:もともと僕たちは香港でICOしようとしてたぐらいなんで、僕はもちろん狙いたかったんですよ。ただ、やっぱり法規制が厳しすぎて。あと、日本企業も今、軒並み撤退を始めてるじゃないですか。

「ここはもう無理だ」と。もう強すぎてお話にならないというので、取りたくても取れないし、無理にいこうとすると、普通に捕まっちゃうみたいな感じなので、ちょっと個人的にはあきらめましたね。「1回ちょっと中国は置いとこう」っていうような。

鶴岡:僕もずっとウォッチはしてたんで……。ICOを最初考えてたんで、すごいずっとウォッチはしてたんですけど、やっぱり同じで、「怖いな」と思って、あきらめました。もう見ないようにしてます。

:(笑)。中国に行くというのは、なんか攻略の糸口みたいなものがちょっと見えてたりするんですか? 

奥田:その具体的な例がデスクトップ版を使う、というやり方ですね。どこかのプラットフォームに頼らない、インターネットだけで勝負しよう、というところですね。

幸い、ブロックチェーンそのものは、グレートファイアウォールには引っかからないということは一応わかってはいまして。そこでなんとか、ブロックチェーンの波を中国にも持っていきたい。ただ、中国自身も独自のブロックチェーンを開発してるという話もありますので、どう共存するのか、あるいは競合するのかは、まだこれからなのかなとは考えています。

清水:中国の対策ですよね? ちょっと(対策を)取りようがないんですけど、今考えてるのが、日本の美容のクオリティって、ああいうアジア圏からするとものすごい高いんですよね。今、店舗として中国に行っている日本の美容室とかネイルとか、めっちゃ多いんで。ああいう店舗単位から日本の人たちを経由して、オーナーを経由して攻めていく、という方法を取ろうかなと思ってるんですけど。

まあ、結局今、アプリでこういったものが動いてる状況だったので、ちょっとそこは対策の取りようがないですね。どうしようかなあ……。

(会場笑)