関西発、3人の起業家

司会者:大変お待たせいたしました。トークセッションを始めさせていただきます。まず、ご登壇のみなさま、1名ずつ2、3分程度ご挨拶と自社のご紹介を簡単にしていただければと思います。では、石井さん、よろしくお願いします。

石井健一氏(以下、石井):みなさん、こんにちは。ネクストイノベーションの代表の石井と申します。今日はよろしくお願いいたします。

私たちは遠隔医療、ネット診察と言われる、スマートフォンの中でドクターとみなさんがやりとりすることで診察を完了して、自宅に薬が届くというサービスをやっています。

現在シード期の調達を終えて、次の調達に向けて1人ユーザーを取るといくらお金がかかるのか、1人ユーザーを取るといくら儲かるのかという数字を出している。そんなフェーズです。今日は1日よろしくお願いいたします。

(会場拍手)

司会者:ありがとうございます。では続きましてプレンロボティクス株式会社の赤澤さん、お願いいたします。

赤澤夏郎氏(以下、赤澤):プレンロボティクス株式会社の赤澤と申します。よろしくお願いします。私たちはバリバリのハードウェアベンチャーで、その名の通りロボットを開発してます。

ロボットと言ってもいろいろありますので、ちょっとイメージしづらいと思うんですけど、私たちが作っているロボットは手のひらサイズの音声認識で操作できるカメラ付きのロボットになります。

同じくシード期の調達を昨年終わらせて、今は次の調達に向けてビジネスモデルを作っています。おそらくほかの方と違うのは、今の会社は比較的新しい会社ですけれども、私たちはもともと、ロボットの別会社を14、15年続けております。

なので、どちらかと言うとビジネスからスタートしているのではなくて、「こういうものを作りたい」「こういうものを作ったら、それをどう使えるか」という視点からでしか今のところ考えてませんでしたので、今そのあたりで苦労しています。

今日はみなさんのお話を聞いて勉強させてもらいたいなぁと逆に思っているところです。よろしくお願いします。

(会場拍手)

司会者:赤澤さんありがとうございます。では続きまして株式会社ミライセルフの井上様、よろしくお願いいたします。

井上真大氏(以下、井上):株式会社ミライセルフの井上と申します。僕たちはいわゆるHR Techという領域でビジネスをやっています。今やっているサービスは適正検査サービスです。今までの適正検査サービスは応募者の方だけが受けて、それで結果が出てきたと思います。

ですが僕たちの適正検査サービスは企業の方、社員の方も受けることで各企業にカスタマイズされた、パーソナライズされた結果が出てくる。各企業と応募者とのマッチ度が出てくる、という適性検査サービスをやっています。

この適性検査サービスの仕組みと僕たちが集めた会社のデータを使って、今度は同じマッチングの仕組みで、求職者の方に自分にマッチした会社が見つかるという新たな採用サービス、転職サービスを始めようと思っています。

今日はシード期の資金調達の話ということで、僕たちシード期は3年ほど前なので少し記憶もあいまいなんですけれども(笑)。がんばって記憶を掘り起こしながらお話させていただけたらと思います。よろしくお願いいたします。

(会場拍手)

経験豊富な3人のベンチャーキャピタリスト

司会者:ありがとうございます。では続きましてEast Venturesさんから梅澤さん、よろしくお願いいたします。

梅澤亮氏(以下、梅澤):よろしくお願いします。East Venturesの梅澤と申します。

2010年からインドネシアに投資をしているファンドで、2011年から日本での投資活動をしています。

シードとアーリーステージ、投資金額としては1,000万から5,000万くらいですね。最初の事業の計画の部分から、いろいろと立ち上げの支援をさせていただいています。

日本の有名どころの投資先だと、メルカリさんとかグノシーさん、gumiさんなどです。メルカリさんは創業時から出資させて頂いてまして、我々のオフィスを活用頂いたりいろいろな支援を行ってます、グノシーさんもそうですね。まだ東大在学中に集まってやっているときに、我々がいろいろと支援させて頂きました。投資以外でもバリューを出そうとしているファンドになります。

インドネシアでも2010年から投資しているので、今で言うユニコーンになっているTravelocaという、Expediaやじゃらんのインドネシア版であったり、Tokopediaというアマゾンや楽天のインドネシア版に初期のタイミングで投資をして支援させて頂いています。

あとは、Code Republicと言うアクセラレータプログラムをヤフージャパンキャピタルさんとやっています。3ヶ月間、YJキャピタル及び我々East Venturesのメンバーで毎週のようにメンタリングをしています。

投資はポスト1億の700万円の出資ですね。YJさん350万、弊社が350万です。今日はよろしくお願いいたします。

(会場拍手)

司会者:梅澤さんありがとうございました。続きましてKLab Venture Partnersさんの萩谷でございます。お願いします。

萩谷聡氏(以下、萩谷):よろしくお願いします。KLab Venture Partnersでキャピタリストをやっている萩谷と申します。

KLab Venture PartnersはKLab株式会社の子会社です。親会社はモバイルゲームなどで売上を立てていて、東証一部上場している企業なんですが、そこの100パーセント子会社でベンチャーキャピタルをやってます。ファンド自体は親会社のお金は一部で、あとは外部から集めています。投資自体は純投資でやっていて、しっかりキャピタルゲインを目指すというスタンスで投資をしています。

新しくKLab Venture Partnersで建てたファンドというのが2016年の5月から本格的にシードに特化して投資をしていて、1年10ヶ月ほどで38社ほど投資をしています。そのうちの1社でネクストイノベーションの石井さんにもシードで入れさせていただいているということで、今日は呼んでいただきました。

国内投資をメインにやっていて、関西の会社さんが2社、名古屋の会社さんも2社という感じで、これから地方の会社さんにもどんどん投資していきたいという気持ちもあるので、今日はいろいろお話できればなと思います。よろしくお願いします。

(会場拍手)

司会者:萩谷さんありがとうございます。では続きまして、サムライインキュベートの岩田様でございます。よろしくお願いします。

岩田諒祐氏(以下、岩田):サムライインキュベートの岩田と申します。我々サムライインキュベートは大企業のオープンイノベーションを支援する事業と、私が担当しているVCとしての事業があります。

ベンチャーキャピタルとしての事業はプレシードと言われる、本当に創業初期ですね。もっと言えば登記していないような人たちも投資対象になっていまして、そこに対して投資実行を行なっています。

エリアで言うと日本は全国が対象で、直近の投資実行中の5号ファンドでは半分イスラエルで投資しています。もう半分は日本で、私が日本サイドを担当をしています。本日はよろしくお願いいたします。

(会場拍手)

来場者はどんな人?

司会者:ありがとうございます。以上の6名の方に今日はトークセッションをしていただきます。今日の様子は後日ログミーで記事化して配信をする予定でございます。

また配信されましたらFacebookなどでご案内いたしますので、そちらまたご覧いただけれと思います。

ということで、ここからのトークセッションのファシリテーターをネクストイノベーション株式会社の石井さんにお渡ししようと思います。ここからトークセッションということでよろしくお願いいたしします。

石井:改まして石井です。よろしくお願いいたします。先に申し上げます。台本が一切ありませんので全部即興でやっていきますので、よろしくお願いします。

最初に今日お越しになられている方とインタラクトさせていただければと思います。見ていただいたように、3人は事業を進めていて投資を受ける側、そしてもう3人はその投資をしていただく、事業を加速していただく側になっています。

今日お越しになられている方もきっと大きく3つ属性があると思います。1つ目は自分は起業家である、もしくは起業を考えているという人。2番目は自分は投資家、ないしはお金を使ってビジネスを加速させていく仕事を考えている人。3つ目は僕たちのようなスタートアッパーをお金ではない違うかたちで支援していただいている人。

今日来られている方の属性だけ最初に教えていただければと思います。1番目自、分は起業を目指している、起業家、そういった方は手をあげてください。

(会場挙手)

けっこういらっしゃいますね。ありがとうございます。では2番目、お金ないしはそれに伴うもので事業を支援していく立場の方?

(会場挙手)

あ、けっこういらっしゃいますね。ありがとうございます。じゃあお金ではないけれども、別なかたちでベンチャーの支援をしている方?

(会場挙手)

3種類全部いらっしゃいますね。それぞれの立場でお話ができる段取りを今から急遽考えますので、みなさんついてきていただければと思います。

起業家と投資家のギャップ

石井:1つめのテーマとしては、僕ら起業する側の考え方と投資をする側の考え方のギャップについて話していきたいと思います。起業家側からいきましょうか。

赤澤さん、先ほども控え室で話していましたが、お金を出していただくことって、例えば日本だと銀行からお金を借りるという選択肢、あとは知人友人からお金を出してもらう出資と融資のハイブリッドみたいなかたちと、それから純粋な投資という大きく3つのパターンがあるかと思います。

赤澤さんのケースのときは、そのあたりはどのように組み合わせようとか、どこで勉強しようと思われていましたか?

赤澤:今出てきた調達の方法はとりあえず全部経験しているんですけど。割合であるとかスケジュールであるとか組み立てであるとか、そうしたことに基づいてやったかと聞かれると、そんなことはありません。とにかく会社を回すのと、ビジネスプランを成立させるのに必死で集めて回って、その3種類をひと通り経験したというのが今の状態です。

先ほどもお話ししましたが、まずビジネスを作りたいというより、やはり「こういうものを作りたい」とか「こういうサービス作りたい」ということが最初にありました。なので、「こういうサービス作ったら誰が喜ぶ」とか、「どういう人が売り先になるんだ」というのが後付けなんですよね。

そうすると、みなさんが考えてるアプローチとは違うんじゃないかなと、最近はとくに思っています。そこで苦労することはありますね。

石井:一度経験すると、「あ~こういうことだったんだ」ってわかる。僕もけっこうあるんですけど、今はまだこれから調達を考えている方に対して「こういう段取りをするとよりショートカットできるよ」とか「うまくいくよ」というアドバイスができる感じでしょうか?

赤澤:いや……一緒に考えましょうみたいな感じですね(笑)。

石井:じゃあそっちは向こうにお任せしましょうかね。

赤澤:そうですね(笑)。

ビジネスも会社もない段階では、銀行からの融資は難しい

石井:井上さん、どうでしょうか? 今のお話だと、今日来場されている方はとくにスタートアップからシードと言われる入り口に関わる方が中心になると思うので、その際の感覚ちょっとお話しいただければと思います。

井上:でも、我々も赤澤さんと似たような感じでして。「スタートアップといえば、とりあえず投資家の方からお金集めるんだろう「みたいな感じで投資家の方をひたすらご紹介していただいて回って、「我々こんなことしようとしています。お金ください」みたいなお話をさせていただきました。

銀行の方とお話させていただいたこともですが、まだビジネスもできてない、なんなら会社という箱もできてない段階だと銀行の方もご融資は難しくて。

結果論としては、投資家の方からお金を集めるとか。実は我々も友人知人からお金を少し入れていただいているんですが、そういうところから集めていくんじゃないかなと思います。

石井:わかりました。ありがとうございます。今の話を受けて、おそらく今日来られているキャピタリストさんの中で最も早いステージがお得意だと思われる岩田さん、いかがでしょうか・ 起業家がアイデアを持ってきたときって、どのように評価しているんですか?

岩田:大きく分けて、人と事業を見ています。割合で言うと7:3くらいで人を見てますね。なぜかと言うと、僕らの得意なプレシードと言われる段階は、本当にこれから仮説検証を始める段階の人たちがたくさんいるんです。

つまりPowerPointの資料で「こういう事業やりたいです。どうですか?」みたいな。そういう状態の方々なので、ピボットの可能性ありきで考えています。中には最初に言っていた事業とはぜんぜん違う事業で進めている投資先もいますし、そういう意味でも、やはり人が重要だなと思っています。

あと、本当に身も蓋もない話をするんですけど、僕と合うかどうかみたいな部分もあります(笑)。結局僕らってプレシードへの投資なので最初にそれなりの割合で入れて、IPOやM&A、イグジットまでずっと一緒にやっていきます。なので、極端な話お互いに嫌だなと感じちゃう相手だとやっていけないと思うんですよね。

絶対的に事業が悪いということはほとんどないので、きちんとイグジットするだろうという事業で、「この人ならやっていけるだろうな」という感覚が合えば「やっていきましょう」と。

僕以外のところのほうがいいんじゃないかな、みたいなことになったらすっぱり断ります。人が1番大きいです。本当に。

投資家は起業家のどこを評価する?

赤澤:ちなみに人を見るときの1番のポイントはどこですか?

石井:それ聞こうと思ってた(笑)。

赤澤:ですよね(笑)。

岩田:そうですね。答えはないですけどね。答えはないですけども……。

石井:男前かどうか?

岩田:あ、男前大事ですね。やっぱり(笑)。

赤澤:でもそれ聞いたことあります。

岩田:まじめに男前を語るとちょっとあれなんですけど。やっぱり次の調達やピッチイベントに出るじゃないですか。起業家の3人も出てると思いますが、そのときウケがいいかどうかというのは多少の基準にはなると思いますけどね。

僕が見ているところで言うと、1つはロジカルに話せているか。僕、ロジカルに話せない人って合わないんですよ(笑)。それは良い悪いじゃなくて、合わない。あとは熱意を持っているかどうか。本当に事業に命を懸けられるという人と一緒にやりたいなというのがありますね。

そういうところかな。それを感覚で選んでいるという感じです。そこに言語化できるなにかがあるというわけじゃなくて、「この人ならやっていけるだろうな」という僕の感覚があったら進めます。

スタートアップ、シード、プレシードを定義する

石井:ありがとうございます。今、言葉がたくさん出てきたので、最初に定義を整理したいと思います。スタートアップ、プレシード、シードという言葉が出てきたと思うんですが、岩田さんの中で定義しているプレシードとはどういう状態なのか。それがどうなったらシードになるのか、おそらく投資家3人の中でも少しずつ違いがあるかと思うので、そこを順番に教えていただければと思います。

岩田:スタートアップに関しては「急成長を目指してイグジットに向かう」というすごくふんわりした表現で捉えています。

プレシードというのは、これも1年前と今では違うと思いますが、バリューで言うと1億未満とか、数字で言うとそのくらいのイメージです。あとは、本当にアイデア段階で、サービスはまだローンチしていない、アルファ版も出ていないという位ですね。

あともう1つは何でしたっけ?

石井:スタートアップ、プレシード、シード。

萩谷:プレシード、シード、シリーズAで考えたほうがいいかもしれないですね。

石井:そうですね。

岩田:シードと言うと、toBのサービスであれば提携が1、2個始まったとか、ベータ版が出たとか、そういったところですね。最近ではポストマネーで3億が付くところも多かったりしますが、そのくらいのイメージですね。

そこまでいくと僕らはあまり手を出さないんですが、そんなイメージですね。これは僕の中でざっくり決めているだけなので、おそらくここにいる6人は多少なりともバラバラになるとは思います。

石井:ありがとうございます。今出てきたバリュエーションという言葉は、僕も調達をやるまで聞いたことがなくて。

株価がいくらかはなんとなく感覚でわかりますよね。自分で会社を作るときに資本金100万円です、だから1株1万円で100株です、っていうのはすごく意味がわかるんですけど。その状態の会社が投資家さんたちから見ていただいたときにいくらの価値があるのかは考えたことがありませんでした。

創業期の企業をどう評価するか?

石井:梅澤さん、今の話の続きで、まだ事業が始まっていない会社、もしくは創期の会社をどのように評価しているのか。もちろん幅があるのでざっくりでお願いします。

梅澤:弊社の場合、シードとアーリーという定義なのである程度プロダクトができていて1〜5億円くらいのバリュエーションが付く会社に対して1,000万とか5,000万出させていただいていたり、もうちょっと前のステージの部分も携わらせていただく場合もあります。

時価総額、バリュエーションの付け方としては、メンバーであったり、取りに行くマーケット規模ですね。あとはその中でプロダクトができてない場合だと可能性の部分に対して、すごくあいまいな定義になってしまうんですけど、今後の成長率であったりメンバーの強みなどを評価していくというところになってしまうのではないかと思います。

石井:そのときに、どうなっているとどのくらいなんですか?(笑)。

梅澤:(笑)。

石井:これ、本当に1年前の僕にはわかりませんでした。自分たちの会社が資本金200万円で作った会社をいくらと見てくださっているのか、なんとなくで教えてください(笑)。

梅澤:これログに残されたくないんですけど(笑)。おそらくだいたいフィーリングになってきてしまうところです。例えば学生の方であれば初めての起業で初めてのプロダクトのローンチになるかもしれないんですけど、やはりいろいろと話を聞いていったり、さっきのロジカルシンキングの話もありましたし。

あとはどのマーケットを取りに行っていてどんな競合がいるのかという分析と、チャートを書いていくと、4つに分けたポジショニングの中でブルーオーシャンを取りに行っているのかレッドオーシャンか、マーケットとしていっぱい競合がいるのか競合がいないのか、というところを見ています。

経験値と過去の投資実績に応じて「ここのマーケットで誰もいなくてプロダクトも良さそうだしチームもすごく集まっていて、CTOの人がプログラムを10年以上書いてて過去にこういうサービスを作ったことがあるので……」というところで、じゃあ5億円の価値なのかな10億円の価値なのか、おそらくVC側も計算式でやってるわけではないので、そうやってふわっと決まるケースが多いのではないかなと。

ただ、ある程度プロダクトが出ていて数字が出ているのであれば、伸び代と最初のマーケットフィットやプロダクトのテストで数字化はすごくしやすくなります。あいまいな回答ですみません(笑)。

石井:いえ、ありがとうございます(笑)。1年前、それを聞きたかったです。